
8時間目
地方自治
1.地方自治とは?
外国に比べ、日本は地方自治が盛んではありません。日本の政治は東京で行われている国の政治が中心であり、その結果、どの都道府県、どの市町村でも同じようなサービスを受けることができる反面、それぞれの地域で本当に必要とされている、細かい住民の要望を、政治に生かすことができていません。
この原因は明治憲法下の政策に由来します。明治憲法の下では地方自治は認められておらず、日本の政治は東京で行われる国の政治が中心で、都道府県知事も国から派遣され、国民は都道府県知事を選挙で選ぶこともできませんでした。そしてそんな中央集権的な政治が、地方自治が認められたはずの日本国憲法の下でも、なぜか続いてしまいました。
イギリスの政治学者ブライスは、「地方自治は民主主義の源泉であるだけでなく学校である」と表現しました。これは、地方自治のように住民のきめ細かい要望をかなえてやることが、民主主義の基本であるだけでなく、そのような政治を実現することから、国としての政治も学ぶことが多い、と言うことを意味します。田舎大好きの飛垣内としても、首都圏と地方というのは格差どころか差別的な扱いを感じることがあります。東京都の人間だけでなく、日本中の人たちが幸せになるためにも、地方の政治を活性化していってほしいと思います。そんな思いを込めて地方自治の授業を始めます。
地方自治(地方の政治)を行う機関のことを地方公共団体(地方自治体)といいます。地方公共団体には東京都庁、北海道庁、大阪府庁、京都府庁、○○県庁や○○市役所、○○町役場、○○村役場、○○区役所(東京都の千代田区役所、新宿区役所など)があり、それぞれの地域の政治を担当しています。
まず、地方自治の立法権(国会のような役割)にあたるのが地方議会です。地方議会には東京都議会、大阪府議会、広島県議会、広島市議会、福山市議会、神辺町議会、筒賀村議会、新宿区議会などが各都道府県、市町村と東京都の23の区に設置されています。そして、立法権に当たる地方議会の一番の仕事はずばり条例をつくることです。国会の一番の仕事が法律をつくることであったように、地方議会の一番の仕事もその地方の法律に当たる条例を作ることです。今まではその地域独自の条例というものは少なかったのですが、最近はけっこう地域ごとの条例が注目されるようになりました。少し紹介しておきます。
| 条例名 | 実施地方自治体 | 内容 |
|---|---|---|
| 仲人奨励金支給条例 | 岩手県衣川町 | 若者の仲人に成功した人に奨励金を支給する。 |
| 飼い主ふん害防止条例 | 埼玉県草加市 | 犬の散歩時のマナーを定める。 |
| 光害防止条例 | 岡山県美星町 | 美しい星空を守るために、人工の光を規制する。 |
| 奨学金Uターン条例 | 広島県三和町 | 町からの奨学金を、大学卒業後に地元に就職すれば返済の義務がなくなる。 |
| ごみのポイ捨て罰金条例 | 福岡県北野町 | ごみを捨てた人に3万円以下の罰金を科す。 |
| ウミガメ条例 | 鹿児島県 | 海岸でのウミガメの捕獲やウミガメの卵の採取を禁止する。 |
| ハブ対策条例 | 沖縄県那覇市 | 毒蛇のハブによる被害と脅威を取り除くための政策を定める。 |
その他に地方議会は国会のように地方予算の議決権や、首長(都道府県知事、市町村長、区長)の不信任決議権も持っています。ただ、衆議院と参議院という2つの院がある国会と違って、地方議会は一院制です。
地方自治において行政権(内閣のような役割)にあたるのが首長です。首長には(石原慎太郎)東京都知事、(太田房江)大阪府知事、(田中康夫)長野県知事、広島県知事、広島市長、福山市長、神辺町長、筒賀村長、新宿区長などが各都道府県、市町村と東京都の23の区にいます。国の政治では、国民は行政権の長である内閣総理大臣を選挙で選ぶことはできませんでしたが、地方の首長はそれぞれ住民による選挙で選ばれます。さらに、首長は地方議会が制定した条例や予算に対する拒否権を持つなど、地方においては大きな力を持っています。このあたりはまさに、アメリカの大統領制をモデルに、日本の地方自治の制度がつくられている背景があります。
さらに、首長は地方議会に対して、解散権を持っていますが、国の政治において内閣総理大臣が好きなときに衆議院を解散できたのに対して、首長が地方議会を解散できるのは地方議会が首長の不信任決議をしてきたのみに限られています。
そして、地方公共団体ではこの首長をリーダーとして、地方議会で作られた条例・予算に基づいて政治を行っていくことになっているわけですが、地方公共団体の仕事には地方独自に行う仕事のほか、国から依頼されて行う仕事も含まれています。そのため、こんな問題がありました。

