index <<< VIR.0011 >>>
キム・ジェボクのバックハンドローボレー

 2004アジア選手権ダブルスチャンピオンの金裁福<<KIM Jae-Bok>>のバックハンドローボレー。

 

下は左右逆版

 1〜8、相手の打球動作にあわせて前進をやめスプリットステップ。相手が打つときには止まってスプリットステップ、基本中の基本である。

 5コマめからテイクバックをおこなっていくが、極コンパクト、10コマめには、テイクバックは、完了している。ラケットが視界が消えるととたんにラケットのコントロールが難しくなる、ということはあまりしられていないが、特にボレーでは重要なことである。視界から消えるほどテイクバックしてはいけないということではないが、確実にリスクはあるのだ、と認識することは大事だろう。韓国はローボレーに限らず、ネットプレーにおいては、このコンパクトなテイクバックが徹底されているといっていいだろう。

 その10コマめには右足は地面に完全についており、ここが今回のもっとも重要なポイント。一般的にいわれているローボレーはこの右足が空中にあるときにインパクトすることが推奨されているからである。しかし韓国ではこの右足を着地したローボレーが基本である。メリットは明らかであり、インパクト時に頭が動かないので目線がぶれない。より正確なヒットができるわけである。ローボレーつまりネットより低い打点でのボール処理であるから、精度の高さが絶対的な条件であることはいうまでもないだろう。

右足を着地した状態でローボレーする劉永東。劉永東は正に史上最強のネットプレイヤー。そのダイナミズム、技術の卓抜といった派手さに目を奪われがちになるが、その実、他の誰よりもボールを丁寧にあつかっていることを決して見逃してはならない。もちろんジャンピングボレー、スマッシュといった身体を大きくつかったプレーも次々にくり出してくる。誰も並び得ない真の巨匠だが、だからこそ究極のお手本でもある。
劉永東の対称的な2種のバックボレー。釜山における2002アジア五輪でのプレー。

 ネットプレーの指導というと、下半身を大きく使うこと、またジャンプして処理すること、が20世紀末から強調されてきた(正確には80年代から)。これは80年代以前の教条主義的な指導法への反動であり、その殻を破るという大きな役割を果たした。その功績は大きい。しかし、だ、現状を冷静にみてみると、ミイラとりがミイラに、とでもいうような奇妙な感じになってしまっている。ジャンプする、ということを妄信するようになってしまったのである(下半身を大きくつかう=ジャンプする、という誤解もある)。


 念のためにいっておくが、ジャンプすることがいけない、といっているわけではない。それも重要な技術である。80年代以前はジャンプすることはタブーであった。それがプレーの幅を狭めていたし、非常に窮屈だったのである。そこから解放されたのは素晴らしいことである。しかし、当たり前のことだが、それが全てではないのだ。ところが、なにもかもジャンプ、なんて風潮があるのである。ぴょんぴょんぴょんぴょん、まるでうさぎよろしくジャンプをくりかえすプレイヤーがネット付近に多量に出没している。そして当然すぎるぐらい当然だがプレーはおそろしく雑である。でもこれが基本なんです、なんでも飛んじゃえば間違いないんですぅ、という風潮が、くり返すが、確かにあるのである。ドグマに陥ったというしかないではないか。

 閑話休題、インパクト(16〜18)ではラケットヘッドを落とし、なおかつ、下から上につかっている。このようなラケットワークが安定したスピンを生み出す。意外に、上級者でも、このトップスピンドライブの基本である、ヘッドを落とすということがわかっていない人がいたりする。

 ちなみに、これはゲーム中のもの。金自身のカットサーブ後ネットダッシュ、相手リターンをボレーしたというところである。いわゆるサーブアンドボレー。ペアの朴昌石--パク・チャンソク--はすでに前線にポジションをとっており、つまり、ダブルフォワードの戦術を採っている。

 彼のカットは非常に質の高いもので、クレーコートでも充分に効果を上げており、相手からのリターンはそれほど厳しくはないので、このボレーも打点こそ低いものの、パンチの効いた打球になっており、守備一辺倒ものではない。ダブルフォワードということでもう少し話しをすすめると、金裁福はこのボレーをおこなった座標ぐらいが定位置で、この辺を中心に状況をみて、前後左右に、ポジションをかえていくことになる。ネットにべったり接近することはまずない。ペアの朴昌石のポジションは彼よりもやや前である。

 念のためにいっておくが、ダブルフォワードは、単純なネット平行陣ではない。ネット平行陣あり、ネット雁行陣あり、あるいは純粋な雁行陣あり、とフレキシブルに変化していく。
 2003年の世界選手権以降、戦術的に、特に男子のトップクラスで、激変があった。それは非常に攻撃的なスタイルへの当然のような移行であったのだが、それをナマで見た人はまだほとんどいないという現状がある。その一部だけがわい曲され伝えらえれている節がある。単純なネット平行陣をひたすらにおこなっているかのように誤認されているようなのだ。注意する必要がある。 (by TOSHI)

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10
11 12 13 14 15
16 17 18 19 20
21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
31 32 33 34 35
       
36