詩4 35篇+100:06.7−07.4

 

 

黄泉の人/縁/ピンポンぴあの/ピンポン・ジャンプ/夜顔

ツインテール/夏の終わりの日/秋の始まりの日/触れないで/気になる/気にする

白夜/歌/秋の七草/見つめ合う/隠れた月

恋煩い/パンプキン・パイ/夜景/セレンディピティ機織札譽鵐妊ピティ

ユメノソラ/青龍/朱雀/白虎/玄武

人見知り/ピンクのパンダ/サイズ/冷たい雨の降る幸せな日曜日/春の別れ

5年後のあなたへ/つぶやき/新幹線ホーム/花曇り/重い女の想い

即詠2行詩100篇

 

 


 

   黄泉の人

 

雑踏を歩いていて

「それは違うよ」って声が聞こえた

びっくりして立ち止まって

周りを見回したけれど

誰が言ったのかわからない

 

あの人は空のずっと遠くにいるのか

あたしの心の中にいるのか

世界の隅々まで探しても

会うことはできない

 

その日はどこかぼんやりして

最近のあたしのことを話した

きっと知りたかったんだろうって思って

でも、いつの間にか気持ちが軽くなった

今でも助けてくれるんだね

 


 

   縁

 

なぜ涙が出てくるんだろう

気持ちが抑えられない

初めてのドライヴなのに

何気ない話をしていただけで

 

明るい湖面を見ていると

気分が落ち着いてきて

肩を抱かれているのも自然に感じた

ふだんなら軽く思われそうで

嫌がるはずなのに

 

あなたはそんなあたしの様子を

気にするふうもなく運転してる

なびかないって評判のあたしとしては

ちょっと癪で困らせたくなる

 

でも、もう一度泣いたら

あたしから言ってしまいそう

ずっと見ていたい横顔だって

 


 

   ピンポンぴあの

 

ピンポン玉がころがった

ピンポン、ポンピン

ぴあのの上でころがった

 

やわらか、ふわふわピンポン玉

白いおなかで跳ねまわる

人を食べちゃう、ぱくぱくぴあの

赤い舌で捕まえる

 

ピンポン玉に気を取られ

うかうか、音符がこぼれ落ち

ころころ、指がころんだら

ぴあのがにんまりほくそ笑む

 


 

   ピンポン・ジャンプ

 

ピンポン玉が逃げ出した

君がお昼寝してる間に

みんなで40と2個

広い野原に散らばった

あっちでぶつかり

こっちでころがり

いや、もうそれは大騒ぎ

 

サッカーにラグビー

お手玉にスイカ割り

お陽さまの横で跳び回る

目玉焼きにドーナッツ

ミンチボールにサラダボウル

頭からしっぽまで

おなかいっぱい、食べつくす

 

いたずら放題、虹色ピンポン

夢の中まで跳ね回る 

ピカッと開いた雲の穴

2つと40、舞い上がり

あっちへ押し合い

こっちにへし合い

ソーダの泡が消えました

 


 

   

 

   夜顔

 

夜に咲く花は強く匂う

 汗ばんだ浴衣が裾にまとわりつく

色は白く月明かりに映える

 男たちが振り返り息を潜める

蔓を長く伸ばし絡みつく

 鼻緒がきつく素足に食い込む

 

飛ぶ虫、這う虫が集まる

 あたしの腕はいつも冷たい

短い夜を味わい尽くすように

 指が探り当てるどこよりも

物静かに出入りする

 誰でもない誰かを抱く

 

湿り気をたっぷりと含んだ 

 そうは見えないでしょうね

都会の薄明るい夜空を

 可憐な見かけを裏切る素顔は

夏の雲がなまめかしく動いている

 あなたの欲望の化身かもしれない

 

 


 

   ツインテール

 

あなたはあたしのことを

かわいいって言ってくれる

かわいくないよって

怒ったようにあたしは言う

あなたの視線の向かう方を

ずっと気にしてる

 

暑いねってあなたが言う

夏だからねってあたしが答える

あなたがあたしの髪を引っ張る

腕の中に抱かれていく

 

恋ってよくわかんないね

一日中一緒にいても

帰りの電車の中でさみしくて

メールを打つのを途中で止めて

そっとため息を吐く

髪の毛に手をやりながら

 

 


 

   夏の終わりの日

 

夏の終わりの日に君は生まれた

時々流れる風が涼しくて

まぶしい陽の光がやわらいで

華やかで寂しげな表情を見せる

 

「また一つ年を取っちゃった」

「そんなことないよ」

ぼくの誕生日のときとセリフを入れ替える

愛おしさがこみあげてくる

 

どっちのケーキを食べるのか

じゃれあうように言い争いをしていても

遠くに行ったりしないでと思ってしまう

君が生まれたばかりの青みがかった目で

高くなった空を見ていたからだろうか

 

 


 

   秋の始まりの日

 

秋の始まりの日にあたしは生まれた

きっとこの朝のように青く

静かに始まったんだろう

ひんやりとした風が

体の火照りをさましてくれる

 

「今日は一日いっしょにいるよ」

夏の間、あたしをひとりぼっちにした

埋め合わせをするようにあなたは言う

くすくす笑いながらあたしはもう一度

あなたの首に腕を巻きつけていく

 

明るいけれど、やわらいだ

陽の光の下を歩こうか?

