第五十九夜

 前々回において、「マイナーロボット大戦」も無事終了しました。次は何のネタでいこうかと考えておりましたが、 似たような路線でいってみようと「特撮作品列伝」と銘打って新企画を立ち上げてみました。
 ここでは、主に1970年代〜1980年代あたりまでをメインとして、比較的マイナーな特撮作品をテレビ番組、映画の別なく 取り上げてみたいと思います。なお、本企画においては共通して以下の書籍を参考資料として使用していることを明記しておきます。
 「全怪獣怪人大百科 54年度版」 (ケイブンシャ)
 「全怪獣怪人大事典」上・中・下巻 (英知出版)
 「怪獣王」 (ぶんか社)



「愛の戦士 レインボーマン」
 1972年10月6日〜1973年9月28日
 全52回 NET系列放送
 原作:川内康範  製作:東宝

 さてさて、「特撮作品列伝」第1回目では、”インドの山奥でっ♪”という主題歌が印象的な「愛の戦士 レインボーマン」 (以下、「レインボーマン」)を紹介してみようかと思います。
 上でマイナーな作品を取り上げると書いておきながら、「レインボーマン」のどこがマイナーやねんと怒る人もいらっしゃる ことでしょう。たしかに御説ごもっとも。実際、「レインボーマン」は視聴率20%台をたたき出した人気番組でした。現在でも 「レインボーマン」の名前をご存じの方は大勢いらっしゃると思います。
 ですが、それは”死ね死ね団”のテーマだけが突出して知られているだけで、どんな作品なのかと問われて答えられる人は 案外と少ないのではないでしょうか? それにそもそも30年以上前に放送された作品であるわけですから、実際に目にしたことが 無い方も多いでしょう。そういった理由から、今回取り上げてみた次第です。


 さて、いきなりですが、「レインボーマン」は実に奇妙な作品です。
 「レインボーマン」の内容を一言で表すなら”変身ヒーローが悪と戦う番組”であり、1972年という放送年から見ても、 「仮面ライダー」(1971年放送開始)の生み出した等身大変身ヒーローのブームに乗って企画されたということは明らかです。 しかしながら、まさにワンオブゼムとでも言うべき独自性を持っており、それゆえに今なお一種カルト的に人々の俎上に上る 作品となっているのです。

 では、その「レインボーマン」の独自性とは何なのか?
 まずこの作品は、物語の導入部からして非常に奇妙な内容となっています。一般的な特撮ヒーロー番組であれば、地球や 日本を侵略しようとする悪の軍団を倒すため、だれそれ博士やら防衛組織やらの指導の元に正義のヒーローが誕生する…となる のが一般的だと思います。
 ところが「レインボーマン」は、そういったパターンから大きく逸脱しているのです。以下、物語の導入部をかいつまんで紹介 してみましょう。


 主人公ヤマトタケシは、足の不自由な妹の治療費を稼ぐためにプロレスの世界チャンプを目指し、 修行の一環としてインドの山奥に住むという聖者ダイバ・ダッタに弟子入りします。1年後、 レインボーマンとなって人外の力を手にしたタケシでしたが、厳しい修行によって金欲が失せており、あっさりとプロレスの道を 捨ててしまいます。 (ここまでで2話経過)

 修行を終え、意気揚揚と日本に帰ってきたタケシ。ところが、かつて世話になったレスリングジムのオーナーが諸々の事情で 多額の借金を背負い込んでいました。止むなく賭博レスリングに出場することとなったタケシは単身マカオへ旅立ち、そこで 日本人の抹殺を計画する”死ね死ね団”の存在を知ることとなるのでした。こうして、 レインボーマン(=タケシ)と”死ね死ね団”の戦いが幕を開けるのでした…。 (ここまでで、さらに2話経過)


 まず目立つポイントは、ヒーローの誕生劇に科学ではなく 東洋思想を取り入れて おり、しかも 厳しい修行によって獲得した能力として描かれていること。「レインボーマン」の放送年から考えればニューエイジ思想の影響を 受けてのものと考えられなくもありませんが、むしろ原作者・川内康範氏のアジア趣味的な部分によるものだと思われます(かつて 川内氏が「月光仮面」の原作を担当したことから考えても)。

