水流渓人エッセイ集「父さんに教えて」
 

第四章/九編


怒りの縄跳び


 次女6才、冬休み最後の日に、突然、『なわとび』を始めた。夜、リビングで、
「今からとぶから、お父さん数えて。」
と、言う。今までに、一回跳ぶのは見たことがあるが、突然どうしたんだ?と思った。結局、うまくリズムがとれずに一回跳んでは、縄が足にひっかかっていた。
 そういえば、長女も幼稚園年長組の頃、かなり苦労した記憶がある。あの頃、私まで跳んでみせたが、結局うまく跳べるようにはならなかった。いつの間にか幼稚園で覚えたらしく、しばらくして先生手作りの『三十回とべましたメダル』を、得意満面に私に持って帰ってきた長女は、以来、毎晩練習し何日か経って、『五十回とべましたメダル』を獲得し、またしばらくしてやっとの事、涙と感動で『百回とべましたメダル』を手中に納めたのだ。幼稚園の通信にも、長女の百回メダル獲得劇は記載され、今でも非常に印象深い出来事である。
 しかし、次女に至っては長女が年中組で乗り始めた自転車も、未だ補助輪付きの世界で、教えてあげようとしても、周囲の友達連中が乗れ出しても、なんら興味のないみたいである。そんな一回しかを跳べない『なわとび』を次女が、翌日には『三十回とべましたメダル』を持って帰ってきたのだ。私は嬉しさより疑いの念が先立ち、
「本当にとべたのか?」
と、聞いてしまった。
「うん。」
とだけ答える次女に、
「じゃ、とんでみろよ。」
と、食事中にもかかわらず言ってみた。それがそれがである。本当に跳ぶではないか、食事中に付、女房から叱られはしたが、本当にリズムよく跳ぶのである。なんだかキツネにつままれたみたいだが、本当に跳ぶので、長女がヤキモチを焼くほどにベタ誉めしてしまった。そして、翌日に『五十回とべましたメダル』、翌々日にはなんと『百回とべましたメダル』をあっさりと獲得してしまった。次女が三十回跳んだ時、
「○○ちゃんも○○くんも、もう五十回とべるんだよ。」と言っていたが、百回跳んだ時は、クラスではまだ三人しかいないそうだ。そう聞いて、有頂天になるのは私特有のバカ親気質であり、誰にでも言いたくなり、遊びに来ていた近所のミカちゃん(長女の同級・二年生)に話してみたら、
「おじちゃん、私、保育園の時に、七百五十回とべましたメダルもらったよ。」
と聞き、ガックリ肩を落としたハゲバカ親父であった。

 私の買い物行動に、我が女房は憤慨する。憤慨して、しばらく口を聞いてくれなくなる。あげく、その買い物行動を通して、『冷たい思いやりのない性格』と、私の性格判断までしてしまうのである。だいたい、あちこちの店を見て回り、あれにしようかこれにしようか・・・、と言うのが辛抱できない。アウトドアや、私の興味に関しない買い物については、特にめんどうなのだ。買い物が嫌いではないのだか、興味のないものについては即断即決が追求される。だから、アウトドアで着ない洋服については、特に女房・子供の服買い店巡回が我慢ならぬのである。
 最近では、仕事で着る自分のスーツやジャケットやパンツやシャツや靴などでも、それを買うがために費やされる時間がもったいなくて仕方ないのである。ここ五〜六年、夏も冬も紺色のジャケットを着ている。窮屈になれば、また同色同型のジャケットを購入する。まるで年中着替えていないように見えるが、私のロッカーには夏物三着、冬物五着の紺色ブレザーが下がっている。なんだか変人みたいだが、何かとわずらわしさが無く、自分で納得しているんだからそれでいいと思っている。
 しかし、遊ぶための衣装は素材までこだわり、女房・子供に至るまで勝手に私が決めてしまっている。従って、女房など登山を始める前から、新素材のウエアーやリュックや靴まですべて揃っている。同様に子供の道具もそうである。特に、子供用は数や種類が少なく、非常に入手しにくいので、素材生地を見つけ出しては、私自信がミシンで作り上げているのだ。最近では、少し身体が大きくなった長女サイズにライフジャケットや、長女・次女・長男用に登山用スパッツを作り上げている。ライフジャケットに関しては、今回で第四作品であるので、かなりの出来映えと自負している。表地はピンク色のゴアテックス生地で、浮力体には建築断熱材用の発砲ウレタン材、裏地の下方はメッシュ生地を用い水はけを良くしてある。固定するベルトは、クライミング用のテープを使用してある。体重に合わせ、浮力も五sに設定してある。スパッツに関しては、黒色のナイロン地を使用して、上部のゴムが可変にしてあり、下部は登山靴の下を通すゴムがワンタッチで止まるようにしてある。また、固定力を強め、雪など入りにくくするために、マジックテープで簡単に登山靴の紐へ装着出来る。
 先日、『市房山』への山行の時、場所によっては十センチほどの積雪があり、雪を見ると必ず足を踏み入れたくなる子供達の行動を、最大限に助けていた。えーっと、買い物が『冷たい思いやりのない性格』につながるという話しの結末であるが、要するに遊ぶ為のもの以外、私は興味がないのでいい加減な態度でいるからだと思う。
 もうすぐ、次女が小学生になる。長女が入学時、学習机はその時まで我慢すると言うことになっていた。友達が真新しい机を買って貰うが、一言も文句を言わずに辛抱してくれた。以来、私が拾ってきた、どこかの店舗で陳列器具として使われていた台に、本棚を置き、私のお袋が十四年前買ったダイニングテーブルに付属していた椅子を使っている。次女は、私のいとこが二十年前に買って、捨てられそうになり私が引き取った、壊れかけのパイプテーブルに、長女と同じ椅子を使っている。有り難いことに女房の実家の母が、二段ベットを買ってくれるというので、それじゃそろそろ学習机も二セット買おうか!と、雨降りで何もできない日曜日に、家族全員で家具屋へ足を運んだ。とにかく、興味ない物の買い物へ、私が行ったのである。可愛いわが子の為だと、二軒もの家具屋を回ったのである。内心、イライラメンドメンドダルダルシャーナイシャーナイと・・・。結局、いつものように、
「また、他の家具屋を見て、カタログも見て、色々と検討せなあかんなぁ!」
と、女房が言ったとたん、これじゃひょっとして、しばらく日曜日ごと、家具屋回りになってしまうがな!いかん!いかん!大変なこっちゃぞ!と、とにかく早よ買わにゃ大変な事態になると予感した私は、翌日の昼休み女房を連れ出し、近所の家具屋へ走ったのだ。家具屋の玄関に一歩足を踏み込めば、店員のおばちゃんが待ってましたとばかり、
「新入学ですか?」
「学習机ですか?」
「これが今年の新製品でして・・・。」
「この机には、こんな便利な機能がついていまして・・・。」
と、マニュアル通りの説明で迫ってくるが、そんなもん私の耳には届くはずもなく、ひたすら付いている値札を見て、
「これがいい!これがいい!これしかない!」
と、店員よりすごい迫力で女房に迫り、
「ママちゃんが、好きなの選んでいいよ!」
と、口では言いつつも、これしかない、これを今買え的態度で言った。結果、机二台と二段ベットが翌日配達されるようになったのであった。『子供は喜び家駆け回り、ママは怒りで眉つり上がる・・・・。』


 
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