オーム社の気象予報士試験 標準テキスト 実技編 補説04


ジェット気流解析

 オーム社の気象予報士試験 標準テキスト実技編のP128からP129は、4「ジェット気流解析」である。ここで、その説明文中のDを、そのまま引用する。あえて、同じ段組みで引用する。

「D ジェット気流が下流に向かって強くなっているところでは、ジェット気流は等高度
  線の低い方に、下流に向かって強くなっているところでは、ジェット気流は等高度
  線の高い方に流れる。」

 一瞬、コピーペーストでもした文章かと疑った。これは、単なるミスプリントなのだろうが、どちらが「弱く」のミスプリントかを、この文章から判断できる人は、本書を読む必要もなかろう。初めての読者は混乱するばかりである。

 正しくは、

「D ジェット気流が下流に向かって強くなっているところでは、ジェット気流は等高度
  線の低い方に、下流に向かって弱くなっているところでは、ジェット気流は等高度
  線の高い方に流れる。」

となる。

 手元にある他書を参照すると、以下のように解説されているものがあった(平成20年度第2回気象予報士試験模範解答と解説P154)。
 「等高度線が曲率をもっているところでは、非地衡風成分のために下流に向かって風速が増大しているところでは高緯度側に、反対に風速が減少しているところでは低緯度側に等高度線を切るかたちで風が吹くことも知っておくとよい。」

 この説明も、実は適切ではない。等高度線が曲率を持っていることが本質ではなく、収束と発散の方が風向を地衡風からずらす上で本質的だからだ。なお、これらの二つの説明は、高緯度側で等高度線が低く、低緯度側で等高度線が高いとすると矛盾しない。実際、ジェット気流の極側が低気圧で赤道側が高気圧になっているので、これらの説明は北半球でも南半球でも成立する。

 ところで、上の説明の「非地衡風成分のために」は何であろうか?地衡風とは、気圧傾度力とコリオリ力とが釣り合って吹く風で、北半球では低高度場を左に見て等高度線に平行に吹く。この地衡風は、英語で、geostrophic windという。北半球における地衡風を概念的に示すと、以下の図のようになる。

Geostrophic.jpg"

 緑の矢印で示した気圧傾度力と、青の矢印で示したコリオリ力とが釣り合い、それらに直角で、等高度線に平行に地衡風は吹く。

 ところで、ジェット気流の場合には、等高度線の間隔が密になってくびれる部分が生じることがある。そこでは風速が極大となっている。このようにジェット気流の風速が極大となっている部分をジェット・ストリーム・コア(ジェット気流核)あるいはジェット・ストリークという。

 ジェット・ストリークの手前では気流の収束場となり、ジェット・ストリークを過ぎた点では気流の発散場となる。収束した気流は水平方向に増速されるが、一部は垂直方向に流れて行く。上方は成層圏に頭を押さえられているため、多くは下方に向かい、地上には下降気流に伴う冷たい高気圧の場を作る。発散した気流は、下から気流を吸い上げ、低気圧の場を作る。

Ageostrophic.jpg"

 ジェットストリークの手前では、流速が十分増速されず、コリオリ力より気圧傾度力の方が勝るようになる。そのため、実際に吹く風は低圧側にずれた向きとなる。一方、ジェットストリークを過ぎて発散場となったところでは、気圧傾度力が急激に減少することから、コリオリ力の方が気圧傾度力に勝るようになる。そのため、実際に吹く風は高圧側にずれた向きとなる。

 実際に吹いている風と地衡風との差を非地衡風あるいは非地衡風成分といい、英語ではそれぞれageostrophic windあるいはageostrophic componentという。図の緑の破線矢印で示したのが地衡風成分で、青い破線矢印で示したのが非地衡風成分である。

 これで、Dに示された内容が理解できる。

(2010/12/21)  



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