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出雲大社、縁結び以外の専門  NF


はじめに
 出雲大社といえば、「縁結び」。御利益の「分業」が出来てからは、そういった一般認識があるように思います。しかし、出雲大社にはそれ以外にも得意分野があるようですね。

大国主命
 出雲大社の祭神が大国主命である事は、多くの方はご存知だと思います。彼に関しては、スサノオの末裔である事や、「因幡の白ウサギ」や兄達に謀殺されたが蘇生したり黄泉国でスサノオの娘と婚姻した事などが神話から知られています。これらのエピソードを良く見ていると、興味深いことが分かります。サメに皮を剥がれた白ウサギに「蒲黄」を用いて治療し、自身が殺害された際には赤貝・蛤の粉末・貝汁を火傷に塗る事で蘇生…、と医療行為による治療との関連が目立っているのです。そして、彼と協力して国づくりに励んだと言う少名毘古那神も医療の神としての性格を持っています。大国主命には、医療の神としての性格がありそうです。

出雲と医療
 出雲の国には、仏国寺・万福寺・一畑薬師と薬師如来を本尊とする寺院が多数認められます。こうした寺院は従来現地で祀られていた神と共通した性格(得意分野)の仏が本尊とされる傾向がある(神道、仏教共に元来の信仰を引き継いでいるといえます)事を考えると、出雲地方には医療関連、それも先進医療との関連が古代には強かった事が伺えます。出雲半島は、沿岸の対馬海流や地元の良港の存在もあって古くより大陸との交流が盛んであったとされています(現在でも、大陸からの漂流物が多く見られるそうです)が、朝鮮半島からの渡来人などにより大陸の先進文化が多くもたらされたことは想像に難くありません。中でも、人々の生活・寿命に直結する先端医療技術は非常な尊敬の眼で見られたと思われます。こうした関係から医療関連の信仰が生まれたのではないか、そう考えられています。

来世の神
 他に大国主命が黄泉国に趣いた時、そこに祖先であるスサノオが存在した事も注目に値します。スサノオが母・イザナギを慕って黄泉国に趣く事を希望した事は神話から分かりますが、こうした事から来世と強い関連があるとされています。実際、平田篤胤の提唱した復古神道でも大国主命が幽冥界(死者の世界)を担当すると定められているのです。
 なぜ出雲が来世の世界、とされたのかは明らかではありません。大和から見て出雲は日の没する方向にあるためだとも、大和の出雲への畏怖が関わっているとも言われています。後、紀州熊野も来世に繋がる世界とされていますが、出雲地方と熊野地方には共通する地名が多い(※)事が指摘されており両者は文化的に共通の先祖を持つのではないかとも言われており興味が惹かれます。ひょっとすると両社の共通性が関係しているのかもしれません。更に言えば(熊野にも言えることですが)全国共通の傾向として海の彼方を「常世」が存在するとして神聖視される例が多いのですが、出雲にもそれが当てはまるのだと思います。

その他の専門分野
 大国主命の祖先であるスサノオは、高天原を追放され出雲に下りてきた時にヤマタノオロチを退治してクシナダを救出した事で有名です。ヤマタノオロチは蛇行した川の流れ、クシナダは農耕を象徴すると言われています。また、ヤマタノオロチから出てきたとされる宝剣はこの地方の製鉄を表すとされています。大陸からの先進技術を利用して、水資源を活かし農耕が発達し鉱山を利用し製鉄が育った事を表しているのでしょう。また、大国主命は奈良県・大神神社(三輪山が神体)などの祭神でもあり、山の神霊の象徴的存在であった事が伺えます。国つ神として国づくりに励んでいた逸話も残っており、現地の神として国づくりの守護神とされていたのでしょう。
 また、神仏習合が進んだ後世には、「ダイコク」とも読める関係からか大黒天と同一視され商売の神としても信仰されるようになりました。

おわりに
 日本の神の得意分野は、一つとは限りません。出雲大社も縁結びだけではなく医療の神であり、黄泉国と関連の強い神であり、農業や国づくりの神でも商売の神でもあった訳で。しかし、そうした神の性格が太古の歴史事実を何らかの形で反映している事もあるようですね。何とも興味深いです。出雲大社と言えば大和政権との暗闘やら何やらという説も耳にはしますが、現時点では著者の手に余るので今回は現世利益の考察にとどめておきます、あしからず。

※ 出雲地方には熊野、美保、粟島、須佐神社、速玉神社、伊達神社、加多神社、日御崎、比田、出雲郷といった地名が存在する一方で熊野地方にも熊野、美穂、粟島、須佐神社、速玉神社、伊達神社、加太神社、日ノ御埼、日高、出雲村が存在する。

参考文献
日本の聖地 久保田展弘 講談社学術文庫
海辺の聖地―日本人と信仰空間― 上田篤 新潮選書
神道の逆襲 菅野覚明 講談社現代新書
古事記 倉野賢司校注 岩波文庫
出雲神話 松前健 講談社現代新書
聖地の想像力 植島啓司 集英社新書
エンカルタ百科事典 マイクロソフト


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