きっと今日の世界は特別だから

それとももう少しお互いを

毛布の中に探しに行く?

 

 


 

   触れないで

 

もうあたしに触れないで

あたしの弱さを教えないで

変わろうとして変われない日々は

もう終わりにさせて

あたしの心を締めつけないで

お願いだからあたしを抱かないで

 

あなたはやさしい人

ずっとあたしを見守ってくれる

あなたは強い人

いつまでも待っていてくれる

あなたはずるい人

終わりだとは決して言わない

 

なまぬるい風が体にまとわりつく

もうノースリーヴは着れないけど

秋物のニットじゃまだむし暑い

どっちつかずの行ったり来たり

季節もあたしも空も心も

 

苦しい気持ちと独りぼっちの寂しさと

どちらをあたしは望んでいるの?

ひまわりのように明るいって言われた

あたしはどこに行ってしまったの?

光も届かないこの深い淵から

いつになったら脱け出すことができるの?

 

 


 

   気になる/気にする

 

あなたは空気のような存在

子どものときからずっとそばにいる

夜中でもいつでも長電話の相手をしてくれる

あたしが誰と付き合って

誰と別れたかなんでも知っている

 

同い年だけど兄弟のいないあたしには

仲のいいお兄さんのような

たまにはかわいい弟のような

お互い何の気兼ねもなかった

 

急に冷たい雨の降ったあの日

あなたが掛けてくれたジャケット

差し掛けてくれた傘

歩道の小さな水たまりに広がる雨の輪

 

ずっと包まれていたいなって

そう思ったとたんあたしは

頬を赤く染めていた

……あなたはどう思っていたのかな

 

 


 

   白夜

 

夢の中のあなたは

少しさみしそうな顔をしていた

何か言おうとしていたのに

明け方の冷え込みのせいで

あたしは目が覚めてしまい

窓を明けて外を見る

 

夏至の頃には北欧では

陽は地平線の上をブランコのようにかすめ

妖精たちが森のあちこちに見え隠れして

恋をしなきゃいられない気分になるんだって

 

でもさ、別にいいんだよね

白い風が秋を色づかせて

長い夜がとまどいをせつなさに変えたから

今すぐあなたに会って

涼しげな瞳を見つめながら言うの

おとぎ話の続きを始めようよって

 

 


 

   歌

 

あたしにとって音楽は水のようなもの

朝起きて渇きを癒すように

ベースの音を体の中にしみ込ませる

湖に波紋が広がり霧が晴れていく

 

長い地下のトンネルを走る列車の中で

シリコンチップから吐き出される音楽を

あたしは口を噤んで聴いている

周りの人間が放つノイズが

入り込むのを堰き止めようと

 

一日が着古した下着のようにくたびれた頃

あたしはピアノの音に手を伸ばす

キラキラ輝きながらこぼれ落ち

潮の香りが立ちのぼって

あたしは透明になっていく

 

 


 

   秋の七草

 

ね? 秋の七草って言える?

 せり、なずな、ごぎょう、はこべら……

それって春の七草じゃない

 そうだっけ? じゃあ、何?

えっと萩でしょ、ススキでしょ

 ススキって食べれるの?

秋の七草は食べないの

 お粥にしないの?

しないよ

 じゃあ、要らない

 

食べたりするんじゃなくて見るものなの

 草なんか見てどうするの?

桔梗とか撫子ってきれいじゃない

 そう……かな

女郎花とか藤袴とか

 どんなの?

さあ?

 さあって。見たことないの?

ないよ。

 自分で言っててしょうがないなあ

だったら……探しに行こうよ

 今から? まだ夜中なのに?

うん、朝露に濡れたあたしたちの七草を

 

 


 

  見つめ合う

 

いろんな困難や障害を乗り越えて

何度も行き違いや仲たがいをして

でも、やっとお互いの気持ちに気づいて

夜景をバックに見つめ合う二人

 

って、映画のラヴシーンとは全然違って

合コンで消去法的に付き合い始めて

別れる理由も積極的にはなくて

何より相手がいない状態がお互い怖くて

見つめ合うと吹き出してしまう二人

 

ホントはちょっとドキッてしたけど

少なくともあたしはね

でも、あたしからは言ってあげないから

一回くらい好きだって言わせてからじゃないとね

 

 


 

   隠れた月

 

ぼくのベッドを月が訪れる

隙間だらけで、がらんとしているのを

憐れんでくれたのか

白い光はシーツも温められないのに

 

こんな遅い時間だけど

あいつもあの月を見ているだろうか

誰かに抱かれてあえぎながら

たった一人でそっと口笛を吹きながら

 

大きな雲が流れていく

どうせ月を覆ってしまうんだったら

もうこんなところに来るなよって

伝えておいてくれ

 

 


 

   恋煩い

 

ねえ、だいじょうぶ?

