【ラジオの歴史】
2015年10月10日(土) 初版


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【1】初期のAMラジオ

初期のAMラジオは、現在と同じ周波数帯※1を使用して始まりました。

変調方式は電波の強さを変える振幅変調※2でした。
※1:中波帯(526-1606kHz)
※2:振幅変調(Amplitude Modulation)AM方式


【2】ラジオに使う周波数

当初、中波を使用していましたが、長波も使用するようになりました。
その後、電波を海外へ届ける目的で短波を使うようになりました。

その後、より高い周波数、超短波※3で放送が行われ、変調方式に
雑音に強いFM(Frequency Modulation)周波数変調方式を
採用したFM放送が行われました。
※3:76-108MHz。世界的には88-108MHz。日本は76-90MHzを使用。
FM補完放送用として90.1-94.9MHz。FM補完放送は主に都市型
難聴対策と災害対策として設置。

【3】都市雑音の増加とコンクリート

都市に人口が集中し、テレビやインバーターエアコン、蛍光灯
など都市雑音源となる電子機器が増加ました。


鉄筋コンクリート構造のマンションに住む人が増え、コンクリートの
中の部屋へ電波が入ってこない為、AMラジオは感度が悪化し
ノイズが多く、綺麗に聴こえなくなりました。


【4】コンクリート

日本古来の木造建物に使われる木はAM電波を通す為、家の中で
ラジオが聴くことが出来ました。
しかし、マンションなどで使われる鉄筋コンクリートは電波を
反射・吸収するので家の中に電波が入ってきても弱く、都市雑音
に負けて綺麗に聴こえません。
ラジオを窓際1m付近へ持って行けば窓際へ電波が来ているので
受信出来ます。
AM電波は波長が数180-570mと長く、数m程度と狭い窓を通して
部屋の奥まで強い電波が入って来ません。
この為、AM電波を直接聴く事は困難となっています。
綺麗に聴こえるのはカーラジオ程度です。
家でも外に長いアンテナを出せば綺麗に聴こえます。

【5】アジア近隣局の混信

中国・旧ソ連は日本の放送局の10倍から100倍の出力で放送
していました。
その為、強力な放送局の電波が日本にまで届き、日本の放送局の
受信が妨害されるようになりました。



近隣の国は多少距離が離れているので、昼間は日本に電波が届きません。
夜間になり、大気に太陽の光が当たらなくなると、上空の電離層
D層が消滅し、その上のE層でAM放送が反射するようになります。
こうなると、近隣他国の大出力局の放送局の電波が電離層で反射し
日本にまで届き、日本のAMラジオに混信し、綺麗に聴こえなくなりました。


【6】混信の影響

◇6-1◇ 混信発生前~~初期のラジオの音質

戦前・戦後は放送局の数も少なく、高出力局も無かった為、混信は無く、
AMラジオの選択フィルターも非常に広く、高音まで聴こえる
綺麗な音質でした。


◇6-2◇ 戦後、近隣国の出力増大、日本における局数増大による混信の発生

戦後、中国・旧ソ連が非常に強力な電波を出し、日本国内では局数が
増え、相互に混信するようになりました。


【7】ラジオ受信機の変化

混信による妨害を軽減する為、ラジオ受信機の高域が4kHz程度まで
酷くカットされ、こもった音になりました。



【8】高域改善の為、プリエンファシス導入

聴こえ難くなったAMラジオの受信環境を改善する為に
オーバーン社製のオプチモードAMが導入され、高音の
聴こえ方が改善されました。


【9】オプチモードAMの動作

オプチモードAMはオーバン社製のAM放送の送出音圧向上用
放送機器です。
プリエンファシス自身は特別な機器が無くても出来ます。
しかし、5kHzで+10dBなど強烈に増強すると、変調度が
100%を超えて、周囲にスプラッター雑音を撒き散らして
しまいます。
この為、出力が100%を超えないようにコンプレッサーと
リミッターを2回通しています。
オプチモードを使用する事で平均変調度が上がり、雑音にも
強くなり、サービスエリアも広がります。
オプチモードシリーズにはオプチモードFM、オプチモードSW
があります。
プリエンファシスは5kHz付近以外にも200Hz付近も増強しています。
これは、ラジオ受信機のスピーカーが貧弱で低音が出ないので
増強しています。


