熊本地震 大規模災害の救助支援 救助体制・そのあり方について


◆ 熊本地震 大規模災害の救助支援 救助体制について



 2016年4月14日にマグニチュード6.4(気象庁の資料)、震度7の最初の大地震が発生し、4月16日深夜にはマグニチュード7.1(気象庁の資料)、震度6強の最大規模の地震が発生し、その後も、規模の大き地震が頻発に継続し、広範囲に大きな被害が発生し、家屋損壊、ライフラインの遮断、店舗、役所の建物や病院の建物への損傷とそれによる機能の停止、物流、交通網が寸断され、市民生活への影響が甚大である。また、種々の工場の施設の損壊による操業停止によって、関連する産業への影響も現われている状況である。地震の振動は、最初の地震発生から1週間近くになるが収まる気配がみられない。

 日本は2011年3月に未曾有な東日本大震災を経験し、大規模災害対応の未熟さを痛感させられた。その反省に基づき、失敗を教訓にして大規模災害への対応のために、様々な改革が為されてきていると筆者は思っていたが、2016年4月のこの熊本地震により、広範囲に及ぶ大規模な被害が生じている中で、政府・自衛隊の対応は、東日本大震災以前と全く同じ対応を行っているだけで、お粗末な行政対応の姿が露呈した。
 そこで、大規模災害発生に対する災害対応に特化した組織の設立と、対応のあり方や対応の充実、望ましい救助・支援体制について筆者が考えるところを示し、現状の国レベルの災害対応方法の改善を促したい。


