チェス和書:技法書レビュー

 水野優のブログで先に発表してから多少変更を加えてこちらへ追 加していきます。あくまで購入の参考として役立てて下さい。amazonの情報は掲載時のもので す。最新および詳細な情報はクリックして確認してください。レビューが短いものは、今後書き足す予定です(汗。

五 十音順(主にチェスの技法を扱う本)
タイトル(クリックで下のレビューへ飛ぶ)
著者
amazonでの価格等(ない場合は現在品切れ)
ページ数
出版年
出版社
勝ち方の基本戦術(チェス・マス ター・ブックス2)
フレッド・ラインフェルド 中川笑子訳

167
'95改訂
河出書房新社
クレイジー・チェス
ジャック・ピノー

198
'99
河出書房新社
ジャック・ピノーの ダイナミックチェス入門
ジャック・ピノー

246
'95
山海堂
将棋ファンにも楽しめる初め てのチェス1手・2手詰集
湯川博士・若島正

158
'03
山海堂
定 跡と戦い方(チェス・マ スター・ブックス1) 有田謙二

209
'95改訂
河出書房新社
チェス上達法 坂口允彦

206
'90
虹有社
チェス次の一手 (チェス・マスター・ブックス4)
東公平

230
'96改訂
河出書房新社
チェス―入門から上達まで すぐわかる、面白い、強くなる! 小野田博一

182
'94
有紀書房
チェ ス入門−短期間で上達する
金田英二

223
'84
日東書院
チェックメイトの手筋 (チェス・マスター・ブックス3)
有田謙二

164
'96改訂
河出書房新社
はじめて のチェス 権田源太郎

63
'02
中央公論事業出版
ヒガシ・コウヘイのチェス入門 定跡編 東公平

207
'00
河出書房新社
百万人のチェス アレクセイ・パーヴロヴィチ・ソコリスキー 渡辺徹訳

479
'90
プラネタ出版所
ボビー・フィッシャーの究極のチェス ブルース・パンドルフィーニ 東公平訳
New!

120
'95
河出書房新社
ボビー・フィッシャーのチェス入門 ボビー・フィッシャー 東公平訳

336
'74
河出書房新社
やさしい実戦集(チェス・マ スター・ブックス5)
有田謙二

199
'96改訂
河出書房新社

勝ち方の基本戦術
4309721729 中川 笑子

河出書房新社 1995-12
売り上げランキング : 116,261


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 これも図書館で借りただけ。著者とは一度だけ対戦したことがある。初心者向け本を中心に200冊も書いたフレッド・ラインフェルド本の翻訳である。

クレイジー・チェス
4309263631 ジャック ピノー
河出書房新社 1999-03
売り上げランキング : 86,435

おすすめ平均star
star入門書を読んだらこれ!
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 チェスの伝道師ピノーさん(日本人の伝道師は小笠さんらしい)は、『ダイナミックチェス入門』という名著で特に知られている。これほどチェスとその歴史 を愛した元日本チャンピオンをJCAは除名にした。

 しかし、内容については例によって辛口でいく。まず、「私は(が)」が多い。多すぎる。翻訳の基本的技術では初心者レベルだ。自分の話ばかり続くのなら 逆に主語は省けるはずである。これでは著者が自己中に見えてしまう。
 著者のフランス語を日本語に訳したのは、あとがきによると知人の新谷優さんとなっている。訳は日本人の奥さんが担当と聞いていたが、最終的なニュアンス の修正だけらしい。しかし、お二人はあくまで協力者だろうし、チェスに詳しくない点は仕方ない。

 まえがき  序章 チェスと私
 第1章 基本からゲームまで
   1 招待客  2 基本からゲームまで
 第2章 ブリッカブラック・チェス スタイルの玉手箱
   1 ナイト・パラダイス
   2 ビショップ・ペア
   3 キャスリングをするべきか否か……それが問題だ
 ウイーン・オープニング−あとがきにかえて

 第1章は、著者がチェスを始めるきっかけから始まり、「招待客」ではチェスのルーツから各国のボードゲームに松田道弘さんのように触れ、「基本からゲー ムまで」でやっと駒の動かし方に入る。チェスを覚えようとする読者にはまどろこしいかもしれない。
 ルールと記譜法の説明が後回しなせいで、その前に少し出てくる手筋や実戦譜が、結果的に分かりにくくなっているのは残念だ。第1章では、第2章のように 実戦譜の本譜が変化手順と区別できるように太字になっていないのも見にくい。

 洋書と同じような大袈裟な表現も多いのだが、直訳調の文体ゆえとも考えられる。私がリライトするだけでもかなり変わるだろう。ただし、著者が女主人と チェスを指したり、昔のヨーロッパへさかのぼったりする文章上の演出は別の問題だ。
 私はフランス語は分からないが、内容につっかかって立ち止まっても、たいてい「原文」の言いたいことは想像できるから、誤訳か誤植かとかは判断できる。 しかし、チェス用語にも不慣れな初心者が読んだらどうなるだろう。

 致命的と思ったものを挙げておく。p.33「駒得したいなら、駒をできる限り交換しなさい」は、「駒得したなら〜」の間違いだろう。これを初心者が鵜呑 みにするとちょっと困る。
 p.50「ナイトが斜め前のマスに行くには最低何手必要でしょうか?(中略)最低でも4手必要です」斜め前のマスなら2手で行けるから、これは斜めに2 つ目のマスのことだろう。

 キャスリングのルール説明の最後に、クイーン側キャスリングできるかどうかを審判に聞いたコルチノイの話が出て来た。Kittiさんが何かで読んだとコ メントされてた話はこれだろう。
 最初の実戦譜は、パリのオペラ座でモーフィーが二人の貴族相手に快勝したあの有名なゲームである。このときゲームをしながら見ていたオペラはモーツァル トの「フィガロの結婚」だったと書いてある。

 些末なことだが、Znosko-Borovskyは"How Not to Play Chess"でこのときのオペラは「ノルマ」(ベルリーニ)としており、モーフィーのゲーム集を書いているSergeantは「セビリアの理髪師」(ロッ シーニ)としている。フィガロは物語としてはセビリアの続編に当たるが、いったいどれが真実だろう。
 間違い探しはまだ続く。p.90ではReuben Fine(1888-1942)となっているが、これがほんとうなら私は十年留保に頼らずとも彼の著作を翻訳出版できるからひじょうにありがたい(笑。こ れはカパブランカの生没年だ。

 p.149「致命的な正方形」。これは明らかに「致命的なマス」の間違い。しかし、フランス語のcarreもsquareと同じく「正方形」と「マス」 の両方を意味することが分かった。他には、アルビン・カウンター・ギャンビットのはめ手筋に2回言及する無駄があった。
 あとがきにかえてのビエナ(フランス人でなくてもこの英語読みはいやん)・ゲーム集では、私も大好きな1900年頃のウイーンを舞台に話が進む。惜しむ らくは、3つに枝分かれする5手目からの棋譜が全部1つずれて6手目〜になっている。
 プレーヤー名は、フランス語っぽくなっているのもあるのだろうが、仮名で書いてあるのを見たことがない名前が多いので、むしろ参考になった。p.118 「湯川さんは『ビショップ・ペア』というタイトルを付けることをOKしてくれるでしょうか」は、内輪ネタとして笑わせてもらった。

 問題は、これが『ダイナミックチェス入門』という一般向けに徹した内容から一転して、次は好きなことを存分に書こうという著者の個人的な欲求から発して いることだろう。といっても、内容は決して独りよがりのものではない。
 ルールや歴史から始まって濃い内容のミニチュアゲームが続くこの構成は、理論的には初心者でも読み通すことはできるが、基本的な戦略や戦術を知らずして はその半分も理解できない。そのへんを扱った本を先に読んでおくべきだ。というわけで、チェスを愛する皆さんにお薦めできる本(説得力ないなあ)。
ジャック・ピノーのダイナミックチェス入門
4381102169 ジャック ピノー Jacques Marie Pineau
山海堂 1995-02
売り上げランキング : 40,422

おすすめ平均star
star自分で考えながら読む本
starハイコストパフォーマンス
starチェスの初級〜中級
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 洋書なら売れそうなネーミングの本書は、サン・テグジュペリの有名な言葉で始まる。全体的には、著者の後発本と比べるとずいぶん普通だが、湯川さん のお目付に抑圧されながらもピノー節が全編に垣間見られる内容になっている。目次(最下位分類等省略)とともに章ごとに見ていこう。