最近、様子がおかしいよ

ご飯のおかわりもしないし

好きなアイスも食べなくなって

ため息ばかりついている

 

ダイエットしてるの?

だから機嫌が悪かったりするのかな

ほうっておいてよって

怒ってものを投げつける

ほらほらそれが心配なんだ

 

ああ、そういうことなんだ

だったら告白しちゃえばいいじゃない

悩んでたっていいことないよ

言えれば苦労はしないって?

じゃあ、ぼくが代わりに訊いてあげる

 

……気がつくと天使は消えていて

それから何回お昼寝しても帰って来ない

ダメならダメでいいから戻っておいで

これ以上、心配事を増やさないで

 

 


 

   パンプキン・パイ

 

大きなかぼちゃを買った

ジャック・オー・ランタンを作り

中身でパンプキン・パイを作った

 

お湯でぐらぐらゆでて

クリームとシナモンとナツメグを混ぜて

玉子といっしょにミキサーにかける

 

パイ生地に流し込んで

オーヴンでじっくり焼くと

とっても甘いにおいが誘う

 

それをテーブルの上のランタンが見てた

ちょっとゆがんだ三角の目で

鼻も口もぽっかり空けて

 

まわりが暗くなって

ローソクを入れて玄関にぶら下げた

オレンジの光がゆらゆら招く

 

子どもたちが帰って来たら

パンプキン・パイを食べよう

それまで夜道を照らしておくれ

 

子どもたちはまだ帰らない

きっとあちこち歩いているんだろう

ローソクはもうすぐ消える

 

 


 

   夜景

 

海岸線に沿って

夕陽から逃げるように飛んで

飛行機は帰って来る

無数の光が集まる東京に

 

光の一つ、一つに人がいて

働いたり、遊んだり

話をしたり、ため息をついたり

何かを探すように見入ってしまう

 

湾の両側にあいさつするように

旋回してくると

飛行機はもう地上に近づいて

あたしたちを夜景の中に溶かし込む

 


 

   セレンディピティ

 

幸せは思いがけないところにある

セレンディップの王子様は旅に出た

怪物を退治する秘法を探して

知恵と勇気と幸運に恵まれた3人の王子様

 

セレンディップの王子様は旅に出た

秘法はついに見つからなかったけれど

知恵と勇気と幸運に恵まれた3人の王子様

素敵なお嫁さんを見つけた

 

秘法はついに見つからなかったけれど

怪物を退治する秘法を探して

素敵なお嫁さんを見つけた

幸せは思いがけないところにある

 

 

 * 「セレンディップの3人の王子様」に出てくるパントゥーンという詩形を真似て作ってみました。

   ABCD/BEDF/ECFAという形がおもしろいので、もうちょっと使ってみます。

 


 

   セレンディピティ

 

恋は探しても見つからない忘れ物

いつの間にか樹々の葉はすっかり落ちてしまった

毎日が一生懸命だったから

冬がもうそこまで来ているのも気づかなかった

 

いつの間にか樹々の葉はすっかり落ちてしまった

あなたがずっと見ていてくれたことも

冬がもうそこまで来ているのも気づかなかった

ふと青空を見上げたら見えないものが見えてきた

 

あなたがずっと見ていてくれたことも

毎日が一生懸命だったから

ふと青空を見上げたら見えないものが見えてきた

恋は探しても見つからない忘れ物

 

 


 

    ユメノソラ

 

 山も川も原っぱも森も東京にはない

 だからそうしたもの全部の代わりに

 あたしは空を見上げる

 ちょっと汚くて

 ちょっとウソっぽいけど

 ないよりはいい

 

 詩の切れ端のようなものを掲げましたが、この「ユメノソラ」っていうタイトルがふと浮かんで、その後が続かなくなりました。お題をいただいていたりすると、ここまでできればちょっと強引でも書いてしまうんですが、別に注文ではないのでいろいろ考えてしまいました。

 ユメノソラってカタカナにしたのは、それが流行りっていうことがあります。実際、検索してみたらコスプレ・アイドルさんの最近の歌にありました。たぶんそっちの方が見て楽しいと思いますけど、今風のかわいいい感じ+人工的な感じを意識しているわけです。フィギュアの肌触りと言えばわかりやすいかもしれません。

 夢って言葉の意味にはもちろん寝てるときに見る場合と願望とかいう場合との両方があって、おそらく英語を始めとした外国語でもそうでしょう。「あたしの夢」って使い方だと願望になることが多いでしょうし、「夢の空」も明るい希望の歌のような感じがふつうなのかもしれません。でも、私はつかまえどころのない言葉を二つ重ねていることもあって空虚なイメージを持ちますし、寝てるときに見る夢に出てくる空、つまり上にあるのかどうかもわからない、明るいとも言えないようなイメージがあります。

