詩2 50篇:05.12-06.3

 

ダイアモンドダスト/白昼夢/我が子…/プレゼント/通勤電車

寂しいクリスマス/Xmasから始まる…/ツリー/太陽/アイスレモンティ

恋愛適齢期/世界一のクリスマス・プレゼント/これでいいの?/寒い夜/ダイエット

疑心暗鬼/猫・雨・洋館/旅立ち/雪のうさぎ/さようなら

真夜中の秘密/待ち合わせ/恋文/誕生日の夜/嵐が丘

面影/苺/唐辛子/毛布の中の日曜日/悲しいKiss

砂漠に吹く風/忘れがたい日/ラヴレター/花火/待ちぼうけ

失敗しました/あなたの音楽/恋/はじめてのチャット/忘れちゃった

詩なんていらない/鏡/さくら/春よ来ないで/伸びた髭

金魚草/猫はなぜ花をたべるか?/春の嵐/妖精/春は眠い

 


 

  ダイアモンドダスト

 

君からの電話で

今朝、ダイアモンドダストが見れたのって

今日は寒いんだ?

うん、すっごく寒いの

 

ぼくは東京のぬるっとした寒さの中で

ぼやけた青空を見上げ

あたたかい君の声を聴いている

 

でも、その底には

静かな悲しみが沈んでいる

冷えきった大気の中で

君の涙が凍ったんだろうか

 


 

  白昼夢

 

どうしたの?

鳩が豆鉄砲食ったみたいな顔して

え? 何言ってんの?

髪の毛切っただけじゃない

 

しゃべるといつもどおり?

悪かったわね

トレーナーとジーンズの方が似合う?

ぷん。どうせドレスってがらじゃないもん

 

ひらひらひら……?

まだぼおってしてるね

どこにもいかないでって?

わかったからそんなに抱きしめないで

翼が折れちゃうじゃない

 


 

  我が子…

 

親はなくても子は育つ

そう。あたしがもし死んじゃっても

元気に育ってくれたらいいな

 

子は親の背中を見て育つ

そう。あなたたちは

あたしの見えないあたしを見ている

まるで神様のように

 

親の心、子知らず

そう。そんなの気にすることはない

自分たちで自分たちの道を行きなさい

そして、親になったら笑ってちょうだい

その日になったら

 


 

  プレゼント

 

ねえねえ?

クリスマスのプレゼントだけどさ

おっきいほうがいい?

ちっちゃいほうがいい?

 

ふうん

おっきいほうがいいんだ

単純だね

いいの?

ホントに?

 

どうしよっか?

箱を二重にしたら

笑われちゃうね

プチプチいっぱい詰めちゃおか?

 

うちのオーヴンじゃ

一日かかったって

そんなにいっぱいクッキー焼けないよ

ブッシュ・ド・ノエル?

そんなの無謀だよ……

 

 

ね? おっきいでしょ?

こんなのもらったことないでしょ?

開けてみて

びっくりした?

 

何これって?

毛糸だよ

これからセーター編んだげる

ヴァレンタインデイまでに

手伝ってね

 


 

  通勤電車

 

あたしは背が低いから

満員電車に乗ると

まるで高層ビルの中の小さな家

 

見上げると無表情な顔が並んでる

メールをしたり、iPodを聴いたり

座席で新聞を読んだり、化粧をしたり

みんな何を考えてるのかな

 

渋谷に着いてドアから

みんな吐き出されていく

いつもの朝を始めるために

表情を取り戻す

あたしもそうなのかな

 

夕方になったらまた集って

停まる駅ごとに人が降りていく

寒いホームに向かって

あたたかい家に向かって

みんな一日分のため息をつくのかな

 


 

   寂しいクリスマス

 

ひさしぶりに友だちが集って

クリスマスパーティ

にぎやかにおしゃべりして

いっぱい食べて

お酒も飲んで

 

彼氏がいないから集るなんて

わかっているけど誰も言わない

でも、話題はやっぱり

男なんて、結婚なんて

そこに落ちていく

 

また来年ね

来年も集るの?