第1章 チェスのルールを覚える
 1 チェスボードと駒
  チェスボード
  駒の種類と並べ方
 2 チェスのルール
  駒の動かし方
  チェック&チェックメイト
  キャスリング
  駒の強さの比較
  アンパッサン
  ステールメイト
  「チェス語」を覚えよう
 練習問題・1[ルールについて]
        2[1手詰]

 ルールと基本戦術の同時進行説明は基本的には反対だ。クイーンをルックと交換するのは損だと最初に教えられると、それを禁手と誤解される恐れが あるからである。しかし、紙数が少ない中ではそれもやむを得ないだろう。逆に、歴史まで引用し、ルール説明が単調にならずに成功している例である。
 ルールの最初で「相手のキングを動けなくした方が勝ち」とあるが、「取った方が勝ち」と同じく厳密には正しくない表現だ。「”チェック”と言うことに なっています」も、意外と見られる。著者が誤解しているわけがないから、初心者はチェックを発声すべきという考え方だろうか。

 本書の特徴として最も多く指摘されているのは局面図のビショップだろう。著者のこだわりで、僧正帽子でなく道化師の形になっている。読み終わる頃に慣れ るとは思うが、本書で初めて接する人にとってはどうだか分からない。図面に書き込まれる多くの記号(駒の効き、ライン、動き、境界)は大いに役立つ。
 ポーンの動きの説明からいきなり3個同士の見合いポーンの突破手順まで飛躍するのが難しい。p.21のポーンの進め方の説明では、1図の手は必要と思え ない。p.23のポーンのブロックの仕方は、意外と他書で見かけないのですばらしい。p.24アンパッサンは、ピノーさんなら由来の説明も欲しかった。

第2章 エンディング
 エンディングで練習する
 1 クイーン・ルーク・ビショップ・ナイトのエンディング
  1 キング対キング+クイーンの場合
  2 キング対キング+ルークの場合
  3 キング対キング+2ビショップの場合
  4 キング対キング+ビショップ+ナイトの場合
  5 キング対キング+2ナイトの場合
  6 キング+2ナイト対キング+1ポーンの場合
  チェス小曲集1〜4
 2 ポーンのエンディング
  キングの正方形
  オポジション(見合い)
 練習問題・1[クイーン・ルーク・ビショップ・ナイトのエンディング]
        2[ポーンのエンディング]

 章の扉からp.35「手を打つ」が気になるが、序盤より先に終盤を持ってきたのはうまい。古くは私が翻訳中のメイソンもそうしており、むしろ標準的かも しれない。誤植が目立ってくるが、3と8、aとdの間違いが多いのは、チェスを知らないスタッフの読み間違いか。湯川さんは未だに原稿を手書きしてそうだ し。
 p.42「キングとビショップ、またはナイトを合わせて角の2マスしかコントロールできない」は、見過ごせない。キングだけで2マスだから合わせて3マ スだ。難解なB+Nメイトは局面図の活用で分かりやすい。ポーンの終盤で「正方形」が場合分けで詳説されているのは秀逸。p.75、1〜3図の正方形は意 味不明だが。

 p.74「(c7の黒Kが)Kc6と後ろに下がらず」とあるのは気になる。黒にとってc6はc7より前だ。白黒不変に表現するなら前後より上下を使えば いい。占拠(駒のいるマス)と支配(駒が効くマス)の混乱が少し見られる。英語でもoccupyとcontrolのあいまいなときがあるが、微妙な終盤で は重大な問題になる。
 p.83「勝てるゲームを引き分けにしてしまいました」いずれにせよ引き分けのはず。p.88下段「Qg3チェックメイト」はあり得ない。p.90解答 6のように、チェスを知らない人がピノー原稿を直訳したような文体が散見される。湯川さんがノータッチの部分なのだろう。

第3章 オープニング
 オープニング…定跡への序章として
 1 キングを中心とする「斜めライン」
  斜めラインの威力を知る例題6
 2 キング斜め前のポーンは「アキレスけん」
  f7とf2のポイント
  実戦から学ぼう
 3 ナイトの動きに注目!!
 練習問題[テーマ別のオープニング]

 序盤は、定跡の前にキングが危うい典型例に触れる二段構えでおもしろみが増している。p.99キングズ・ギャンビットの別名「ロマンチック」や p.106「ひつじ飼いのチェックメイト」は著者らしい。p.113釘付け(ピン)に対する「釘抜き」は湯川さんの言葉遊びっぽい。
 著者二冊目の『クレイジー・チェス』とダブるゲームがけっこうあるが、それは先に出た本書のせいではない。著者の持ち味はネタそのものより切り口だか ら、それもありなのだろう。最初から出し惜しみしなければ、そう新しいものばかり出せるわけがない。読まなくても『チェスの花火』が想像できる。

第4章 定跡・選抜20ゲーム
 定跡・テーマと狙い
 1 白e4のゲーム
  Aグループ
  Bグループ
  1 天才モーフィーの芸術的な速攻
  2 強烈ダブルルーク攻め
  3 センターライン、恐怖のピン
  4 早過ぎたキャスリング
  5 センター支配の威力
  6 速さと圧力
  7 ポーンの壁
  8 フィッシャー神話
  9 クイーン詰め
  10 出過ぎたポーン
  11 モダンとクラシック
 2 白d4のゲーム
  Aグループ
  Bグループ
  12 団結の強さ
  13 最後に笑うもの
  14 タイミングのミス
  15 システムの勝利
  16 理論的展開
  17 ザイツェフの夢
  18 一瞬の終局
 3 白Nf3のゲーム
  19 新定跡で一世風靡
  20 クイーンとナイト

 定跡も3つの初手をバランスよく配置するが、詳細に目をつぶったのは賢明だ。例えば、p.136ではペトロフ・ディフェンスは無視されている。その わりには、『クレイジー・チェス』にもあるp.138のイタリアン・ピノー変化(アクセレレイテッド・メラー・アタック?)に触れずにいられないという感 じ。
 p.56「ペルペチュエル」(パペチュアル)くらいのフランス語発音はいいが、p.139「スティニッツ」(シュタイニッツ)やp.155「ステグバー ト・タラッシュ」(ジークベルト・タラッシュ、原綴りも違う)はさすがに勘弁してほしい。d4ゲーム辺りから締め切りに追われたか、おかしな日本語が増え てくる。

 p.184エイベについての書き出し「オランダの人。」には腰が抜けた。人間なのはみんな知っている(笑。p.197「クローズゲーム(ポーンが中央を 占領 する)」はちょっと違う。スラッシュだけで区切った変化手順は見づらいから変えるべきだろう。
 p.162「キングのこめかみ」(黒のf7等のこと)はフランス語原文の直訳だろうが、p.157親父ギャグ「とんでもナイト」は湯川さんの仕業だろ う。 頻出するポーンの「2段バネ」(最初の位置から2マス進むこと)は、跳躍をバネにたとえる古い表現が分かりにくい。私は最初、わざと1つずつ進める意味と どちらか迷った。

第5章 チェスの歴史と変形チェスゲーム
 1 オールドチェスに挑戦
  シャトランジーにトライ
  シャトランジーの問題1〜3
  チェスのその昔…
  変形チェスゲーム
 2 詰チェスは芸術作品
  ロイドの問題:1〜2
 練習問題[詰チェス]
第6章 チェックミステリー劇場
 「アンパッサンの謎」
チェスの組織
あとがきにかえて

 入門書と銘打っておきながらここまで欲張るかと思うが、読んでみるとひじょうにおもしろい。この辺りはピノー、湯川両氏の共通フィールドゆえかひじょ うにいいできだ。特に第6章はスマリヤン顔負けのうまさで驚いた。
 皇帝さんを初め、本書をチェス和書ナンバー1に推す人は多い。私も個人的には小野田本がやはり1位だが、入門、上達、エンターテイメントの三拍子そろっ た 点では、たしかに最高のできばえである。これからチェスを始める人には誰にもお薦めできるし、買って損はない。