 これはまさにシャガールの絵です。であれば空にいろんなものが浮遊しているわけで、1行目から3行目が自然に出てきます。……そう考えて書いたわけじゃないですけど。それよりは「ない」っていうことを描いてみたかったんですね。東京の空にないはずの田舎の風景を描く。それは存在しない風景だけれど、印象としては残る。私のブログやサイトをよく見ていただいている方は「また定家かい?」って笑うと思いますが、まあだいたいはそうです。根がノスタルジックな人間で、それを時間的な言葉を使わずに表すにはこういうのがいちばんいいと思っています。

 こうやって説明しちゃうと後半3行は東京の空を見ながら子どもの頃の澄んだ田舎の空やその下の風景を思い出していることになって、なんだか「智恵子抄」みたいになってしまいます。まあ、それでもいいし、読む人の自由ですが、私としてはさっき書いたことと「ウソっぽい」とか「ないよりはいい」という言葉を合わせて、意識の持ちようでどうとでもなるようなヴァーチャルな、投げやりな感じを出したつもりです。とは言え、ニヒリズムってほどでもないし、暗いわけでもありません。

 流行やファッションに自分をぴったりと合わせることができなくて、かと言って、そういうもの全部を否定しているわけでもなく、自分自身に満足もしてなくて、うまく付き合えないけれど、行ったり来たりしながらなんとかけなげに生きている。そんな女の子を描くのが私は好きです。フィギュアである自分に違和感を持つフィギュアと言えばいいかもしれません。そういう感じがこの切れ端に出ているかどうかはわかりませんが、自分としては気に入っています。気に入っているだけにうまく続けられずにこんなことを書いてしまいました。でも、それじゃあんまりなんでちょっと無理やり最後のところを書いてみました。ご覧のとおり言葉を置き換えただけですし、本当だったら真ん中に1つか2つ、別のスタイルのスタンザ(カタマリ)が来るんですが、今はどっちもできそうにありません。……まあ、これでもないよりはいいってことでw。

 

 恋も夢も希望も悲しみもあたしにはない

 だからそうしたもの全部の代わりに

 東京の空を見上げる

 ちょっと狭くて

 ちょっとギザギザしてるけど

 ないよりはいい

 


 

 青龍、朱雀、白虎、玄武って聞いたことがあるでしょう。中国の伝説上の動物で、それぞれ東、南、西、北を守ると言われていて、高松塚古墳の壁画にも描かれていました。「四聖獣」っていうのはアニメの影響みたいで、「四神」というのが正しいようです。

 この順は太陽が天を回る順番(麻雀もそうですねw)で、そう考えれば季節を当てはめた青春、朱夏、白秋、玄冬という言葉もわかりやすいでしょう。玄って玄人(くろうと)って言葉があるように黒なんですね。どんな姿かと言うとたぶんヴァリエーションがあるんでしょうけど、青龍と白虎はそのまま龍と虎で、朱雀はスズメじゃなくて鳳凰みたいな鳥、玄武は足の長い亀に蛇が巻き付いたものだそうです。これはおそらく長寿と再生を表して、ウロボロスと同じ意味なんでしょう。冬の次に春が来るように最後が最初につながるというわけですね。

 

 平安京の真ん中の宮城から南に延びる大通りを朱雀大路、その門を朱雀門っていうのもこれですんなりわかるでしょう。会津の白虎隊って悲劇的な最期を遂げたことで有名ですが、これは明治政府軍と戦うために15歳〜17歳の少年から編成されたもので、他に50歳以上の玄武隊、36〜49歳の青龍隊、18歳〜35歳の朱雀隊っていうのがありました。順番がバラバラみたいですけど、おそらく中心的な戦力から順につけたんでしょう。

 ということで今回の詩の予備知識としてちょっと触れておきました。

 

 

   青龍

 

あたしは春がちょっと苦手

花粉症のせいもあるけど

気分が落ち込みやすい

だのに無理をするからよけい良くない

 

空のずっと遠くの果てに

ちりちりと青い火花が跳ね回っている

そうかそうかと間延びした顔で

あたしはうなずき返す

 

ちぐはぐな季節にちぐはぐな幻想

また目がかゆくなって

陽が昇る前になめてもらいに行く

 

 


 

   朱雀

 

あたしの中にはオレンジがある

とてもみずみずしく、輝いていて

渇いたときも、めげたときも

ぎゅぎゅって癒してくれる

 

猛暑って感じの夕暮れには

それは熱を持ったようになって

ゆっくり大きな翼を広げていく

重なり合った花びらが開いていくように

 

汗ばんだ額に髪の毛が貼りついたあたしは

つまんないこと言うやつも

ふざけたことをするやつも

みんなまとめて南十字星の向こうまで

吹き飛ばしちゃう

 

 


 

   白虎

 

渋谷の横断歩道が起き上がり

振り返って甘えたように咆えると

ビルは見る見る樹々に変わって

深い谷の中にあたしはいた

 

