水流渓人エッセイ集「父さんに教えて」
 

第一章/二編


我家=4女+1男 !


 宮崎での生活がスタートした。私にとっては、生まれ育った故郷であるが、やはり女房にとっては、多少なりとも抵抗があった。関西弁が、宮崎弁圏内ではどうしても違和感があるし、人前でも大声で子供を叱る。性格的にも、『柔軟』とか『要領よく』とか言う言葉が程遠く、自分の気持ちに忠実なのだ。お愛想を言えない性格で、ダイレクトに物事を言ってしまうのだ。この彼女が、宮崎の土地で、いったいどうやって生活していくのだろうか?しかも、私の母親と同居である。私自信、大変興味があった。しかし、休みという休みは、山へ川へ出かけ、三ヶ月の間に友人や知り合いが大量に増え、自宅での集まりや、家族で友人宅へ出向く事が頻繁になった。女房は口を開く間もなく、多くの知人が増え、私の人と知り合いになるスピードに脱帽していた。大阪では考えもつかない、買い物に出たり、外に出たりしただけで、知り合いに会うと言う状態に目を回していた。それがそれがである。半年も過ぎれば、まるで何十年も前からここに住んでいる様な顔で、近所同士で出来ている班の、葬式手伝いや忘年会やらの行事に参加し、翌年には、班長までこなしていた。そして、第二子を妊娠した。

 長女一才は、生まれついてのO脚であった。だいたい赤ん坊の間はそうらしいが、二才近くなった今もかなりひどかった。『しばらくすると治る。』『すこしひどい。』などと、いろんな意見を聞きながら、親戚から宮崎市内の大江整形外科を紹介された。おじいちゃん先生とその息子先生で開業されている。落ち着いた優しい声で、私達に「大丈夫でしょう。」と、おじいちゃん先生は静かに話された。その十日後、長女の両足には、膝から足の先まで鉄とマジックテープで出来た、矯正用のギブスがつけられた。仕事を終え家に戻った私に、廊下をコツコツゴンゴンさせながら、長女が嬉しそうに抱きついて来た。かわいそうで涙が出そうになった。どうして自分の子供だけこんなに・・・!と、どうしても考えてしまう。子供自身、そのことを苦痛にもしていない態度や、まだなにも分からない年齢である事が、重ねて可愛そうなのである。次の日曜日、買い物に出かける前、私は女房に対して、
「かわいそうだからズボンをはかせろ。」
と、言った。女房は、
「スカートのままでギブスは出したままでいいやんか!」
と、私に言い、
「治す為にギブスをしてんねんから、何も恥ずかしい事はないやんか。ひょっとして、あんた自身が恥ずかしいんとちゃうの?親が自分の子供を恥ずかしく思う事の方が、ずっと可愛そうやわ。」
とも言った。私は、平静を装っていだが、内心ハッとしてしまった。それからは、この矯正ギブスをつけたまま、キャンプでも何でも平気で行った。そして、その年の暮れに女房は、大きなお腹と長女を抱え、実家大阪に出産の為の里帰りをした。

 他の男どもはどうだか知らないが、私は寂しかった。他の男はどうだか知らないが、私はすぐにでも女房・子供に会いたくなった。他の男どもはどうでもいいが、私は大阪に毎晩電話をかけ、子供の声を聞きたいふりをして女房とも話をした。貞淑で女房に惚れぬいた、寂しくかわいそうな亭主ぶりをここで述べておく。

 その間、私は仲間達と作っている遊びのクラブで、ある計画を準備していた。自然大好きの仲間達なのだから、何か環境問題にでも取り組むべーや、とばかり、熱帯雨林保護の講演会を計画したのである。始めは、我街の国際交流員としてアメリカから来ているアラン・ベアーさんからの提案だった。まあ、百人位でも・・との話が、どうせやるのなら!とばかり、会場は四百人規模・ポスター準備・チケット販売・各団体からの寄付募集・テレビやラジオへのアピール・周辺市町村でのミニ講演、そして実行委員長に山登りやアウトドア大好きおじいちゃん:日高不二夫氏にお願いした。あくまでも、遊びのクラブ主催という所に意義があるので、日高不二夫氏には、そのまま当クラブの会長まで頼んでしまった。毎夜毎夜打ち合わせにエネルギーを費やし、乗りかかった舟とばかりクラブ員の底力を出した。そして、ベアーさん紹介のベス・リシェロン女史がやって来た。カナダ出身のベスさんの講演は、サラワクの原住民と共に森林伐採反対デモまで体験し、スライドを通し原住民の声をリアルに伝えた。通算三ヶ月の期間を費やし、予想を上回る参加者・寄付金を集めて私達は燃え尽きた。その間、女房はまたまた元気な女の子を出産し、私に第三子チャレンジの意欲を決定づかせた。男の子が欲しい!
次女三ヶ月、先天性の股関節脱臼と診断された。またギブスである。しかし、めげない!なんでもするし、どこへでも行くのだ。現在、我家は、ばあちゃん+女房+長女+次女=女4人、そして私=男1人である。


 
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