 筆者の考える大規模災害時における災害救援部隊の対応のあり方については、次のとおり。

  1. 国は、災害に特化した組織・専門部隊を設立し、人員を配置する。現在の自衛隊は戦闘員であって、災害救助の専門部隊とは言えない。単に代用しているだけ。
  2. 現在、災害時に於いては、都道府県の要請で自衛隊が活動することになっているが、特殊な災害や被害規模が大きく広範囲に及ぶ災害時には、都道府県の要請を待たずに、国が率先して災害に特化した部隊を送り込んで、災害自治体と共同して作業を分担できる制度・仕組みが必要となる。
  3. 現在の自衛隊は、単に運搬作業と不明人の捜索作業、孤立者の救助、炊き出しと風呂の湯を沸かすのみとしての役割しか担っていないように思える。支援物資を運搬について、トラックで物資を集積場に運びこんでも、自治体が避難所の詳細を把握できない状況では、荷物の運び出しができず、自衛隊員が遊んでしまっている状態が発生しているように見受ける。
  4. 救助について、車両が通行できない災害場所では、自衛隊員が徒歩で赴き、人力で対応できる程度の救助活動を余儀なくされており、もし、簡易なクレーン車、油圧系シャベルがあれば、重量のある障害物を取り除く場合に、人力のみの対応に比べて、比較的短時間で排除できて、被害者の救出がはかどる場合がある。このような機器・装備を保有し、またこれらを空輸できる航空機(ヘリコプター)を備えておくべきである。
  5. 激しい地震規模の地震が発生した場合には、先ず災害対応部隊が航空機を飛ばし、現地の被害の様子を空撮して被害状況を確認すると共に、関係機関からの情報を得て、道路・鉄道の交通網の遮断状況、建物被害状況、ライフラインの状況、緊急避難した住民の避難先の状況、孤立集落などを地図に整理する。これらをWEB上に載せる。
  6. 数回激しい地震が発生した場合には、その度に被害状況を確認し、状況を追加整理する。
  7. 災害救助部隊の専門員を現地に派遣して、各避難箇所に数人ずつ送り込み、情報通信が可能となる装置を設営する。電力や衛星通信装置、パソコンなどの電子機器を備えた通信局を設置する。 災害時の衛星通信施設と電源を避難所の数だけ確保する。
  8. 避難所は、行政が指定する災害時の指定避難所だけではなく、暫定的に住民同士が集合して留まることを決めた場所についても避難所一覧リストに同様に整理して記載する。
  9. 避難所リストの整理の様式を定式化し一覧に整理するソフトを作成する。これを用いて入力して表にする。また、地図上に位置情報を示す。
  10. それぞれの一次避難場所としての施設に於いて、専門隊員が避難人と施設の状態を一覧に整理する。別途、国が開設した災害時に於けるホームページ上に何月何日何時時点での情報として、避難所名、避難所住所、避難所連絡先、避難場所の施設の詳細(面積、建物などの構造形態、床の形態、部屋数、トイレ数と利用の可・不可、空調、毛布、調理施設の有無など)、避難人の人数、避難者の氏名、住所、性別、年齢構成や赤ん坊、幼児、児童・生徒、老人、病人その他などの区分を一覧にまとめる。尚、個人情報として、避難者の個別の氏名、住所、年齢の表示が表に出ない扱いがよい場合には、一般人には明らかにせず、地元の行政者や災害部隊の担当者は、パスワード入力で閲覧できる様式にすればよい。あるいは、個人情報の関係でWEB上に載せないで、行政・災害救援担当者のみ共有できる形式でもよい。
  11. 日本郵便や宅配業者の配達に益する場合には、業者が行政を通じて避難者に配達可能かどうかを確認できるシステムを作る。あるいは、配達物が届いていることが避難者に伝わるシステムとし、避難者側の代理人が定められたとり置き場にとりに行く形式などが考えられる。
  12. 地区ごとの避難者の住所と名前のリストを日本郵便と共有すれば、郵便物が避難所に配達できることになる。
  13. 避難場所から移動する避難者について、逐次その移動先をリストに記載し、行政が把握できるようにする。更に避難人が滞在する場所を移動する場合には、行政者あるいは災害救助部隊に連絡を入れることを要請しておく。
  14. 支援物資の供給について、支援物資の供給場所において、家屋に寝泊りできない状態の人々への水、食料、紙おむつ、ミルク、毛布、衣類、寝袋、マスク、タオル、歯ブラシ、その他を提供する数量の把握、また、後述するように、家屋は住める状態であり、寝泊りは可能となるケースであっても、水、食料などが得られない人々の人数を把握する必要がある。
  15. 後に、ライフライン管轄の関係者からの情報をも合わせて、その復旧が長期に及ぶと想定されるときには、食料、水、トイレ、その他物資、就寝スペース、空調関係などの状況を考慮して、県外の避難所に移動させた方が、避難人が快適に過ごせるなら、大規模に近隣の府県への移動を行うことの調整をとり、直ちに実施することが最善と考える。また、傷病者を医療施設に搬送する準備などを地元の消防・医療関係と情報を交換する。
  16. 避難者を、水やガス・電気などの不自由な場所、トイレ施設が充分でなく、冬には寒く、夏には暑く、避難人がギューギュー詰めの狭いスペースに閉じ込めて劣悪な環境にいつまでも我慢を強いり、全国からガンバレと言って応援するのではなく、不自由な環境状態から一刻も早く逃れるために、県外の環境が良い避難所に移動させることが求められる。これが実施できる協力体制を、国・地方自治体が執れるように制度化することが必要であると考える。