落ち葉を踏みしめながらいっしょに歩く

「雨上がりのにおいっていいよね」

「足の裏ってどんなふうになってるの?」

「もうちょっとゆっくり歩いて」

うるさそうに尻尾で返事するだけ

 

陽がすっかり傾いて

風がひんやりしてきた

ざらっとした舌で毛づくろいしてる

今日は獲物が見つからないみたい

 

どこかでちゃちな音楽が聞こえる

それだけが昔ここが街だった名残り

 

 


 

   玄武

 

おばあさんのあたしが

ひなたぼっこをしながらうとうとしてると

たくさんの人たちがやってくる

家族や友だちや恋人や

すれ違っただけで遠くに行ってしまった人

 

すべての色を混ぜると黒になるように

記憶は重なって区別がつかなくなる

春のちぐはぐな夢も

夏に開く花も

秋の雨上がりの幻も

北風が舞い上げていく

 

暗い沼の底や古い木の根っこで

あたしたちは小さく丸くなって

静かに待ち続ける

永遠よりも少し短い時間

 

 


 

   人見知り

 

もうデートも3回め

だのにまだぎこちない会話を

敬語でしゃべってる

話題が途切れないことばかり考えて

一人で疲れてる

 

お母さんのコートの陰に隠れてた子どもが

じっとあたしを見ている

大人になってもそうなの?

自分の気持ちに素直になれないなんて

何をこわがっているの?

 

あなたは違うのかしら

黙ってる時間がいいとか

いっしょにいるだけで落ち着ける関係がいいとか

まるで別の世界から来たようなことを言う

 

そんなに近くで見つめないで

でも、もう少し入ってきて

冬の西陽のようなあなたの笑顔で

まだ子どもっぽいあたしの心の中に

 

 


 

   ピンクのパンダ

 

ぼくはピンクのパンダです。お母さんもお父さんもきょうだいも白黒なのに、ぼくだけなぜだかピンク黒です。

ぼくたちは動物園に住んでいます。ぼくがピンクなんでたくさんの人が見に来ます。

見に来てくれるのはうれしいけど、お母さんのおっぱいを飲んだり、笹をかじったりするだけで、大きな声が挙がるからちょっと疲れます。

それにおしっこをするときまで「かわいい」とか言うのはやめてほしいです。

ぼくのぬいぐるみが売っているみたいで、それをぼくに向かって振る人もいます。

夕焼けが消えていくときみたいなきれいな色で、ぼくの色とは全然違います。

ぼくのピンクはちょっとだけです。だんだん薄くなっているような気もします。

みんなと同じ白黒になったら見に来る人はいなくなるのかなって、お母さんのにおいをかぎながら寝る前に考えたりします。

それって疲れなくていいような、でもちょっとさびしいような感じです。たくさんの人に見られてるのがふつうになっているからです。

誰にも気にされなくなってもぼくはぼくなんだって思います。

でも、ぼくは少しだけ別のぼくになるのかなって思うこともあります。だって、こんなことを考えてるのはぼくだけだからです。

お母さんもお父さんもきょうだいも、ほかのどのパンダもこんなことは考えないからです。

動物園にいるほかの動物で自分だけピンク色の子がいたら友だちになりたいなって思います。

きっといっぱい話すことがあると思います。

誰にも言えないことも話せると思います。

 


 

    サイズ

 

80だとか82だとか

そんなのばっかり気にして

あなたって仕立て屋みたい

あたしだって知らないのに

正確なところは

 

そりゃ、58は許せても60はまずいなとか

薄着の季節までにはなんとかなんて

いろいろ気にすることはあるけど

それは違うのよ

うまく言えないけど

 

気持ちは毎日変わる

心は数字じゃ測れない

自分だってよくわからないの

正確なところは

でも、視線の方向が気になるの

うまく言えないけど

 


 

   冷たい雨の降る幸せな日曜日

 

3万人のランナーがこの街を走った日

あたしたちは肩を並べて雨の中を歩いた

あたしは次から次へといろんな話をして

あなたは穏やかに笑いながら聴いていた

 

渋谷から表参道まで行くうちに雨は上がって

冷たく澄んだ青空が並木道の向こうに見えてきた

有明からお台場まで歩いていると夕闇がせまって

レインボーブリッジが首飾りを身に纏った

 

風が強くて物好きに歩いているのはあたしたちだけ

「寒いのには慣れてるの」って言ったけど

大きな温かい手で包まれて

かじかんでいた心もほどけていった

 

「何か言った?」ってあなたは訊いたけど

あたしはあわてて笑ってごまかした

「ずっと一緒に走って行きたいな」って

声に出して言うつもりはなかったのに

 


 

   春の別れ

 

ずっと前にお気に入りだった

桜色のワンピース

ひさしぶりに浮き立ったような

気分の土曜日

陽の光が斜めに横切る鏡の中に

蘇る記憶のかけら

 

