水流渓人エッセイ集「父さんに教えて」
 

第一章/十六編


留守番犬的考察


 使用制限
@ 燃えるゴミ、燃えないゴミを分別し所定の袋に入れる。A 場内への車の乗り入れは、午後四時以降とする。B 場内からの車の撤去は、午前十時までとする。C 場内での車の駐車はテントサイト横の道路脇とする。D キャンプ場の出入りは午後7時までとする。などの説明を受け、大人二人・幼児三人の三泊四日分の使用料一万二千六百円也を支払い、家族五人のファミリーキャンプが始まった。
 場所は、大分県・別府市内より車を二十分ほど湯布院方面に走らせた、城島高原手前の『志高湖キャンプ場』である。湖面に傾斜する草地一帯がキャンプサイトになっており、テントなら予約なしでも大丈夫だ。危険な場所はほとんどなく、五才・三才・一才の我家には適していた。去年からの水不足で、湖には半分程しか水がなかったが、周囲が遊歩道になっており、朝晩の三十分程の散歩に丁度良かった。管理棟付近の設備の整ったサイトは、ゴールデンウイークも重なって、所狭しと色とりどりのテントが賑わっていた。のんびりしたいし、高額料金まで支払い、周囲に気を使い、狭い・騒々しい想いをするのは大嫌いなので、とにかく奥の奥まで行ってみた。水道2本、トイレまで百五十bと言う位置に広々とした草地があった!車も入るし、テントが素晴らしくまばらであるのだ。見ると、志高湖の湖面がキラキラ光り、管理棟付近の木立や、色とりどりのテントの向こうに、由布岳(豊後富士)と鶴見岳が見え、なんだか理想のロケーションとなった。

 キャンプ場を中心に、観光を楽しんだ。子供達が楽しみにしていた、アフリカンサファリ・マリンパレス・高崎山・露天風呂・別府『地獄めぐり』など、キャンプ場を早くに出発したので渋滞にも会わなかった。鶴見岳は、ロープウェイで登り、山頂までは徒歩二十分、今年の目標である、家族登山への足がかりが出来た。由布岳の景観は鶴見岳側より、久住や湯布院側からの方が、断然すばらしい事が判ったし、由布岳と鶴見岳の間を通り由布高原への道路は、まったく混み合う事もなかった。キャンプ場では、オモチャなしでも我が子供三人は、十分遊べる程、野外生活において成長していた事が今回の発見だったし、社交家長女五才は近くのテントまで出向いて、自分の通う幼稚園事情を演説していた。
 二日目の夜には、周囲の宴会で、大騒音になり、脳ミソをグチャグチャにかき回された。七時消灯五時起床の、健全三泊を志高湖キャンプ場で過ごした。
 四日目は女房の提案で、湯布院に立ち寄る事となったが、今までの観光地の入場料が原因で、手持ち金が足りなくなっている事が判明した。運良く土曜日だったので、一時間近くかかり郵便局を探し、事無きを得た。人間の心理は都合のいい物で、金欠状態は、湯布院や由布岳の景色までうら寂しく思え、通り行く人達までも冷たく感じる。郵便局の、キャッシュディスペンサーの現金取り出し口が、ツッツーと開口した瞬間、現金が黄金色に見え、外を見渡せば空の青さが嬉しいほどで、空腹感すら覚えた。女房の財布が満たされると、なんだか車まで快調に走る様で、残り一泊を過ごす為に、安心院を抜け国東半島を一周し、公共の宿『国東』へ到着した。この宿、部屋・景色・料理・サービス・料金どれをとっても大満足で、翌日、臼杵の石仏を見て帰宅した。

 動物病院で宿泊されていた、我が家の留守番犬『ルーティ』は恨めしげな顔でシッポをバタバタとさせ、冬毛から夏毛へと変わり始めていた。


 
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