将棋ファンにも楽しめる初めてのチェス1手・2手詰集
438110482X 湯川 博士
山海堂 2003-10
売り上げランキング : 292,253

おすすめ平均star
starチェス界の現状をあらわしたタイトル
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 将棋とチェスの橋渡しに尽力してきた湯川さんと、プロブレミスト若島さんがタッグを組んだことがタイトルにうまく表現されている。
  王手(チェック)の連続である必要がないために、プロブレムは詰将棋とは全く違うパズルの道をたどってきたが、それを将棋ファンにも分かり やすく説明しようというのが本書の狙いである。

第1章 やさしい1手詰(1手詰のルール ルック詰 ほか)
第2章 連続王手(チェック)の2手詰(連続王手の2手詰のルール 2枚ルック ほか)
第3章 チェス式の2手詰(Mate in 2)(2手詰とは 逃走阻止 ほか)
第4章 チェスガイド(序盤の指し方 4つの定跡(オープニング) よく使う戦術用語と例題 ほか)

  なので、2章までの半分は詰将棋的なプロブレムになっている。19世紀の前半まではプロブレムの主流も連続チェックだったらしいが、駒が 減っていくチェスでは複雑なものが作れないからすたれていったそうである。
  湯川さんが関わっている朝霞チェスクラブの会報『チェックメイト』も、創刊頃にはあえて「新」スタイルとして初手チェックの投稿プロブレム が多く載せられていた。将棋からチェスに入る人はまずこの方がとっつきやすいし、本書のアイデアの源泉がここにあることは間違いない。

  プロブレムは苦手だからいやという人も食わず嫌いの人も、これほど親切で周到な前置きがあれば、3章のプロブレムも答を先に見ずにすべて解 けるのではないだろうか。プロブレムは門外漢の私でさえ全部解くことができた。
  プロブレムもレアなケースでは実戦に役立つし、John Nunnのようにプレーヤーとプロブレムの両方で一流という場合もある。中途半端ながら普通のチェスを扱う4章は、チェスの普及には欠かせないし、ご愛敬 というところか。

  大阪で会って以来10年以上ぶりに湯川さんに再開したのは、ちょうどこの本が出たときだったので、「買って!」と言われたが図書館で済ませ た。書評書いたから許してちょんまげ(汗。

定跡と戦い方
4309721710 有田 謙二
河出書房新社 1995-10
売り上げランキング : 95,523

おすすめ平均star
star幅広いチェス戦法(オープニング)書
star最初の1冊に!
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 有田謙二定跡と戦い方  チェス・マスター・ブックス1』 (209ページ、 '95年、河出書房新社)である。私はチェスを始めた頃から必要なときに図書館で見るだけだったが、去年古本屋で見つけて300円だから買った(笑。
 '80年初版は手元にないが、43の定跡は同じで解説が少し変わったようである。古いレアな定跡も多くて、例えばフロム・ギャンビット(1 f4 e5 2 fxe5 d6)に関してはBCOにもない変化が載っていて、おかげで郵便戦で命拾いをしたことがある(もちろんECOには載っている)。

目次
はじめに
定跡1 キングズ・ギャンビット
 キングズ・ギャンビット・アクセプテッド
 ファルクビア・カウンター・ギャンビット
定跡2 ダニッシュ・ギャンビット
定跡3 センター・ゲーム
定跡4 ラトビアン・ギャンビット
定跡5 ビショップ・オープニング
定跡6 ペトロフ・ディフェンス
 バリエーション1,2
定跡7 ポンチアニ・オープニング
定跡8 フィリドール・ディフェンス
定跡9 スコッチ・ゲーム
定跡10 ツーナイツ・ディフェンス
定跡11 スリーナイツ・ゲーム
定跡12 フォーナイツゲーム
定跡13 ジオッコ・ピアノ
定跡14 エバンス・ギャンビット
定跡15 ルイ・ロペス
 バード・ディフェンス ベルリン・ディフェンス
 クラシカル・ディフェンス
 シュタイニッツ・ディフェンス
 シュリーマン・ディフェンス
 エクスチェンジ・バリエーション
 オープン・バリエーション
 マーシャル・ギャンビット クローズド・バリエーション
定跡16 センター・カウンター・ディフェンス
定跡17 ビエナ・ゲーム
定跡18 アレキン・ディフェンス
 フォー・ポーン・アタック バリエーション1
定跡19 ニムゾビッチ・ディフェンス
定跡20 カロカン・ディフェンス
 メイン・ライン パノフ・ボトビニク・アタック
定跡21 フレンチ・ディフェンス
 メイン・ライン クラシカル・バリエーション
 タラシュ・バリエーション
定跡22 シシリアン・ディフェンス
 ドラゴン・バリエーション ナイドルフ・バリエーション
 シュエベニンゲン・バリエーション
 ラウザー・システム ポウルセン・カン・システム
 クローズド・バリエーション その他のバリエーション
定跡23 ピルツ・ディフェンス
 バリエーション1,2,3
定跡24 クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
定跡25 クイーンズ・ギャンビット
 オーソドックス・ディフェンス
 ボンダレフスキー・マカゴノフ・システム
 ケンブリッジ・スプリングス・バリエーション
 タラシュ・ディフェンス
 ラゴズィン・システム ビエナ・バリエーション
定跡26 スラブ・ディフェンス
定跡27 アルビン・カウンター・ギャンビット
定跡28 チゴリン・ディフェンス
定跡29 カタラン・オープニング
定跡30 ブダペスト・ディフェンス
定跡31 ダッチ・ディフェンス
 メイン・ライン スタウトン・ギャンビット
定跡32 キングズ・インディアン・ディフェンス
 クラシカル・システム ゼーミッシュ・バリエーション
 フィアンケット・システム
定跡33 クイーンズ・インディアン・ディフェンス
定跡34 ニムゾ・インディアン・ディフェンス
 ゼーミッシュ・バリエーション
 ルビンスタイン・バリエーション
 レニングラード・バリエーション
定跡35 グリュエンフェルド・ディフェンス
 メイン・バリエーション スミスロフ・バリエーション
定跡36 ベノニ・ディフェンス
 メイン・ライン フィアンケット・システム
 オールド・ベノニ
定跡37 ボゴ・インディアン・ディフェンス
定跡38 イングリッシュ・オープニング
定跡39 レティ・オープニング
定跡40 バード・オープニング
 メイン・ライン フロム・ギャンビット
定跡41 ラーセン・オープニング
定跡42 ソコルスキー・オープニング
定跡43 ベンコー・ギャンビット

 著者は'70年代にチェス・オリンピックにも出場した。平均すれば1定跡につきB6で5ページほどのスペースしかなく、主変化に関しては白黒1手ずつ進 むごとに局面図(1ページの1/6もの面積を占める)が入るが、その少ない紙面の中で名称の言われから解説する苦労が忍ばれる。
 定跡名のカナ表記が原語発音を反映していないものが多い等の問題は、改訂時に直してほしかった。しかし、チェス定跡に関する最大の和書である。私はチェ スの入門から上級レベルの洋書へ進むまでに和書が必要なくなるよう、ウェブ上の資料を充実させるつもりだが(本を出せないひがみ)。

チェス上達法
4770900066 坂口 允彦
虹有社 1990-04
売り上げランキング : 1,116,714

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 坂口允彦の『チェス上達法』(206ページ、'90年、虹有社)である。もう入門書は今さら という頃だったが、この再版を本屋で見つけたから買った。タイムリーな(私が合わせた?)maroさんの「戎棋夷説」 06/08/13日分 によると、'79年初版と分かった(しかし、「序」は'76年となっている)。
 今は亡き将棋のプロ棋士の著者は、JCAの前身日本チェス連盟の会長をするほどチェスにも尽力した。私が小学生のときにた またま買った将棋の本が、この著者の『将棋に強くなる』だったことには、何かしら運命のようなものを感じる。

目次
序 三田村篤志郎
はじめに

1.エチケットと棋譜の読み方
 1.対局上のエチケット
 2.棋譜(きふ)の読み方
  駒の記号・ポーンの記号・タテ線の説明・
  ヨコ線の説明・盤面の記号・記号の説明・
  棋譜の読み方の実例