笑いながら別れた

 

楽しかったけど

みんなと一緒だったけど

北風の帰り道より

あたしの部屋は寒い

 


 

   Xmasから始まる…

 

12月になってから彼氏を見つけるなんて

安易だよね

お正月までだってあやしいよね

 

でもさ、やっぱ一人のXmasなんて

あたしとしては耐えらんない

今年は特別寒いしさ

 

彼だっておんなじようなもん

彼女いない歴7か月

おまえがいちばんのプレゼントだって

 

でもさ、Xmasはやっぱ魔法の日

ずっと続きそうな目と目、体と体

とりあえずSt.Valentineくらいまで

がんばろうね

 


 

    ツリー

 

今はこの小さなツリーがいいの

二人っきりで見つめながら

夢を語り合うには

 

この間、行ったデートスポットのツリーは

夜空に向かってずっと伸びて

幾千ものイルミネーションで

幾千もの願いを聴いていたね

 

もし想いがかなって

あたしたちの子どもができたら

もうちょっと大きいのを買おうよ

その子がサンタを信じている間

見上げるくらいの

 


  

    太陽

 

みんな毎日あなたのことを

うわさしてるわ

気になってしかたがない

 

最近、元気がないんじゃない?

あまり顔を見せてくれない

クリスマスがすぎたら

夜の女王を追いやって

 

あなたがいてくれるから

空は青く、海は青く

ひまわりは咲き、てんとう虫は飛ぶ

 

ずっと見守っていて

あたしが背筋を伸ばして

ちゃんと歩いてるか

冬の影法師が教えてくれる

 


 

    アイスレモンティ

 

オレンジジュースよりおとな

いろいろあったのよ

あたしにも

甘いだけの恋なんて

もう卒業なの

 

コーヒーより子ども

いろいろあったのよ

あたしだって

苦いのがいいって

そんなのは思わないけど

 

レモンスカッシュよりおしゃれ

どう? 街で会ったらわかんないでしょ?

最近は渋谷より表参道ね

しっとりした琥珀色が似合う

そう思わない?

 

ミルクティより元気

どう? しゃべると変わんない?

あのファストフードで何時間粘ったかな

高校時代がなつかしいよね

今度みんなで会わない?

 

アイスレモンティがいちばん好き

もの思いにふけったり

よしっ!って決意したり

そういう今のあたしには

だから、ストローをかむ癖はなおんないね

でも、ずずって最後まで吸わないようにしてるよ

最近はね

 


 

    恋愛適齢期

 

今だからわかることがいっぱいある

人の心も

自分の気持ちも

 

今しかわからないことがある

人との出会いの大切さも

自分の時間のかけがえのなさも

 

もう恋に恋する時季でもなく

まだ愛をためらうには早い

肩の力を抜いて

熱い想いを秘めて

静かに抱き合っていたい

 

あたしやっぱり

人を愛したい

恋する自分でいたい

あどけない目と

誘うような唇を

あなたに贈りたい

 


  

   世界一のクリスマスプレゼント

 

それはあなたの手

冷たい頬を包んでくれる

背中まで汗ばむほど

あたしを夢中にさせる

 

それはあなたの声

ほんの短い言葉だけど

ささくれ立った気持ちを

やさしく変えてくれる

 

それはあなたのにおい

まだ1年にもならないのに

子どものときから

知っていたような気がするの

 

それはあなたの心

できることならさわっていたい

とても寒い朝でも

春のお日様に照らされて

いつまでも終わらない

夢に誘ってくれる

 


 

   これでいいの?

 

あなたは背中のボタンを

一つずつはずすのが好き

夜の窓ガラスに映る

髪の毛が次第にゆれていくから

 

あなたはあたしを上に乗せて

フットライトを点けるのが好き

驚いて恥らっていても

あたしがやめないのを知っているから

 

あなたはあたしが声を挙げて

あなたの名前を呼ぶのが好き

この部屋の中でだけ

恋人でいられるから

 

あたしにはこれでいいのか

今もわからない

でも、あなたが望むことは

なんでもしてあげたい

いつ終わっても後悔したくないから

 


 

    寒い夜

 

オレンジ・マーマレードを

紅茶に溶かして飲んでみた

好きなドラマの最終回を見ながら

 

