☆医療問題を注視しる!その5 医療報道前編


 「時は西暦199×年、人類は電子の網に絡め取られた・・・。

 「・・・何が始まったんだ?」

 「いいから黙って聞きなさい。
この時、古きモノどもは死にゆく運命を決定付けられたはずであった。しかし彼らは網を陳腐化し、網を飲み込もうとして抗い、ついに異形に変態して不気味に生き残った。」

 「ああ、よーするにインターネットとマスコミのことですね。」

 「げ、何なのもうばれちゃったのー?」

 「わかりやすすぎですよ。」

 「とすると199×年の出来事ってのは、さしずめ1995年の「Windows95」発売ってとこか?」

 「あれは衝撃的だったわねー。」

 「うむ・・・何に驚いたって、ドラクエの新作でもない単なるパソコンのOSの発売に行列ができ、テレビでも大きく取り上げられたのが本当に不思議だった。当時は何かのやらせとしか思えなかったからな。」

 「え、そっち!?」

 「だって今でこそパソコンはインターネット用のマシンとして一家に一台あってもまるで珍しくないが、95年ごろなんてまだまだパソコン自体がマニアックな代物でしかなかったからな。パソコンが家にあって、ただそれだけでオタク呼ばわりされたんだぞ。」

 「確かにウィンドウズ95や98が発売されて、インターネットが爆発的に発展したおかげで、パソコンそのものに対する見方が全く変わりましたよね。」

 「ネットも今とは全然雰囲気違ったなぁ。そもそもそれ以前のパソコン通信なんか、本当にごく一部のマニアだけの遊びだったからな。女性の参加者もまるでいなくて、女性名を見たらまずネットオカマと思えば間違いないほどだったし。」

 「まあ今は、一般的には、インターネットに繋がらないパソコンなんてものが想像もできない感じではあるわね。」

 「ネット以外には写真と音楽データの集積場になってるパソコンが大部分かもな。
それと昔は、今よりも全然気軽にメールアドレスをさらしてたなぁ。気になる人にはいきなりメールを送ってみたりして、それで知り合った友達とは未だに交流があったりするしな。今ではフリーメールといえど軽々しく公開できん。」

 「・・・いつまでそんな古い話続けるニカ?」

 「おおっといかん。今回取り上げるネタは、ネットの発展のせいで肩身が狭くなるはずだったマスコミについてだ。個人的には、医療崩壊にもっとも大きな役割を担ったのがマスコミだと思っている。」

 「前回までにやった司法とか、医療の総元締めの政府や厚生労働省のほうじゃなくて?」

 「もちろん違う考えの人もいるだろうしあくまで個人的な考えだが、つまり流れとして
マスコミが扇動 → 国民の意識が医師・病院軽視(敵視)に → 政府が民意を汲んで暴走
の順番じゃないかと思うんだ。タマゴが先かニワトリが先かという話ではあるが、俺はマスコミが先だと思う。」

 「ふうん。まっマスコミに問題が多々あるのはわかるわ〜。他のコンテンツでもいっぱい取り上げられてるしね♪

 「なんだか、マスコミのことをやりだすと変なテンションになるようだな。」

 「マスコミ批判は世界史コンテンツのメインディッシュよ。」

 「・・・それにしても、更新をだらだらサボっていた間に、トンデモない事件がおきたよなぁ。」

 「毎日新聞の変態記事問題ね。」

 「朝日新聞の法相死神呼ばわりも酷いぜ。いや、変な記者がちょっと変なことを言ってる程度じゃ放っとくんだが、これはさすがに紹介くらいしないと変だろうなぁ。もっとも、ネット見る人なら結構知れ渡ってるんだろうけど。」

 「ウェーハッハ〜日本のマスコミは狂ってますねホルホルホル。」

 「・・・ってリューシーなら言うだろうけど、全く反論できない・・・。」

 「それにしてもこんなののおかげで、いくら毎日新聞が酷い医療記事を書いてることを取り上げても「所詮毎日だろ」ってなっちゃうじゃねえか。このコンテンツの存在意義はどうしてくれるんだ?」