2.チェスの基本戦法
 1.チェスの攻め方
  ・ダブル・チェック
  ・フォーク(両取り)
  ・ピンアップ(釘づけ)
  ・ディスカバード・チェック(あき王手)
  ・有利な交換をねらう
   有利な交換をねらっての攻め方
   フレンチ・ディフェンス
 2.エンド・ゲーム(終盤戦)
  ・クイーンの寄せ方
  ・ルックの寄せ方
  ・二ビショップの寄せ方
  ・ビショップとナイトの寄せ方
  ・ポーンの寄せ方

3.オープニングと中盤戦の要点
 1.センター・ゲーム
 2.ダニッシュ・ギャンビット
 3.スコッチ・ゲーム
 4.エバンス・ギャンビット
 5.ギューコ・ピアノ
 6.ツー・ナイト・ディフェンス
 7.フォー・ナイト・ゲーム
 8.ルイ・ローペズ
  モッフィー・ディフェンス
  ステェインツ・ディフェンス
 9.ペトロフ・ディフェンス
 10.キングズ・ギャンビット
 11.フォークビア・カウンター・ギャンビット
 12.シシリアン・ディフェンス
 13.フレンチ・ディフェンス
 14.カロ・カン・ディフェンス
 15.ビエナ・ゲーム
 16.フィルダー・ディフェンス
 17.クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
 18.スラブ・ディフェンス
 19.ニムゾ・インディアン・ディフェンス
 20.クイーンズ・インディアン・ディフェンス
 21.キングズ・インディアン・ディフェンス
 22.ダッチ・ディフェンス
 23.イングリッシュ・オープニング

4.中盤戦−攻防の急所
 1.ネクスト・ムーブ(次ぎの一手)
 2.手筋による攻め方
 3.チェスの攻め方

5.エンド・ゲーム(終盤戦)のテクニック
 1.キングとポーン一対キング
 2.キングとポーン二対キング
 3.キングとポーン一対キングとポーン一
 4.キングとポーン二対キングとポーン二
 5.キングとポーン三対キングとポーン二

6.実戦棋譜の解説
 1.1961年クリスマス国際親善チェス大会
  N. Sakaguchi(日本)対Alvarez(フィリッピン)
 2.世界チェス選手権試合1961年
  M. Botvinnk(挑戦者)対M. Tahl(チャンピオン)
 3.世界チェス選手権試合1937年
  Dr. M. Euwe(チャンピオン)対Dr. A. A. Alekhine(挑戦者)
 4.世界チェス選手権試合1937年
  Dr. A. Alekhine対Dr. M. Euwe
 5.世界チェス選手権試合1927年
  J. R. Capablanca対Dr. A. Alekhine
 6.世界チェス選手権試合1927年
  J. R. Capablanca対Dr. A. Alekhine

附録 チェス競技法

 14ページだけとはいえ、メイトではなくポーンの終盤にこれだけ目を向けた和書は初めてではなかったかと思う。シリーズらしき本に『チェスの打ち方』 『ゲームとチェスの遊び方』『チェスの詰手(翻訳)』があるが、私はなぜか書店で背表紙を見た記憶くらいしかない(汗。
 「序」には、昭和初期からの日本のチェス事情が書かれていて興味深い。昭和24年に『チェス入門』、36年に『チェス』を刊行とあるが、第一次ブームと 呼べるものは本書の刊行時期のようにフィッシャーの登場を待たねばならなかったようである。

チェス次の一手
4309721745 東 公平

河出書房新社 1996-04
売り上げランキング : 161,972


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 東 公平チェス次の一手 チェス・マスター・ブックス4』 (230ページ、'76年、河出書房新社)である。翻訳も含めて著者のチェス書の3冊目(いずれも同出版社)にあたり、私も'85年に前2書に続いてすぐ 買っている。'96年新装改訂となっているが、特に変わってはいないだろう。
 「はじめに」によると、著者はチェスの敷居が高くならないように、できればややこしい記号(記譜法)など使いたくなかった。結局は使わないとよけ いに説明が困難になるから使っているが、ちなみにパンドルフィーニの入門書等には使っていないものもある。

目次
はじめに
問題1−30
 定跡クイズ−クイズ形式で定跡をおぼえよう
問題31−60
 NEXT MOVE−次の一手をあてる問題
問題61−90
 エンドゲーム・スタディ−終盤で勝ちか引き分けかを考える問題
問題91−111
 プロブレム−規定の手数でチェックメイトにするパズル
付録@ 【豆知識】−27箇所
付録A 【チェス用語辞典】−16箇所

 すべて問題は右側の奇数ページに大局面図付きで載せられており、60問目までは3〜4個の解答選択肢もある。偶数ページの解答も小さな局面図を使い、誤 答の理 由まで解説されている。付録は、この解答の下欄の空きを利用している。

 「はじめに」で著者が懸念する「強い人が読むと、多少の抵抗を感じる部分」は、「定跡クイズ」にあると思われる。特に問題4〜6のツー・ナイツ・ディ フェンスに関しては、誤答にも定跡になっているものがあり、正解が最善手かどうか決着が付いていないものさえある。
 そもそも定跡は、1ページ足らずの解説で最善手うんぬんを実証するのはひじょうに困難である。それ以外の問題は、入門書にしてはなかなか歯ごたえのある ものも多く、終盤(エンドゲーム)や詰めチェス(プロブレム)まで網羅しているのは楽しい。

チェス―入門から上達まで すぐわかる、面白い、強くなる!
4638007325 小野田 博一 有紀書房 1994-03 売り上げランキング : 58,791

おすすめ平均star
star内容は良い
starチェスをやってみたいと思ったら一読を
star意外に高度な本
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 著者はビジネス、パズル、英会話本等のベストセラー作家で通信チェスの国内第一人者。テレビのクイズ番組監修も手がける('05年フジテレビ「IQサプ リ」)

内容:
はじめに Introduction チェスは荒々しいゲーム
第1章 キングを倒せ! 駒(ピース)の働きを知る
第2章 ポーンはチェスの命
第3章 自在に駒を操ろう! 駒の価値と序盤戦
第4章 17、18世紀のゲームで学ぶ勝つテクニック
第5章 「熱いチェス」から「勝のエンディング」へ 他に、「コラム」と「チェス談話室」

 「はじめに」を要約すると
1.初心者向けの本である。新旧のチェススタイルを理解し、読者のスタイルの確立を目指す。
2.ルールの説明をしながら終盤についての検討で始まる。
3.中盤の利を終盤の利に変換する練習、現代チェスの歴史を書いた。
4.単なる入門書のレベルを超えた話も含めたが、平易な語り口で難なく理解できると思う。
5.チェスへの情熱をかきたてる本であることを願う。

 以上5点に沿って本書の内容を見ていこう。

1.サブタイトルが「入門から上達まで」だから当然ながら初心者が読んで分かるようになっている。
 著者が望む望まないにかかわらず、日本でチェスの単行本を出すとなると初心者を無視するわけにはいかない。かといって単なる入門書で終わらせたくないの で、いろいろ内容を詰め込むことになる。この問題をクリアする唯一の方法は、シリーズ化することと思うが、かつて河出書房新社から出た『チェス・マス ター・ブックス』(全6巻)にしても各巻の結びつきの希薄さゆえ、あまり成功したのは言えない。
 著者はこれをどうクリアしたか。本書の「読者のスタイルの確立を目指す」までの道のりは並大抵ではないが、著者は現代チェスの歴史を通してスタイルの変 遷を初心者にも分かるように説明することで達成している。

2.ルールの説明を欠くことはできないが、それでも著者は一気にではなく、終盤の基本とともに学ぶ方法をとる。
 訳語の一つ一つに初心者が魅力を感じるような配慮をするだけあって、無味乾燥なルールの学習も一味違ったものになっている。
 序盤・中盤と進めて終盤で息切れする本が多い中で、終盤から始めるのは特筆すべきだ。序盤定跡については実戦解説で少し触れているだけだが、序盤を思い きって捨てたのは賢明だと思う。
 終盤に比べて序盤は、なぜこの手がいいのかを説明するのが難しいからだ。センターを支配する重要さを説くのも難しいが、わざとセンターを取らせてからそ れをターゲットにするモダンなスタイルを説明するのはさらに難しい。