  17. 一次避難場所、県外の避難所の二次避難場所に身を寄せている避難人の氏名、人数や人員構成、支援物資の供給状況、不足物資のリストなどを情報通信装置を用いて逐次WEB上にアップして情報を更新し、これらの情報を行政者や災害救援部隊が共有する。二次避難所にも、各避難所ごとに災害担当の隊員が数名配置される。あるいは頻繁に巡回されることが要求される。不足物資、被災者のニーズ、被災者が必要とするものを把握し、提供できる体制をとる。
  18. まとまった数量の支援物資が被災地区外から集積所に送られてきた場合には、そこで搬入日、支援物資の内容、数量に関して必ず救援物資の一覧リストに追加する。また、出庫した場合に、どこの避難所に何をどれだけの数量を搬出したかをわかるようにし、在庫の管理にも利用する。
  19. 避難所の状況は逐次ホームページ上で更新され、避難人の移動状況、支援物資の在庫関係、不足物資の要請などの最新情報がわかるようにする。
  20. 交通網について、遮断箇所、斜面の崩壊箇所、河川の堰きとめ箇所、人が建物内に閉じ込められた箇所を示し、別途にデータを送ってもらった部署で地図に表示し、情報を共有し、どこの部隊が対応するかを決めて指示し、その部隊が対応する。特殊なジャッキや小規模な組み立て式クレーンなどが必要な場合に、災害部隊に空輸を要請する。
  21. 交通網と交通機関の運行状況が把握でき、通行可能なルートが判断できる状態にする。
  22. どうしても現地に残らないといけない被害者や関係者を除いて、一旦避難者を他府県に移送することが最善と判断された場合、他府県に設けられる二次避難所と現地との間で必要となるコミュニケーションは、テレビ電話などで通話できる状態を確保する。
  23. 災害部隊で必要となるのは、地元の輸送業者のバス以外の人員輸送のためのバス、特に病人や老人、特に寝たきり老人を輸送するための特殊な輸送車両や多くの大型・小型ヘリコプターなどが必要となる。(オスプレーのような高額な空輸機はいらない)
  24. 避難人の家屋などについて、防犯のため、窃盗者を取り締まるためのパトロールの部隊の配置と頻繁なパトロールが必要となる。貴重品などを取りに戻る家族などについて、必ず身分を確認する。火災の防止、火災発生に対応できる部隊を配置させる。
  25. ライフラインが切断されている現地において、どうしても留まる関係者(行政者、不明者の捜査を行うもの、消火作業に当たる者、医療関係者や現地の病院の入院患者、警察関係者、ガソリンを供給する業者、食品などの販売店や関係者、報道関係者、不明者の家族など)、彼らのために、災害部隊の者が生活のための物資その他を供給・支援する。
  26. 家屋の倒壊被害は免れたが、水道・ガス・電気の供給が停止されている区域内に住んでいて、供給が受けられない人々が何人ほど存在するのかを把握することが必要となる。この場合、主に水や加熱しないでも食べられる食料が必要となると推測され、この支援物資を提供する箇所が各地に設けられ、供給を受ける必要がある者は、近くの供給場所に行かなければならない。 よって、水道などの供給が停止された区域内で、支援物資を供給するそれぞれの箇所が受け持つ区域内の人数(年齢構成ごとの人数)を最近の統計データから推算し、受け持ち箇所ごとの物資の必要個数を推定し、準備する必要がある。 これは、当該地の役所が区域の町名から人口を集計して、災害対応部署に数値を提供することになる。
  27. 避難者の貴重品の預かりが可能となるような装備や場所を準備する。大人数の避難所で、誰でも自由に出入りできる場所で、個人の貴重品の管理が疎かになる場合が生じる恐れがあるから。
  28. 災害救助隊員は、避難所近辺の店舗の営業状況(避難者が確認を求める店舗)について、地元の行政担当に確認しながら共同で、リストを作成してWEB上に載せる。
  29. 地震がある程度収まった後、倒壊家屋を撤去する際に、所有者に立ち会ってもらい、貴重品、思い出の品、取り出したい品物などを判別してもらうようにし、取り崩し作業において、丁寧に少しずつ崩していくように取り計らう。品物を取り出し、箱に詰める。大きいサイズのものは、別途集積場に運搬するなど作業する。
  30. 生活上必要となるサービスで、被災地で不足している内容をWEBに載せ、地区外の支援者、支援団体に協力を呼びかける。
  31. 病人については、罹りつけ医院での患者情報が得られる場合、得られない場合などに対応して、症状に応じて、医師・薬局の支援を仰げる体制を確立する。

 以上のような仕組みが、広範囲に及ぶ災害時には求められると考える。
 国の行政で即刻制度化し、対応できるようにしていただきたい。
 過去の災害時のときの対応の失敗と同じ失敗をいつまでも繰り返さないでほしい。
 ひょとすると、地元の放送局や NPOなどが既に実施していることも予想されるが、そうでなければ、国がNPOに委託して実施する案も考えられる。〔2016年4月20日〕




項       目

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