というわけで、2000年までは、地方公共団体が行う仕事には、固有事務と団体委任事務と機関委任事務の3種類があったのですが、なんと当事は地方自治の事務全体に占める機関委任事務の割合が約80%だったため、地方自治は国で決められたことにただ従うだけにすぎず、地方独自の政治はほとんど行われていないに等しい状態でした。そこで、まず1995年には地方分権推進法が制定され、機関委任事務が段階的に減らされていったあと、2000年には地方分権一括法が制定されて、この機関委任事務は完全に廃止されることになりました。その結果、地方公共団体が行う仕事はこのように分類されることとなりました。

まず、地方自治活性化の理想としては、自治事務が増えていくことです。そして、機関委任事務の代わりに法定受託事務というのができましたが、機関委任事務というのが国からほとんど強制的に委任された仕事であったのに対して、法定受託事務は国から託された仕事に過ぎないので、強制力はありません。だから、もし国から託された法定受託事務に不満があれば、内閣府に設置されている国地方係争処理委員に訴えて、拒否することもできるようになりました。
そして、地方自治ではたくさんの行政委員会が活躍しています。内閣のところでやったように、行政委員会は中立を保つために、行政権(地方の場合は首長)から独立して仕事を行う機関ですが、地方公共団体には、次のような行政委員会が設置されて活躍しています。
| 行政委員会名 | 仕事 |
|---|---|
| 教育委員会 | 学校の設置・運営に関する仕事。 |
| 選挙管理委員会 | 国会議員選挙・地方選挙に関する仕事。 |
| 公安委員会 | 地方警察のトップ機関。 |
| 人事委員会 | 地方公務員の採用や給料の管理、公務員の労働条件のチェックなどを行う機関。 |
| 監査委員 | 地方公共団体の税金がきちんと使われているかチェックし、監視する機関。 |
特に重要なのは監査委員です。監査委員は地方公共団体の税金が正しくつかわれているか監視し、チェックする係です。監査委員が首長や地方議会の議員、地方公共団体で働く公務員の人たちと仲良しこよしになってしまうと、厳しいチェックが行えないので、地方自治から独立して仕事を行うことになっています。
2.住民の政治参加
日本国憲法92条にこんな条文があります。
92条
地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
まず、地方自治の本旨(地方自治本来の目的)とは次の二つを意味すると言われています。
| 地方自治の本旨 | 団体自治 | 国の政治から独立して、その地方公共団体独自の政治を行う。 |
| 住民自治 | 住民投票など、住民が政治に参加しやすい機会を多くもうける。 |
そして、この2つの目的を達成するために、日本国憲法とほぼ同時につくられたのが地方自治法です。だから、日本の地方自治は地方自治法を中心に行われ、92条にある「法律」とは地方自治法のことを意味します。
そんな、地方自治の本旨のうち、特に住民自治を実現するために、地方自治法では住民に直接請求権というのを認めています。
必ず覚えよう! 直接請求権一覧表
| 請求の種類 | 必要署名数 | 提出先 | 取扱い | |
|---|---|---|---|---|
| イニシアティブ (住民提案) |
条例の制定・改廃 | 有権者の 50分の1以上 |
首長 | 議会で話し合う |
| 監査 | 監査委員 | 監査を行う | ||
| リコール (住民解職) |
議会の解散 | 有権者の 3分の1以上 |
選挙管理委員会 | 住民投票で決定 |
| 首長の解職 | ||||
| 議員の解職 | ||||
| 主要公務員の解職 | 首長 | 議会で話し合う | ||
直接請求権とは、住民が政治に関することを直接に請求することができる制度で、大きく分けて住民が政治に関することを提案するイニシアティブ(住民提案)と、地方公共団体で重要な仕事にあたっている人を辞めさせることができるリコール(住民解職)に分けることができます。上の表はとても大事なので、イニシアティブ、リコールにはどのようなものがあって(6種類)、それぞれ請求するためにはどれだけの署名が必要で、集まった署名をどこに提出して、提出された地方公共団体はそのことをどういう風に取り扱うのかをしっかり暗記してください。覚え方のポイントは、まず必要署名数はイニシアティブ=50分の1、リコール=3分の1である点。提出先は、もしこの人たちを辞めさせた場合、あとで選挙を行わないといけない場合は選挙管理委員会、監査は監査委員、それ以外は首長ということになります。公務員は選挙で選ばれるわけではないので、リコールのうち「主要公務員の解職」の提出先だけは選挙管理委員会にはなりません。そして、提出後の取り扱いは、選挙管理委員会⇒住民投票で決定、監査委員⇒監査を行う、首長⇒議会で話し合うと言う風に、提出先と取り扱いはセットで覚えるといいでしょう。