 「そんな偉そうな事言うようなコンテンツじゃないでしょ。」

 「はあ・・・まあ、無かったことにして本題を進めるか。
テレビや新聞などは良くも悪くも影響力がすさまじい。第4の権力といわれるくらいな上に、他の3権と違って他所から批判を受けることがほとんど無い。最近はネットが発達してきたおかげで影響力の低下やマスコミ批判が増えてきたとはいえ、まだまだその力は絶大なものがある。」

 「今でも、ネットよりもテレビに出てくる有名人の方が信用できるという人は多いですね。医師の言うことよりもみのもんたの情報の方を真に受けて薬を中断したりとか・・・」

 「だが実際には、バラエティ番組なんかは当然だがニュースでも不正確な情報が流されることはよくある・・・だいたい、これまでこのコンテンツで紹介した新聞記事がそうだ。
例えば福島事件では、」

 「前回紹介した加古川心筋梗塞事件だと、」


 「ま、これらはその3その4で出した記事そのままだけど。」

 「内容は勝手な予断が多く、本当の問題点というか核心の部分についてまるでわからない記事になっていますね。」

 「もっともちゃんと説明しようとするとこのコンテンツのように相当長くなるだろうから、新聞の紙面でやれってのも難しい話かもしれないが。」

 「これが長くなるのは単なる作者の力量不足でしょ。」

 「・・・まあ、こんな新聞記事はまだましな方で、テレビになるともっと酷くなる。福島事件の時なんて逮捕前に警察からの情報がマスコミに流れたらしくて、加藤医師が手錠をかけられて逮捕される姿が全国に流れた。どこからどう見ても重罪を犯した犯罪者にしか見えないような報道だったが、実際にはどんな事情があったかはその3でやったとおりだ。」

 「何でこんな報道になっちゃうのかしらね?」

 「それは・・・」

 「なんて、私もいつまでもバカじゃないわよ。マスコミの人は専門家じゃないけど、医師は医療について専門家でしょ。分析の正確さが違って当然だわ。」

 「だったら、医師のところに取材に行って記事を作ればいいだけじゃねえか。

 「あらっ?」

 「まあ専門家じゃないからっていうのは、結論としてはそうなるのかもしれませんけどね。」

 「そもそも専門家とそうでない人の区別ってのは何なんだ?

 「えー、そりゃその分野の最新の情報を知ってるとか、すごく難しいことができるとか?」

 「それは専門家の十分条件かもしれないが、必要条件とは言えない気がするな。
個人的な考えだが、専門家って言うのは、その分野でのごく基本的な事柄を実感のレベルで知っている人のことだと思う。」

 「またややこしいですね。そんな言い方では、わかっている人でもわからないかと。」

 「例えばだが、アボガドロ数が6.02×10^23ってのは知識としては誰でも知っている。だが科学者は、その数字が実際のところどれだけ大きいかを実感として知っている。」

 「あぼがどろ・・・知らない・・・。」

 「えーと・・・ルクスは考古学者って言う設定だったよな。」

 「美少女考古学者ね。」

 「(うう、突っ込みたくて仕方ない)・・・じゃあ聞くが、放射性炭素年代測定ってのはどういうもんなんだ?」

 「ああ、生物の死骸の炭素にごく微量だけ含まれてる炭素14の崩壊率から、その試料の年代を調べる方法でしょ。炭素14の半減期はだいたい5730年だから、それを利用するのよね。」

 「へぇ〜そうなのか。ところで遺跡の発掘って何であんな、何年も何年も時間がかかるんだ?あんなもん重機で掘り進んで、試料が見つかったらエアか水流で土を吹き飛ばしてきれいにすれば、1週間くらいで調査も終わりそうじゃないか。」

 「な、何言ってんのよ!発掘調査は丁寧に丁寧に掘り進んで、慎重にやらないと重要な発見を見逃したり壊しちゃったりするんだから、時間かかるのよ!そんな言うほど簡単なもんじゃないわよ。」

 「そう、そういうことだよ。」

 「は??」

 「「丁寧に」と言ってもどれほど丁寧になのか、部外者はわからないわけだよ。「丁寧」と聞いて、どれくらいの丁寧さを想像するかはその人によって違う。そこで、考古学者にとって必要な「丁寧さの度合い」を実感している人のことを考古学者というのだろう。と思う。」

