性同一性障害(Gender Identity Disorder/GID)
自分自身の性の同一性に障害があること。また、その人。精神医学の一疾患単位名である。
一般に、「体の性と心の性が違う」と表現される場合もある。
日本精神神経学会の答申では「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態」と定義されていたが、現在のガイドライン第2版では一部に変更が加えられ、「生物学的には完全に正常」という部分が削除された。
作成時は、独自のガイドラインを持つはずのISをGIDのガイドラインから外す目的があったが、その後、問題のガイドラインが存在しないことがわかり、IS由来のGID当事者も多いことから、この文言が消されることになった。
ガイドライン(Guideline)
「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」をさす。
2006年に第3版が出されている。
性別適合手術(Sex Reassignment Surgery/SRS)
医療用語。
一般には「性転換手術」といわれるものと同じ。
性別再判定手術、性別再指定手術などとも言われていたが、最近では性別適合手術に統一されてきている。
日本で初めて公に認められた上で行われたのは、1998年10月の埼玉医科大学でFTMへのものであるが、それ以前にも裏では行われていたそうだ。
FTM(Female To Male)
直訳すると「女性から男性」。
戸籍上は女性で、男性としての性自認を持ち、男性への性別移行を希望している人・既に行っている人をさす。
希望しているだけの人は含めないという人もいる。
MTF(Male To Female)
直訳すると「男性から女性」。
戸籍上は男性で、女性としての性自認を持ち、女性への性別移行を希望している人・既に行っている人をさす。
希望しているだけの人は含めないという人もいる。
FTX/MTX(Female To X/Male To X)
性自認のはっきりしているFTM/MTFに対して、はっきりとした帰属意識を持たない人をさす。
FTXは「戸籍上の女性からXへ」、MTXは「戸籍上の男性からXへ」という意味。
中性(男女の中間)、両性(男女両方)、無性(男女どちらでもない)、不定性(TPOに応じて自認が変わる、帰属する性のはっきりしない)、などまさに極彩色ともいえる。
トランスセクシュアル(Transsexual/TS)
自分の体に強い違和感を感じ、性別適合手術までを強く望む人。
または、性別適合手術を行った人。
医療側が作った言葉。日本で「性転換症」といわれるものとほぼ同じ。
トランスジェンダー(Transgender/TG)
「TS」が医療側から出た言葉に対し、「TG」は当事者が作り出した言葉である。
意味は二つあり、広義・狭義と区別され使われる。
狭義の意味では、性別再指定手術までは望まず、外見的にパスすれば十分だと考える人や、性別適合手術を受けないが、性別移行を行っている人をさす。
「無人島にひとりぼっちでも違和感を感じるのがTS、他人に見られなければ平気なのがTG」と例えた人もいるが、全ての狭義TGがそうだというわけではない。
監修者の経験では、「ペニスをつけたら最初にしたいのは、小用?性行為?」の質問に、「小用」の答えはTSが、「性行為」の答えが狭義TGが多い傾向を感じる。
広義にはは、身体に治療をしたいタイプやしたくないタイプなど、全てを含めて、総合的な意味で、戸籍上の性別に違和を感じる状態にある人すべての総称として使われる。つまり、TS、狭義のTG、TVが含まれる。多くの場合に広義のTGといえば、性別違和感があること前提とする。
トランスベスタイト(Transvestite/TV)/クロスドレッサー(Cross Dresser/CD)
いわゆる「異性装」。戸籍と反対の性別の服装をすることで満足・安堵感を覚える人たち。
必ずしも性別違和があるとは限らず、そういう意味で、性同一性障害とは区別されることもある。
「性別役割服装倒錯症」と診断された場合は、GIDに含まれる(ICD-10ではGIDの中に同症が含まれる) 。
もともとTVはICD-10ではGIDに含まれる医学的な概念の言葉だったので、その否定的な感じを避けるためCDを使う人も増えている。
他にも、ジェンダーベンダー(性別を捻じ曲げる人)、ジェンダーアウトサイダー(性別逸脱者)など、様々な表現がある。
※当事者を区別する言い方としてのTS/TG/TV。この区別の一つとして、一人の中で、TS要素、TG要素、TV要素の度合がどうなっているかで、その人のありよう、表現法などが変わってくるという説がある。例えば、あるTSの場合、TS度80%・TG度10%・TV度10%でトータル100%である、といった考え方である。