というわけで、地方自治法にはこのような直接請求権の制度が規定されているわけですが、日本国憲法にも1つだけ、地方の住民が直接政治参加できる制度を規定しています。4時間目の基本的人権のところでやったのを覚えていますか? そうです。(地方自治)特別法の制定です。1950年に制定された、広島平和記念都市建設法や長崎国際文化都市建設法のように、広島市、長崎市のような特定の市町村のためだけの法律を国会がつくることもあります。このような法律のことを(地方自治)特別法というのですが、特別法を制定するときは、国会での決議のあとその該当する市町村の住民による直接の投票で過半数を獲得しないと制定することはできないというルールがあります。というわけで、国会が自分の都市のための法律を制定してくれたときには、その都市の住民はその法律に賛成かどうか直接投票することができます。まあ、1951年を最後に最近では全くやってませんが・・・。
最後に、最近盛んに行われるようになった住民投票条例について説明します。住民投票条例とは「ある政治問題について、住民はどう思っているのか投票してもらって聞いてみる」ことを目的とした条例です。では、実際にどのような住民投票条例が制定されたのか確認してみましょう。
| 住民投票のテーマ | 実施自治体 | 実施年 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 原子力発電所の建設 | 新潟県巻町 | 1996年 | 建設反対61% 建設賛成39% |
| 在日米軍基地の縮小 | 沖縄県 | 1996年 | 縮小賛成89% 縮小反対11% |
| 産業廃棄物処理場の建設 | 岐阜県御嵩町 | 1997年 | 建設反対79% 建設賛成21% |
| 吉野川河口堰の建設 | 徳島県徳島市 | 2000年 | 建設反対90% 建設賛成10% |
| プルサーマル計画の受け入れ (プルサーマル計画=新しい原子力発電の計画) |
新潟県刈羽村 | 2001年 | 受入反対53% 受入賛成43% |
「住民投票条例を制定してくれ!」という直接請求が相次いでいます。ではさっき使った直接請求権の表を見ながら、住民投票条例の制定はどのような手順で行われるのかを確認しましょう。まず、条例の制定のためにはその地域の有権者の50分の1以上の署名を集めてそれを首長に提出します。そして、その後、議会で話し合ってこの住民投票条例を制定するか話し合います。実際には、この議会での話し合いの段階でボツになった例もあるのですが、それでも何とかたくさんの住民投票条例が各地で制定されました。
しかし、この住民投票条例の問題点として、あくまで住民投票条例による投票は「住民に聞いてみる」のが目的であって、この投票の結果に法的拘束力はないという点です。だから、言ってしまえば、この投票によって住民の90%が原子力発電所の建設に反対したとしても、首長はその投票の結果を無視して原子力発電所を建設しても、まったく問題がないという点です。そう考えると無意味な投票とも言うことができるかもしれませんが、住民が団結して、政治家たちに自分たちの意思を示そうとする運動としては、評価できるものだと言えると思います。
3.地方政治の改革
バブル経済の時には景気がよかったこともあり、各地方公共団体はいろいろな事業に手を出しました。地方公共団体と一般企業が共同してお金を出して経営する企業である第三セクターなどがいい例です。地方公共団体を第一、一般企業を第二とすると、地方公共団体と一般企業両方から出資を受ける新しい企業形態という意味から第三セクターと呼ばれる企業が1990年前後に多くつくられました。とくに宮崎市の宮崎シーガイアや、長崎市の長崎オランダ村、呉市の呉ポートピアランドのようなリゾート施設やリゾートホテルなどが、地方の税金が投入されて作られていきました。しかし、これらの施設はその後の不景気も手伝って、倒産に追い込まれ、これらの施設が抱えた赤字をその地域の住民が税金で返済しているという状況が日本中で見られます。
さらに、近年の不景気により地方公共団体が集めることのできる税金自体が減ってきています。その結果、地方公共団体の中には税金が集まらず、さらに借金を返すこともできず、企業で言えば倒産寸前まで追い込まれているところも多くあります。
実は、数ある地方公共団体の中で、1つだけ倒産してしまった市町村があります。福岡県赤池町です。倒産してしまった赤池町は国から財政再建団体に指定され、借金を返させるためのハードな政策を強制されました。その結果、公務員の数や給料が削減されたり、公立高校の授業料が10倍になったり町営プール、野球場、町民会館の使用料が50倍になったり、町から支給されていた年金が半額になったりとかなり悲惨な状況になってしまいました。
