アクセス解析
カウンター

引きこもりニート列伝その21 ティベリウス  NF


引きこもりニート列伝その21 ティベリウス(前42〜後37)

 今回は、オクタヴィアヌスの後継者としてローマの第二代皇帝となったティベリウスです。

略歴
 ローマ皇帝、在位14〜37年。母がオクタヴィアヌスと再婚し、彼の下でアルメニア遠征・ラエティア遠征などで活躍。アグリッパの娘と結婚していたがオクタヴィアヌスの命令でその娘ユリアと再婚。
 アウグストゥス(オクタヴィアヌス)の孫が二人とも夭折したため後継者として養子となりドイツ北部のマルコマンニ族やパンノニア・ダルマティアで反乱を鎮圧、更にゲルマン人も破り国境を安定させた。アウグストゥス死後に帝位につき綱紀の粛正、緊縮財政を行い行政の改善、食糧供給の安定化、軍規による軍の規制、属州支配安定化を成し遂げた。陰謀に数多く巻き込まれたためかローマをはなれカプリ島へ退くが政務の実権は握り続けていた。


 アウグストゥスの妻の連れ子であった関係もあって取り立てられ、各地で指揮官として優秀な働きを見せていたティベリウス。アグリッパの死後にはアウグストゥスの片腕として期待されて娘婿となり、皇孫が成長するまでの「中継ぎ」ではあるものの後継者と目されるまでになっていました。しかし、妻ユリアとの不仲やゲルマン人対策についてのアウグストゥスとの方針の違いといった事が彼の心に圧し掛かっていたようです。これが積もり積もったのか36歳の時、皇帝よりアルメニア方面への転任を命じられますが断固としてこれを拒否し慰留も断って強引に引退。7年余りを只一人でロードス島に隠遁して過ごす事になります。引退するにあたって後任を推薦するといった事後処理も全くない状況で、いわば敵前逃亡同様といって過言ではありません。その結果、ローマは有能な前線指揮官を失っただけでなく、後継者問題にも直面し皇孫たちに急遽実績を積ませ箔をつける必要が生じる事態となりました。当然、アウグストゥスは激怒し元老院議員など彼の地位・特権を剥奪しティベリウス
が息子の成人式に立ち会うためローマに戻る事を希望した際も一市民としてのみの待遇をしています。ま、重責にかかわらず任務を放擲した訳ですから無理ありませんね。
 
 それでも、皇孫ら血縁者に次々に先立たれたアウグストゥスはやむなくティベリウスを後継者として選ぶ事になります。広大なローマを任せられる力量があるのは彼しかいないとの判断でした。それでも自分の血縁者への相続には拘っていた様で縁戚をティベリウスの養子にさせていますが。その期待にたがわず、ティベリウスは後継者として国家と帝政を安定させました。しかし彼の気質はカエサルやアウグストゥスと比べて官僚的で、パフォーマンスにより人々の支持を得る事は不得手でした。人間関係や政治における暗闘に疲れてか彼の人間嫌いは深刻なものとなり、治世後半にはカプリ島の別荘で過ごし首都には足を踏み入れる事がなくなりました。その時期にも実権は握り続けており国家運営そのものには破綻をきたす事はありませんでしたので、この時の「隠遁」を「引きこもり」と呼ぶ事は難しいでしょう。しかしこうしたティベリウスの態度はローマ市民の不評をかう結果となり死後数百年にわたるまで悪名を受けることになるのです。

おわりに
 彼は皇帝にとって義理の息子という究極のコネによって歴史の表舞台に登場する事になります。能力には問題のない人物でしたが、壮年期に突然引きこもった事から分かるように対人関係を苦手としており特に咄嗟の機智やパフォーマンス、猫を被る態度などは不得手でした。その結果が長きに渡る悪評。正当な評価を勝ち取るためには、対人能力が欠かせないということですかね。彼の場合はやや極端ですけど。

参考文献
ローマ人の物語 14〜18 塩野七生著 新潮文庫
ローマ皇帝伝(上) スエトニウス著 国原吉之助訳 岩波文庫
古典世界文学21 タキトゥス 筑摩書房
年代記(上) タキトゥス 国原吉之助訳 岩波文庫
世界の歴史5ローマ帝国とキリスト教 弓削達 河出書房新社
皇帝たちの都ローマ 青柳正規著 中公新書
エンカルタ百科事典 マイクロソフト


←引きこもりニート列伝その20
初期の隠遁茶人たち
発表一覧に戻る 引きこもりニート列伝その22→
良寛
ダメ人間目次に戻る