【10】 サウンドイコライジングシステム

同時期にNHKもプリエンファシスを導入していますが、
NHKは元々放送技術研究所を持っており、新しい技術は自身で
実用化していた為、自身で独自方式のプリエンファシス装置・
サウンドイコライジングシステムを開発し、導入する事で、
オプチモードAMを採用しませんでした。
サウンドイコライジングシステムは、1kHzに比べて10kHzを
増強している事、男性アナウンサーの低音を仮想的に増強する
為に、男性の低音150Hzを2倍の300Hzとして合成し加算する
機能があります。
NHKのニュースにおいて低音が耳障りなのは、この倍音付加
システムの影響です。
人の耳、脳は、300Hzを聞いた時に150Hzが存在すると補間
する特性があり、その特性を利用した仕組みです。

サウンドイコライジングシステムはオプチモードAMのように
強烈なコンプレッサーを使っておらず、自然な音質です。

【11】プリエンファシス導入初日

ニッポン放送でプリエンファシス無しから有りへ切り替わる瞬間は、
松本零士殿原作、千年女王の  映画テーマソングの1分50秒頃で行われました

1982年3月13日公開 本零士 劇場版アニメ『1000年女王』
テーマ曲「星空のエンジェル・クィーン」/ デラ・セダカ

『1000年女王』テーマ曲
『1000年女王』テーマ曲
映画終盤
インストルメンタル版

映画公開の前夜祭としてニッポン放送にて局の途中、曲間で
プリエンファシスがONにされました。
切り替わった瞬間、テーマソング(高域が多い楽曲でした)の
明瞭度が上がり、キラキラと高域が綺麗に聴こえました。 

【12】周波数ステップ変更

AM放送開始から放送局は10の倍数、10kHzステップの周波数
を使用してきました。
しかし、海外を含め、放送局が増えて混信が問題になりました。
この為、アジアエリアでは10kHzステップから9kHzステップ
へ変更されました。
単純に隣の周波数を使う局との間隔は1kHz狭くなりますが、
中波帯全体を使って上手く周波数を配置すれば混信が少なくなります。


【13】年表

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【14】AMステレオ

14-1 AMをステレオ放送にする手法

当初、米国においてAMステレオ放送の実験が行われました。
周波数帯域が狭いAM放送は、L+R信号は従来通り振幅変調で、
L-R信号は周波数変調もしくは位相変調で送信する事になります。

14-2 方式の決定

米国において以下のように方式は乱立し、収拾がつきませんでした。
○   カーン、モトローラ、マグナボックス、ベラー

1度、マグナボックス方式に決定しましたが、放送局技術者の
猛反対により撤回し、1方式に決めず方式選択を放送局に
委ねる事になりました。

14-3 【カーン方式】 IBS  

カーンは開発者の博士の名前です。
AM電波の搬送波の上下の側波帯をそれぞれ左右の音声で変調します。
モノラルラジオは両方の側波帯を受信する事で互換性を維持出来ます。
AM方式の電波は、元々の放送電波である搬送波の他に、
変調で発生する搬送波より低い(下)周波数にある側波帯LSB、
高い(上)周波数にある側波帯USBがあります。

14-4 【モトローラ方式】 C-QAM
(Compatible Quadrature Amplitude Modulation)

モトローラ社が提唱した方式で、両立性直交振幅変調方式です。
使用する周波数帯域を増やさずに電波に乗せる情報を
2倍にする方式として、0°の搬送波とその搬送波から
90°位相がずれた2つの搬送波を用意し、それぞれを振幅変調
後合成する直交振幅変調を用いています。