 もう一つ特筆すべきことは、肝心の悪の組織が登場するまで4話も使っていることでしょう。これは、本作が(特撮番組としては 珍しく) 1話完結方式ではなく1クール単位で物語を構築 していくという方式を取っているため であり、そのおかげで他作品に比べて物語を丁寧に描くことに成功しているのです。



 この他にも幾つかの特徴がありますので、それを書き出してみましょう。

 (1) レインボーマンはレインボーという名の通り7種類の姿に変身できるという設定になっていること。状況 に応じて特殊能力を使い分ける ために変身するという設定は、他に類を見ない実にユニークなものです。

 (2) 苦悩する主人公。”死ね死ね団”の狡猾さの前に挫折感を味わい、また周りの人間を戦いに巻き込んでしまうこと に苦しむという描かれ方がされていること。それは1クール目のED主題歌にも色濃く現れていると思いますので、その歌詞を以下に 引用してみます(ちなみに、歌い手の安永憲自とは、現在は声優として有名な水島裕氏です)。とても子供向け番組の主題歌と 思えない歌詞に度肝を抜かれることでしょう。

「ヤマトタケシの歌」
 どうせこの世に生まれたからにゃ お金もほしいさ 名もほしい
 自分の幸せ守りたい 僕だって人間だ 僕だって若いんだ
 けれどもその夢捨てさせる この世の悪が捨てさせる

 肩に背負った十字架の 使命の重さに耐えかねて
 たまには泣ける時もある 僕だって人間だ 僕だって若いんだ
 恋もしたいさ遊びたい わかってほしい この気持ち


 (3) 最大の特徴だと思われるのが、社会的な事柄を盛り込んだ内容であること。他の川内康範作品にも共通することですが、 本作でも”死ね死ね団”がインフレ現象を利用して日本を経済的に崩壊させようとする姿が描かれており、まるで子供向け とは思えないハードな脚本となっています。
 また悪役の”死ね死ね団”にしても、日本人を抹殺しようとする理由が(作中では細かく語られませんが)”太平洋戦争に よって被害を受けたことに対する復讐”という、現在では表現が難しい設定となっており、この点だけでも強烈な独自性を 感じることができます。



 このように独自のテイストが炸裂している「レインボーマン」は、それゆえ絶大な人気を獲得し、4クール全52話の放送を 実現しました。さらには現在でも一部で熱心なファンが存在しており、2001年にはDVD化されるまでに至っているのです。

 さて、ここからは放送された全52話の中から、特に印象的なエピソードを紹介していこうと思います。と、その前に レインボーマン自身の解説をば。


これがレインボーマンだ!
ヤマトタケシ
 本作の主人公。別名、下町の黒豹。ダイバ・ダッタとの修行の末、「アノクタラサンミャクサンボダイ…」と 唱えることでレインボーマンに変身することができるようになった。
レインボー・ダッシュ7
 太陽の化身。レインボーマンの基本形で、赤と白を基調とした日本的なカラーリングが印象的。 どことなく月光仮面に近いデザインとなっているが、その実、原作者の川内康範氏は月光仮面の原作者でもある。
レインボー・ダッシュ1
 月の化身。ヨガの体術を極めており、全身の関節を外して狭い場所でも自由に行き来できる”蛇変化の術”を使う。 なぜか雷を呼び寄せることが可能。
レインボー・ダッシュ2
 火の化身。その名の通り自由に炎を操る”火炎の術”を使用する。出番は多いが、肝心の火炎の通じないことが多く、 あまり役に立たないという情けない存在。
レインボー・ダッシュ3
 水の化身。水中を自由に行動できる。指先から水流を噴出する”水冷砲の術”を使うシーンばかり目立つので、ほとんど 沈火作業用という印象しかない。
レインボー・ダッシュ4
 草木の化身。幻惑系の技が多いが、反響音で相手の鼓膜を破壊する”木霊叩き”、鋭い松葉を突き刺す”松葉手裏剣”など、 妙に攻撃的な術も使う。
レインボー・ダッシュ5
 黄金の化身。金色の外見からか、”レインボーフラッシュ”のような光線、電撃系の攻撃技を使う。 また飛行技術に優れているらしく、主に空中戦を担当(ダッシュ7も飛べるのだが…)。
レインボー・ダッシュ6
 土の化身。地中に潜る”疾風土煙火の術”を多用することから緊急回避用というイメージがあるものの、 地面をかち割る”地雷震の術”など攻撃的な面も。
ヨガの眠り
 レインボーマンは力を使い果たすと、それを回復するため強制的に5時間もの眠りに陥ってしまう。 一切の行動が取れなくなるので、レインボーマンにとって最も危険な時間となる。
レインボー合体の術
 別名レインボークロス。ダッシュ7以外の化身を2体選んで合体させることにより、個々の化身の能力を何倍にも 高める技。このとき、レインボーマンの姿はダッシュ7のままで額のサンランプが合体させた化身の色に変わる。


