詩1 50篇:05.9-12

 

空虚/痛み/秋へのプレリュード/夕焼け/せつない想い

消える瞬間、微笑んだ/アンダンテ/±0/Dear…/大切な人の次

一人芝居/ぼくの帰る場所/幻想/アリア/共犯者

浮気/君色/安息空間/秘密/揺れ動く心

泣きたくなる夜/忘れられない…/ピアス/後悔/雨降りは嫌い

心変わり/突然のメール/伝えるもの/残り香/迷い

誕生日/思い切り/しのび笑い/遠距離恋愛/気持ちの整理

一人旅/クリスマス/晩秋の夜/イケナイアソビ/スカート

泪/笑顔/キンモクセイ/傷跡/満月

霰(あられ)/嫉妬/いたぶる/半月/コーヒー

 


 

    空虚

 

コスモスが風に揺れ

青空はどこまでも澄みきって

ポットからはハーブティの香り

 

もうすぐアップルパイが焼けるよ

この頃忙しいの?

あなたは返事をしない

ブルーノートを聴いていると

いつもそうだもんね

 

……いつもそうだったものね

あなたがいない世界は

砂でできたにせもの

あたしの空っぽな心に広がる

意味のない騒音

 

 


 

     痛み

 

あたしが生まれたとき

あたしが愛したとき

あたしが大切なものを失ったとき

あたしが消えてしまうとき

 

いつもあたしに教える

よく覚えておくんだよ

これが生きるってことだよって

 

後戻りもやり直しもきかない

返品も交換もできない

君の人生だって

 

それはきっと時間の矢が

あたしに突き刺さっているんだ

  

 


 

   秋へのプレリュード

 

秋は風の音にあるって昔の人は言いました

うん、今ならピアノも弾けそう

ショパンだってなんだって

入道雲を追いやった風が教えてくれるの

 

秋は空の色にあるってあなたは言いました

うん、今ならずっと泳いでいけそう

成層圏だってどこだって

あなたの瞳に映るものならわかるの

 

秋はまだ来ていません

秋はもう来ています

風と空とあなたと

誰が最初に伝えてくれるの?

  


 

    夕焼け

 

なぜあんなときに別れたんだろう

もうだめだよって君が言ったから?

もう苦しみたくないって君が言ったから?

 

でも、それは嘘ってわかってた

いつもぼくの気持ちを予測変換して

勝手に決めてしまうんだね

君は「やさしさ」を「残酷」に変えてしまう

 

なぜあんなときに君と別れたんだろう

とてもきれいな夕焼けの中で

でも、もっと輝いていた君と

  


 

    せつない想い

 

朝、顔を洗って鏡を見るのがイヤ

昼、仕事が一段落して、ほっとするのがイヤ

夕方、電車の中で友だちからのメールを見るのがイヤ

夜、好きなドラマが終わるのがイヤ

 

自分に帰りたくない

自分の心をのぞき込みたくない

傷ついているから

あきらめきれないから

 

眠りに落ちるまでの長い時間がイヤ

いつもあなたを考えてるあたしがイヤ

  


   

   消える瞬間、微笑んだ

 

遠距離恋愛って、昔は電話で話すだけ

今はケータイで動画もできるし

ウェブカメラでチャットもできる

 

だから、だいじょうぶって君は言って

半年はそうだったけど

ぼくも東京に3回日帰りして

新幹線ホームで君は泣いたけど

 

「終わりなのかい?」

キイを打つ手が震える

「たぶんね。。。おやすみ」

君の顔が消える……

  


 

   アンダンテ

 

アンダンテ――歩くくらいの速さで

あたしはあなたの肩にも届かない

だから、いつも遅れがち

「おれはふつうに歩いてるぞ」

 

アルデンテ――少し歯ごたえが残るゆで方

あたしはあなたの半分も食べれない

だから、いつも遅れがち

「おれはふつうに食べてるぞ」

 

