エジプトの旅

ファラオの夢を追いかけて


神秘の「奇跡」をいよいよ見る。
モーニングコールの午前2時前にはもう目が覚めていた。

2時35分にはホテルを出発、3時に大神殿に到着した。

日の出は6時20分頃だから3時間以上待つことになる。
それも世界中から5000人もの人がこの神秘の「奇跡」を見る
ために集まってくるのだから仕方がない。

幸い3番目のグループで神殿の一番奥に入って座って待つこ
とが出来た。昼間は暑いが、朝と夜はかなり冷え込む。

ここは風もなくよかった。
朝日を迎える世界中から来た観光客
前のグループはイタリア人たちだった。

フィレンツェやアッシジなどトスカーナやウンブリア辺りから来た
グループらしい。おしゃべりで陽気だ。

1時間もすると歌が出てきた。

ひとりが歌うと、合唱が始まる。オペラ「ナブッコ」だ。さすがイタ
リア人。「オーソレミオ」や「ボラーレ」なども飛び出し、神殿の中
が野外劇場のようになる。

それにしてもこの神殿の中のレリーフは華麗だ。
強国ヒッタイトとの戦いの様子が力強く描かれている。戦車に乗
って敵に向かって弓を引き絞るラムセス2世の姿が動的に、躍
動感あふれて描かれている。

空が明るんで来たのが神殿の中からも分る。
神殿の中に張られたロープの脇から入り口の方をのぞくと、空
が茜色になっていた。
朝日を浴びて真っ赤に染まった大神殿
「わあっ」という大きな歓声が神殿の外で待っていた人々から上
がる。

と、思う間もなく神殿の奥深くに真っ赤な朝日が射し込んで来
る。一条の光りが60メートルもの奥深くにまるでライトのように
射し込み、みるみるラムセス2世の像を輝かせる。

両側のオシリス神、アメン神、プタハ神も赤く染まって行く。

その時警備の兵隊たちがどんどん動くように指示を出した。

ぼくらは至聖所の前を身をかがめ、朝日に染まった4神をちら
っと見て移動して行く。この間、わずか2,3秒…。

神秘の「奇跡」はわずか16分間の間だけしか続かない。
その間、外で待機しているなるべく多くの人たちにも”体験”して
ほしい。じっと”神秘”の陶酔にふけっているわけにもいかない
のだ。
小神殿も赤く染まる
外に出ると、多くの人が神殿目がけて大行列していた。

朝の外気が気持ちよい。

振り返ると、神殿そのものが朝日に真っ赤に染まっていた。

あわてて写真を撮り、100メートル離れた小神殿に小走りで走
っていくとこちらも赤く染まっている。

ファラオが限りなく愛したというヒッタイトから嫁入りしたネフェル
タリ王妃の像が輝いている。

白い衣装のヌビア人たちが「タロ」を手にここでも輪になって踊っ
ていた。

念願叶ってやっと見られた神秘の「奇跡」に胸が熱くなる思いだ
った。
神秘の「奇跡」に集まったヌビア人
早朝のアブ・シンベルを後に、アスワン経由でルクソールに向か
った。パン、オレンジ、ハム、ゆで卵、ジュースのお弁当を空港
でもらう。

古代エジプトの都テーベがあったルクソールには遺跡が集中し
ている。ナイル川の東側は人々の住む都、日の沈む西側は死
んだ人が葬られる「王家の谷」。

カルナック神殿は壮大でピラミッドと同じようにエジプト文明の凄
さを実感させられる。

大列柱から仰いだエジプトの青い空、天を突くトトメス1世やハト
シェプスト女王のオベリスク…。

オベリスクはギリシャ語で「焼串」の意味らしいがここで見ると、や
はり本来のエジプト文明のシンボルと実感する。
カルナック神殿の列柱 オベリスク
列柱からのぞく青空 参道のスフィンクス
ルクソールは古い都テーベの面影を今も残している。

車の間を縫って馬車が走っているのも目に付く。

ホテルの前に立っていると、通りの向こうを走っていた馬車が
Uターンして近寄って来るし、散歩していても後ろから来た馬車が
「乗らないか」と言ってくる。

「1ドル、1ドル」とか言っているが、かなり曲者らしい。

乗るときによほどしっかり交渉しないとトラブルになるらしい。そ
れに事故も結構多く、大けがをする人も多いという。乗る時は御
者の横ではなく、後ろの席にしろと言われた。

見ているととても楽しそうで、欧米人のグループはまとまって何台
もの馬車を連ねて激走している。

ちょっとうらやましい気分になる。
ルクソールの街で見かけた馬車
ルクソール神殿はライトアップがよく似合う。

カルナック神殿と比べると、小ぶりだが、美しい。

なぜかちょっと艶かしくもあるが、年に一度ナイルの増水期にア
メン神が妻ムトと過ごすために訪れる神殿(「ナイルの遺産」か
ら)だという。

ラムセス2世が建造した第一塔門の前にはラムセス2世の坐像
やオベリスクがある。

ここには左右一対のオベリスクがあったが、19世紀初め、ナポ
レオン3世から時計を贈られたムハンマド・アリがそのお返しに
フランスへ贈ってしまったという。

まさか、オベリスクを持っていくとはエジプトも思っていなかったら
しいが、フランスはさっさと運び出していったらしい。

贈られた時計はカイロのムハンマド・アリ・モスクに飾られている
が、贈られて1週間もしないうちに壊れてしまったというから、うま
く騙されたようなものだ。

オベリスクの前にスフィンクスの参道がある。古代はここからカル
ナック神殿まで3キロ両側にスフィンクスの像を並べた参道が続い
ていたという。

10年後には復元され、ふたつの神殿が結ばれるはずだ。
ライトアップされたルクソール神殿のオベリスク
ナイル川の東側から見ると西岸は荒れた山肌をむき出しにした
小高い山が広がっている。

近づくとそれはグランド・キャニオンのような荒涼とした風景だ。

ライトアップされたルクソールの神殿は生き生きとした”生者”の
雰囲気があふれている。向こう岸は”死者”の臭いがする。

明日はもうエジプトに来て5日目になる。
2月末というのにエジプトは限りなく暑い。6時にモーニング・コー
ルが鳴り、7時半にはホテルを出発する。なるべく午前中で見学
を済ませてしまうのが目的だ。



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