3.中盤の利を終盤に転換するのを取り上げたのは、日本では本書が初めてと言っていいと思う。
 これは現代チェスの歴史とも関連があるのだが、将棋経験者が陥りやすい「何が何でもチェックメイト」から「安全勝ちと言われようととにかく勝てばいい」 へ の移行を意味する。
 著者は、チェスは科学でも芸術でもないと言い切り、単純で無理のないカルポフを20世紀のチェスの頂点とする。

4.平易な名文を持ってしても、将棋経験のない人がこれを読んですらすら理解できるとは残念ながら思えない。
 プロブレム作家でもある著者は手順解析問題まで載せている。詰将棋ファンには最適。読者の根気を信じるのみである。

5.チェスへの情熱をかきたてる本だ。チェスと読者を切っても切れない腐れ縁で結んでしまう本である。

チェス入門―短期間で上達する
452800495X 金田 英二 日東書院 1984-01

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 著者のプロフィールが全く書いてなくて、ネットでも情報が見つけられない。将棋関係者と思うが、何も書いてないのでプロ棋士ではなく、ライターか評論家 筋だろう。目次は書評がいらないくらい細かいので章ごとに見ていこう。
 はじめに
  第1章 簡単な基礎知識
   1 駒
    1 チェス盤
    2 駒の種類と名称
    3 駒の並べ方
    4 駒の動かし方
     T キング   @動かし方 A取り方
     U クイーン  @動かし方 A取り方
     V ビショップ @動かし方 A取り方
     W ナイト   @動かし方 A取り方
     X ルーク   @動かし方 A取り方
     Y ポーン   @動かし方 A取り方 Bポーンの昇格 Cアンパッサン
   2 棋譜
    1 盤面・駒の呼び方
    2 各枡記号
    3 棋譜の説明
    4 棋譜の読み方
   3 キャッスリング
    1 キング・サイド・キャッスリング
    2 クイーン・サイド・キャッスリング
    3 キャッスリングの条件
   4 駒の価値
 *チェスの歴史

 順当にルールからだが、最後はチェスの起源やチャトランガに触れている。棋譜が英米式なので、'84年発売は初版じゃなく増版の年だろう。この時期は先 行した河出書房新社に続けとばかりに多くの入門書が出たのに、全体的に古くさい本書の表現はそれらの本を参考したとは思えないのである。

 またあら探しだが、棋譜等のケアレスミスまでは多いので省く。Q側キャスリングは、Rを先にKの横に付けてからKを反対側へ動かすとしている。説明上の 都合とは思うが、実戦ルールでは当然ながらR単独の手とされてしまう。
  「Q側キャスリングではRが孤立するのでK側キャスリングの方が防御も強い」という説明もおかしい。Rを防御駒としてだけ考えた場合のこと だろうか。Q側の場合Kがbファイルに寄らないと危ないことならよく言及されるが。
  キャスリングができる条件も、私が嫌いな最大の5箇条となっていて、「キャスリングを行おうとする枡」などという分かりにくい表現が出てく る。他の条件と照らし合わせると、Kの移動先のマスのことらしいが。

  第2章 ゲームの決まり方
   1 チェック
   2 チェック・メイト
   3 ステイル・メイト
   4 パーペチュアル・チェック
   5 メイティング・マテリアル
  *チェスの起源@A

  メイトの問題では、黒が最善の受けをするとメイトにならない例を使っているのが気になった。このことから洋書とかの種本からの引用ではな く、著者自身が作図したことがうかがえる。
  用語の訳はわりと英語重視で、将棋的に「中合い」としそうなところが「インターポーズ」になっていたりするが、ステイルメイトを「捨て詰 め」と言い換えたりと誤解を招く表現も出てくる。意味は別に説明しているのだからカタカナで通せばいいものを。

  以下の、パーペチュアルチェックかステイルメイトという例はひどい。








 著者は 1 Qh5+ Kg8 2 Qg5+ Kh8 3 Qh5+ Kg8(国際式表示に変更。以下同様)でパーペチュアルのドローとしているが、白が4手でメイト(1 Qg1 Kh7 2 Ke7 f5 3 Kf6 f4 4 Qg7#等)できる。たしかに、B筋PがQに対してステイルメイトがらみのドローにする手筋はあるが、2段目のPではさすがに無理だ。

  第3章 簡単なテクニック
   1 ダブル・チェック
   2 ピン・アップ
   3 スキュアー
   4 フォーク
   5 ディスカバード・チェック
   6 駒の交換
   7 チェック・メイトの基本
    1 クイーンによるチェック・メイト
    2 ルークによるチェック・メイト
    3 二つのビショップによるチェック・メイト
    4 ビショップとナイトによるチェック・メイト
    5 ポーンによるチェック・メイト

  「ピンアップ」は用語としてはピンと短縮形で使うことが多いので逆に新鮮な感じがする。「フォーク」の説明で、ルール上フォークと呼べるの はNとPがかけるときだけという旨がある。べつにルールの話じゃないし、queen forkという言い方は現に存在する。
  例題で、防御側の他の応手に触れない説明不足も見られる。「K+B+N 対 K」の説明で、「実戦の場合、一方がメイティング・マテリアルを失ったときには、いくら腕前が未熟で寄せきれないとしてもそれを残している人の勝ちになり ます」とある。50手ルールか時間切れでドローになりそうだが、当時はルールが違ったのだろうか。
  「Pによるチェックメイト」は実質「K+P 対 K」の終盤だが、Pが6段目まで進んでいるからオポジションに関係なく勝ちの例題で、わざわざステイルメイトになる失敗手順を見せながら正着の勝ちを載せ ていないのは不親切だ。
  第4章 序盤戦
   1 ある簡単な実戦例
   2 序盤戦のパターン
    1 センター・ゲーム
    2 スコッチ・ゲーム
    3 ヴィエナ・ゲーム
    4 フォー・ナイト・ゲーム
    5 ツー・ナイト・ディフェンス
    6 ダニッシュ・ギャンビット
    7 エバンス・ギャンビット
    8 キングス・ギャンビット
    9 クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
    10 ギュオコ・ピアノ
    11 ルイ・ロペズ
    12 シシリアン・ディフェンス
    13 フレンチ・ディフェンス
    14 スラブ・ディフェンス
    15 ダッチ・ディフェンス
    16 イングリッシュ・オープニング
    17 ペトロフ・ディフェンス
    18 カロ・カン・ディフェンス
    19 フィルドール・ディフェンス
    20 キングズ・インディアン・ディフェンス
    21 クイーンズ・インディアン・ディフェンス
    22 ニムゾ・インディアン・ディフェンス

  序盤の前に一つ紹介する「実戦例」はレガルのメイトのゲームだが、この解説は無声映画の弁士のような臨場感を感じさせてすばらしい。どうや ら著者の真骨頂はこういうところにあって、堅苦しい理論の解説には向かないのだろう。
  「スラブ・ディフェンス」で図も指し手も 2 c3となっていたことは指摘しておく。コーレ対スラブで対称形になっている。序盤の並び方に何の配慮もない点も気になる。時代、手順、50音順のどれでも ない。
  「ニムゾ・インディアン」で「中原の理論」という言葉がいきなり出てきて面食らった。中原誠ではない(笑。center fieldの直訳だろう。著者がニムゾのドイツ語原書"Mein System"にまで当たっているらしき点には敬服するのだが。
  同じくニムゾの最後の方で、








Position after 14. ... bd7
 この後、15 Nxh7 Nxh7と進んだ最終局面図があって、「どうやら白側が駒得をしているようですが、…」とある。白のh7の攻撃など全然決まっていないし、どこが駒得やね 〜ん! どういうレベルの間違いなのか見当も付かない。