アンドロメダ――いちばん好きなaikoの曲

あたしはあなたの心がぼやけて見えなくなって

不安になってきくの

「あたしが見える?」

「おれはふつうに見えるぞ」

 

だから、好きよ

いっしょに歩こうね

あたしのアンダンテで

  


 

  ±0

 

今日はとてもいいお天気で

観覧車のてっぺんから

富士山も見えたよね

うっすらとだけど

 

あなたがハンバーガーとポテト

あたしがそのあとソフトクリーム

割り勘だよね

だいたいだけど

 

ここはいつも混んでるから

朝の8時から並んだよね

もう夜の8時だね

こんなに一緒にいたの初めてだけど

 

ぜんぶぐるっと回って

プラスマイナス、ゼロ?

でも、気持ちは近づいたよね

目に見えないけど

  


 

   Dear…

 

Dear My Darling

あなたと会えてとても幸せなの

こんな気持ちになるなんて

ちょっと前まで考えられなかった

あたしをかわいいって言ってくれるけど

そんなことないけど

かわいくなりたい

言いたいことがたくさんありすぎて

うまく書けないの

でも、ダーリン、ずっと仲良くしてね

 

P.S.鎌倉のあじさいきれいだったね。来年も行こうね。

05.6.11

 

Dear My Friend

この頃、とても不安なの

電話で話してもあたしがしゃべってばかり

なかなか会えないの

仕事がいそがしいって

メールの返事も2日遅れ

あたし我慢してる

また前みたいにやさしくしてくれるまでって

ごめんね

くよくよするなって言われちゃうね

でも、マイ・フレンド、その先は言わないで

 

P.S.鉢植えの朝顔まだいっぱいお花をつけてるよ。目にしみちゃうくらい。

05.8.6

 

 Dear My Darling

昨日は泣いちゃってごめんね

でも、もうだいじょうぶ

わかってたから

あなたの言うことは

ひと夏の恋だねって友だちと笑ったんだから

だから、だいじょうぶ

気にしないで

でも、ダーリン、こう呼べるのももう最後なんだね

 

P.S.今から秋の花を買いに行きます。何もないのはさびしいから。

05.9.3

  


 

   大切な人の次

 

気になること:

朝起きて、髪がまとまらないこと

今日の数学の試験の結果

晩ご飯のおかず

……でも、あなたがいちばん気になるの

 

好きなもの:

夜明けの青い空

遠くで聞えるコーラス

雨が降る前のにおい

……でも、あなたがいちばん好き

 

あなたがいれば何もいらない

あなたがいれば何も気にならない

  


 

   一人芝居

 

前に付き合ってた彼女に会った

  前の彼氏が会おうって

元気?

  今さらって思ったけど、断れなかった

うん

  元気じゃないあたしを見られたくない

髪型変えた?

  あなたと別れたときの髪型?

うん

  雨にぬれて、ぐちゃぐちゃだったの覚えてないよね

 

話が途切れがちなのを気にしてた

  気を使ってくれる

ぼくは話題を見つけるのが下手だ

  やさしいね。無理してない?

昔は彼女が楽しそうにしゃべるのを聞いていればよかった

  昔はあたしが無理してた

今日はあまり話してくれない

  思い出していると無口になる

仕方ないよね

  なつかしくて、悲しかったから

 

もう一度やり直せないかな?って言葉が出ない

  やり直したいなんて言わないで

じゃあって、ぎこちなく手を上げて別れてから

  さよならって言って、ほっとしてる

もう二度と会えないって、わかった……

  苦しみたくないから。でも……

 

 


 

   ぼくの帰る場所

 

ぼくが子どものとき

  死神がささやいた

土手に寝転んで空を見てた

  坊や、君もいつかはわたしと行くんだよ

大人になったら

  今じゃない、でもいつかは確実に

この空のずっと向こうの宇宙に行けるんだろうか?

  君の体も、心もなくなって  

タイムマシンに乗って、ずっと未来に行けるんだろうか?