 「やっぱりあんたの話はまわりくどいわ。」

 「ほっとけ。それに、実は専門的で難しいことこそ逆に説明しやすい。放射性炭素年代測定のことは説明できても、単純な質問の方は答えにくかっただろう。」

 「言われてみればそうね。」

 「単純な言葉のニュアンスの違いこそ、実は決定的に重要なんだ。そしてマスコミってやつはしばしば、この微妙なニュアンスに極めて無頓着だ。だから正確な報道にならないんだ。」

 「外国語の翻訳を考えてみるといいかもしれません。同じ言葉を訳すとしても、前後の話の流れから、どの日本語を当てはめればいいのかは変わりますよね?翻訳は、その言葉の背景に何があるのかを知らないとできないんです。ですから、パソコンの翻訳ソフトなんかはどれだけ改良しても完璧には程遠いのです。」

 「ああ、そっちの方がわかりやすいわ〜。誰かさんの話とは大違い・・・くくっ。」

 「つまりだ、先に挙げた新聞記事なんかは、ネットの翻訳ページでベタ訳したような出来のもので、おかげで嘘は書いてなくても内容の無い報道になっちゃってるんだ。」

 「私の話に乗っかりましたね。負けを認めるのですね。」

 「・・・大事の前の小事だ。」

 「他人の言葉をちまちま盗みつつ、将来は大泥棒になるってことね。」

 「違う!」

 「もっとも最近になって、結構ちゃんと取材をして記事にするメディアもいくつか出てきたようです。例えばキャリアブレインニュースは特に力が入っていて、医師たちの間での評判も高いですね。」

 「といっても酷い報道もまだまだいくらでもある。」

 「テレビのほうが酷いんだっけ?」

 「両者を比べればテレビのほうが酷いと思うが、テレビの映像はソースを示しにくいから紹介しにくいんだよな。まあ、どのように叩いてたかを示さなくてもいいなら、「医師や病院を不当に叩いたバラエティ番組は過去に山ほどあった」といえるんだが。」

 「それだけを言っても説得力がありませんね。」

 「最近の代表例は、2006年にフジテレビでやった「カスペ! 今、日本がおかしい!現役ドクター大告発!」あたりかな。」

 「2年前の番組だけど、リンク先はまだ生きてるわね。これだけ読んでもよくわからないけど。」

 「そりゃそうだな。もっともわかる人には、これだけでもどんな内容か空気は読み取れるんだが。」

 「当時、この放送を見た全国の医師は激怒しました。各地から非難の声が沸きあがり、数々のブログで話題になって「あまりの酷さで最後まで見ていることが出来なかった」「見ていて悲しくて涙が出た」などの意見を確認することができます。」

 「どんな内容だったか、興味が湧くわね。」

 「一応、2chのまとめスレッドがあるようだぞ。」

 「それと一部だが、医師の春野ことり先生のブログ「天国へのビザ」に、放送内容を批判する内容のエントリがある。」

 「この番組については番組本体への抗議ももちろんだが、スポンサーになった医薬品会社へのクレームや不買運動にも繋がったらしく、大きな騒ぎになった。」


 「まあしょせんバラエティ番組なんて、信じる方がおかしいんだよ〜くらいの心意気で作られてるものらしいけどね。」

 「それでも信じる人が多いから困るんだろう。とにかくマスコミというやつは長年の間、医師や病院を目の敵にしたような報道を繰り返してきた。おかげで世間的に病院や医師といえば「金儲けばかり考えている」「医療ミスがあっても組織ぐるみでひた隠しにして認めようとしない」「尊大で傲慢で、怠けてばっかりでろくに仕事をしない」などのようなイメージが浸透してしまった。」

