オーム社の気象予報士試験 標準テキスト 学科編 補説02


湿潤空気の状態方程式と仮温度

   P.33からは4-1.3.4「湿潤空気の状態方程式と仮温度」である。この本を読んでいて読みにくさを感じる点に、括弧内に入った文字が多いことが一つである。この節の出だしの部分に、「水蒸気の密度と乾燥空気の密度の比を(水蒸気)混合比(w)と呼ぶ。」とある。確かに、世の中に混合比がたくさんあり、気象学でいう混合比は水蒸気の混合比であるが、括弧を取った「水蒸気混合比」という用語を使うことは、この種の本では混乱を与えるだけではないか?

 読みにくいなと思って、ページをめくると、P.34の先頭の式から間違っている。
 
Equation3-9.jpg.jpg"

とあるが、この式は下に示すものが正しい。
Equation3-9-2.jpg.jpg"

すぐ下に、
Equation3-10.jpg"

 とあることから、誤植の類推はたやすいとはいえ、そのような負担を読者に与えるべきではない。また、この0.622という値も、値だけが示されているが、水蒸気の分子量が与えられていないことに気付く。P.30の最下行に乾燥空気の平均的分子量は
AirMolWeight.jpg"

と与えられている。ところが水の分子量の18.02は与えられておらず、結局ε=0.622は覚えるだけの値となってしまう。なお、乾燥空気の平均分子量を28.96としている本も多い。ちなみに、水の分子量を18とすると、ε=0.621になる。有効数字を6桁とった計算をすると、以下の値が得られる。

epsilon.jpg"

 さて、その下の式(3・11)である。それは、以下の式が急に与えられる。

Equation3-11.jpg"

 イコールではなくニアリーイコールが現れており、どこかで近似式を導入しているものと思われ、もう式の検証などしたくなる。しかし、この式はどのようにしてできてたのであろうか?はたして正しいのであろうか?

 基になった式から、順次導いてみよう。乾燥空気の状態方程式は、P.33の式(3・7)で与えられる。

Equation3-7.jpg"

 式の意味は、左辺の乾燥空気の分圧は、右辺の乾燥空気の気体定数と密度と温度の積で与えられるということである。

 続いて、水蒸気の状態方程式は、P.33の式(3・8)で与えられる。

Equation3-8.jpg"

 式の意味は、左辺の水蒸気の分圧は、右辺の水蒸気の気体定数と密度と温度の積で与えられるということである。

 次に、乾燥空気と水蒸気が混ざった湿潤空気の気体定数はR、密度をWetDensity.jpg"とすると、式(3・9)から、湿潤空気の密度は次のように求められる。

WetDensity2.jpg"

 この式を変形して、乾燥空気の密度を湿潤空気の密度で表す式を求めておき、後の式の変形で用いる。

DryDensity.jpg"

 ここまで準備すると、式(3・11)は、次のようにして求めることができる。

Equation3-11a.jpg"

 上の式の右端の式を整理するとP.34の式(3・11)の右端の式となる。ここで注意したいのは、どこにも近似計算が現れていないことである。すなわち式(3・11)のニアリーイコールはイコールでよいことになる。実は、ニアリーイコールは、その下の式で必要なのである。その下に次のような式が書かれている。

Equation3-11-2.jpg"

 この式がまず間違っている。ミスプリといえばそれまでかも知れないが、これまでの式の変形を見て分かるように、この式は、以下の様でなければならない。

Equation3-11-2a.jpg"

 この式を導くにあたっては、混合比が十分に小さいときに成り立つ以下の近似式を使用している。

SeriesExpansion.jpg"

 上の級数展開された式の最初の2項だけを使用して式を以下のように変形している。

Equation3-11-2b.jpg"

 したがって、得られた式は近似式であり、厳密にはイコールでなくニアリーイコールを使用する必要がある。ただし、混合比が千分の1のオーダーの値であるため、イコールとしても誤差は極めて小さい。

  (2010/11/1)  



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