  永遠に目覚めなくなるんだよ

 

大人になってみたけど

  子どものときには眠れないほどだったのに 

そんなふうにはならなかった

  あんな気持ちにはならなくなった

夢みたいなことは夢だったんだろう

  夢を見ない大人になって

今、土手に寝転ぶこともない

  死神はどこかへ行ってしまった?

子どもがいる場所だから

  ぼくがあそこへ帰るのを待っている

  


 

    幻想

 

粘っこい雨が降っている夜

あたしはお墓を掘り返している

足長蜂のような顔のあなたと

千年前に死んだ赤ちゃんのお墓を

 

シャベルは老婆のようにもろく崩れて

手で掘ると爪に血がにじむ

ぶんぶん、ぶんぶん、あなたは上機嫌で

赤ちゃんの名前を呼ぶ

 

夜に夜を継いで

雨に雨が絡み合って

大きな穴が開いた

じゃあ、先に行くね

 

 


  

   アリア

  

春、小鳥があたしに歌いました

「恋とはどんなものかしら?」

楽しいこと

せつないこと

きっといろんなことが待ってるの

    モーツァルト:フィガロの結婚

 

夏、白い波があたしに歌いました

「愛する人、あなたの心はどこにあるの?」

不安にゆられて

同じところを行ったり、来たり

答は水平線の彼方なの

    ヴァーグナー:タンホイザー

 

秋、鈴虫があたしに歌いました

「歌に生き、恋に生き」

とてもきれいな声で

でも、もう消えそうな声で

何も悔いはないの

    プッチーニ:トスカ

  


 

   共犯者

 

さあ、逃げなきゃ

急いで、世界の果てまで

犯罪だからね

愛しすぎるなんて

 

仲間割れはやめましょ

おまえがかわいすぎるから

あなたがやさしすぎるから

そんなこと言ってる場合じゃない

 

恋愛パスポートも持たないで

恋愛警察に逮捕されて

恋愛裁判所で有罪判決

恋愛刑務所に放り込まれちゃったじゃない

いっしょだからいいけどさ

 


 

   浮気

 

同窓会に行くのも

話し中が続くのも

コロンを変えるのも

あなたは心配する

 

だいじょうぶよって

謎の微笑み

そう見えればあたしも大したもん

いい女になったかも

 

つかまえられない気持ちを

つかまえて

わからない心を

わからせて

心配してるのはあたしのほうだから

 


 

    君色

 

洗い立てのシーツにくるまった君は

おだやかに眠っていて

昨日の夜のことも

夢のように思えてしまう

 

夜が明けてくる

ブラインドの光で

あたりはブルーに染まる

なめらかな波のように

 

やがて太陽が昇りかけるとき

ぼくは君を起こそう

いちばんきれいに見える

朝焼けの中で

 

君は目を開けて

黒い瞳をぼくに向ける

長い物語が始まるような

夢の中の色を宿して

 


 

   安息空間

 

広い世界をすみからすみまで探し回っても

あたしがほっとできるのは

たったひとつの小さな場所だけ

あなたの腕の中

 

たとえあたしが宇宙を飛び回っても

笑っていられるとしたら

それはとても大きなものの中にいるから

あなたの胸の中

 

もっと狭くして

ぎゅっと抱きしめて

もっと広くして

あなたの中に溶けていくように

キスして

 


 

    秘密

 

あたしは本当は人魚だから

人間の心は半分しかわからない

あなたがあたしを好きだと言ってくれても

半分しかわからなかった

 

最初の頃、そう言ってくれたときも

あたしがほしいってことはわからなかった

この間、そう言われたときも

ほかに好きな人がいるってことはわからなかった

 

あたしは本当は人魚だから

涙を流したことがない

人間の心がもし見えたら

目からあふれ出るでしょうか

遠い海に向かって

 


 

   揺れ動く心

 

みんなはあたしをさっぱりした性格だと言う

最近、さっぱりだからとあたしは笑う

こだわる余裕がないだけなのと思いながら

マニキュアの塗りむらを見つめる

 