 「・・・正直、そんなイメージが全く無いかといえば、嘘になるんだけど・・・。」

 「まあそんな報道ばっかりでしたからね。」

 「個人的には、そんな酷い医師に当たった記憶も無いんだけどね。けど病院なんてすごくたまにしか行かないし。」

 「テレビなんか超強力な洗脳機械だよ。正直俺だって、もしネットが普及してなくて医療ブログを読めてなかったら、まず間違いなく医療問題になんか気づいてないだろうし。」

 「なんでマスコミはこんなに病院を目の敵にするのかしらね?」

 「さぁなぁ、マスコミのほうに聞いてくれとしかいえないが・・・まあ想像でいいなら、病院はマスコミのスポンサーにならないからじゃないか?」

 「それとまったく逆に、最先端の治療法やものすごい腕前を持つ「神の手」医師のことを伝えるドキュメンタリーなんてのもありますよね。あれはあれで問題があると思いますよ。」

 「えっ、そうなの?あれはむしろ医療を褒めてるんじゃないの?」

 「褒めすぎなんです・・・。つまりあれをみてたら、どんな難病でも治りそうな気がするじゃないですか。実際、放送では成功例しか取り上げないから、どんな患者さんも治ってるように見えますし。」

 「テレビでは珍しいことや特殊なことを取り上げないと番組にならないしな。治すのがものすごく難しい病気を治した!っていう例は番組にはなりやすいが、当たり前のことだが治すのが難しい病気は治りにくいんだ。」

 「編集の魔力ね。」

 「それと最先端医療というのが曲者で、実際には日本でもほんのいくつかの病院でしかやっていないようなことでも全国放送しちゃうでしょう。ましてやアメリカで研究中の方法なんかで、日本では全然出来ないこともあります。そんなのを見て地元の病院で「こないだテレビで見た方法で治してくれ」といわれても困りますね。」

 「そうか〜そんな放送のせいで、医療に対する期待値をガンガン上げちゃってるのね。」

 「もし最先端の粋みたいなのが出来る病院に行ったとしても、保険適応がまだない治療だったらすごいお金がかかるんだが、そういうことも紹介しないしな・・・。」

 「前回までにやった医療訴訟の場で、死そのものが受け入れられない感情は、マスコミ報道によるところが非常に大きいと思うのです。」

 「それと医療の質が上がって、病院で死ぬことが本当に少なくなってきた点も働いているだろうな。このあたりは皮肉なことになってしまっているが。」

 「日本人の健康寿命は世界トップだって、その1でやったものね。」

 「たとえば崩壊中の産科ですけど、日本の妊産婦の死亡は分娩10万件あたり4〜7人で、世界平均の10万件あたり約400人と比べて遥かに優れた、世界最高レベルの数字です。」

 「へぇ〜、それはすごいわね。」

 「しかし実際の医療現場では、分娩の際に母体が生命の危険に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上いることがわかっています。」

 「えっ、てことは・・・。」

 「日本の産科医療の優秀さと大変な努力のおかげで、妊産婦死亡が70分の1に押さえ込めているということです。


 「まあ、妊産婦死亡の世界平均と、日本で重篤な状態に陥った妊婦の数がほとんど同じ割合になったのは単なる偶然だと思うがな・・・世界平均と言っても、国によって全然条件が違うだろうし。」

 「妊産婦の死亡が少なくなったこと自体は素晴らしいことなんですけどねぇ。」

 「人がなかなか死ななくなったことで、死をリアルに感じられなくなったのかしらね。で、拒否反応が出ちゃうと・・・確かに皮肉ね。」

 「とにかくほかの分野でも同じですが、テレビでは普通の人が普通に頑張っているところなど決して取り上げません。が、どこであってもその業界がもってるのは9割以上の普通の人たちのおかげなんです。しかしテレビだけ見てると、医師にはまるでヤブか神の手の2種類しかいないような気がしてしまう。」

 「そして、そんな頑張っている普通の産科医を散々なまでに叩いたのがマスコミというわけだ。テレビのことは少し紹介したが、次に取り上げるのは新聞・・・特に毎日新聞だ。扱う事件はこれも医療業界人なら誰でも知っている奈良大淀病院事件だ。」


後編に続く→

 「ちょっと、後編って?」

 「今回のテキストはちゃんと冒頭に、前編って書いてあるぞ。」

 「・・・黒文字で隠してあるじゃないの!

 「ただでさえ、長いって言われてるコンテンツなんだからしょうがないじゃねえか!」

 「ああ、また大淀病院事件やってないし・・・。」


戻る




作者のブログ→
アクセス解析