【第1回】 『自分にあったラケットを使おう!』 (2004.6.14掲載 研究部門 寺本圭)
テニスは、ラケットとボールさえあれば楽しむことができるスポーツです。たとえ、練習相手がいなかったとしても壁に向かってラケットでボールを打つことで練習をすることができます。テニスをする場合、プレーヤーの皆さんは、ある決まった形態の中からしかボールは選べません。サッカーボールやバスケットボールではテニスをすることはできないわけですから、テニスのプレーに直接的に関わるもので、自分の意思である程度の選択肢が用意されているものは、ストリングスを含んだラケットしかないのです。今回は、このラケットの特性について考えていきます。自分にあったラケットを選ぶことは上達への近道となるのです。
ここ数年で、ラケットは劇的な変化をしてきました。木製のラケットからアルミ製へ、さらにはカーボンやチタンなどを素材としたラケットが登場してきました。素材の違いはボールとの接触時間に影響を与え、その結果としてボールスピードやボールのコントロールに影響を与えます。また、同じ素材であっても、その加工過程のちがいによって反発力が強いものや、しなりが少ないものなど様々なタイプのラケットが作り出されています。パワーを求める場合には、反発力が強く、一般的に"やわらかい"といわれるものを選択し、コントロールを重視したい場合には、しなりの少ない"かたい"といわれるラケットを選択すると良いでしょう。
木製ラケットが主流であった頃のラケットの重さは、おおよそ400gもありました。現在使われているラケットの平均的な重さが200g程度ですので、当時の選手たちは、今使われているラケットを2本、しかも同じ手に持ってプレーしていたということになるのです。現在使われている同じ素材のもので、重さによる特性のみを比較して考えると、重いラケット(350g〜)では、ラケットそのものから作り出されるパワーは、強いもののスイングスピードを上げるという点では難しくなります。また、これとは逆に軽いラケットでは、スイングスピードは速くなりやすいのですが、ラケットが作り出すパワーは小さくなっていきます。サーブなどスイングスピードが影響を受けやすいショットでは、軽いラケットの方が効果的である一方ストロークやボレーなどでは重いラケットの方が効果的であるといえるでしょう。
この他にもラケットの長さやフレームの厚さなどによる違いもありますが、今回は素材と重さの二点について焦点をあてました。コーチやお店の人に相談することは大事なことですが、まず自分自身について知ることが最も重要だといえます。自分の特徴を知ったうえで、自分にあったラケットを探すことで、全幅の信頼を置けるラケットとめぐり合うことができるでしょう。
【参考文献】
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and Technology, pp. 43-48
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Mitchell, S.R., Jones, R. and Kotze, J. (2000). The influence of
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