あなたはあたしを素直な性格だと言う

親の育て方がよかったのとあたしは笑う

あなたの気持ちを先回りしているだけなのと思いながら

メール着信の震えを気づかないふりをする

 

もう「好き」でも「嫌い」でも

どっちでもいいの

自分の心にラベルを貼って

蝶の標本のように留めてしまいたい

 

そうすればあたしはあたしを見ることができるの

さっぱりとした素直なあたしを

 


 

   泣きたくなる夜

 

大人は泣かない

子どもの頃、そう思ってた

ころんだり

道に迷ったり

昼寝をしすぎて寝つけなかったり

そんなことで泣いたりしなくなるって

 

大人になると泣けない

大人になってわかった

愛につまずいたり

恋に迷ったり

想いを抱いて寝つけなかったり

泣けば楽になるってわかってても

 

でも、今夜だけは子どものように

声をあげて泣きたい

みっともなくてもいいから

ずっと抱えてきた大切なものが壊れたんだから

 


 

    忘れられない…

 

映画をいっしょに見てたら

ぼろぼろ泣いてた

鼻水出てるよって笑ったら

ムキになって怒ってた

 

パスタ食べたら

ワイシャツにオレンジの点々をつけてた

洗ってあげようかって言ったら

勘違いして赤くなってた

 

キスをするとき

あたしの髪をかき上げてた

先に目をつぶるから

くすってなりそうで苦しかった

 

ジャンケンはいつもチョキを出してた

ウソをつくときは

鼻の横を触ってた

最後には教えてあげればよかったかな

 

とてもつまらないことだけれど

あたしの心に刻まれているの

あたしがおばあさんになっても

きっといつでも取り出せる

  


 

    ピアス

 

独り暮らしを始めたとき

ソファを買った

ダイエットを始めた

それからピアスをした

 

体を傷つけてまでおしゃれすることはない

外見を飾っても中身がよくなるわけじゃない

それはそうかもね

理屈を言ってるだけでやっていけるならね

 

真珠の痛み

銀のバラのときめき

ラピスラズリの不安

すべてを勇気に変えて

生きていかなきゃね

わかりあえる人に出会えるまでは

 


 

   後悔

 

あたしは後悔なんかしたことない

浮気を見つけたときは

頬を2発叩いて

それでさよなら

 

うじうじ悩むなんてあたしは嫌い

空虚な気分のときも

パンケーキを焼いて

メイプルシロップでおなかいっぱい

 

めそめそ泣くなんてあたしに似合わない

涙を流すこともたまにあるけど

知っているのは愛犬だけ

頬をなめて秘密を守ってくれる

 

振り向かない

くよくよしない

だから、秋はあたしの季節じゃない

昔のピアスをつけたり

出すあてのない手紙を書いてみたり

あたしらしくなくなる季節

 


 

   雨降りは嫌い

 

窓を涙のように流れる

秋の冷たい雨を

一日中、ながめていると

いろんなことを思い出す

 

落ち葉を踏みしめ

歩いたいちょう並木

銀杏のにおいが嫌いだって言って

あなたのセーターに顔をうずめた

 

灰色の海に向かって

吹く風の中で

花火の燃え殻をたくさん見つけて

あなたの肩を借りてパンプスの砂を捨てた

 

思い出の上に雨が降り続いて

「ちょっと寒いね」と独り言を言う

そうでもしないと

心があふれそうだったから

 


 

   心変わり

 

もしね、もしあたしが

ほかの人を好きになっちゃったらどうする?

そう言うとあなたはすっごく不機嫌で

だからあたしはごめんねのキスをいっぱい

 

でもさ、でもあたしが

なんかすっごい病気になって死んじゃったらどうする?

そう言うとあなたは本当に心配そうで

だからあたしは痛いくらいぎゅって抱きしめられてた

 

だのに、なぜあたしは

なぜってずっと考えているの?

