見る度に色移り行く夕雲に誘われ出でし虹の儚き

天高き月は窓から見えねども、無駄にみなぎる午前二時半

丑三つに弱々しく鳴くキリギリス

閉めきった窓の黒にぞ氷雨降る

今日も今日とて、風呂あがり
秋の虫鳴く、雨あがり
まだまだ爛漫、百日紅
胸の痛みは、ちらほらり
静かで確かな、八月のおわり

月冴える夜を覆ひて絶えぬ蝉

からつゆもあけるよまつりゆふまぐれ

忘却の彼方に笑ふあの夏の空に溶けゆく七色の虹

飢えを忘れた狼の 鈍る鼻にも香しき
夜風にひそむ微かな糜爛
時、越えたばかりの なれの果て
時、越えたばかりの 生まれたて

風凍る家路に笑ふ割れた月

朝露の濡れ鈍光る誰がため 知る人ぞなく冬日に溶けゆく

逢へもせず泥呑み澱む夜の河に 渡した糸は闇に張りつめ

夜にまぎれ暇とうそぶき舞う紫煙

曇天の灰色の朝空ひくく 急ぐ人々の足に影なし

花浮かぶ春の便りに喜びて 吹き荒れる風に洗われし我

また来たり花ほころびぬだるき春

霞たちはやて暴るる空の底 風果てる先に遠きあの夏

眠り堕ち風に覚めれば花の春
はやてに揉まれつ我飛べず
翻るスカートにただ目を細めらん

ぬばたまの夜の梅香に酔い痴れて 眠り猫踏み逃げまどふ祥

あさきはるねぼけまなこのわれなくに わらひにげられあひたきひとよ

三月弥生にみぞれ降る 冷気は宵まで残りつも
にび色の曇天に覗くは春らしき 
朧ろ朧ろな霞月 この帰り路の冲天に
赤き惑い星したがへて あな、ふくよかに笑ひなむ
それにつけても
冷たく潤う春の夜に まだ沈まぬか、宵の明星

命儚き薄馬鹿下郎 憚れ夜に命の限り
胃の血吐出し空蝉苦悩 洟垂れ澱み叡知の濁り

東雲の燃ゆる紅待つ紫煙

秋の住処乞うても見えぬ天の川

ヌレモセズコオルヤアンノヤワハダノ シロキヲオモヒトケルマドロミ

夜満ちて命溢れる彼岸花

白雪に隠る泥にも夢残り

朝まだき舞い落ちた白夢残り

やわらかな風の生まれる夜の底  朝に雄々しく南へ巣立つ

胸破れ虚しき想いあてど無く掴む刹那に消える淡雪

潮時の見えぬ盲の船路かな

梨の飛礫空に届かず夜に墜つ

春立ちて月の宵にぞ大欠伸 寒は戻れど風匂いたつ

霞む空に見知らぬ星座瞬きて とぼとぼ歩け月降る家路

あさまだきゆめなくねむるおさなごの たれをかしるやはるのうたごえ

東風吹かば波間に沈む阿呆船

春まだき迷惑メール消す曇天 遠くに聞こゆをんなの嘆き

浅き春寒風笑ふ月無夜

乱れ雲梅の香幽か閉じる天

まちわびぬ狂ほしき春風ひそか

埃たつ大風巻いて春虚ろ

暗虚空仰ぎて裂ける心なく 傲然と北風の嗤ふか

きゅうきゅうと鳴く窓の夜春嵐

東の空に細く輝く月みっけ

忘れ路の路傍に降るや月の雫

我未だ暗愚のままに此処に在り

にび色の霞む夜空にジェット気流 ひとけもあらぬ丑三つの春

ものぐさな紫煙に溶ける春まだき

丑三つや幽かにいたむ春霞

飛べねども転がりゆかんと胸騒ぐ 風の音にぞ声も消えゆく

笑ふべき見せ物鳥の焦がれ鳴く 春の嵐に人も失せ去り

春爛漫ゆくりと開け白辛夷

春宵の空雲敷き詰めて月も星もナシ

風あばれ辛夷千切れし唸る空


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