時間も忘れておしゃべりを続けた

幸せな頃の二人

明るく笑い転げた拍子に

あなたのタバコの火

あたしの挙げた手に当たって

スカートの上

 

あわててはたいてくれたけれど

虫の食ったような穴

新しい服を買いに行こうと

困惑の表情

気にしないでだから気にしないで

後悔の笑顔

 

あんなことが原因のはずもないけれど

やがていさかいの繰り返し

疲れてしまって別れてしまった

たんすの奥の想い出

捨て去ることも戻ることもできない

遠い春の夜

 


 

   5年後のあなたへ

 

あたしを忘れないで

あたしを思い出して

一日のほんの少しの時間でいいから

朝、通りがかりに目にする

公園のイチョウのように

 

あなたがあたしを忘れてしまったら

あたしはいない

子どもの頃作った砂のお城のように

始めからなかったのと同じ

 

あなたがあたしのことを思い出さなければ

あたしは消える

地面にぽっかり空いた穴を見ても

何かあったんだろうって誰も思わないように

 

ずっとそばにいるのに言えないことがある

腕の中で抱かれていても

肩が震えるのを止められない

残酷なあたしの心があたしに言う

時間の浜辺はすべてを押し流してしまうと

 


 

   つぶやき

 

「死んじゃおっか」

毎朝、そうつぶやいて

あたしはベッドから自分を引き剥がす

固くなったパンをミルクで流し込んで

怒ったような顔で歯を磨き

作り笑いをして家を出る

 

いつもニコニコしてて

頑張り屋だと言われ

おしゃべりもお酒も大好きで

職場の人気者

それはウソじゃない

演じているわけでもない

時々奥歯を噛み締めているけど

 

家に帰っても電話やメールがやってくる

悩みごとや相談ごと

なぜ他人のあたしに打ち明けるんだろう

人間って変だ

心なんて誰がくっつけたんだろう

「また明日」

毎晩、そうつぶやいて眠る

 


 

   新幹線ホーム

 

新幹線ホームで泣き出すなんて

面倒くさい女だよね

あなたは肩を抱いて

何か耳元でささやいてくれたけど

自分がくやしくて耳に入らなかった

 

楽しい1日はあっという間に終わって

乗り換え通路をあなたより先にダッシュした

間に合わなきゃいいのにって思いながら

それってどうなるのって思いながら

 

変な顔をしたあなたがこっちを見てる

きっとあたしはもっと変なんだろう

1歩こっちに来て

その遠い距離を飛び越えて

言えないあたしの前にドアが閉まる

 

のぞみはゆっくりと去って行く

視線が集まるのもかまわず後を追いかけてしまう

そんなことしてどうなるのって思いながら

もうやだってしゃくり上げながら

 


 

   花曇り

 

曇り空の下に満開の桜が沈んでいる

冬に温かかったり、春に寒かったり

あなたに振り回されたあたしのように

ちょっとすねたように咲いている

 

もう来週には散っているかしら

また来年になれば咲くさ

そんなことここで言うなんて

今の花にかわいそうじゃない

昔のあたしならそう言ったかな

 

蕾が膨らみ、色づき、ほころび

ほんの一輪、二輪、晴れの日、雨の日

満開の日には風が散らしていく

花びらが土に還る前に

知らん顔した葉っぱに覆われる

 

目の前に広がる桜を見上げながら

夢のような日々を思い出す

湿り気を含んだ花びらは

あたしの重い心に落ちて来る

 


 

   重い女の想い

 

歌だと好きって何度も繰り返したり

ずっと一緒だよって誓い合ったり

だのに現実だとなんで重いって言われるの?

 

あたしだってわかってる

ちょっと引いて見るのがいい女のコツだって

でも、自分にウソをつくのがイヤなの

 

愛ってスイーツみたいなものなのかな?

食べちゃう前がいちばん楽しくて

満足するとすぐに飽きてくる

 

メールは1日3回

電話で話すのは3日に7回

会うのは2週に1.5回

 

ちゃんと計算しても失敗するのって

ダイエットみたい

測ってみたらやっぱり重い?

 

でも、いちばんこたえたのは

暇だから重くなるんだって言われたとき

モテないくらい重いって?

 


 

 即詠2行詩100篇

 

最近は詩のご注文が途絶えているので、ネットで探してみたら奇特な方が100のお題を配布されていました。これをそのままふつうに詩にする気がしなかったんで、2行だけの詩にしてみました。詩の元になるイメジェリや言葉遊びだけって感じで、それを展開していないわけです。それだけに早くできますが、全部が全部すんなりできるわけでもありませんでした。

 

001 愛してる

もう少し早く言ってほしかった

苦しめるだけの言葉なんかいらない

 

002 悪魔

部屋の隅からじっとあたしを見つめている

ひさしぶりに会った友だちのようにあたしも微笑む

 

003 雨の中

窓の外にあたしが立っている

意地を張ってもいいことないのにと語りかける

 

004 家路

どの家の明かりもあたたかい

あたしを寄せつけない壁の向こうに

 

005 いつか終わる

終わっちゃったね

人生の終わりにもそう言えればいいのに

 

006 一方的

あなたから見えるあたしを知りたい

あたしが見ているあなたを伝えたい

 

007 意図した省略

いちばん言いたかった一行を消して

なにげないメールにする

 

008 嘘つき

恋の初めの不安と終わりの思いやりが

あたしを嘘つきにする

 

009 英雄

女には強いのかしら弱いのかしら

冷たすぎるのかしら熱すぎるのかしら

 

010 オルゴール

どこから聞こえるのかわからない

時間の廊下の向こうから?