大阪市、横浜市、岡山市あたりが借金だらけで倒産しそうだといううわさもあります。そうしたつぶれそうな地方公共団体を元気にするためにも、地方の改革が行われようとしています。
最近国会で三位一体の改革と言う言葉が使われるようになりました。三位一体の改革とは地方自治において、①地方税の割合を増やす②地方交付税交付金を減らす③国庫支出金を減らすという3つを同時に行おうとする改革のことです。では、これらの言葉について説明します。
| 全国の地方公共団体の歳入合計(2004年度:総額84兆6669億円) | ||
|---|---|---|
| 地方税 | 38.2% | 地方で集めて、地方で自由に使えるお金。 |
| 地方交付税交付金 | 19.9% | 地方公共団体の格差を解消するために、国の税金の中から地方に配るお金。使い道は各地方公共団体の自由。 |
| 国庫支出金 | 14.3% | 国が地方に使い道を指定して配るお金。補助金とも呼ばれる。 |
| 地方債 | 16.7% | 地方公共団体の借金。都道府県が借金をする場合は総務省の許可が、市町村が借金をする場合は都道府県の許可が必要。 |
| その他 | 10.9% | 地方譲与税、地方特例交付金など。 |
上の表を見て分かるように、地方自治で使われているお金のうちで、地方税の占める割合は38.2%にすぎません。それに対して国から支給されるお金である地方交付税交付金や国庫支出金の割合が2つ合わせると35.2%もあります。そうなると、地方公共団体は、国から自分のところへお金を回してもらおうと思ったら国のご機嫌をとらなければなりません。しかし、国としても最近はこの地方に配る地方交付税交付金や国庫支出金が相当な金額に上ってきたので、何とか減らしたいとも考えるようになり、小泉内閣が改革に乗り出しました。
ただ、地方交付税交付金や国庫支出金は国会議員が地方にばら撒いて恩を売り、選挙のときに自分に投票させるために使われていたお金なので、たくさんの国会議員が反発して、なかなか実行には移せないでいます。まあ、これからの動きを注目していきましょう。ただ、10年ぐらい前は地方税の割合は30%ぐらいに過ぎず、地方自治は三割自治と呼ばれていました。そのころから比べると地方税38.2%というのは改善されていると思いますが、地方を元気にするためには、更なる改革が必要かもしれません。ただそうなると、地方に、頭のいいやり手の知事や市町村長なんかも必要となってきますが・・・。
次に最近盛んな市町村合併について触れます。いくつか例をあげます。
| 市町村合併で新たに誕生した主な市 | ||
|---|---|---|
| 新しく成立した市 | 誕生した年 | 合併された市町村 |
| 埼玉県 さいたま市 | 2001年5月 | 浦和市、大宮市、与野市 |
| 新潟県 佐渡市 | 2004年3月 | 両津市、相川町、佐和田町、金井町、新穂村、畑野町、小木町、赤泊村 |
| 山梨県 南アルプス市 | 2003年4月 | 八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町 |
| 静岡県 伊豆市 | 2004年4月 | 修繕寺町、土肥町、天城湯ヶ島町、中伊豆町 |
| 岡山県 瀬戸内市 | 2004年11月 | 牛窓町、邑久町、長船町 |
| 山口県 周南市 | 2003年4月 | 徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町 |
| 香川県 さぬき市 | 2002年4月 | 津田町、大川町、志度町、寒川町、長尾町 |
| 愛媛県 四国中央市 | 2004年4月 | 川之江市、伊予三島市、新宮村、土居町 |
| 徳島県 吉野川市 | 2004年10月 | 鴨島町、川島町、山川町、美郷村 |
| 長崎県 対馬市 | 2004年3月 | 厳原町、美津島町、豊玉町、峰町、上県町、上対馬町 |
では、なぜ最近になってこんなに市町村合併が多いのでしょうか。まず、市町村が合併して市町村の数が少なくなると、国としては地方交付税交付金や国庫支出金をあげる市町村が少なくてすみます。しかも、弱い市町村がたくさんあるよりも資金力がある大きな市や町をつくることにより地方自治を活性化させようという狙いもあります。そんな思いから市町村合併を促進させるために、国は市町村合併特例法という法律をつくりました。この法律によると2005年3月までに合併を申請した市町村は合併特例債の発行が認められ、新しい市町村の運営のために、この合併特例債の発行により多額の借金をすることが許されるだけでなく、その借金の7割を国が払って返してくれるという特権が与えられることになりました。その結果、2000年4月に3229あった市町村が2005年4月の時点で2115まで減り、2007年までにはさらに1735まで減っていく予定です。