ブルーの水性ボールペンで

今年もよろしくねって年賀状に書いた

ケータイが鳴らないかなって思いながら

 

結露した暗い窓を指でなぞる

子どもじゃないからハートなんて書かないけど

お布団に入っても眠れないから

独り言をつぶやいてしまう

あたためて

 


 

      ダイエット

 

昔、物理の授業で

質量保存の法則って習った

食べすぎれば太る

食べなければやせる

そういうことなのよね

 

食べながらやせられます

無理なくやせられます

ふん。そんなわけないわよ

ダイエットなんて無理なものに決まってる

そうよ。おなかがすけばイライラするの

それも法則よ

 

わたしは3か月で20キロやせました

すてきな彼氏ができました

ふん。それはよかったわね

なぜ男はスリムな女が好きなの?

そうよ。あたしだってデブな男はパス

それが法則よ

 

おとといは忘年会

今日はクリスマス・パーティ

お正月はこたつとなかよし

エネルギーをいっぱい保存

だからさ、年明けのエステやフィットネスには

照れくさそうな女の子がいっぱい

 


  

   疑心暗鬼

 

見ちゃいけなかった

見なければよかった

あなたのケータイのメール

ただのあいさつじゃない

 

小さな池に

墨汁を一滴

見る見る真っ黒になる

あたしの心

 

訊くに訊けない

消すに消せない

あなたの笑顔も

やさしいキスも

あたしだけなの?

 


  

  猫・雨・洋館

 

渋谷から代官山まで

傘をさして歩くなんて

物好きな二人だね

 

でも、ほらあの家の辺りって

モンマルトルみたいだよ

ユトリロの絵でしか知らないけど

 

さっき買ったクロワッサン

この子にあげようよ

miauってフランス語で鳴いてくれたしね

まだあったかいからさ

 


 

    旅立ち

 

大きなバッグをもう一度開けて

持っていく物を確かめて

ぽんぽんって手のひらで叩く

さあ、行こうか

 

誰にも告げずに

 臆病で泣き虫だから

まだ夜も明けないのに

 格好をつけたがるの悪いくせだね

あなたのことを吹っ切れないのに

 後悔しないなんて言うんだよ

 

小さな迷いをもう一度打ち消して

鏡の中の瞳の色を確かめて

ぽんぽんって胸を拳で叩く

さあ、行くよ

 


 

   雪のうさぎ

 

ぴょんぴょんぴょん

ほら、君もいっしょに跳び回ろうよ

まだ雪は降っているけど

雲は流れて青空が見えてきた

 

あれ? 君の耳は笹の葉

目は南天の実なの?

でも、かわいいよ

ちょっと冷たい感じもね

 

あたたかい風が吹いて

君が小さくなっていく

南天の実が流れていく

 

さよなら、また会おうね

夢の中でいっしょに

ぴょんぴょんぴょん

 


  

   さようなら

 

今日はいいお天気だね

まだ風は冷たいけど、だんだん日も伸びて

もうすぐ春って感じ

コートも脱ぎ捨てちゃおか?

  

あたしは北国生まれだけど

性格はいたって明るいんだ

能天気だって言われたりするけど

ちょっと失礼だよね?

 

あ、目にほこりが入ったのかな?

ううん、だいじょうぶ

涙で流しちゃうから

あは。両方から出てきちゃった

やっぱりあたしって変な子だね

 


 

    真夜中の秘密

 

下弦の月がぬりゅって昇って

ハートのクイーンが裏返り

なめらかな背中に薔薇が咲く

ふるえる舌に花びらを撫でられて

 

倒錯した砂時計が

夜明けまで1時間と9分だと告げる

あなたは1回と3/4は楽しめると笑って

あたしの小さなボタンを弾く

真紅の花火が

アーチの肢体を浮かび上がらせる

 

潮が深海から満ちてきて

スペードのエースが貫き

きつい貝殻に挟まれあえぐ

インモラルな使命感にそそられて

 

痙攣した脳みそが一瞬の

幻影に(あたしの?)

引きずり回される(あなたが?)

