Trane's Works 55, 56
1956, 5/11, Fri. 1st MARATHON SESSION
1. In Your Own Sweet Way
2. Diane
3. Trane's Blues
4. Something I Dreamed Last Night*
5. It Could Happen To You
6. Woody'n You
7. Ahmad's Blues*
8. Surrey With The Fringe On Top
9. It Never Entered My Mind*
10. When I Fall In Love*
11. Salt Peanuts
12. Four
13. The Theme ( take1 )*
14. The Theme ( take2 )*
*no solo
■曲名はコメントにリンクしています
Miles Davis (tp), John Coltrane (ts),
Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)
Columbia 799 Seventh Avenue Studio, N.Y.C.
○この時、マイルス・デイヴィス15日後の5/26に30歳、ジョン・コルトレーン29歳8ヶ月、レッド・ガーランド2日後の5/13に33歳、ポール・チェンバース21歳半ヶ月、フィリー・ジョー・ジョーンズ32歳10ヶ月。
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■セッションの概観
●カフェ・ボヘミアへの出演(5/3〜9)を終え、1日置いた5月11日(金)、名高いマラソン・セッションの第1回目が行なわれました。前回 " Informal Jazz " (5/7)のセッションから4日目です。マイルスはプレスティッジとの契約を終えるため、アルバム4枚分をこの5月11日と10月26日の2度のセッションで片付けてしまいました(5枚に分散収録)。この日吹き込まれた全14曲中、12曲が " Workin' " " Steamin' " に、残る2曲は " Relaxin' " に収録されました。いわゆる“歌物”がやや多めの選曲になっています。他の4人のメンバーは快調そのもののプレイを繰り広げていますが、コルトレーンは一人四苦八苦してます。
(西内)
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1. In Your Own Sweet Way ( Dave Brubeck ) 5:42  [ Workin' ]
●曲は52、3年頃に書かれましたが、ブルーベック自身がレコーディングしたのは1956年4月18、19日の " Brubeck Plays Brubeck " に収められたのがたぶん最初(ということは3月16日にマイルスがロリンズとやったのがスタジオ録音では初演ということですかね)。ピアノ・ソロで、しかもテーマのメロディを最初の8小節しか弾いていないので、あまり参考になりませんでした。だからどこまでがオリジナルのメロディなのかいまいちわからない。マイルスのヴァージョンは3月16日、5月11日共に、オリジナルにはない8小節の間奏がついています。ちなみにタイトルはポール・デスモンドがつけたそうです。
●抑制というよりはほとんど地味と言った方がいいような同年3月16日の演奏に比べると、マイルスのミュートによるメロディはより明瞭でリズミック、かつリズムセクションにもっと動きがあります。
●1stコーラス、テーマ・メロディからの引用の後、10小節目(1:44)あたりでちょっと躓き、13,14小節(1:49〜51)ではしどろもどろになってしまい、かといって引っ込みもつかず、というようなそのえもいわれぬ音の表情に、聴くたんびに笑ってしまい、その後をなかなか冷静に鑑賞できないので弱ってしまいます。まったくこんなプレイはマラソン・セッションならではです。コロムビアはもちろんブルー・ノートやリヴァーサイドだったらきっと録り直しでしょう。ミスしたことを引きずって平静さを失ってしまったのか、フレーズが不自然に途切れるし、有機的な流れが作れてないです。前回のセッション(5月7日 " Informal Jazz " )のような吹っ切れたような感じが全然なくて、何か自信なさそうに聴こえます。曲調に合わせてソフトに吹こうとしてそんな風になってしまうのか、それとも馴染みのない曲で、ほんとに自信ないんだかどうかはわかりませんが。3月16日のロリンズのメリハリのあるプレイに比べると、コルトレーンはかなりとりとめがない感じ。ですが、他方で、重くジャジー(ブルー・ノートの多用?)でやや強引な感じがしないでもないロリンズに比べると、あっさりと軽め(意外なことですが)なコルトレーンのアプローチの方がよくこの曲調に合っていると言えるのではないでしょうか。
(西内)
□memo□
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2. Diane ( Lew Pollack / Erno Rapee ) 7:49  [ Steamin' ]
●ミディアム・テンポの“歌物”。
●チェンバースとのセッション(3/1or2、4/20)に比べると、なんだかかなり切れの鈍いダブル・タイムなんだけど、その間を縫って浮き上がってくるメロディが醸し出す雰囲気が結構良くて、マイルスとやったいわゆる“歌物”の中では、このコルトレーンに私は一番愛着を覚える。てこずりながらもどうにか繰り出されるメロディックなフレーズがフワフワと軽やかで心地好い(ただそれをイモくさいと言えば確かにイモくさいし、それにこれはコルトレーンの本領ではないと言えば確かにそうなのかもしれないけれども)。
(佐々木)
●例によって始めの方で派手なリード・ミスをやらかしてますが、ちなみにマイルスはミス・トーンも傷にならぬ、というよりミス・トーンすら魅力的に聴こえてしまう好演。
(西内)
□memo□
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3. Trane's Blues ( John Paul Jones ) ( John Coltrane ) 9:00  [ Workin' ]
John Paul Jones ( 3/1or2 ) 及び Vierd blues ( 3/16 ) と比べると、全く異なるアプローチで、テンポはこちらの方が速く、軽快なブルースになっている。
●セッション3曲目、2度目の録音で、しかも自分の名がクレジットされた曲であるにもかかわらず(曲名だってそうだ)、依然調子は出てこない。「間」が多めでコルトレーンにしては音数の少ないプレイだが、その「間」も有効なものとは言えず、中途半端な歯切れの悪いフレージングがもっぱらで、締まりのないものになってしまっている。結局のところ、マイルスとガーランドの軽妙洒脱さを引き立たせる鈍さと滑稽さが印象として残る(さらに意地悪く言えば、テナーのトーンが所々ヴァルネラブルな気配すら帯びて聴こえる)。もしかして、ユーモアを意図して滑稽になってしまったのだろうか? とするならば、歌物でのメロディアスなプレイという弱点に加え、「ユーモア」というもう1つのコルトレーンの弱点がここで顕わになっているといえる。
●自分の曲なわけで、“歌物”の場合のように曲のコード進行に不慣れであるという理由は成り立たない。事実、チェンバースとの John Paul Jones は好演だった。とするなら、ここでの無様さは自分の資質にそぐわぬスタイルでプレイしようとしているところから来るのではないだろうか。 John Paul Jones というより、 Trane's Strain ( 4/20 ) Blues By Five ( 10/26 ) が同系統のアプローチで、概ね不自然で時に中断に聴こえる「間」の多さと、弛緩したフレーズが特徴になっている。結局はかばかしい成果は得られず、56年中にしか聴かれないタイプのブルースでの即興(57年以降で、このタイプは今のところ確認していない。たぶん無いと思う。いや、ある、という方は御一報下さい)。
● → John Paul Jones ( 3/1or2 ) .
(吉野)
□memo□
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4. Something I Dreamed Last Night
( Sammy Fain / Herbert Magidson / Jack Yellen ) 6:13  [ Steamin' ]
no solo. コルトレーン抜きのカルテットでの演奏。アルバムの曲順通りに Satl Peanuts のフィリー・ジョーのドラム・ソロの後に聴くのが正解。
●1958年12月26日に再演。 " