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「中東でのアメリカの時代は終わった」
包囲されたバグダッド: Baghdad is Surrounded:
“The American Era in the Middle East has ended”

Mike Whitney
Information ClearingHouse
2006年11月3日
http://informationclearinghouse.info/article15488.htm
 ドン・ラムズフェルドは良き指導者ではない。事実、彼はひじょうに悪い指導者である。リーダーシップは3つの基本要素で決まる−−すなわち正義感の人格、健全な判断力、そして人のミスから学びとる能力である。このどれ1つとしてラムズフェルドには備わっていない。結果として、イラクでなされた大事な判断をすべて間違い、数え切れないイラク人とアメリカ軍兵士の命が失われた。ラムズフェルドが国防長官であるかぎり、このパターンがずっと続くことは疑う余地がない。

 単純なテストをしてみよう。イラク占領で成功したものが次にありますか?

 安全保障は? 再建は? バース党排除は? イラク軍(旧)の解体? サダムの弾薬庫の確保? 略奪の抑止? 防弾着? 連立政府? アブグレイブ? ファルージャ? 石油生産さえ半減してしまった。

 占領のあらゆる面がひどい災難つづきだった。なに1つ成功しなかった。すべてが失敗だった。

 すべて、だ。

 それにもかかわらず、ラムズフェルドは私たちに、「これらのことがらは複雑なんだ」とか、私たちは「ひっこんでいる」べきだと決めつけた。

 ガーナーが賢明にもイラク軍を存続させるべきであり、多くのバース党員を政府職員に残し(市民社会に受け入れ)、3つの主要グループ(スンニ、シーア、クルド)から指導者を招集するべきだと助言したあと、アメリカの初代イラク総督だったガーナーを罷免したのはラムズフェルドの判断だった。それはイラク社会を刷新しネオリベラルの殿堂に変えるというラムズフェルドの計画と合わず、そのためにガーナーは無造作にキッシンジャーの愛弟子であるポール・ブレマーと首をすげ替えられた。

 ブレマーが抜擢されるや、事態は急速に坂道を転げおちて、かつてないほどの悪化をたどるばかりだった。

 イラク社会にとっての甚大な損失と、莫大な人的災難、そして多くの人命を失ったこと以外にも、天文学的な戦費が注ぎ込まれて、それは国防総省によって故意に隠されてきた。最初は、(ネオコンのウォルフォビッツによると)、戦争の費用は「石油収入でまかなう」と言われていたのに。もちろんそんなことにはならならかったが、実際の費用がジム・ウルフの書いた今週のワシントン・ポストの記事『Pentagon Expands War-funding Push』に登場した。その記事は次にように指摘した−−。

 「2006年度の補正予算が通過したことで、戦争関係の補正額はイラクとアフガニスタンおよび軍事基地の安全強化に合計約4368億ドルとなり、超党派の議会調査局は9月22日の報告書において、・・・2007年の国防予算にブッシュ大統領によって5000億ドル以上追加される」

 その通り。1年間で戦争に1兆ドルを費やしている、つまり失っているのだ!

 それでも、国民の税金が無造作にメソポタミアのブラック・ボックスに注ぎ込まれていることに、ペンタゴンが責任をとると期待しない方がよい。

 そう、「引っこんでろ」!!

 もう1つ言うなら、10月30日付ニューヨーク・タイムズに『イラクの武器が行方不明』という論説が掲載された。それは次のように述べた。

 「米軍のイラク侵攻以来、50万丁の武器がイラク国防省と内務省に渡され、ロケット砲、攻撃用ライフル、機関銃、狙撃用ライフルが含まれているが、きちんと記録されているのは1万2128丁しかなかった。これらの武器のうち約37万丁は、その一部は疑いなく米軍兵士を殺すのに使われているが、イラク救済・再建基金の管理下でまぎれもなくアメリカの納税者が支払ったものある。」

 別の言葉で言いかえるなら、私たちはアメリカ兵を殺している者に最新兵器を譲り渡しているのであり、そのうえ、誰1人として責任を負わないでいる? どうしてこんなことになるのか? 

 ますます多くの者がラムズフェルドの失態に不満を募らせ、交替させる準備をしている。しかし国防長官はワシントンの著名なシンクタンクにいるネオコンのファンはもとより金融、大企業、軍事産業で強い味方から後押しを受けているので、大したことになることはない。彼はブッシュの支持も取りつけているが、チェーニーとラムズフェルドが政府を牛耳ってからは、それは単なる形式にすぎない。なにがあっても、ラムズフェルドは「居座る」のだ。

 ラムズフェルドについての本当の問題は、彼には政治的な思考ができないということであり、誰かが政治的な目標を明確に定めないかぎり、戦争で勝利することは不可能である。

 武力攻撃や傷害事件が頻発するなかで3年半が経過したが、私たちは今なお、2003年3月にそうであったように、イラク人のレジスタンスについてほとんど知っていない。なんということだろう。さらには、政治対話においてレジスタンスの代表と交渉する試みも一切ない。対話も交渉もせずに、どうやって政治的解決が可能になるというのだろう?