 

011 カーテン

カーテンは窓のドレス

ダイヤモンドの夜景を引き立てる

 

012 回転

いつか回らないのも食べに行きたいね

いつもそう言いながら食べるのがいいの

 

013 鏡

今日は自分の目を見ていない

今日もとても孤独な一日だった

 

014 鍵

結婚するって聞いたときよりも

鍵を返されたときの方がつらかった

 

015 影

風が吹くと樹々が揺れ

影が動くと新緑が光る

 

016 数える

出会った日、キスした日

別れた日、空白の日々

 

017 既視感

おかしいくらい同じなの

でも、その後を覚えてないの

 

018 記念日

あなたにも言わない日がある

あなたにもそういう日があるのかな

 

019 君を待つ

どうしたの?

思いつめたみたいに見えるけど

 

020 郷愁

ひさしぶりに空を見上げた

昔のあたしを教えてくれた

 

021 近況報告

会ったときに言うね

メールでもチャットでも伝えられないから

 

022 空気

重いときだけ感じるもの

なくなったときだけ気づくもの

 

023 苦笑

あなたのやさしさなのかな

怒ってくれてもいいのに

 

024 雲

青い地球をふわりと包む

軽くて白いお布団

 

025 狂うほど

燃え上がる髪の毛

音を立てて崩れるあたしの心

 

026 携帯電話

時間の隙間を埋めるもの

心の隙間を作るもの

 

027 ケチャップ

オムレツ、ホットドック、ハンバーガー

子どもっぽいから、指につけてなめるの

 

028 血液

海からの風があたしを通り抜け

流れて足元をぬらす

 

029 現状維持

ちょっと進んで、ちょっと戻って

いろいろあったんだけどね

 

030 幻想

あの香りには覚えがある

今見えているものがすべて幻想だとしても

 

031 紅玉

小さくて酸っぱくて固くて

あたしみたいだって?

 

032 桜

来年もいっしょに見たいね

それも夢のような花が言わせたの?

 

033 時間

時間は流れない、人が変わるだけ

時間は測れない、時計が回るだけ

 

034 嫉妬

あたしの心にはがん細胞がある

すべてを蝕み、真っ黒に覆う

 

035 シャボン玉

パチンとはじけて

おとぎ話の世界が消える

 

036 白い帽子

くっきりとした影が首筋に落ちて

君が微笑んでいるのがわかった

 

037 スカート

遠くから手を振っているのに

どうして知らんぷりするの?

 

038 誓約

さよなら、もうおしまい

何も聞きたくないの

 

039 切断

腕が痛いの

闇の中でそう叫んだ

 

040 喪失感

自分でもびっくりするほど

なんの感情もなく涙が流れるの

 

041 底無し

のぞき込んじゃダメ

あなたがあなたを引きずり込むから

 

042 ダーク

ぼんやりとした怪物が喉を上げて

あたしを飲み込んでいく

 

043 ダイヤモンド

小さな天使が中にいるんだよ

子どものときのウソをまだ信じてる

 

044 太陽

あなたにまた会えるなら

あたしは生きていてもいいな

 

045 知識

あなたはなんでも知っているから

何にも知らないあたしが好きなの?

 

046 月

月をじっと見ていると

地球って不思議だなって思うの

 

047 手遅れ

そう決めたのよ

恋愛において議論は意味がないって思わない?

 

048 天使

もしかすると見えるかもしれない

心の窓が陽射しに向かって開いたときに

 

049 扉

押して開ける、引いて開ける

あなたはどっちなの?

 

050 友達

一晩中他愛もないことを話してた

だから今でも心の支え

 

051 何度でも

生まれ変わる夢を見た

息苦しいほど醒めない夢を

 

052 24時間

長いはずの晩春の夕暮れがやってくる

あなたの腕のぬくもりがまだ残っているのに

 

053 偽物

鏡の中でいろんな表情をしてみる

あたしってよくできてるね

 

054 人形

あなたはあたしから痛みと快感を引き出そうとする

ひやっとするくらい楽しそうね

 

055 ぬばたまの夜

三日月が沈むと虫も鳴かない

手が伸びてきてじっとりと汗ばむ

 

056 願わくば

あたしを見てください

あたしの孤独を見てください

 

057 ねずみ色

今日はちょっと寒くて雨も降ってるから

このワンピが似合うんじゃないかって思ったの

 