そんな市町村合併に関連する話題をもう2つほど付け加えます。今回の合併で一番規模が大きかったのが、埼玉県の浦和市、大宮市、与野市というもともと人口が多かった都市の合併により誕生したさいたま市の誕生です。そしてこのさいたま市が2003年に日本で13番目の政令指定都市となりました。政令都市とは現在、北から、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市、北九州市が指定されている人口100万人以上の都市 (東京23特別区をのぞく)です。政令指定都市に指定されると、市の中に○○区というような行政区(東京都の区ほど機能は高くない)を設置することができ、さらに国から干渉を受けない独自の政治を行う権利が多く与えられます。一応は人口50万人以上の都市が指定されることになっているのですが、実際には100万人以上の都市が指定されています。また、人口30万人の都市は中核市、人口20万人以上の都市は特例市に指定され、政令指定都市ほどではありませんが、これらの都市もその規模に合わせていくつか独自の政治を行う権限が与えられます。これから、市町村合併がさらに進み、人口の多い都市が増えてくると、中核市、特例市もこれからさらに増えていくと思います。
そんな市町村合併が盛んになる中、2002年の地方自治法の改正により、市町村の合併の賛否を問う住民投票の実施が可能になりました。住民投票と言えば、前に法的拘束力のない住民投票条例について紹介しましたが、地方自治法に基づくこの市町村合併の賛否を問う住民投票は法的拘束力を持ちます。方式としては「広島市と合併することに賛成かどうか」とか、「呉市と東広島市のどちらの市と合併することに賛成か」などそれぞれのケースがありますが、このような住民投票を実施した市町村はその投票の結果に従わなければなりません。
さらに、この住民投票の方法は各市町村で独自に行うことができるため、国の選挙と違って、18歳以上の住民や永住外国人にも投票権が与えられたりもしました。特に注目されたのは長野県の平谷村では中学生にも投票権を与えました。これはどちらの市と合併するかで進学できる高校も変わってくるため、中学生にも投票させようというアイデアでした。
2004年の地方分権一括法の施行により、地方公共団体は法定外目的税という、独自の税金を集めて、使うこともできるようになりました。主なものに次のようなものがあります。
| 法定外目的税 | 実施した地方自治体 | 内容 |
|---|---|---|
| ホテル税 | 東京都 | 1万円以上の宿泊費のホテルの宿泊に100円、1万5千円以上のホテルの宿泊に200円の課税。 |
| スーパーのレジ袋税 | 東京都杉並区 | スーパーでレジ袋を受け取った人に1袋5円の課税。 |
| 遊漁税 | 山梨県河口湖町、勝山村、足和田村 | 河口湖で釣りをする場合、1人1日1050円の遊漁料の他に、200円の課税。 |
| 産業廃棄物税 | 三重県 | 産業廃棄物を処理場に持ち込むたびに、1トン当たり1000円の課税。 |
| 観光環境税 | 福岡県太宰府市 | 太宰府天満宮周辺の有料駐車場で普通車1台の駐車につき100円、大型車の場合は500円の課税。 |
そして、2002年の構造改革特別区域法の制定により、国に申請することにより構造改革特区に指定される都市も出てきました。構造改革特区とは、政治上の実験のために、新しい事業を起こすときに必要な許認可の基準を特別にゆるくしてもらえる都市のことです。6時間目:内閣のところで説明したように、内閣の官僚は新しい事業を起こすときに必要な許認可を与える権限をたくさんもっており、新しいアイデアを持っていても、国からの規制により実行に移せないという地方公共団体や企業が多くありました。そこで、国に申請して構造改革特区に指定されれば、こうした規制を受けることなく自由に事業を起こすことができるようになりました。例えばIT産業を育成のためIT企業設立の規制をゆるくしてもらったIT特区、農業の育成を目的として、農地を所有する規制をゆるくしてもらった農業特区、小学校・中学校の一貫教育の許可をもらった小中一貫教育特区などがあります。このような自由を各地域に認め、地方を活性化させるだけでなく、成功例は国の政治でも採用していこうというのが日本政府の考えです。
地方自治の改革は今まさに行われています。そのせいで、新しい動きも多く、勉強するのも大変ですが、動きが早いだけに10年後にはどういう結果が出ているか楽しみでもあります。