蝸牛のような跡を引いて(混じり合って)

流星のような声を挙げて

 


 

   待ち合わせ

 

電車が着くたびに

改札口に向かって

思わず歩いてしまう

でも、知らない顔ばかり

くるっとターン

お気に入りのスカートがひるがえる

 

梅雨の晴れ間はさわやか

あなたは待たされると怒るけど

あたしはそんなにイヤじゃない

いろいろ一人で想像してるから

 

今日はどこに行く?

何を食べる?

何時まで一緒?

夕陽の中でキス?

なーんて、少し暑いね

ブラウスの下に汗かいちゃうじゃない

 

でも、ちょっと遅いね

メールしよっかな

「もう帰っちゃうよ」なんてさ

あ、来た

知らんぷりしなきゃ

笑顔も10秒だけおあずけね

 


 

    恋文

 

この息苦しいくらいの気持ちは

メールなんかじゃ伝えられない

 いとよき紙を選びて

 香など焚きしめ

 すがすがしきやうにて書きやらん

優雅に手間をかけて贈りたいな

 

この空の向こうにあなたがいる

いっしょに見上げてればうれしいな

 歌など詠みけるも

 おぼつかなげにて

 いとあはれなるここちす

痛いくらいのこの想いをどう託したらいいの?

 

そうだ!

流れる白い雲にLOVEの文字を

大きく書いて届けよっと

照れちゃダメだよ

 


 

    誕生日の夜

 

乾杯!

今日はもう朝からドキドキだったよ

おとなっぽいの選んじゃった

後で見せちゃうね

 

ありがと!

ちっちゃいシルヴァーリングだけど

今夜は左の薬指にはめるね

初めてずっといっしょだから

 

すごく恥ずかしかったよ

でも、うれしいな

2つ並んだシャンパングラス

まだ金色の泡が立ち昇ってる

あたしが新しく誕生したのを

見守ってくれてたんだね

 


 

    嵐が丘

 

君の心にはいつも冷たい風が吹いている

だから見渡す限りヒースの草原

人を見ると吠える野犬は

悩みを聞いてほしいのだろうか

黄色い牙が臭いけど

 

君の部屋には空虚しか住んでいない

だから切り立ったクリフを散歩する

マナー知らずの烏は

PCの画面をつつきまわすしかないのだろうか

孤独な目が映っているけど

 

君の魂には腫れ物がいっぱい

だからヒースクリフは死んでもまとわりつく

嫌がられても無視されても

やむことのない小雨のような言葉は

君の何を表わしているだろうか?

 


 

    面影

 

あなたの寝顔を見ていると

いろんなことを思い出す

どこか似ているから

ふだんはそんなこと思いもしないのに

 

主題と変奏

きっとそうなんだ

あたしは同じ人を求めている

心の深いところで

 

だから、もう少しすき間を空けてね

アロマキャンドルを吹き消して

もぐり込むから

あなたのにおいの中に

 


 

   苺

 

それは少女の乳首のような輝きと

初々しい恥じらいを見せている

露の降りた朝の陽射しを受けて

 

まだすっぱいね

もう甘いよ

まだ固いね

ジャムにしちゃかわいそうだよ

 

やがて母になる草の実は

生ぶ毛に包まれて

そのときを待っている

自分の美しさも知らずに

 


 

   唐辛子

 

いいよ。水なんて。

いいから。話しかけないで。

笑わないで。だから。

うまく。しゃべれないの。

 

はあ、収まってきた。

なんで、平気なの?

無理してない?

涙出てるんじゃない?

 

だめよ。そんなの。

いくら。あなたのキスが。

甘いからって。違うでしょ?

舌の感触が。

ないのに。

まだ。

 


  

   毛布の中の日曜日  

 

あったかいTシャツのにおいと

ほっぺたに当たる感触

くすぐったいよ

まだセピア色の映画を見ていたいのに

 

部屋の外は雪混じりの雨

うるんで見えるツタの壁

ミルクティがおいしい一日

何もしてないね

ずっといっしょにいるだけ

 

あ、目が合ったね

寒いよね

入っておいで

お風呂とミルクをあげるよ

だいじょうぶ

またネコが増えたなんて

笑ってるけど、やさしいから

 


 

   悲しいKiss

 

あなたの唇は冷たかった

雪が降りしきっていたから

風が吹いていたから

二人の心の中に

 