そう言うとあなたは目を逸らすだけ

だからあたしは見たくないものを見てしまうの

ずっと知りたかったあなたの心を……

 


 

   突然のメール

 

あたしは長い通勤電車の中で

毎日のことをあなたにメールする

読者が一人しかいないブログのように

季節のこと、仕事のこと、将来のこと……

 

でも、あなたからはいつも短い文章だけ

「やっと雨が上がったね。好きだよ」

「今日はお疲れさま。また会おう」

まるで俳句みたい

 

初めてあなたから長いメールが来た

それから、眠れない夜が始まり

することがなくなった通勤は長く

何度も削除しようとするけれど、

指が止まってしまう

 

なかなか会えない恋人同士が

動画でデートしたり

画像で心を通い合わせたり

そんなCMが不安も希望もない目に映る

 


 

    伝えるもの

 

昔は電話がなかったから

何日もかかる手紙で想いを伝えあったんだって

お母さんが若い頃はケータイがなかったから

お父さんは何時間もハチ公前で待ってたんだって

 

今は電話でいつでもしゃべれる

暇があればつまらないこともメールしてる

これって便利になったんだよね

心が通じやすくなったんだよね

 

言葉は心を伝えるもの

あたしはあなたに伝えてきたの

言葉は心を変えるもの

あなたの言葉であたしは変わった

 

でも、もう伝わらないの

何時間もひざを抱えて待っていたのに

あなたの心は変わらない

夜の闇の中に

鳴らない電話が沈んでいる

 


 

    残り香

 

目が覚めたとき

あなたはいなかった

情熱の昂ぶりの余韻を

広い腕の中で感じていたのに

 

いつまでもこのままで

その気持ちは本当だって信じてるけど

そっとベッドから脱け出した

形だけが残っている

 

熱いシャワーを浴びないと

今夜は心まで冷えてきそう

でも、体からあなたの愛情を

流してしまいたくない

 


 

   迷い

 

旅に出たいと思います

どっちの道を行けばいいの?

道しるべも地図もない

でも、選ばないといけない

 

どこに道があるの?

人生は四択問題じゃない

でも、答を探さないといけない

 

むずかしく考えることはない

自分に正直になればいい

でも、自分の心がわからない

旅はあたしに教えてくれるでしょうか

 


 

     誕生日

 

 朝、起きて顔を洗って

歯みがきをしながら

お花に水をあげる

    Happy Birthday!

 

昼、ランチを食べて

公園を散歩する

青い空に飛行機が飛んでいる

    Happy Birthday!

 

夜、いつもと同じ

忙しい一日が終わる

でも、今日は一日

少し背が伸びていたような気がする

    Happy, Happy Birthday!

 

 


 

   思い切り

 

何度も考えた

いっぱい悩んだ

友だちにも相談した

結論はぜんぶ同じ

 

なぜ思い切れないの?

気持ちが残ってる?

今までの時間を無にしたくない?

次が見つかってない?

 

プツリと糸を切るみたいに

エイッてプールに飛び込むみたいに

あなたへの思いを切ってしまおう

明日こそ

 

ううん、今こそ

先延ばしがいちばんあたしを

捕らえていたものなんだから

切るのはあたしの思いなんだから

  


 

    しのび笑い

 

その押し殺したような声を聞いたとき

最初ぼくは彼女が笑ってるのかなって思った

でも、そんなはずはない

彼女は暗闇の中で泣いていたんだ

 

本当だったらぼくの腕を枕に

ささやいたり

いたずらしたりするはずなのに

ぼくが別れ話を切り出したから

 

彼女は本当にダメなのか

やり直せないのか尋ねた

背中を向けたまま何度も

そして、最後に仕方ないのねと言った

 

それから、何か月も経って

街を歩いているときに

ぼくはふと立ち止まってしまった

最初に思ったことが

正しかったのかもしれないと

  


 

    遠距離恋愛

 

遠く離れていても

心は通じ合う

メールの言葉一つにも気を配って

3か月に1回のデートにも

水曜日からお天気を心配して

 