  第5章 ネクスト・ムーヴ
   例題1〜6    手順と勝ち負けともに最もひどい間違いがある。








 これが白番黒勝ちなのだという。解答はこうなっている。「1 Nxf6 Bxf6 2 Bb7 Rb6 3 Bxa8 Rxb2+ 4 Kxb2 Qb5+ 5 Kc3 Ne2# 黒は白のBにフォークをかけられたRには頓着せず、ダブルチェックで白をしとめます」
  2 Bb7がフォークだって? フォークがNとPだけという話は別として、なぜ 2 Bxa8と取らないのかとどんな初心者でも疑問に思うだろう。2...Rxa8 3 Bc3とでもすれば、白はエクスチェンジアップとQ側パスPで勝ちだ。
  2 Bb7??が大緩手としても、2...Rb6!には 3 Bb4+も時間稼ぎにしかならないところはうまくできている。3 Bb4+ Rxb4 4 Bxa8 Rxb2+ 5 Kxb2 Qb5+ 6 Kc3 Nf3+ 7 d4 Bd8! 8 Rb1 Ba5+ 9 Rb4 Bxb4+ 10 Kb2 Bd2+ 11 Ka3 Qb4#.
  しかし、さかのぼって黒は 1...Rxf6でBをピンする方がいいだろう。それでも 2 Bxa8! Rxf2 3 Rxf2で白の勝ちと思うが、1...Bxf6よりは抵抗できそうだ。これらの間違いからすると、著者が将棋等に堪能なのかも怪しい気がしてくる。
  第6章 エンド・ゲーム
   例題1〜9

  前章の難しい問題とは打って変わって易しい1〜3手メイトである。エンドゲームとメイトの混乱は初期の入門書には多く、本書はPの終盤が逆 にメイトに入れられていた。

  第7章 名局譜
   1 モーフィー対アンデルセン
   2 ツカートールト対ブラックバーン
   3 シュタイニッツ対ツカートールト
   4 シュタイニッツ対チゴリン
   5 タラシュ対シュレッヒター
   6 ゼーミッシュ対ニムゾヴィッチ
   7 レティ対ボゴルジュボワ
   8 アリョーヒン対レーシェフスキー
   9 キャパブランカ対スピールマン
   10 ボトヴィニック対オィヴェ
   11 ケレス対スミスロフ
  日本のチェス

  お口直しというとなんだが、解説がなくても名局を一手ずつ意図を考えたり予想したりして並べるのがやはり勉強になると再認識した(遅い)。 「日本のチェス」に関しては1ページだけで、内容からして本書の初出がかなり古いことが分かる。
  古いと売れないと考えるのは分かるが、和書も奥付にはほんとうの初出年を表示して欲しい。洋書は出版社が替わってもたいていちゃんと載って いる。

  目次では省いたが、本書には章末以外にも多くのコラムがある。駒の動きの変遷から世界チャンピオンまで多岐に及んでいる。Qが強い駒になっ たのはエリザベス女王のせいという話も出てくるが、フェミニストならずとも気になるところだ。
  アンデルセンが初代世界チャンピオンとされているのも、後にシュタイニッツ以降を正規のチャンプとする前の話なら仕方ない。人名表記は英・ 独・ローマ字発音寄りだが、アリョーヒンはロシア語発音。来日したことがあるからかもしれない。

  20世紀初頭までまだインディアン・ディフェンスが異端だった頃、堅牢な 1 d4に対して「黒の暗黒時代」が続いた。チェスをやり始めた頃大学で一緒に指していたK君がよくそう言っていたのを思いだした。元ネタはおそらくこの本 だったのだ。
  ニムゾヴィッチのコラムで、hypermodern schoolを「前衛教室」としているのは傑作だ。教室はともかく、前衛は「超現代」などより当時の時代精神を感じさせる名訳に思える。これから「前衛 派」と呼びたくなった。  

  いくら内容がずさんとはいえ、黎明期の先人の労作のあら探しをして茶化すのは本意ではない。いろいろ検討したおかげで結果的には勉強になっ た。日東書院はこの後、渡井氏の入門書を出したから本書の復刻はもうないだろう。

チェックメイトの手筋
4309721737 有田 謙二
河出書房新社 1996-02
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starチェック!!
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 2巻目も有田さんで、私は図書館で借りたことしかないから記憶を頼りに書くが、量は上記のフィッシャー本に匹敵し、レベルはこっちの方が高かった気がす る。メイトの本でも改訂しているのが意外だが、日本チェス界もそれほど変容したということか。

はじめてのチェス
4895141853 権田 源太郎

中央公論事業出版 2002-08
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「はじめに」、第1章「コマの種類と動き方」、第2章「ルールと戦い方」、第3章「上達への道」、TESTの解答、あとがき。

  ご本人にお聞きすると、やはり自費出版であるとのこと。日本を代表するプレーヤーには出版関係でも頑張ってもらいたい。
 64ページと薄い本で、表紙にも擬人化したかわいい駒のイラストがあるので、一見すると子供向けの本のようだ。これは、チェスなんて難しいというアレル ギーを抑えることに成功しているといえよう。  しかし、難しい漢字にフリガナがあるわけでもなく、サクリファイスという言葉がいきなり出てくるなど、決して子供向けの本ではない。黒矢印が駒の動き、 白抜き矢印が駒の利きという表示も、子供が理解するには難しいだろう。
 あら探しをしても、p.24のキャスリングのイラストでマス目の色が反対になっているくらい(イラストレーターはチェスの専門家じゃないし)しか見つか らないから、よく校正されている。ちりばめられたミニコラムもいい。  「ルールと戦い方」でポイントを箇条書きで列記するところや、メイトや終盤問題の説明不足(他の応手ならどうなのか)には、内容を凝縮する苦労が忍ばれ るが、この紙数では致し方ないのだろう。総体的に、一冊目のチェスの本としてはいい内容だと思う。

ヒガシ・コウヘイのチェス入門 定跡編
4309260012 東 公平 河出書房新社 2000 売り上げランキング : 174,426

おすすめ平均star
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 東公平ヒ ガシコウヘイのチェス入門 定跡編』(207ページ、'75年、河出書房新社)である。'00年に復刻されているが、古いのしか持っていな いので改訂されているのかは不明。好評の訳書『ボビー・フィッシャーのチェス入門』の姉妹編として出版された。
 フィッシャー本はほとんどメイトだけを扱っていたので、それを補完する意味もあって本書は定跡編と銘打たれた。著者は著名な将棋記者であり、日本チェス の黎明期には選手としても活躍し、チェス・オリンピック代表や日本チェス連盟時代の第2期選手権者('65年。第1期は大山康晴)を務めた。

目次
まえがき チェスはゲームの王様です

 6ページで、チェスの起源から(当時)最強のソ連、日本の黎明期の話まで。日本は弱いから、特に女性は日本のトップになれるチャンス大と力説(笑。歴代 世界と日本のチャンピオンも載っているが、それぞれ'75年のカルポフと浜田健嗣まで。

第1章 チェスのルールは簡単です
 チェスボード チェスメン
 駒の動き方@ルーク Aビショップ Bクイーン
  Cナイト Dキング Eポーン
 ポーンのプロモーション チェック チェックメイト
 キャスリングというルール
 アンパッサンというルール
 『待った』はいけません

 「30分でわかる”西洋将棋指南”」と銘打つ。駒の名称や動き方を歴史から紐解く東節がおもしろい。後のチェス和書は、この説明の仕方にかなり影響を受 け たと思われる。「待った」という言葉が英語やロシア語にないという説明も説得力がある。

第2章 チェスは戦争ゲームです
 国際式記号の読み方 駒の評価点をおぼえよう
 手筋をいろいろおぼえてください
 手筋1〜10 卒業試験問題
 チェスには引き分けもあります
 『ステールメイト』という奇妙なルール
 繰り返しのドロー
 ”合意”及び”50手ルール”について
 英米式記号 数字だけの記号もあります
 "BAKA"なんて手もある こんなときどうする?
 チェスクロックという道具

 定跡書といっても「手筋」の例題と問題も最低限おさえてある。"BAKA"とは、もう行われていないだろうが、電報チェス用の指し手例。「こんなときど うする?」は7つのQ&Aで、主にルールに関するものである。
 著者の推薦書は、アリョーヒンの"My Best Games"、"Marshall's Best Games of Chess"、"Great Brilliancy Prize Games of the Chess Masters"。