あなたの瞳は暗かった

深い谷をのぞき込んだから

光も届かない底にいるから

遠く離ればなれで

 

あたたかい涙が頬を伝う

きつく抱き合う

でも、何もあたしたちを

つなぎとめることはできない

激しい宿命に押し流されて

 

 

  *この詩は次の和歌を本歌としています。ドリカムとは偶然の一致ですw。

 

日に千たび 心は谷に 投げ果てて

有るにもあらず 過ぐるわが身は

     式子内親王・百首歌第一

 


 

   砂漠に吹く風

 

かつて彼らは「インディアン」と呼ばれた

それは侵略者たちが世界を

とても狭いものだって思っていたからなんだ

自分たちの心で測っていたんだろうか

 

彼らは文字を持たなかった

野蛮で劣っているから、殺されていった

文明の力で?

銃と馬と、何より病原菌の力を

そう呼ぶのだろうか

 

もう過ぎてしまった話なんだ

心はずっと広くなったよね?

文明はもっと進歩したよね?

乾いた砂漠に吹く風は教えてくれるだろうか

 


 

   忘れがたい日

 

お布団の中でお話してると

幼なじみみたいだね

いっしょに探検ごっこしてさ

やだ、くすぐったい

そんな意味じゃないのに

 

ここはあたしだけの枕だね

いろんなものが見えるよ

部屋の天井

窓の外の透明な空

あなたの鼻の穴

 

あは、ごめん

揺らさないで

あたしの心を

何もない一日が

こんなに幸せってわかり始めたから

 


 

   ラヴレター

 

ポストの中の手を離すと

かすかな音が聞こえる

あたしの想いを不安に変える

何日もかかった文字は

あなたの心に響くのかな

 

電話でも話す

メールもすぐに返信が来る

でも、あなたはあたしをどう思っているの?

あたしはあなたをどうわかっているの?

 

「お元気ですか?」

昨日も会ったばかりなのに

「心を取り出してあなたに見せたい」

びっくりさせてしまうよね

「これからもよろしくね」

もっと言いたいことがあるのに

 

新しく買った便箋もインクも

どんどんなくなって

言葉と心はつなぎとめられないまま

真夜中の机の上に積み重なった

 

男っぽいような固い字が

鏡の中の自分のように嫌い

あなたは好きだと言ってくれるけど

本当にそうだといいんだけど

 

それだけのために外に出て

また最初から最後まで

思い出しながら、家に帰る

ピアノでも弾こうかな

静かに

祈るように

 


  

   花火

 

まだあるよね?

……え? もう終わり?

そっかぁ

でも、きれいだったよね

ホントに

 

ね? どれがよかった?

仕掛け花火?

うん、すごかったね

びっくりしちゃった

 

あたしはね

ぱぁって、ハートが開いたの

なんか願いごとしちゃった

あは、流れ星じゃないって?

 

どうせ駅は大混雑

ゆっくり帰ろうよ

せっかく浴衣着てきたし

涼もうよ

ちょっと火照ってるんだ

 

あれ? 誰かが花火上げてるね

よけいに寂しくなっちゃうね

あたし? 

うん、ちょっと肩がね

 


 

   待ちぼうけ

 

あたしはけっこうクールで

ヴァレンタイン・デイにデートするのは

好きじゃない

カップルがいっぱい

だからサーヴィスがよくないものね

 

だのにハチ公前で

孤独な女を演じさせるの?

こんな日に残業させる会社なんて

やめちまえ!

ってメール打ったのに

返事もくれないの?

