ーディ・ガーディ工房

Hurdy-Gurdy Craft Lab 

最終更新:2018年6月

◆ハーディ・ガーディ公開通信講座◆

第1回 《基点を決める》

 ハーディ・ガーディ(HG)を演奏するに際して、左手のメロディーは音楽的素養のある方なら、他の楽器の類推から大きな問題なく弾けるようになると思います。しかし、右手でリズムを出すのは他の楽器からの類推がきかないので独習が難しいと思います。本講座では、右手でリズムを出す方法を主に練習します。

 尚、ハーディ・ガーディ演奏法に関する用語は日本語ではほとんど見られませんので、本講座で使用する用語は、一般に認知されたものではなく、私の創案によるものが多く入っているということをご了承ください。

 さて、練習と言いましたが、初回でもありますし、実技に入る前に少し座学の時間を取ります。

 

 ハーディ・ガーディの演奏でメロディーと共に聞こえるリズミカルなノイズ音は、弦をこするホイールの回転を急加速したり減速したりすることによって起こします。これをフランス語では“coup de poignet”(クー ドゥ ポワニェ)と言います。クーとは打撃と言った意味で、訳すと「こぶしの打撃」と言った意味になります。クーの入った日本語の外来語としてはクーデタ“coup d'état”がありますが、こちらは政体への打撃、政変ですね。

 この講座ではこのリズミカルなノイズを、フランス語から取って短く「クー」と呼ぶことにします。

 

 さて、クーのパターンは大きく分けて2つあります。

まず、楽器を構えて、右手側から見たノブの軌跡によって描かれる円周を考えてください。通常の演奏では右側から見て時計回りにクランクを回転させます。

左利きの人向けに左右逆転した楽器もありますが、ここは一般的に右利き向けの楽器で考えます。

 クーの種類を大きく分けると、この円周を均等に4等分する“coup de quatre (régulier)”と均等に3等分する“coup de trois (régulier)”の2系統があります。

本講座では、前者を「4分割系クー」略して「4クー」、後者を「3分割系クー」略して「3クー」と呼びます。

 円に内接する正四角形と正三角形を考えてください。クーを出すために加速するポイントは、それぞれの角になります。本講座ではこれを打点と呼びますが、力を加えるベクトルの始点とお考えください。

 この2系統で共通する打点、図では赤丸を基点とします。これは強拍の位置でもあります。講座第1回では、この基点を決めて、ぶれずに安定した基点でクーを出すことを目的とします。

 

4クー・3クーの概念図

 上の図は簡略化した概念図であり、実際の基点は必ずしも円周の最上部にあるとは限りません。

 クーを出す際の右手は、ノブを握り込まずにゆるく握った手の中をノブが転がるようにします。そして、腕全体の動き、手首のスナップ、指の動きを連携させてクーを出します。

 基点のクーは、腕を打ち下ろす動き、手首のスナップ、そして親指でノブを叩く動きからなります。

 基点の位置は、演奏者の体つき、平底か丸底かといった楽器の形状等により、演奏者によって異なると思います。下図のように、4クーの図で言えば、ひし形(オレンジ線)と下辺が地面と平行な正方形(緑線)のあいだで、自分にとって一番クーが出しやすい位置を探してください。

 教え方によっては、ひし形にしなさい、正方形にしなさいと限定していますが、私見では自分にとって一番弾き易いやり方でいいと思います。ただし、位置決めをしたら、そこからぶれないことが大事です。

 例として、色々なパターンでクーを出してみます。基点は動かないことに注意してください。

 

 

 人体の構造から考えると、4クーは正方形に近いほうがクーを出し易いと思います。私も正方形に近い形を使っています。既にひし形で慣れている方は別として、新たに始める方には正方形のほうをお勧めします。また今後、本講座では4クーの図として、正方形のほうを用います。

 クーを出す際には、内接する図形を考え、その辺の方向に力を加えます。下図のように細くなっている方向に力を加えてください。ノブが下に下りたら、惰性を利用しつつ、薬指の上側と手の平を添えてノブを上に持ってきます。

 では、クーを出してみましょう。始めに犬駒の感度を調節します。リズム弦の乗っている駒をフランス語で“chien”(シヤン:犬)と呼びます。形が犬のシルエットに似ていることからきています。本講座では「犬駒」と呼びます。テールピースにある糸巻きで、リズム弦をテールピース側に引っ張って鳴り具合を調節します。自分にとって出しやすい感度に調節しましょう。

 

 

 左手のキー操作も入れてみましょう。クーを出す際に構えてしまって、テンポがずれるということが起こりがちです。練習の際は、できるだけメトロノームやリズムボックスを使って、テンポが乱れないように気をつけましょう。

 調弦はG/Cとします。最初はごく簡単に、「ソ(開放弦)ラ シ ド レ ド シ ラ」とくり返します。慣れたら、メロディーを速めてもいいでしょう。余裕のある方は、自分で練習メロディーを考えてください。

 

 

 ではクーを入れて曲を弾いてみましょう。練習曲として、フランス民謡の「フレール ジャック」を取り上げました。ハ調で弾きます。4分の4拍子ですと、1小節でクランク2回転の速さで回します。各小節の1拍目と3拍目に基点が来ますので、メトロノームを聞きながら、クーがずれないように各1・3拍目にクーを入れてください。今の段階では、まだ凝ったことはできませんが、徐々に進化させてゆきます。

 

 

 慣れたら自分の気に入った曲でも練習してみましょう。ただ、今の時点では簡単な2拍子か4拍子の曲を選んでください。3拍子や変拍子の曲はもっと練習が進んでからにしましょう。

 

 第1回は以上です。第2回は「オープン ホールドとクローズ ホールド」を予定しています。

 

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