水流渓人エッセイ集「父さんに教えて」
 

第二章/一編


ブンブンブン蝿が飛ぶ!


 経験や知識の豊富な人達と話をすると、非常に楽しくてついつい時間を忘れ、焼酎が進み、自分の遊びに対してもファイトが出てくる。しかし、遊ばない・遊べない・人の遊びを羨む人達と話をすると、まったく楽しくないし、時間の無駄だし、ついには遊ぶ私達の事を変な人間だと定義づけられてしまう。遊びが生活の中心にある私は、その為に一生懸命働いているのだし、その為に生活地盤を確立しているのだし、遊びの道具や活動資金に金を投じているのだ。他人の寸評にはまるで動じないが、蝿みたいにブンブンと噂話が飛び交うと、飽きれてしまう前に息の根が止まるほどに退治したくなるのだ。未だ自分の遊びに時間が足りない程なので、蝿退治は実行する暇がない。そして、その蝿なる人種の定義を、この水流渓人が述べておく。第一に、趣味がない。第二に、知識がない。第三に、噂話しか出来ない。第四に、行動力がない。第五に、遊び・買物に行っても金銭的にせこい。第六に、他人の物を借りる事が平気。第七に、作られた遊び場でないと遊べない。第八に、自分に自信がないので物を貰うと必ずお返しをする。ここまで、定義付けすると、何人か具体的な人物が、頭の中に思い浮かぶ事だろう。そうなのである!それが蝿なのだ。自分の遊びに余裕の出来た方は、是非、息の根が途絶えるほどに徹底的な蝿退治をされてはどうだろうか?しかし、本当の自分の遊びを確立している魅力的な人達は、蝿退治に時間を削く事すらつまらないと思うだろう!蝿の多い環境の中で、私達仲間の愛する自然環境の問題には、益々の努力が必要だろうし、本当の蝿は叩きつぶすべきだろうし、蝿でなくなる経験と知識を収得してほしい。遊んでほしいのだ。文句文章は、書いていてもつまらないので、話題を変更する事にする。
 先日、遊び仲間の集会があった。年に1回、総会と題して行っている行事だが、世の中で最高に気を使わなくていいキャンプなのである。それぞれが思い思いのスタイルで時間を過ごせ、魅力的な話を引っ提げたいろんな達人と出合えるのだ。今年も、またまた素晴らしい人間の発掘が出来て内心ニンマリ状態が続いている。文章にするとワクワクするような人材に出合えたのだ。カヌーと酒をこよなく愛し、顔の中程にある愛らしい瞳を輝かせ、会話の端々に知性と、経験と、しっかりした自己主張を匂わせる『人間:税田春介』である。翻訳を仕事としているらしいが、彼をとりまく世俗的な事はどうでもいいのだ。考えや、私の感じた印象が最高に興味深く思えてしかたないのだ。そして、私の綴った文章にいろいろな感想を言い、私と同じ活字依存症さえ匂わせるのである。たった一行の文章から、人生のなんたるかを悟れる人種に見えた。それでもって私と同種であれば、女房すきすき、毒舌傾向、うなずくが自分の考えを曲げる気持ちはまったくない、好き勝手他人洞察好きタイプのはずだ。絶対的に私と違うのは、私は朝まで酒を飲めない!と言う事だ。そして、もっと興味深いのは、この『人間:税田春介』の奥さんである。きっと『人間:税田春介』『男:税田春介』『夫:税田春介』の最大の批評家であるはずだ。この奥さんがいるからこそ、魅力的な『人間:税田春介』が形成され、朝まで酒が飲めるのだろう。その観点から書き綴られた、税田春介の妻が書く『人間:税田春介』を読んでみたいものである。そんな彼が、私が生涯忘れる事の出来ない言葉を、さらりと言った。
「なんでも、出来ないと決めつけてしまうとおしまいですよ。なんでも、出来るんだと思えば楽しいじゃないですか!」
彼の一言は、今まで生きて来た私の人生が、ずいぶん損したな!と考えさせられてしまった。翌日、下痢気味の『人間:税田春介』は手慣れたパドルさばきで、水面に鮮やかな色のスラローム艇を滑らせていた事をつけ加えておく。
 長女6才、『言いつけ』に対して相当の不満があるらしい。
「先生に言うかいネ。」
「お母さんに言うかいネ。」
等の言葉を聞くと、いつもムッとしている。なぜなら彼女は、それが問題解決にはならない事を理解しているからだ。あなたと私の問題は、他の人に言いつけてみてもダメダと我家では教えているからだろう。それにしても、6才の幼な心である!今彼女の中で、『言いつけ』状態を、どう処理しているのか、彼女が大人言葉を話せるものなら聞きたいものである。そして、まだ6年しか生きていない彼女が、一人前に自分の世界を持ち、足りない言葉で私に主張や抵抗をするのがたまらなく嬉しいのである。
 次女3才、天候不安定注意報継続中であるが、機嫌のよい梅雨前線南下の間に、こんな事まで出来るようになった!お姉ちゃんになったのだ!と主張を繰り返すのである。生のニンジンを食べれる様になった事、キムチを水なしで食べれる様になった事、虫歯の治療をしても泣かない事、石鹸で顔を洗える様になった事、幼稚園でお漏らしをしなくなった事、自分でシャンプー出来る様になった事、簡単に弟を泣かせる事が出来る事、たまにお姉ちゃんを泣かせれる事など・・・。
 幼稚園の園外保育でフェニックス・シーガイヤ・オーシャンドーム行きが計画された。事のなんたるかを理解出来ない次女3才であるが、付き添いで行く女房は違っていた。子供3人を出産した体に水着をお召しになり、20人行った父兄の中で4人だけがはしゃぎ回り、シーガイヤのドームにうすら黄色い歓声を上げ、我女房だけがワォータースライダーを滑ったらしい。同行した長男1才は他の人に預け自分の世界を満喫したようだ。その話しを聞いた私は、またまた女房に惚れ直してしまった。
 文頭で述べた、飛び交うブンブン蝿を手で払い除けながら、我家の夏計画は着実に進んでいる。中でも、長女6才の親無し2泊3日の旅行は楽しみだし、女房・子供3人10日間大阪里帰り計画は、パパちゃん独りで悲し楽しみだし、初の家族登山も、川下りも、そしていつものキャンプも楽し楽しみである。


 
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