セクシュアリティ(Sexuality)
生物学的性別(sex)、社会的文化的性別(gender)、性的指向(sexual orientaion)などに関わる性的なあり方に関わること全般を指す。
セクシュアルマジョリティ(Sexual Majority)
「体も性自認も男性・性指向は女性」のいわゆる「純男」、および、「体も性自認も女性・性指向は男性」のいわゆる「純女」が大多数の性の形であると考えられており、これらを「セクシャルマジョリティ」と呼ぶ。
セクシュアルマイノリティの対語。
セクシュアルマイノリティ(Sexual Minority)
セクシャルマジョリティに対して、それから少しでもずれる人びとを「セクシャルマイノリティ」と呼ぶ。
LGBTIAと総称される、
L=レズビアン
G=ゲイ
B=バイセクシュアル
T=トランスジェンダー
I=インターセックス
A=Aセクシュアル
がある。
セクシュアルマジョリティの対語。
インターセックス(Inter Sex/IS)/間性/中位性/半陰陽、クラインフェルター/ターナー
先天的に、性染色体や外性器に変異を持って生まれた人々。
IS(半陰陽)、クラインフェルター、ターナーは、医学用語。
※ISもクラインフェルター/ターナーも、性同一性障害とは違うものとして扱われているが、最近ではどれも性分化変異として捉えようという考え・動きもある。性同一性障害の診断と治療のガイドライン第2版ではISの治療にも対応している。
セックス(Sex)
性染色体、内性器・外性器、ホルモン分泌など生物学的・身体的な性。
「ジェンダー」の対語。
ジェンダー(Gender)
社会的・文化的な性のことをさす。仕草や言葉遣い、社会的性役割などを含む。
「セックス」の対語。
性自認(Gender Identity)
自分で認識している性別。
多くの、性別違和を持たない人にとっては、考えもしない取るに足りないこと。
性同一性障害の場合、これと戸籍(身体)の性別が異なっている。
性指向(Sexual Orientation)
性愛の対象となる性別。
大まかな分類は以下のようになっている。
◎ヘテロセクシュアル=異性愛。
◎ゲイ・レズビアン=同性愛。それぞれ男性として男性を愛するゲイ、女性として女性を愛するレズビアン。
◎バイセクシュアル=両性愛。男女両方を対象にする。
◎パンセクシュアル=相手の性別はまったく問わない。
◎Aセクシュアル・アセクシュアル=性愛の対象がどこにも向かない人、性欲を持たない人など。
性別違和と性指向には関連性はない。
当事者間では、FTMヘテロの場合は女性を対象に、MTFへテロの場合は男性を対象にする。医療の現場では、身体の性別を基準にして呼ぶ場合もある。
性志向、性嗜好などと表記されることもあるが、誤りである。
例えば、「グラマーな女性が好き」と言った場合、「グラマー」が嗜好であり「女性」が指向である。
パス(Pass)
パッシングともいう。自分の望む性別として、周囲から見抜かれないこと。
また度合いという意味で、パス度ということもある。
「リード」の対語。
リード(Read)
「読む」を意味していることから、性別移行をしていることが見抜かれること。
パスの対語。
カミングアウト(Coming Out)
カム、カムアウトともいわれる。
GIDであること、あるいは性別違和、身体違和を持つことを周囲に告白すること。
もともとは、同性愛者が自分の性指向を周囲に告白することをさしたが、
現在では、広く、「自分の隠してきた指向・嗜好・趣味などを告白すること」として転用されている。
クローゼットの対語。
クローゼット(Closet)
GIDであること、或いは性別違和、身体違和を持つことを周囲に隠していること。
もともとは、打ち明けたくても打ち明けられない状況・立場にあるときに用いられてきた(消極的な意味でのクローゼット)。
しかし、最近では「カムするとGID(FTM・MTF)として扱われるが、自分はFTM・MTFではなく男・女である」という考え(TS原理主義)から積極的な意味でクローゼットを選ぶ人も多い。
カミングアウトの対語。
ダブルマイノリティ/複合マイノリティー
少数派の中の少数派のことを、「ダブルマイノリティ/複合マイノリティー」と呼ぶ。
例えば「移民の中でも特別な地域からきた移民」などに、この言葉を見いだせる。
「ダブル」は二重を意味することから、三重以上重なることを「複合マイノリティー」と呼ぶ。
このサイトでは主に、FTMでかつ、同性愛・両性愛の人間などについて使っている。
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