「翔ちゃんどこいくの〜?」 俺がソファーを立ち上がるとニノとじゃれていた相葉ちゃんが俺の方へ寄ってきた。 「トイレー」 今日はとても暑く、見たことの無い若いADが持ってきてくれたオレンジジュースをイッキ飲みしてからそう言うと 予想通り俺も付いてく〜!と満面の笑みではしゃぎだした。 俺は人とトイレに行くのがあまり好きではない人間だからいつも通りに「やだよー」と笑って相葉ちゃんをすり抜け一人トイレへ向かった。 俺は用を済ましトイレを出るとさっきジュースを楽屋に運んできてくれたADが何やらもう一人の若い男性とキョロキョロと 周りを見ながら話をしていた。さっきはありがとう、とでも礼を言おうとしたその時だった。 「嵐のメンバーの飲み物の中にアドシブックスサイジを入れた」 その言葉が俺の体中を電気が通ったかのように駆け巡った。 【アドシブックスサイジ】 それは今話題になっている猛毒の薬だった。 その薬は体内に入って48時間〜50時間後位に何の前触れも無く激しい地獄の様な苦しみを長時間与え、 必ず死に追い込ませると言うものだった。 何でそんなこと・・・? 俺たちが何をしったっつーんだよ 俺たち・・・死ぬの・・・? 顔の表情がコロコロと変わり、きっと今の俺はどこの誰よりも不気味だろう。一度体中から引いた血が一気に上がった。 48時間後に自分が死ぬことを知った俺は訳がわからなくなり薬を入れた奴等に襲い掛かろうとしたその時、 俺たちの楽屋にジュースを運んできた奴が口を開いた。 「でも1つだけ時間がなくて入れられなかったものがある。それは櫻井がもらっててたよ」 その言葉を聴いたとき、今までに感じたことのないような悲しみに心臓を握り潰されそうになった。 ≪自分だけ≫ と言う悲しみに・・・・ しばらくの間、一人深く怖い暗闇の中でうずくまってしまいたい様な感覚が俺を取り巻いた。 そしてメンバーの苦しんで死んで逝く姿を想像した途端涙が溢れ出てきた。 そんな時、今の俺にとってとても辛いものがやってきた。 「翔くん帰ろう?」 「翔ちゃんトイレ長すぎ!!」 あぁ・・・暖かくてとても辛いメンバーが俺を呼ぶ声。 いや、暖かいからこそとても辛いのかもしれない 「翔くんどうしたの?」 泣いている俺に一番最初に気付いてくれたのはやっぱり大野くんだった。 俺はとうとう我慢できずその場で大野くんに縋り付き泣き崩れた。 訳もわからず駄々をこねる子供の陽に泣き崩れる俺を見て顔を見合わせるメンバー達。 すると一言も発しなかったニノが口を開いた。 大丈夫だよ、俺たちが傍にいるから 俺はその言葉を聞いて決心した。 これしかない。 みんなを苦しませない方法はこれしかない そう思った。 数十分してやっと呼吸が整う程度に泣き止んだ俺は明日、メンバーが仕事を無いことを確認するとこう言った。 「明日旅行に行こう」 あんなに泣いてて泣き止んだと思ったら急に旅行に行こうなんて頭に?マーク≠ェ浮かぶのも仕方ないだろう。 でも俺はメンバーがもし他に予定が入っていても明日は絶対に何が何でも譲れなかった。仕事がもしも入っていてもきっと旅行を優先していただろう。 そして明日の朝5時に東京駅に集合。 俺の車で俺だけ行けなかった箱根に行くことにした。 その日の晩、一晩中寝られなかったのは言うまでも無い。 -------------翌日------------ いつも旅行に行くのとあまり変わらない中身で大きなボストンバッグを車に詰めた。 でもいつもと違うと言ったらカメラを持ってこなかったことくらいだった。 眠れなかった俺は集合時間より1時間半も早く集合場所に着き今までのいろいろな思い出に更けていた。 車内の沈黙を破ったのはコンコンと言う車の窓を叩く音だった。 「開けて」 寒そうな顔をしながら俺の方を見ているのは大野くんだった。