058 残り少ない

時計をチラチラ見られると

よけいに気になっちゃう

 

059 バケツ

雑巾掛けなんてこの部屋に越して以来だね

場違いに青いバケツから水のにおいがするよ

 

060 箱

あなたがあたしを抱きかかえて、そっと入れる

青空が細くなって、ガムテープで止める音がする

 

061 橋

赤い橋、影一つ見えない午後

青い山、声一つない葬列

 

062 花火

空が明るく染まって、遠い音が聞こえる

恋が終わってしまった耳にさびしく響く

 

063 羽

息をのむほど美しい羽も

死んでしまうと地に帰る色になる

 

064 番狂わせ

まあ、そんな困ったような顔をするな

知らなかった俺が間抜けだったんだろう

 

065 反復

音楽とベッドにおいて繰り返しは

欠くことのできない要素である

 

066 ピアス

もう塞がってしまったのに気づいた

心もそうならいいんだけど

 

067 陽光(ひかり)のシャワー

笑っているつもりなのに涙があふれる

まるでお天気雨みたいなあたし

 

068 ひかりの庭

どうしてここに来てしまったの?

寒くて何もないところなのに

 

069 筆跡

男みたいな字だって自分でも思う

メールなら気にしなくていいのに

 

070 風鈴

なんかさ、風鈴の音を聞くと冷や麦食べたくならない?

食べ物のことばかり考えてるわけじゃないんだけど

 

071 分岐点

あなたの人生にはこれまでいくつ分岐点がありましたか?

あのさ、不安になるからそんなにマジメに考え込まないでよ

 

072 碧空

あの空をずっとずっと雲のもっと上に上って行くと

真っ暗になるんだよね

 

073 崩壊

この世界が始まる前に

一体いくつの宇宙があったんだろうね

 

074 星

あの星から見るとお陽様も

☆って感じなんだろうね

 

075 微笑

あたしはふだんは無愛想だから、笑えばかわいいのにって言われる。

ホントだよ。

 

076 本

本を読むようにあたしのページをめくる

今日はここまでって栞をはさむの?

 

077 守り手

あなたはとてもさみしがりや

寝顔を見てるとわかってしまう

 

078 マント

カーテンに体をくるんで飛び切りの視線

だから、後はカッコよく決めてね

 

079 湖

いくつも村が沈んでるんだね

囲炉裏や井戸や人の影も沈んでるのかな

 

080 ミュール

今日のテーマは春のミュールなの

だのになんで雨が降ったりするわけ?

 

081 無防備

それは違うでしょ?

言い訳くらい考えといてよ

 

082 眼

虫の眼は瞳がないから見られてる気がしない

今日のあなたの眼には心がない

 

083 命令

今日はなんでも言うことを聞いてあげる

そんな日もたまにはあるの

 

084 眼鏡

子どもっぽく見られるからだて眼鏡

かわいいなんて言わないで

 

085 戻れない

あの道を行くとどこに着くんだろう

確かめるすべもない子どもの頃の思い出

 

086 紅葉

桜は見上げて、光を通して見る

紅葉はうつむいて、吸い込まれた光を見る

 

087 靄

目の前を覆うのが霧で、遠い風景を覆うのが霞、

心を覆ってしまうのが靄。

 

088 焼き切れる

映画のフィルムが焼き切れる時に見える泡

沈んだままの記憶につながっている

 

089 約束ひとつ

約束破ってばかりでごめんね

守れるのはずっと好きだよってことだけかな

 

090 夢

ずっとこのままでいたい

とてもかなわない夢

 

091 妖精

だから6月のイギリスの森にいるの

あたしよりずっと小さくてかわいいの

 

092 淀み

緑色の水を透かして見ても

底にいるものの目は見えない

 

093 ラピスラズリ

フェルメールの青、閉じ込められた空

ヴァージナルを聴く少女、海からの風

 

094 リング

一人で飲むときはこれをしてるのと言う

冒険したいときははずすのとほほ笑みながら

 

095 輪廻

あれ?ちょっと寝ちゃったかな

まだそばにいてくれたんだね

 

096 ルール

恋愛にもルールがあるのかな

醒めかけてるからそう思うのかな

 

097 檸檬

病室のあなたはどこかさみしそうだったから

あたしの代わりに窓辺に檸檬をそっと置いたの

 

098 ローゼン

維納の麗泉宮にて嫋嫋たる處女ぞ

憂ひ貌なる騎士に蒼き薔薇を捧げぬ

 

099 忘れ物

忘れ物すると凹んじゃう

ましてや彼の部屋にケータイなんて

 

100 自由題(お好きな言葉でどうぞ)

あなたが愛してくれれば言葉は消える

それを夢見て言葉を綴る

 

 

こうやって短いながらも100篇もいろんなものを書いてみると、元から私の中にあるイメジェリでもなかなか詩にはできなかったものがこの際って感じで出せました。イメージの棚卸しみたいな感じで、今後書いていくのにちょうどよかったような気がします。