しかし、単純にこの方式を採用した場合、従来のモノラルラジオで聴くと
歪んで聴こえ、互換性がありません。

そこで、改良が加えられました。

まずは0°の搬送波を和信号L+Rで振幅変調。
90°ずれた搬送波でL-Rを変調し、合成します。

このままではモノラルラジオと互換性がありません。
そこで、リミッターで振幅成分を除去し、位相情報だけにします。
この信号を搬送波として和信号L+Rで再度AM変調する事で
互換性のあるAM信号にします。
AMステレオ受信機に、ステレオ放送である事を伝える為に、搬送波は
25Hzの位相変調を施してパイロットトーンとしています。

14-5【マグナボックス方式】 AM-PM方式

搬送波を右-左の差信号で位相変調し、右+左の和信号で振幅変調

14-6【ベラー方式】 AM-FM方式

搬送波を右-左の差信号で周波数変調し、右+左の和信号で振幅変調

14-7【ハリス方式】VCPM

直交変調
(互換性を考えた改良をしておらずモノラルラジオとの互換性に難あり)

14-8 方式決定

結局、カーン方式とモトローラ方式の一騎打ちになり、カーステレオに

モトローラが採用された事で事実上モトローラが統一方式となりました。

【15】日本のAMステレオ



米国で方式がほぼ決着した後、日本でも4方式の送信実験を行い、
どの方式でも差は無いとの結論になり、最終的には米国と同じ
モトローラ方式を日本の標準方式としました。

しばらくの間モトローラ方式でステレオ放送をしていましたが、
ステレオ送信機と受信用ICの製造メーカー(モトローラ)が製造を 中止しました。

この為、日本の放送局の多くがモノラル放送へ戻りました。

15-2 AMステレオが普及しなかった理由

AMステレオのラジオは普及しませんでした。
理由としては以下があります。

・ 新たにお金を出してまでステレオ対応のラジオを買う人が少なかった
・ AMステレオのラジオを買ってもステレオで聴ける放送局が少なかった
・ NHKはFM放送でステレオ放送しており、AMはステレオ化しなかった
・ 夜間のステレオ音質が良くない※1

※1 夜間、電波が伝搬する間にフェーディングで電波の位相が変化
する為、ステレオ信号に妨害を与え、音像(音がどの方向から聴こえるか)
が激しく変化し、搬送波が弱くなって盛大に音が歪む為、
良好な音質でステレオとして楽しめなませんでした。


①は変調していない時の放送電波のスペクトラムです。
②はフェーディングの影響が無い場合のAM放送のスペクトラムです。
③はフェーディングによるヌルポイント、ディップが帯域に入りだした
時のスペクトラムで、④は放送の搬送波に近づいていっています。
⑤は、搬送波付近の電波が弱くなっている時のスペクトラムです。
搬送波が削られると、変調度が100%を超え、1~5秒ぐらい
音が歪みます。
搬送波が極端に弱くなるため、AMステレオとして認識する為の
搬送波に掛けられている25Hzのパイロットトーンが正常に検出
出来なくなり、ステレオ復調出来なくなり、歪んだモノラル放送
となります。



フェーディングは、上空の電離層、E層の変動により起きます。
昼間はE層より下のD層が電波を吸収する為、E層で反射しません。
夜間になるとD層が消え、E層での反射が起きます。
下図のように、地表を直接伝搬した電波と、上空のE層で反射した
電波がラジオへ届きます。
2つの電波は伝搬してくる距離が違い、かつ、E層で反射するポイントが
変動して、上空から来る電波がラジオへ到着する時間も刻々と変動します。
2つの電波が受信点で混ざると干渉が起き、フェーディング特有の変な
音になります。
搬送波(送信周波数の電波)が干渉でレベルが低くなると、音が歪みます。


【16】米国のAM放送はデジタル化へ

米国ではアナログ・AMステレオ放送を中止し、アナログモノラル放送と
互換性を維持しつつデジタル変調信号を同時に送信する
HD Radioへ移行しました。



米国のデジタル変調方式は、アナログ方式を邪魔しないように、
高域にデジタル信号を配置し、デジタルが復調出来ない時は
アナログへ切り替わるもので、カーステレオを中心に普及しています。

日本ではHD Radioは採用されず、サイマルIPラジオRadiko、
FM補完放送などを採用しました。




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