オーム社の気象予報士試験 標準テキスト 実技編 補説07


地衡風

 オーム社の気象予報士試験 標準テキスト実技編のP282からP285にかけて、8.3 地衡風・傾度風・温度風の風向・風速について解説されている。この解説は、分かっている人には分かるのかもしれないが、独習するには難しすぎるように感じた。

 等高度面と等圧面の解説をまとめて行っているのも、分かり難くしている理由の一つであろう。ここでは、等圧面について、もう少し噛み砕いて考えてみよう。

Fig8-3-1.jpg"

 上に示した図は、「図8.3-1 地衡風平衡(北半球)」として掲げられている図である。まず気になったのは、本文中では「コリオリ力」の用語を用いて説明しているのに、図では「転向力」が用いられている。また、座標軸に、以後の解説に全く用いられることのない(i)(j)が書き込まれている。x軸とy軸の脇には、ug.jpg"vg.jpg"が書き込まれているが、添え字のgが地衡風を意味するgeostrophic windの頭文字を示していることを、何らかの形で説明する親切さがほしいところだ。

 さらにみると、転向力の矢印の先にさらに矢印があり、その脇にn.jpg"と記載され、その横には、
PressureGradientForce.jpg"

と書き込まれている。これはコリオリ力の大きさを示しているのだろうが、この式は次のようにならなければならない。
PressureGradient.jpg"

 コリオリ力と気圧傾度力は釣り合い、それらは大きさが等しく、方向は逆である。ただ、この式自体は気圧傾度力を意味している式であるから、「気圧傾度力」と書かれている脇に書き込むべきだろう。そして、気圧傾度力は高圧側から低圧側に作用するが、方向ベクトル(nの方向)は気圧が増加する向きに取られているから、気圧傾度力にするためには、元の図に書き込まれている式の前にマイナスを付けなければならない。これらの点を修正し、等圧面だけを考えた図を以下に示す。

Fig8-3-1-2.jpg"

 これで、地衡風平衡を示す図ができた。気圧傾度力は、高圧側から低圧側に作用し、それとコリオリ力が釣り合い、北半球では、低圧側を左に見る方向に地衡風が吹くことが示されている。地衡風の強さを示す式は、地上天気図(等高度面天気図)では、
Vg2.jpg"

で示される、と解説されている。

 次に、この地衡風のx、y方向の成分ug.jpg"vg.jpg"を示す式として、北半球では
ug1.jpg"vg1.jpg"
 となると、示されている。すでに学んでいる人、あるいは式は頭から覚えるものと思っている人にとっては問題がないのかもしれないが、そうでなければ、ug.jpg"の式に、突然マイナスが付いていることに違和感を覚えるはずだ。これは、地衡風の風向と、各力の釣り合いの式を考えることで導かれる。分かりやすくするため、気圧傾度が南北方向、及び東西方向となってい場合について考えよう。

Geostrophic1.jpg"

 初めに、気圧傾度が南北方向となっている場合を考える。気圧傾度力は、気圧が高い南から気圧の低い北の方向に働く。この場合、y軸の値が減少する南方向に圧力が増加しているので、dpdy.jpg"は負の値であり、北方向に向かうdpdy2.jpg"は正の値となる。一方、これと釣り合うコリオリ力は北から南に向かう力が働く。すなわち、y軸の値が減少する方向を向いている。地衡風は、東向きに吹くことから、x軸の値が増加する方向に吹いている。すなわちug.jpg"の値は正である。地衡風が正の値で、コリオリ力はコリオリのパラメーターに地衡風の値を掛け合わせたもので、これが負の値にならねばならないので、この場合は、コリオリ力にマイナス符号が付く。すると、上の図の左下に示した釣り合い方程式が成り立ち、これを整理すると、図の右下に示した地衡風のx軸成分を与えるマイナス符号が付いた式が得られる。

 結果だけを要約すると、dpdy.jpg"が負で、正の値のug.jpg"と符号を合わせるためにマイナスが付く。

Geostrophic2.jpg"

 上の図は、気圧傾度が東西方向となっている場合を示している。気圧傾度力は、気圧が高い東から気圧の低い西の方向に働く。この場合、x軸の値が増加する東側で圧力が増加しているので、dpdx.jpg"は正の値であり、西方向に向かうdpdx2.jpg"は負の値となる。一方、これと釣り合うコリオリ力は西から東に向かう力が働く。すなわち、x軸の値が増加する方向を向いている。この場合、北半球では地衡風は北向きに吹くことから、y軸の値が増加する方向に吹いている。すなわちvg.jpg"の値は正である。地衡風が正の値で、コリオリ力はコリオリのパラメーターに地衡風の値を掛け合わせたもので、これが正の値であることから、この場合は、コリオリ力にマイナス符号は付かない。したがって、上の図の左下に示した釣り合い方程式が成り立ち、これを整理すると、図の右下に示した地衡風のy軸成分を与える式が得られる。

 結果だけを要約すると、dpdx.jpg"が正で、正の値のvg.jpg"とそのままで符号は合っている。

   気圧傾度線が傾斜している場合には、x、y成分に分解して考えると、上に示したものと同様の結果となる。

(2011/1/11)  



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