 

あーあ、最低だね

涙が出てくるなんて

帰ろうかな

あなたの胸に

顔をうずめて

 


  

   失敗しました

 

言わなきゃよかった

ホントの気持ちなんて

あなたはほんの少し顔を曇らせて

すてきな笑顔を浮かべている

「レモンサワーまだ来ないね」

あたしはまたよけいなことを言う

 

言えばよかった

あたしたちがまだ新鮮だったときのように

あなたはとても気を使って

ぶっきらぼうに言った

「おれにはなんでも言えよ」

あたしは明るくうなづいてやさしい目をした

 

あたしは恋愛が下手っぴで

いつも裏目に出てしまう

沈黙に耐えきれずに

今日はもう帰ろうかって言うつもりが

炭酸がむせてしまって

「もう別れようか」

うなづかないでよ

 


  

   あなたの音楽

 

あたしは小さい頃からピアノを習わされて

ショパンやドビュッシーだけが音楽って思ってた

だから、あなたがくれた”My Best Tunes”って手作りのCD

びっくりしちゃった

 

Tuningはずれてるし

ヒップホップって

顔が赤くなっちゃうような意味だし

感想は?って訊かれたらどうしようって

 

でも、毎日聴いてたら

わりといいじゃん!

今度はもっとノリのいいのちょうだいね

あたしのピアノが変になったって

先生はびっくりしちゃってるんだけどさ

 


 

    恋

 

電車が通り過ぎる

あたしが乗るはずだったのに

最近どうかしてる

苦笑いしてホームの端まで行って戻る

 

冬と春の間に

空虚という名前をつけてみる

寒くてさみしい季節と

そわそわ落ち着かない季節の間で

行ったり来たりの振り子のあたし

 

付き合ってよ

こんな気分に

付き合ってよ

こんなわけわかんないあたしに

付き合ってよ

あなたとあたし

こわいほど重ね合おうよ

体も心も

 


 

   はじめてのチャット

 

いいのかな

別に悪いことじゃないし

あぶないことをするつもりもないけど

顔も見たことない人と

朝までしゃべっちゃった

 

ちょっぴりのウソと

たくさんの真実

誰にも言わなかったようなことも

びっくりするくらいいっぱい

 

見えるから見えない気持ち

友だちとも彼氏とも違って

見えないから見える心

じかに触れ合った気がするの

これってあたしだけかな

 

PCを開けなければ

それだけのこと

でも、気になるの

あなたのこと

もう少しゆっくり

もう少しはっきり

知り合っていきたいな

 


 

   忘れちゃった

 

いつの間にか春になったことも

ヴァレンタインから会ってないことも

冷たい風の日

あたたかい雨の日

繰り返す日の中で

思い出すことも間遠になってる

 

来週会えないと終わっちゃうよ

花粉症だからなんて言わないでよ

弱気なあたしが強気に出て

確かめてみたいの

桜色のカットソーも買ったんだから

 

何を言いたいんだっけ

何を言ってほしいんだっけ

いろいろあるんだけど

何もないのかもね

腕の中であなたのにおいを

思い出したいだけ

 


 

   詩なんていらない

 

詩なんか作れなくても

君がささやいてくれれば

ぼくは満ち足りた気分だろう

 

生きる意味なんかわからなくても

君の瞳を見つめていられれば

ぼくは幸せだろう

 

ぼくは無造作だって言われる

何も惜しいものなんてないから

でも、本当は欲張りなのかな?

君のぜんぶがほしいから

 

あの空を見るのが今日で最後でも

君の夜をくれれば

ぼくは静かに笑っていられるだろう

 


 

    鏡

 

あたしの部屋の鏡は

ちょっと変わってて

昼が夜になるときに

潮の香りがすると

ひっくり返って映る

 

ベッドから見える

あたしがあなたになって

あなたがあたしになって

あたしがあなたに深く潜っていくと

誰にも見せない薔薇色の貝が呼吸している

 

さざ波のような月光の反射のせいで

少し残酷な気持ちが浮かび

あたしはもうちょっとこじ開ける

苦痛と喜びを入れ替えてあげると

あなたはひやっとするような声を挙げる

 

やがて夜が朝になると

凪いだ海のように鏡は元に戻る

不思議そうにあたしを見つめる

あなたから恥ずかしそうに目をそらして

あたしは密かに笑う

 


 

   さくら

 

ぼくがこれまで見た

いちばんきれいなさくらは

夢の中に咲いていた

 

もう場所さえも忘れてしまい

君の顔も覚えていないけれど

握った手のあたたかさは

残っているような気がする

 

ほんの5分くらい

ぼくらはあの木の下で眠った

童話の兄妹のように

 


 

   春よ来ないで

 

