3.ロックヴァイオリン


 さて次はロックヴァイオリンですが、ロックヴァイオリンが初登場したのは60年代後半です。60年代後半、折りからのサイケデリックムーブメントなどもあり、ロックの世界では、それまでのシンプルなロックンロールから様々な要素を取り入れた新しいロックを作ろうという動きが起きました。具体的にはブルースやジャズの要素を取り入れたクリーム、レッドツェッペリンなどのハードロック、クラシックやジャズ、民族音楽などの多様な要素を取り入れたキングクリムゾン、イエスなどのプログレッシブロックの登場です。特にプログレッシブロックは、クラシックやジャズなどを導入してなんでもありの多様な音楽を生み出していきました。そういった状況下でロックにヴァイオリンを導入しようという人たちも当然のように登場してきたわけです。ところが現実問題としてロックにヴァイオリンを導入するに当たっては様々な問題点がありました。まずボーカルをメインとするロックにおいては単音しか弾けないヴァイオリンではバッキングが困難であること、ヴァイオリンの柔らかい音色はロックの鋭角的な音には向いていないことです。そのためロックにおけるヴァイオリン奏者は、バッキングができる他の楽器(多くの場合キーボードなど)との兼務をしなければならないという結果となりました。ヴァイオリンだけではなかなかロック出来なかったのです。またそれとは別に多くの場合クラシック出身であるヴァイオリンニストはアドリブの訓練が出来ておらず、このこともロックヴァイオリンニストの敷居を高くしました。
 つまるところ、ロックにおいてヴァイオリンニストたるには個人の技量が大きくものを言うということになります。そのためジャズ同様、もしくはそれ以上にロックにおいてのヴァイオリンは一つのジャンルを作るものにはなりえませんでした。多くの場合、ロックにクラシカルな味付けを施すか、サイケデリックな色付けを施す程度の役割しか果たせなかったのです。しかしとはいうものの、様々な人間の創意工夫により、それぞれに魅力的な音楽が創造されていったのもまた事実です。
 というわけで70年代のロックバイオリンを各国ごとに見ると、イギリスではクラシック出身と思われるヴァイオリンニストが多いのですが、ストレートなブリティッシュロックにヴァイオリンを導入するのに苦労している感が強い。木に竹を継ぎ足しているイメージが強いわけです。Curved Airなどに在籍したDarryl Wayがプログレファンの間で有名ですが、正直あまり成功しているとは言えません。唯一見事に成功しているのがUKにおけるEddie JobsonのPLAYですが、彼のメイン楽器はキーボードでした。最近ではSolsticeというバンドがヴァイオリンを生かしたロックバンドとして活動しています。
 一方、フランスでは、ジャズヴァイオリンニストが参加していることが多いこと、彼らが参加するバンドもジャズロック的な側面が強いこともあってりよりスムーズな印象が強いです。Didier LockwoodやDavid Roseなどがその代表例です。ただ逆に言うと正当なロックバンドでヴァイオリンが参加している例は少ないとも言えます。イタリアなどのラテン系の国もロック自体がクラシカルな要素を導入しているものが多いため、それなりにスムーズに導入できています。代表はPFMのMauro Paganiです。アメリカにおいては、ヴァイオリンというよりもブルースやブルーグラス系のフィドルが導入されているケースが多いのでアメリカンロックとの親和性が元々高く、バンドこそあまり多くはないものの、それぞれの音楽性を作り上げているのではないでしょうか。体表はIt's a beautiful day、Flock Kansasなどです。
 80年代以降も、ヴァイオリンをそれぞれのロックのジャンルに導入するミュージシャンはいますが大きな流れにはなっていません。ただ単発としてはDavid Ragsdale、Mark Wood、Lili Hydenなどが登場、それぞれに独自のヴァイオリンロックを追求しています。また逆にクラシックからロックミュージックへの進出としてはNigeal KennedyやVanessa Maeらが高度な演奏力をバックボーンに独自の活動をしています。

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