第3章 チェスには定跡があります
 定跡ってなんだろう?
 第1手はどれがよいか?
 基本型
 定跡1 ツーナイツ・ディフェンス−1
 定跡2 ツーナイツ・ディフェンス−2
 定跡3 フォーナイツ・ゲーム
 定跡4 スコッチ・オープニング
 定跡5 ジオッコ・ピアノ
 定跡6 エバンス・ギャンビット
 定跡7 ルイ・ロペス−1
 定跡8 ルイ・ロペス−2
 定跡9 ルイ・ロペス−3
 定跡10 ルイ・ロペス−4
 定跡11 ルイ・ロペス−5
 定跡12 ルイ・ロペス−6
 オープンゲーム
 定跡13 ペトロフ・ディフェンス−1
 定跡14 ペトロフ・ディフェンス−2
 定跡15 フィリドール・ディフェンス
 定跡16 ビショップ・オープニング
 定跡17 ビエナ・ゲーム
 定跡18 センター・ゲーム
 定跡19 ダニッシュ・ギャンビット
 定跡20 キングズ・ギャンビット・アクセプテッド
 定跡21 キングズ・ギャンビット・ディクラインド
 定跡22 キングズ・ギャンビット・マチガエタド
 セミオープンゲーム
 定跡23 シシリアン・ディフェンス−1
 定跡24 シシリアン・ディフェンス−2
 定跡25 カロカン・ディフェンス
 定跡26 センター・カウンター・ゲーム
 定跡27 ピルツ・ディフェンス
 定跡28 フレンチ・ディフェンス−1
 定跡29 フレンチ・ディフェンス−2
 クローズゲーム
 定跡30 クインズ・ギャンビット・アクセプテッド
 定跡31 クインズ・ギャンビット・ディクラインド
 定跡32 ケンブリッジスプリングス・ディフェンス
 定跡33 キングズインディアン・ディフェンス
 定跡34 グリュンフェルド・ディフェンス
 定跡35 ベノニ・ディフェンス
 定跡36 ブタペスト・ディフェンス
 定跡37 カタラン・オープニング
 定跡38 クイーンズインディアン・ディフェンス
 定跡39 ニムゾインディアン・ディフェンス−1
 定跡40 ニムゾインディアン・ディフェンス−2
 定跡41 ダッチ・ディフェンス
 ユニークな作戦
 定跡42 アレヒン・ディフェンス
 定跡43 オランウータン
 定跡44 バード・オープニング
 定跡45 イングリッシュ・オープニング
 定跡46 パリ・オープニング
 定跡47 レティ・システム
 定跡48 チャイニーズ・ギャンビット

 有田本より定跡数は多いが、各1,2ページの割り当てで図面が2/3を占めるから解説は簡略。そのせいかメインラインよりもあえておもしろい変化を選 んでいる定跡もあるようだ。ところどころに過去の名人の逸話等が挿入されている。
 「定跡22 キングズ・ギャンビット・マチガエタド」は、はめ手を茶化している。ユニークなものでは、「定跡46 パリ・オープニング」(1 Nh3)が特にレアもの。「定跡48 チャイニーズ・ギャンビット」(1 e4 f5)は、もはや定跡なんてものではない(笑。

第4章 情無用頓死定跡
 頓死定跡1 カロカン・ディフェンス
 頓死定跡2 カロカン・ディフェンス
 頓死定跡3 カロカン・ディフェンス
 頓死定跡4 シシリアン・ディフェンス
 頓死定跡5 ツーナイツ・ディフェンス
 頓死定跡6 フィリドール・ディフェンス
 頓死定跡7 キングズ・ギャンビット
 頓死定跡8 キングズ・ギャンビット
 頓死定跡9 ブタペスト・ディフェンス
 頓死定跡10 ブタペスト・ディフェンス

 定跡が本来白黒双方が最善を尽くした手順とすれば頓死定跡とはおかしな表現だが、その実体は主に窒息(smothered)メイトである。メイトの理由 「検死報告書」があり、定跡9の死因黒死病(ペスト)は、定跡5の考案者ブラックバーンへ回したいところだ(笑。

第5章 実戦解説・ビギナーからチャンピオンまで
 実践1 ビギナーのチェス
 実践2 筆者と初心者の対局
 実践3 チェスオリンピック日米戦から
 実践4 思い出の同時試合
 実践5 世界選手権の名局

 実践3は、'70オリンピックでの第3ボード、著者対ベンコー(米)戦。GMに対して終盤まで持ちこたえただけでも大したもの。ちなみに、第1ボード: 宮坂幸雄対フィッシャー、第2:レシェフスキー対松本康司、第4:ロンバーディ対星野栄造という豪華な組合せだった。
 実践4は、'73年にラルセンが来日したときの著者との同時対局戦。当時、自由圏ではフィッシャーに次ぐ強豪にドローも立派(だから掲載なんだろうけ ど)。実践5は、スパスキー対フィッシャー戦(世界選手権第5局)でアニメ「美少女戦士セーラームーンR」にも使われた局面を含む(笑。

あとがき

 これほどよくまとまった本書が、著者が最悪に忙しい'75年に生まれたのは意外だった。東さんを始め日本チェス界黎明期を支えた方々には、当時の話を風 化させずに何かの形で後生に残していただければと願う。
百万人のチェス
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1.ルール 2.終盤の基礎 3.基礎的手筋 4.ゲームの実際 5.ショート・ゲームとはめ手
6.ミドル・ゲーム 7 収局 8.チェスの作局 9.布局 10.チェス、その過去と現在

 著者はあのソコルスキー・オープニング(1 b4)の人、訳者は同姓同名の有名人ではない(笑。原書は1977年出版、好評で'89年に再版されている。半ページに満たない訳者あとがきに比して、2 ページほどの序文を当時のJCA松本会長が付けている。
 訳はやや硬いがうまいと思う。そんなことより、ロシア語から日本語へ翻訳されたチェス本など前代未聞の快挙である。訳者は当時四国在住と聞いたことがあ るが、それ以外にどういういきさつでこの翻訳出版に至ったのか。なぜ印刷出版がロシアなのか、ページが小さくて枚数が多いのか、不思議な本だ。
 私にとって興味深いことを伝え聞いている。翻訳権について打診すると、かってにやってくれてかまわないと言われたそうなのだ。ソ連邦は崩壊した直後だ が、いかにもロシアらしい話かもしれない。絶版なのが惜しいが、洋書をそのまま訳しても売れるという心強い見本である。

ボビー・フィッシャーの究極のチェス―創造的で、大胆で、驚くべき革命的な珠玉の戦術101
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 出たときは、英語が読めなくても何と か解ける問題集をわざわざ訳すより他にいい本があるだろと思った。パンドルフィーニの初版が'85年で、'92年にフィッシャーがユーゴで復活したのに刺 激されて'93年に再版した。それがなけれ ばこの訳がなかったとすると、フィッシャー復活のおかげだ。"... Goes to War"の訳が出れば、それも最近の事件のおかげか。
 原本も難しい問題は解かずどころか見ずじまいだったが、今回訳本を借りてきてやっと全部目を通すと、自分のブランク前よりよく解けた。しかし、素材が フィッ シャーの旧知の名局ゆえ、記憶で答が分かってしまう点も否定できない。

目次(ページ数さえないので以下に作った)
この本について
1993年版 序文
ボビー・フィッシャーについて
記号表記について
 記号の説明
 ゲームの記録の読み方
GAME 1 Bobby Fischer vs Bent Larsen
(中略)
GAME 101 Jose Agdamus vs Bobby Fischer
フィッシャーの101局 全記録集
訳者あとがき
(著者・訳者略歴)

 装丁もそっくりな『ボビー・フィッシャーのチェス入門』で東さんの翻訳力は分かっていたが、「この本について」を読むとずいぶんぎこちなくて自分の文体 のおもしろさが影を潜めてしまっている。「訳者あとがき」にあるように、英語が分からないところを出版社に助けを求めたくらいだから仕方ないのだろう。
 しかし、Outrageousを「究極」としたのは、出版社の意向もあるだろうが適切だったと思う。各問題の解説文に入ると、「素」の文体とまでは行か ないが、本来の調子が出てくる。各問題について気の付いたことを記す。

6 1手メイト問題もある。もちろんレベルは1(1〜5の5段階)。
17 「エクスチェンジ・サクリファイス(見かけは損な交換)」とあるが、エクスチェンジの意味を説明していない。
36 原文はいざ知らず、ファイルをこじ開けることを「開けゴマ」としているのは、コマにもかけてあるようでおもしろい。
68 目標が駒得でもメイトでもなく、投了時点でポジショナル優位だけという意味で難問。
71 勝つ手はすぐ見えるが、最善手2手メイトを見つける意味でレベル1というのは疑問。
74 実戦的に役立ついい終盤。