花粉症のあたしが

卒業式で見事にふられて

出てきた東京で迷子になって

お花見で酔っぱらって大失敗

 

ろくな思い出がないの

なんだかとっても憂鬱な季節

寒いんだか、あったかいんだか

はっきりしないしね

 

いちばん悪いのはあなた

眠そうな顔をして

どっちつかずのことを言って

だのにあたしをわくわくさせる

涙目は花粉のせいじゃないのに

 


 

   伸びた髭

 

夕方になると

あなたがメールを送ってくる

すっと席を立って何気なく後ろから見る

あなたの頬の髭が薄っすらと伸びている

 

いつものところで軽くワインと食事

あなたはゆっくりと肉を切る

おあずけをされてるみたい

あたしって考えすぎなのかな

 

月の光が入る窓に向かって

髪の毛をかき上げて、かぶさっていく

胸にちくちく痛いのが

焦らされた体に心地いいから

 


 

   金魚草

 

おねえちゃんが夜中に

金魚草は泳いでいくんだよって言うんだ

だから、眠い目をこすって

暗がりの向こうの庭を見たんだ

 

ふわふわ、ふわふわ

赤やピンクの金魚が

あっちこっちに泳いでいたんだ

きょとんとした目で

あたしを知らんぷりで見てたんだ

 

でも、おねえちゃんにも

お母さんにも言わなかったんだ

朝になって、いつものようにぱくぱくさせて

遊んでたら、後ろから大きな目が

じろってにらんだ気がしたから

 


 

   猫はなぜ花を食べるのか?

 

猫はなぜチューリップを食べるのか?

芸術家だからである

オランダの画家にならって

その色彩を自分のものにしたいからである

しかし、絵は描かない

すべて消化してしまうのだから

 

猫はなぜデンファレをなめるのか?

冒険家だからである

熱帯のジャングルを想像し

狩りをする自分を夢みるからである

しかし、ネズミ一匹捕まえない

すべて午睡の中のことだから

 

猫はなぜ桜の木にのぼるのか?

声楽家だからである

自分がいちばん美しく見える舞台を知悉し

想いのたけを歌うためである

しかし、人間には理解されない

すべての憧憬がそうであるように

 


 

    春の嵐

 

ベランダのパンジーのポットが倒れてる

グレーの雲がすごい速さで流れていく

冷たい北風なら肩を丸めて縮こまるけど

今朝は心を開いて風を入れてみたい

 

春は別におだやかな季節じゃない

澄みきった結晶のような冬と違って

ざわざわ気持ちを揺さぶってくる

あたしをあたしじゃないようにする

 

まだどうなるかわからない感情:空の色

もう後戻りできない変化:風の匂い

いいのかなって不安:手放せないマフラー

でも、信じて進みたい:春色のパンプス

 


 

   妖精

 

悪いな寝てないんだ

あなたは冷たく眼鏡に手をやって

あたしを邪険にする

学会が近いのは知ってるけど

研究室の隅に転がったカップラーメンが

あたしの胸を締めつける

 

あなたの頭の中は難しい数式と

発見への情熱でいっぱい

あたしが入る場所なんてないのかな

小さな妖精になって

白衣のボタンにつかまっていたいのに

 

もう春だよ

お弁当作るからピクニックに行こうよ

お花畑でお昼寝したら気持ちいいよ

あたし耳かき上手なんだから

きっといいアイディア浮かぶよ

そんなメールを書いたけど

送信ボタンが押せないの

 


 

   春は眠い

 

潮干狩りに行ったの

どこまでも続く眠りの浅瀬に

ぴちゃぴちゃあったかい波が越していく

体の上を、まぶたをなでながら

きらきらオレンジの光の輪が動く

あなたの声に合わせて

 

もう少し近くに来てほしい

ぼんやりそう思っているのって幸せ

眠いな、眠いね

とりとめもなく同じことを繰り返す

やさしい眼差しが

ふだんのあなたに戻ったって教えてくれる

 

澄みきった水の底の貝が泡を

ぷくぷく吐くような夢

今日という日が終わるまで醒めないで

ふわふわ雲のようなあたしの心

つなぎとめられるのはあなたの魔法だけ

まだ目覚めたくないから使わないで