 それでは「レインボーマン」必見エピソードのご紹介。
 と書いてみたものの、先述したように「レインボーマン」は1話完結ではなく1クール単位で物語を構築するという手法を とっていますので、1話だけ抜き出したのでは分かりづらいかもしれません。対策として冒頭に簡単な話の流れを付け足して みましたが、やや説明不足に陥っている点はご了承下さい。



第9話 「タケシを狂わせろ!」

 日本は”死ね死ね団”と呼ばれる秘密組織に狙われている。彼らは、人間の精神を崩壊させ、やがては死へと追いやる 恐怖の麻薬”キャッツアイ”を使って日本人を抹殺しようと計画しているのだった。
 ヤマトタケシは喫茶店で偶然出会った先輩の堀田にその事実を話すが、あまりに荒唐無稽な話ゆえに信じてはもらえない。 堀田の知人である北村刑事も、証拠が無くては警察が動くわけにはいかないと語る。その言葉を聞いて、タケシは証拠を 探さなければならないと焦るのだった。

 喫茶店を出てしばらく後、タケシの体に異変が起こり始めた。実は、先ほどの喫茶店に”死ね死ね団”のメンバーが潜入 しており、タケシは知らないうちに”キャッツアイ”入りのジュースを飲まされていたのだった。
 覚束ない足取りでタケシは道行く女性に襲い掛かり、やがてはビルの屋上で「魚が見えるぞ。メザシだ、タコもいるぞ!」 などと意味不明の言葉をわめき散らす有り様となってしまう。

女性を襲うタケシ

 その姿を見た堀田先輩はタケシの身を案じ、彼を 精神病院へと連れて行く のだった。
 ところが、その動きを察知した”死ね死ね団”は病院へと先回りし、巧妙に裏工作を仕掛けるのであった。彼らは担当医を 大金で買収すると、タケシの脳に電気ショックを与えて完全に精神崩壊へと陥れるように命じる。ベッドに縛り付けられ、 電気ショックを受けるタケシは、一体どうなってしまうのか!?

脳に電気ショック!


 …ということで、第1期目「キャッツアイ作戦編」からは主人公を狂わせてしまうという凄まじいエピソードを 選んでみました。カルト作品として知られている「サンダーマスク」でも似たようなエピソードがありましたが、 共に現在では公共の電波に乗せて放送するのは難しい内容かもしれません。
 この回で特筆すべきは、やはり主人公ヤマトタケシ演じる水谷邦久氏の演技でしょう。「カッコーの巣の下で」もかくや、 と書くと大げさかもしれませんが、とにかく見るものを引き込む熱演を見せてくれます。
 ちなみに、電気ショックを受けたタケシはどうなるのか? 第10話「やつらを殺せ!」において精神攻撃は苛烈さを増し、 なんと、ヤマトタケシは完全に精神崩壊を起こしてしまうのです。その後の展開については、これから本編をご覧になる方 のために伏せておこうと思います。




 文章が長くなりすぎてしまいましたので、今回は以上で終了。必見エピソードの続きは、次回 掲載いたします。


参考資料:「レインボーマン ダイヤモンド・アイ コンドールマン大全」 (双葉社)



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