でも、不安はあるの

電話を切る前のため息や

別れる前の一言にも

心にさざ波が立ってしまう

 

近距離恋愛って言わないね

あなたの心が近くにあれば

もっと近づいてくれれば

そう呼んでみたいな

  


 

    気持ちの整理

 

さあ、片付けなくっちゃ

散らかりまくったこの部屋を

整理=捨てること

どんどん捨てちゃいましょう

 

美術館のパンフレット

片っぽだけのイヤリング

男物のパジャマ

いろんな思い出があるものだけど

段ボール箱に放り込め

 

すっかり片付いたじゃないの

秋の夕暮れは早く

もう辺りは暗くなって

がらんとした部屋に

あたしはうつむいて

ずっと立っている

 


 

    一人旅

 

こんな季節に一人で旅に出るなんて

何かあったの?って

みんな訊くけど、何もないよ

ただ風の光を見たかったの

 

行く先も、帰るところも

旅の目的じゃない

電車に乗って、バスに乗って

それから気の向くままに歩いて

移りゆく季節と

一人のあたしがお話をする

ひさしぶりね

 

旅から帰って

何かあったの?って

みんな訊くけど、何もないよ

ただ心の色が深くなっただけ

 


 

    クリスマス

 

クリスマスが楽しみな人にも

クリスマスが来てほしくない人にも

クリスマスに甘い思い出がある人にも

クリスマスに忘れたいことがある人にも

 

すべての人にやって来る

星が静かに輝くように

すべての人に心があるように

 

ケーキ屋さんにも

おもちゃ屋さんにも

レストランのウェイトレスにも

ホテルのボーイにも

 

すべての人にやって来る

雪が黒い空から降るように

すべての人が眠るように

 

お父さんにも

お母さんにも

子どもたちにも

ひとりぼっちの人にも

Merry Christmas!

Merry Christmas……

 


 

    晩秋の夜

 

落ち葉が落ちる音が聞こえそうな夜

ぼくはパンセを読んでいる

短い言葉の中に

蓄えられた知恵が色づいている

 

闇の向こうには白い冬が待っている

ぼくは幻の木枯らしを聞いている

心の中を通りすぎる記憶を

彼方へと吹き飛ばす

 

君は今何をしているのだろう

顔さえもすぐには思い出せないのに

髪の香りだけは蘇る

ぼくの中の深いところから

 


 

    イケナイアソビ

 

大人のアソビは無邪気なもの

楽しくて

気持ちいいことしてるだけ

夜の向こう側まで

 

指と唇で

とっても敏感なところを

刺激される&刺激する

知恵と工夫で

焦らしちゃう&焦らされる

あたしは楽器で演奏者

 

こんなことするなんて

イケナイ?

うん、もちろん

あたしをきれいで淫らにしちゃうから

 

こんなこと言うなんて

いやらしい?

うん、もちろん

言葉は素敵なパスポートだから

現実と夢の国境を超えるための

 


 

     スカート

 

なぜ女はスカートをはくの?

飛んだり、跳ねたり

そんな淑やかじゃない女に

ならないように?

 

いいえ、風に舞う花びらのように

裾を翻し、あなたの胸に飛び込んでいく

その姿を目に焼きつけてほしいから

 

なぜ女はスカートをはくの?

熱くなった頬をすり寄せて訊く

あなたはふくみ笑いをしながら

手を伸ばす……

 


 

    泪

 

赤ちゃんがあどけない顔で

あたしに微笑みかける

いちょうの葉が金色の光の中で

揺れながら落ちていく

 

そんなありふれた光景に

心を動かされるあたしが

いじらしいって思ってくれますか?