GAME 74  Tigran Petrosian vs Bobby Fischer








黒番。解答はいちばん下。

84 初手は何となく分かるが、その後の構想がすごい。
89 なまじっか戦略概念に強いと戦術にマイナスになる例?
92 「世紀のゲーム」。対ドナルド・バーン。13歳のとき!
96 羽生さんに辛口のハンス・リーもいちころ(笑。
99 昔「JCA通信」で出題されたとき、解説がおかしかったような。
100 有名な対レシェフスキー。これでもレベル4なのか。

 「フィッシャーの101局 全記録集」では、各問題局面の現れたゲームが完全に収録されている(解説なし)。その前書きが極端なまでの直訳、これは編集者の仕業と思いたい。パン ドルフィーニの英語は、フィッシャーへの思い入れか、この原文に限ってはずいぶん凝った文体だった記憶があるから大目に見よう。
 「訳者あとがき」で東さんの素の文がやっと出てきてほっとする。「一般の愛好家にはややレベルが高い」のは同感だが、「終盤の知識がないと分かりにく い」も言われるのもなるほどと思う。本書では戦術自体を学べないから仕方ない。
 当たり前の解答がある反面、決め手が数手先にある静かな初手が難しい。目標(駒得やメイト)や戦術テーマが分からないから難しく考えすぎてしまうことも ある。答を見てああなるほどとフィッシャーの妙手を鑑賞するだけでもその価値はあるのだが。

 訳語に関して「将棋用語を使って駒、交換、利き道、投了などとしたが、王手や詰み、キャスリングを入城とするなどは避けた」は、最近の私の好みとも一致 する。チェックやメイトはゲーム中に発声する可能性や認知度からしてカナにすべきだが、投了はわざわざリザインとするほどチェス独自のものとも思えない。
 実際は「プレイ」「アウトサイド」「エクストラ」等を使っており、「努力してみた人名のカタカナ書き」も「ラーセン」と「ラルセン」の不統一が見られ る。記譜間違いはパンドルフィーニの十八番だから原文のせいにしておこう(笑。最後、訳者略歴にわざわざJCA退会まで載せているのは意味深長だ。

74解答。1...Nd4! 2 Kd5 Nf3からhポーンを取る等。

ボビー・フィッシャーのチェス入門
4309260349 ボビー・フィッシャー 東 公平 河出書房新社 1974-12 売り上げランキング : 42,316

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 ボビー・フィッシャー著、東公平訳『ボ ビー・フィッシャーのチェス入門』(336ページ、'74年、河出書房新社)、私が初めて買ったチェスの本である。本屋には先週紹介した 『ヒガシコウヘイのチェス入門』と2冊並んでいたが、著者が世界選手権者なのでこちらを先に買った(笑。
 原著"Bobby Fischer Teaches Chess"は、フィッシャーが世界チャンプになった'72年にまずイギリスで出版された。フィッシャー人気も後押しして異例の10万部を売り上げ、 '74年に満を持して史上初のチェス和訳書が生まれた。

 東さんは'70年西独ジーゲンでのチェス・オリンピックでアメリカと対戦したときにフィッシャーと出会った。'73年にお忍びで来日したときにも会った ので、そのときにこの翻訳の話が出たか、もしくはもう進行中だったのだろう。
 未だに原書は持っていないが、2ページ分の「訳者からもひとこと」とカバーデザイン以外はひじょうに忠実に訳されているようだ。右側のページだけを読み 進めていき、左ページは最後まで読んでから本を逆さにして逆順に読むという最大の特徴もそのまま再現されている。

目次
まえがき(目次以前)
ボビー・フィッシャーからひとこと
驚くべきボビー・フィッシャー
共同執筆者について
序章 チェスの指し方
第1章 チェックメイトをするには
第2章 最後列でメイトしよう
第3章 最後列でどう守るか
第4章 守りを破るには
第5章 ポーンの壁を破るには
第6章 まとめとテスト
ボビー・フィッシャーからもうひとこと
訳者からもひとこと

 チェックメイト問題に重点を置いた単純な内容に思えるが、フィッシャー以外にIM以下の実力者が数人プログラム学習作りに参加している、というより本書 のような読者参加型の革新的な入門書を作るためにフィッシャーのような名手が待ち望まれていたらしい。
 メイト問題が275題だが、1手メイト前にも、「キングはこのルークが取れるでしょうか?」といったルールを確認するような問題もあって、無理なく進め るようになっている。定跡は全く学べないが、チェスを取っつきやすく始めるには最適の一冊と言えよう。
 英語が得意な人には安い原書をお薦めする。私は未見だが、問題主体なので英語は難しくないはずだ。最初MSXパソコンのソフトにも勝てなかったのに、 本書を読んだ後で初勝利できたためにチェスにはまった。

やさしい実戦集
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 有田謙二の『やさしい実戦集 チェス・マスター・ブックス5』(199ページ、河出書房新 社)である。持っているのは'76年の初版本で、'96年の改訂内容は分からないが、他のマスター・ブックスと合わせてカバーや定価の変更をしただけだろ う。
 「はじめに」では、'75年に元世界チャンプで当時FIDE会長マックス・エイベ来日の話に触れている。日本でのチェス普及に本の出版を提言された。本 シリーズ出版の契機となったのだろうか。エイベにもいい本がいくつかあるが、絶版が多くて残念だ。

目次(定跡名の英語表記を割愛し、対局者名と年を付け加えた)
はじめに
盤の読み方と駒の動きに関する記号
第1局 ファルクビア・カウンター・ギャンビット
 リボ対クーパー1974
第2局 キングズ・ギャンビット
 ミィク対リュビィテエリ1859
第3局 フィルドール・ディフェンス
 コノバロフ対モルドコビッチ1969
第4局 ペトロフ・ディフェンス
 アレキン対レビトスキー1914
第5局 ルイ・ロペス−I
 ツカルトート対アンデルセン1865
第6局 ルイ・ロペス−II
 リュボェビッチ対カルボ1973
第7局 センター・カウンター・ゲーム
 ティマン対バカリ1974
第8局 シシリアン・ディフェンス−I
 クホース対ファンシングバウア1958
第9局 シシリアン・ディフェンス−II
 ペダーセン対ゾグラフスキ1950
第10局 シシリアン・ディフェンス−III
 ケレス対フデレラ1955
第11局 フレンチ・ディフェンス
 タル対バガンヤン1973
第12局 カロ・カン・ディフェンス−I
 佐々木宏対中川笑子1970
第13局 カロ・カン・ディフェンス−II
 ボトビニク対スピールマン1935
第14局 アレキン・ディフェンス
 ジブス対シュミット1968
第15局 クイーンズ・ギャンビット
 エネボルデセン対オルテガ1952
第16局 クイーンズ・ギャンビット・アクセプテッド
 コルチノイ対メシュトロビッチ1969
第17局 スラブ・ディフェンス
 カパブランカ対ジャフェ1910
第18局 ニムゾ・インディアン・ディフェンス
 ジツェスク対フィッシャー1960
第19局 ボゴ・インディアン・ディフェンス
 マーシャル対ペトロフ1930
第20局 キングズ・インディアン・ディフェンス
 ホルト対バーン1962
第21局 グリュエンフェルド・ディフェンス
 バラショフ対トゥクマコフ1975
第22局 ベレソフ・オープニング
 ウェデ対キンゼル1962
第23局 イングリッシュ・オープニング−I
 ペトロシアン対リー1971
第24局 イングリッシュ・オープニング−II
 ドロシュケビッチ対トゥクマコフ1970
第25局 ラーセン・オープニング
 ラーセン対スパスキー1970
第26局 バード・オープニング
 有田謙二対ラーセン1973
まとめ 序盤の指し方−初めよければ終りよし

 一手ずつ局面図があって駒を並べる必要がない(変化筋は別)のが売りだから、短手数で決まったミニチュア・ゲームが必然的に多くなる。だから世紀 の名局と呼ばれるようなものはほとんどない。ゲームの最初には、名人や定跡等についての豆知識が紹介されている。
 最後の「まとめ」では基礎中の基礎である8つの指針が示される。英語以外の固有名詞のカナが気になるが(アリョーヒン(Alekhine)はでかい英和 辞典にも出ている)、日本語で書かれたこれほど分かりやすくてためになる実戦集は他にない。