水流渓人エッセイ集「父さんに教えて」
 

第二章/五編


焼酎「島美人」!


 鹿児島に長島と云う地がある。熊本の県境に近く、鶴の飛来地である出水市の西に位置する島である。長島は九州本土と橋でつながり、その表情はのどかできれいな海に囲まれた島である。島内を走る道路は、殆どが坂道になり、傾斜地に人家が散在している。そんな長島へ家族5人で行く事になったのは、大阪時代の知人の結婚式に招かれたからだ。結婚式の2日前から、この地へ出向いた私達家族は、当然の如くキャンプをしたり、私の嫌いな海水浴を子供達としたりであった。ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツぶつぶつ・・・・・・・。 なんだか読み返してみても、まるで文章に力が出ないのである。
 いつもなら、こうである・・・・・・・・。
 今年の盆休みは、母の死もあり自宅待機が当然であるが、長女いわく、
「おばあちゃんのお墓まいりに行った時、おばあちゃんがお墓の中から『お父さんに夏休みはどこか連れて行ってもらいなさい!』って言ってたよ!。」
との事で、結婚式に招待されている鹿児島県の長島へ式の2日前より出かける事となった。もちろん、ママちゃんのステーションワゴンにはアウトドア用品を満載にしてである。長女の一言で、ずいぶん調子に乗ってしまった私は、お盆の事は頭の隅に丁重にしまい込み、生前の母は賑やかで笑いの絶えない人だった!と、勝手な解釈の元に、13日に花をかかえて墓まいりを済ませた。しゅっぱぁーつ!である。高速道路を栗野インターまで走り、大口市を抜け出水市へたどりついたのは午後3時頃だった。どこかに適当なキャンプ地を見つけようと、水俣市まで海岸線を走っていると、黒い雨雲とすごい雷になってきた。女房と顔を見合わせ、我家の禁句を私は言ってしまったのである。
「旅館にでもしようか!。」
女房も力無く
「そうしようか。」
と、言ってしまったのである。温泉付き安宿の手配が始まった。沿道の広告看板を見つけながら、車中より電話をかけ家族5人1万円にて商談成立、ボロい旅館だったが広い部屋と海岸端の景色が気に入った。
翌日は長島へ渡り、キャンプ場と海水浴場が隣接した小浜(おはま)でタープを張り、テーブルをセットし、食事と海水浴を楽しんだ。お盆というのに大した混雑もなく、まばらなテントサイトと、立つと足の先まで見える程きれいな海水浴場に満足した。
 ・・・・・と書き出すのであるが、なんとなく今回は大変なのであった。結婚式前夜から家族をホテルに残し、新郎の家で宴会なのである。島美人という25度の焼酎をたらふく頂き、昔話しに花が咲き、見知らぬ親戚関係者と挨拶を交わし、ご馳走を頂いたのである。その夜は、私だけ女房子供達とは違う式場のホテルで宿泊し、翌日の祝辞に備えた。大阪時代の懐かしい人達に会い、深夜まで会話が弾み楽しかったのではあるが、やはり遊ぶのに別の目的に付属させて遊ぶものでは無い!。何もかもが中途半端になってしまうのである。遊び中心タイプの私には、今回の遊びは不満足な結果に終わり、ストレスの無い私が、多少のストレスと疲労の残る休暇になってしまった。

 皆さんはご存知か?子供の頃、両手の平を合わせ握り、人差し指を立てて、音もなく相手の背後から忍び寄り
「かんちょーおう!」
と、叫びながら相手のお尻に指を突き刺す戯れ遊びを・・・。その
「かんちょーおう!」
を、どうも長女は相手が自分に示す好意の表現だと理解しているらしい。
「○○君は、いつも私に"かんちょう"をするっちゃが、私の事好きやっちゃネ。」などと、嬉しそうに言っているのだ。この行為を、好意の表現だと聞いたのには理由があった。
 先日の夜、子供達を寝かせようと寝室に連れて行こうとした時である。長女が突然言ったのである。
「お父さんとお母さんは、子供達を先に寝かして"チュー"したり"かんちょーおう"したりするっちゃろ!」私と女房は、顔を見合わせてしまった。長女は何か感付いているのだろうか?と思ってしまった。もし感付いているのなら『夫婦なのだ!』『愛し合っているんだ!』『それが自然のかたちなのだ!』とでも開き直って言うべきなのかと、6才の子供を前にしてたじろってしまった。理由を問いただし、多少はホッとした私と女房だが、最近の長女6才の質問にはドギマギする事が多い。
 以前、人体に興味を持ち、精子と卵子の写真を見て「これがお父さんの中にあって、これがお母さんの中にあって、結婚したから私が生まれたんだよね。」
と、言って喜んでいたが、最近はその質問にスルドさがある。
「なんで、精子は卵子に突き刺さるの?」
「精子はどうすると卵子の所に行くの?」
「お母さんのお腹にある卵子の所へ、お父さんのお腹の中にある精子をどうやって届けるの?」
と、質問するのである。そして、その卵子・精子の写真が図鑑の275ページに掲載されている事も疑問のようだ。いくら製本上の都合で、たまたま275ページになっていると言っても、まだ何か275ページには隠された秘密があると思っているのだ。
 皆さんはご存知か?扇風機の回転する羽根に、顔を近づけ、
「あー」
と、言うと、声が震えて聞こえる事を・・・。次女3才、扇風機声震わせ即興自作自演曲に凝っている様だ。風呂上がりのひとときに、よく歌い始める。だいたい、
「危ないよ!」
と、女房に叱られて辞めてしまうのだが、先日、あまりにも調子良く歌っているので、私と女房は黙って聞いてみた。よく聞いてみると、彼女の人生3年8ヶ月に修得したすべての言葉を用い、延々15分にも及ぶ大作を歌い上げた。
 皆さんはご存知か?ウルトラマンの存在を・・・・・。長男1才10ヶ月、ウルトラマンを『トゥマン』と言い、ウルトラマンの発するシワッチを『チュワッチ』と言いながら、私に襲いかかって来るのである。先日、彼がかなりの下痢の時も『トゥマン』『チュワッチ』が始まった。この時の彼の顔は真剣で、力も入っている。私にまたがりながら『トゥマン』ブリブリ『チュワッチ』シャーシャーと、天下のウルトラマンにも出来ない、見事な攻撃をしてくれた。
 それにしても、九州には焼酎と言う素晴らしい飲物があり、焼酎を通じてなんともなごやかな共通意識があり、喜びにつけ悲しみにつけ、人の集まる所には必ず焼酎の花が咲き、一人チビチビやる焼酎もよし、お湯割り・ロックよし、・・ブツ・・ぶつ・・ブツ・・グイッ。


 
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