 

冬の泪は冷たいのかしら

熱い胸がしめつけられて

あふれてくるものだけど

あなたの心を溶かすことができないから

 


 

    笑顔

 

いつも笑ってるんだねって

みんなから言われる

それって、ほめられてるのか

けなされてるのかわかんないけど

悪いことじゃないよね

 

笑うことはあたしには

とても自然なこと

ただ一回だけ違ったけど

 

あなたがあたしの中で

いちばん好きだって言ってくれたから

がんばったよ

最後だもんね

 


 

   キンモクセイ

 

その花をぼくは見たことがない

いつも香りでわかる

まるで暗闇のデートのよう

 

手を握り合って

唇を探すように

間違えたふりをして

耳たぶからじらす

 

しっとりと花開く

ぼくの指先で

香り立つ

まばゆい秋の雨上がりのように

 


 

   傷跡

 

あれ?

どこなの?

ずきずきするよ

ずっと前の傷が

 

もうクリスマスが近いから

あちこちカップルがいっぱい

危険地帯は

帽子を目深にかぶって

 

ねえ?

どうしてるの?

救急箱持ってきて

きっと胸の奥に薬が必要だから

 


 

    満月

 

きれいだね

冬のお月さまも

ずっと遠くに見えるみたいだね

 

  あたしにはあなたが遠くに見える

  冷たく白く光ってるように

  さびしいな

 

どうしたの?

寒い?

さっきから黙ってるけど

 

  聞こえないよね

  あたしの声は

  地上に月の光があふれていても

  あたためたりはしないように

  


 

    霰(あられ)

 

あたしは指先がいつも冷たい

だから、こんなところで言わないで

なべ焼きうどんを食べてるときも

ホットココアを飲んでるときも

お天気の話をしてたくせに

 

だからほら

鉛色の雲が広がって

今にも降ってきそう

そんな公園でなんて

 

雪は静寂をもたらすもの

でも、霰は音を聴くもの

だからほら

聞こえなかったじゃない

好きだって言ったの?

 


 

     嫉妬

 

サンタクロースがチラシを渡す

クリスマスケーキ、今なら半額!

くしゃくしゃにしてポイ

ゴメンネ

捨てたいのは気持ちの方なのに

 

あの子がいなければ

あなたがいなければ

そんな考えがあたしの愛を

醜く変えていく

まるで甘いケーキが

毒に変わるように

 

嫉妬はマイナスの感情

あたしの値打ちが半額!

そんなのわかってる

だからよけいにイヤなの

だから息苦しいほど苦しいの

 


 

   いたぶる

 

どうしてそんなことするの?

あたしがかわいくないの?

  かわいいからいたぶるのさ

いじわるしたり

いじめたりしないで

  君の目はそう言っていないね

どうしてそんなこと言うの?

あたしが恥ずかしいの知ってるくせに

  赤らんだ頬がセクシーだよ

ふるえたり

声が出てしまう

  もっと深く反応してごらん

 

どうしてそんなことさせるの?

ふだんのあたしならできないのに

  そう、ギャップを楽しもうよ

あなたの前でだけ

たしはあたしじゃなくなってしまう

  本当の君を見せておくれ

 


 

    半月

 

寒いのも、暗いのも好きじゃないけど

あなたといっしょなら楽しい

肩を抱いてくれれば

もっとうれしい

 

なんか不思議だよね

ずっと前から知ってたような

でも、まだまだ知りたいことがいっぱい

もう半分?

まだ半分?

 

じゃあ、またね

握手して

軽くキスして

お月様をパキンと二つに割って

おうちまで持って帰ろうね

 


 

    コーヒー

 

車を運転するあなたに

熱すぎないように

ぬるすぎないように

手のひらで確かめて

缶コーヒーを差し出す

飲み口の向きにも気をつけて

 

食事が終わったあなたに

コーヒーと

イヤだけどタバコ

だから歯を磨いてね

キスをねだってるって言われると

恥ずかしいんだけど

 

まだ眠っているあなたに

とっても濃いエスプレッソを

飛びっきり熱くて

あたしをにらんだら

情熱の味だもんって

ハーブティを飲みながら言うの

だって子どもは飲んじゃダメなんでしょ?