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トリスタンとイゾルデ






オペラ・データ

【作曲】
リヒャルト・ワーグナー(1857〜59年)

【初演】
1865年6月10日 ミュンヘン、宮廷歌劇場

【台本】
作曲者ワーグナー自身による(ドイツ語)

【原作】
ゴットフリート・フォン・シュトラスブルクの叙事詩『トリスタンとイゾルデ』ほかトリスタンに関する伝説

【演奏時間】
第1幕 80分
第2幕 80分
第3幕 70分  合計 約3時間50分



あらすじ

【時と場所】 
伝説上の中世、イングランド西南部のコーンウォール

【登場人物】
トリスタン(T): マルケ王の甥であり忠臣
イゾルデ(S): アイルランドの王女
マルケ王(Bs): コーンウォールの王
ブランゲーネ(Ms): イゾルデの侍女
クルヴェナール(Br): トリスタンの従者
メロート(T): マルケ王の忠臣
ほか

【第1幕】
時は伝説上の中世、舞台はイングランド西南部のコーンウォール。アイルランドの王女イゾルデは、コーンウォールを治めるマルケ王に嫁ぐため、王の甥であり忠臣であるトリスタンに護衛されて航海していました。かつてトリスタンは、戦場でイゾルデの婚約者を討ち、そのとき自らも傷を負ったものの、名前を偽りイゾルデに介抱してもらったことがありました。このときイゾルデは、トリスタンが婚約者の仇だとすぐ気が付きましたが、そのときにはすでに恋に落ちていました。
イゾルデは、自分を王の妻とするために先導するトリスタンに対して、激しい憤りを感じています。彼女は一緒に毒薬を飲むことをトリスタンに迫りました。しかし、毒薬の用意をイゾルデに命じられた侍女ブランゲーネが、毒薬のかわりに用意したのは「愛の薬」でした。そのため、船がコーンウォールの港に到着する頃、トリスタンとイゾルデは強烈な愛に陥っていたのでした。
 
【第2幕】
イゾルデがマルケ王に嫁いだ後のこと。マルケ王が狩に出掛けた隙に、トリスタンがイゾルデのもとを訪れ、二人は愛を語り合います。そのとき急にマルケ王は戻ってきました。これはイゾルデに横恋慕していた王の忠臣メロートの策略でした。マルケ王は信頼していたトリスタンの裏切りと妃の裏切りに深く嘆きます。王の問いにトリスタンは言い訳をしようとしません。メロートが斬りかかってきたところを、トリスタンは自ら剣を落とし、その刃に倒れたのでした。
 
【第3幕】
フランス西北部ブルターニュにあるトリスタンの城。トリスタンの従者クルヴェナールは、深手を負ったトリスタンのために、イゾルデを呼びよせました。しかし、イゾルデが駆けつけたその瞬間、彼は息絶えたのでした。
そこへ、全ては愛の薬のせいだと知ったマルケ王がやって来ます。ただそのときには、すでにもうイゾルデの運命は決まっていました。彼女は至上の愛を感じながらトリスタンの後を追ったのでした。



解説(ポイント)

【1】 不倫が生み出した愛の傑作
 
『ローエングリン』を完成させた後、ワーグナーは政治犯として追われ、スイスのチューリヒに逃れました。ワーグナー夫妻に家を提供したのは裕福な商人オットー・ヴェーゼンドンクです。引っ越したのは1857年でしたが、このときすでにワーグナーと妻ミンナとの関係は冷えきったものとなっていました。同じようにヴェーゼンドンク夫人マティルデは夫から気持ちが離れていたこともあり、彼女とワーグナーの距離が近づいていったのは自然の成り行きでした。しかし、それは所詮かなわぬ恋であり、こうしたワーグナーの愛の苦悩が、このオペラ『トリスタンとイゾルデ』に全て注がれました。ワーグナーは、「私の今までの芸術の最高峰となる」と言い、自ら「リヒャルト、お前は悪魔の申し子だ!」と叫んだとさえ言われています。
 
【2】 調性音楽の破壊
 
ワーグナーは『ローエングリン』のことを「ロマン的オペラ」と呼びましたが、その後は「もはや私はオペラを書かない」と宣言しました。オペラを総合芸術としてとらえ直し、音楽、言葉、劇内容などを一層融合させた「楽劇」を目指したのです。『トリスタンとイゾルデ』では、それまでの調性音楽を、半音階進行の多用によって崩壊寸前にまで追いこみ、「無調」の世界へ足を一歩踏み出すことに成功しました。こうした意味で西洋音楽史全体にとっても大きな意味を持つ作品であると言えます。オペラの内容では倫理に挑み、音楽では調性に挑んだのです。
 
【3】 官能的な愛のうねり
 
約4時間にわたる長大なオペラですが、まず試しに前奏曲を聴いてみることをおすすめします。オーケストラのコンサートでも単独で取り上げられる機会の多いこの前奏曲を聴けば、『トリスタンとイゾルデ』の官能的な響きを実感することができるでしょう。示導動機といって、この前奏曲に使われた動機(モティーフ)がオペラ全体の中で何度も出てきます。劇としては動きの少ないオペラですが、オペラ全体でワーグナーが「最高」とした官能的な愛が表現されています。その音楽の、表現の「うねり」の大きさは圧倒的です。



おすすめディスク

【CD】
C.クライバー指揮
ドレスデン国立管弦楽団、ライプツィヒ放送合唱団
コロ(T) M.プライス(S) モル(Bs) ファスベンダー(Ms) ディースカウ(Br)
(録音1982年、Deutsche Grammophon)
 
ワーグナーの芸術を最高の形でC.クライバーが示してくれました。デモーニッシュな勢いのある音楽は、私たちを『トリスタンとイゾルデ』の世界に引きずり込みます。歌手陣も充実。コロの破滅的な歌いぶりが心に響きます。

【CD】
パッパーノ指揮
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団、合唱団
ドミンゴ(T) シュテンメ(S) パーペ(Bs) 藤村実穂子(Ms) ベーア(Br)
(録音2005年、EMI CLASSICS)
 
オペラのスタジオ録音が激減した今、この大型オペラをリリースしただけでも価値があります。ドミンゴのトリスタン挑戦にも好感が持てますし、日本人がこのように世界レベルでキャスティングされているのもうれしいですね。端役で、ボストリッジ(T)やヴィッラゾン(T)の名前もあります。







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