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玉泉春美のフォアハンド  
 
玉泉のフォアハンドグリップ。典型的なセミウエスタンフォアハンド。現在の女子においてもっとも薄いグリップを選択している一人。御覧のとおり手のひらが打球面のほぼ裏側にまわりこんでいる。ウエスタンより人さし指の支えが強い。

 2005東アジア五輪で三冠を獲得した玉泉春美(日本 東芝姫路)のフォアハンド。

 ゲーム中(2004アジア選手権)のものであり、右ストレートからクロスへのパスである。相手(韓国 金智恩)からのロビングを思いきって振り切ったもの。相手前衛(李副順)の側を突破しようという攻撃的なボールであり、彼女もすぐにフォローの態勢に入っている(41〜)。

 34コマからほぼ地面と平行のフラットスイングで、超低空飛行をとるボールが想像される。フォロースルーも低い位置にとられ、ラケット軌道が上向きになっていない。超攻撃球を意識している。それは決して頭で考えたものではなくて、いいボールを追求した結果、自然とそうなった、というような凄みがある。洗練されない荒っぽさが根源的な迫力として迫ってくるようだ。

 テイクバックはホリゾンタルでもサーキュラーでもない。ソフトテニス独特の、下げたラケットを上げていく、という古典的なスイングとホリゾンタルの中間、とでもいうべきもの。ラケットが下がりすぎることはなく、まずコンパクトにまとめられているといえよう。

 軸足の決定は23。しかし肩のターンは30まで、そこでは右膝の曲がりが最大になり、上体の捻りとともに下半身のパワーがためられる。

 26でボールを指すようにもっとも高くあげられた左手は、27からはフォワードスイングの先導をはじめるが、まだ上体そのものは回転をはじめておらず、そのせめぎが、31コマめの全身からパワーのみなぎるような張りを演出している。ここは実に素晴らしい。

 しかし、なんといっても素晴らしいのは全体からつたわってくる信じられないようなリラクゼーションだ。これは静止画では伝わりにくいので動画をよく見てほしい。これはゲーム中しかも緊迫したラリー中のものなのだ、というのがにわかに信じられなくならないか?。まるで練習しているかのようなリズミカルなステップ、そして軽やかさである。恐るべき強さの秘密はこの一点にあるといっても過言ではない。

ラリーをできるだけ正確にトレースしてみよう。ゲームカウント3-1で玉泉・上嶋がリードした第5ゲームの二本目、サーバーは玉泉。よく切れたカットはバウンド後、レシーバー(李福順)からみて左に低く大きくスライド、李これをのけぞるようにリターン。大きくあいたセンターを玉泉がまっぷたつにするような深いシュート。金智恩がバックでミドルに深いロビング。対し、玉泉はクロスに低くて速い中ロブ。金智恩はやっと追い付きクロスにロブ。玉泉はストレートへのこれもまた速いロブ。金智恩の返球はミドル寄りのストレートへのロブ。玉泉それをクロスへのシュート(これがその動画)。しかし李は、うまくストレートに深いボレー。フォローに前に走っていた玉泉の逆をついたかたち。玉泉、バックでやっと逆クロス返球するものの李の見事なスマッシュで決。余談だがこのスマッシュはさすがヨンドン仕込みと思わされる素晴らしさだった。
2004アジア選手権(チェンマイ)個人戦ダブルスでの玉泉。国別対抗とダブルスに優勝。ミックスダブルスでは金智恩・金煕洙(韓国)敗れた。
2005マカオ東アジア五輪で。国別対抗、ダブルス、シングルスの全種目に優勝。現在までに獲得した国際タイトル数は団体、個人あわせて5。国際大会には5年連続で5回出場。

 2002年のアジア五輪予選会で圧倒的な優勝を飾って以来の彼女の勝ちっぷりの凄さは見事というしかないが、驚くべきはそのテニスの質である。少しも迫力を減じていないのである。
 過去にも勝ちまくった選手はたくさんいたが、若い頃は打ちまくっていても、キャリアの後半にかけて、カドがとれていった。ほぼ例外なく、である。 それは必然なのだ、それが円熟なのだ、と思ってきた。
 でもこの玉泉は違う。
 もともとロブもうまいし、足もある。タッチがよく、柔らかみも当代一である、テニスが「逃げ」にはいる危険性?は充分にあったとおもうのである。しかし、そうはならなかった。迫力をそのままに深みを増した。天才の至芸である。

 残念なことに、彼女は今期での引退を明言しているが、玉泉は玉泉のまま、その偉大なキャリアをまっとうすることは疑いがない。(by TOSHI)

 
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