 勝利に導くのは武力だけだと考えるのは、あまりにも近視眼的である。

 そんなことはありえない。

 戦争において、武力はその目的ではなく政治的目標を達成するための手段である。敵との意思疎通も交渉もせずに軍事力に依存しすぎるのは、戦争の目的を根本的に誤解していることを示すものである。

 ダール・ジャマイルの記事『米軍は捨てばちの戦術に走るUS Military adopts Desperate Tactics』は、この点を次のように説明している。

 「武力衝突が増えたことに対して、バグダッドの西に広がるスンニ派の多いアンバル州では、米軍が新たに残酷な戦術を採用している」・・・。 ファルージャ市議会の議員は・・・、「ここでは多国籍軍(MNF)とイラク軍によって何千人もが殺され、事態は日に日に悪化している」と語った。「アメリカ軍はいつも乱暴な対策を好み、次々に大惨事を引き起こすので、われわれには為す術(すべ)がないのだ」。

 ここでもまた、政治目標を明確にしない「軍事力による圧倒」という方針が、さらなる暴力を引き起こすだけだということを目の当たりにする。これはまったくの徒労であるが、それでもなお方針は変わっていない。

 ラムズフェルドは2年近く前に、人口30万の都市を破壊すればスンニ派住民に「メッセージを送る」ことになり、抵抗してもムダだと思いしるだろうと考えてファルージャを潰(つぶ)した。彼の行為はアメリカでこそ右翼的な政治家や専門家とやらの称賛を受けたものの、まったくの逆効果を生みだした。レジスタンスは今、これまでになく強力であり、アメリカ兵への攻撃は劇的に増加し、アンバル州はもはや米軍の支配下にない。

 心理学をかじっただけの者でさえ結果を前もって予測することはできたが、しかしラムズフェルドは事実を無視した鉄拳戦術をすすめヘマをしでかした。

 軍事力を過信するラムズフェルドはスンニ派地域全体に混乱を広げ、実質的に統治不可能な状態を作りだした。今では宗派主義の暴力がひどすぎて、米中央軍司令部が準備したペンタゴン報告書はイラクは「混沌(カオス)」状態にあると指摘する。これはラムズフェルドのやり方がもたらした論理的な帰結であり、変わりそうにない。

 イラクに駐留するアメリカ兵にとっては、混沌よりも悪いシナリオ−−すなわち敗北が待ち受けている。パトリック・クックバーンは英紙インデペンデント2006年11月1日付『バグダッドは包囲された』という記事を書き、イラク・レジスタンスが首都への物資輸送ライン(兵站線)を遮断し、アメリカが占領を続けることは不可能になる恐れがあるというゾッとするような詳細を伝えている。

 「スンニ派ゲリラがバグダッドと他の地域を結ぶ道路を遮断した。首都の南北にある街と村の支配権をめぐって民兵が激しく戦っており、イラクは分割されつつある。・・・こお国は崩壊にむかって揺さぶられている。装備に恵まれたスンニ派の諸部族はバグダッドをとり囲み、包囲網を感性させるためにシーア派民兵と戦闘中である。スンニ派ゲリラはバグダッドのすべての出入り口を支配する計画をすすめているようにみえる。」

 バグダッドは包囲され、アメリカ兵はますます窮地に追い込まれている。戦闘はすべての方面で敗色が濃くなっている。ラムズフェルド長官はこうした報道と緊急事態にどう反応するのか?

 ラムズフェルドは記者会見を開いて、彼への非難に対しては「イラク発の悪いニュースに焦点を当てすぎている」と反論し、現行の占領政策に大きな支持を取りつけるべく新たな広報キャンペーンを展開すると発表した。ペンタゴンは否定的なニュース報道に対抗するメッセージを開発することを計画しており、ラムズフェルドに言わせると、「記録を正す」というものらしい。

 「記録を正す」だって? レジスタンスが首都の周囲で支配を強めているときに、ペンタゴンは戦争のイメージを作りなおすつもりなんだろうか?

 なんという狂気だろう? これは正気の人間がやることではない。悪化しつづけるイラク情勢は、プロパガンダ装置に接続したり、アメリカ人の盲信的な愛国心に訴えたり、戦争を批判する論調を攻撃したりすることで改善されるものではない。これは現実のことであり、ワシントンの報道陣をだますために使われてきた風刺ごときものではない。私たちは現実世界で情勢を掌握し、敵対勢力との政治対話を開始することのできる指導者を必要としているのだ。世界中でチアリーダーの応援や黄色いリボンを寄せ集めても、差し迫った破局への有効な解決策は生まれない。

 アメリカ国民はイラク問題ではラムズフェルドの先を行っている。今では70%近くが戦争は「間違い」だったと考えており、明らかに大多数が政策変更を支持する候補を捜している。ニューヨーク・タイムズとCBSニュースが11月2日に行った世論調査では、「アメリカ人のかなりの大多数が、もし議会で多数を制するなら、民主党には米軍のイラク駐留を削減ないし終了することを期待している」ことが示された。これは明らかに、大衆は「即時撤退」を求めていることを教えている。11月7日の中間選挙はブッシュの「戦争政策」をめぐる国民投票となり、ラムズフェルドが必死に人気挽回をはかるイラク戦争を拒絶することになるだろう。
民主党はすべての世論調査でかなりのリードを収めている。

 メディアはかつてブッシュ陣営の安定した同盟者であり、戦争中の「フリーパス」を与えてきていた。彼らはイラク問題で上手に鉄のカーテンを引き、65万人のイラク人男女と子どもがブッシュの石油戦争で残酷に葬られたことを国民に知らせずにきた。彼らがうまく立ちまわったにもかかわらず、国民世論は現行政策の支持から変化して、アメリカ国民は戦争の終結を求めている。

 ハイテク兵器とレーザー誘導ミサイル、大規模な対ゲリラ作戦、そして従順に「エンベッド取材に応じた」メディアを駆使したものの、「新しいタイプの戦争」というラムズフェルドの構想は窮地に立たされることになった。震動は既にバグダッドからワシントン特別区にまで伝わっている。外交委員会(CFR)のリチャード・ハース委員長が『Foreign Affairs』11月号で述べたように、「中東におけるアメリカの時代は終わった」のである。残されたものはすべて失敗した政策のかけらまで掃き集め持ち帰ることになる。

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