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引きこもりニート列伝その19 タレス・ディオゲネス・ヘラクレイトス  NF


引きこもりニート列伝その19
タレス(前625頃〜前546)・ディオゲネス(前412頃〜前323頃)・ヘラクレイトス(前540頃〜前475頃)

 以前、ソクラテスやプラトンをこのシリーズで扱いましたが、今回は彼ら以外の比較的有名なギリシア哲学者についても言及してみたいと思います。

タレス
略歴
 ギリシア哲学の祖といわれ、七賢人の一人に数えられる哲学者。万物の根源を水と考えた。万物は水から生まれ、水にもどっていく。自然の万物を超自然的な神々によって説明するのが一般であった時代に、世界を物質的原理から説明しようとした画期的な考えであった。その一方で魂の不死を唱えてもいる。現在で言う天文学的分野に優れ、観測の結果から日食を予知、太陽・月の大きさを計算して推定、影の長さからピラミッドの高さを推定といった成果を上げている。幾何学においても、直角三角形が斜辺を直径として円へ内接することに気づいたとも言われている。


 タレスの生涯については、諸説あり分からない点も多いようです。政治活動に携わったという話もありますが、その一方で国事から離れて世捨人として一生を過ごしたともいわれています。
 また、結婚して息子を残したと言う説がある一方で、生涯を独身ですごしたともいわれています。それによれば、母親が若い頃に結婚を強く勧めた際に「まだその時期ではない」と答えて拒否。年を重ねた後にもう一度強く勧めたところ、今度は「もはやその時期ではない」という答えが返ってきたと言います。
 哲学者というのは通常の人と比べ変わった例が多いと言われますし、古代ギリシア哲学者全般にニート的な性格が強いとも言われますが、その始祖にこうした伝承が残っているのは何となくなるほどと思わされるものがあります。

ディオゲネス
略歴
 ギリシアの哲学者。シノベで生まれアテネでソクラテスの弟子であるアンティステネスに学んだ。簡素な生活を良しとして禁欲を重んじた。社会的因習を嫌い、しばしば世間の人々に毒舌をぶつけていたが、アテネ市民からは愛されていた。「徳」を重視しそれを生涯にわたり訓練して高めることを重んじる。また、市民国家の法を重んじており文明生活を送るためには不可欠のものと考えていた。そして理想の国家は世界国家であると唱えている。


 ディオゲネスは物欲を否定し簡素な生活を送ったと言われます。彼は古い上着を二重折にして使用し身体をそれで包んで眠れるようにしたり頭陀袋を首から提げて食物を入れたりしていました。また、どんな場所でも構わず食事をしたり眠ったり、自慰行為さえも平気で行ったと言われています。寝泊りするにあたっては神殿の柱廊や保管庫を住処とし、あるときは大樽で暮らした事は良く知られています。人から施しを受ける事で食いつないでいたようですが、財産家クラテウスから招きを受けた際には「クラテウスのところで贅沢なご馳走をいただくよりも、アテナイで塩をなめている方をわたしは望みます」と答えて断っています。
 ディオゲネスとしばしば論争したプラトンは彼を「狂ったソクラテス」と評していますが、確かにディオゲネスはソクラテスの一面を誇張したような存在と言えるようです。しかし、気候の暖かいギリシアだからできた事で、日本で同じような事をするのは難しいものがありそうですね。

ヘラクレイトス
略歴
 エペソスで生まれたギリシアの哲学者。万物の根源を火であると考えた。また、「生成」「流転」を重視し、全事物の基礎にある根本とした。加えて、「徳」は宇宙の合理的な法則に人が服する事で成ると考え、当時の民間信仰の思想・儀礼を批判していた。


 ヘラクレイトスは元来人間嫌いでありましたが、友人が追放されたのを切っ掛けに祖国の政治に絶望しアルテミスの神域に引きこもり子供たちとサイコロ遊びに興じるようになりました。不審に思った人々に「お前たちといっしょになって政治のことにかかわるよりは、ここでこうしている方がよっぽどましではないかね」と答えたといいます。
 晩年にはそれが高じて山に篭って人との交わりを絶ち草・葉を食べて過ごすようになったそうです。そんな生活をしていたものですから栄養失調に陥ったか中毒になったかで水腫ができるまでに至ってしまいます。医師にこれを何とかできないか打診するも満足な答えが得られず、身体に牛糞を塗りたくって身体を熱する事で体内から水を追い出そうとしたものの上手くいかず命を落としてしまいました。
 人嫌いで山林に引きこもる心情はよく理解できますが、その山の草などを食べて生きていくという所まではとても真似できないです。感心すべきなのかあきれるべきなのか。ともあれ、引きこもりは対人能力に問題を抱えている事をよく指摘されますし、哲学者にもそうした例が多いといわれてはいますが、歴史に名を残すような人物でこれが原因で身を滅ぼした例は余り多くないように思います。

おわりに
 今回、彼らを取り上げたのは「引きこもりニート列伝」と銘打っては見たものの全体的に引きこもりの割合が少ないと思ったのもあります(ディオゲネスは引きこもりとはいえなさそうですが)。それにしても昔の哲学というのは、思想関連何でもありだったんですね。今で言えば科学・数学に分類されるようなものも少なくありません。しかし、今回の面子もなかなかな連中でした。流石哲学者というべきなのか、それとも流石古代ギリシアというべきなのか、迷うところですね。

参考文献
ギリシア哲学者列伝(上)(中)(下) ディオゲネス・ラエルティオス著 加来彰俊訳 岩波文庫
ソクラテス 田中美知太郎著 岩波新書
世界の歴史4ギリシア 村田数之亮・他 河出書房新社
世界の歴史5ギリシアとローマ 桜井万里子・本村凌二 中央公論社
エンカルタ百科事典 マイクロソフト


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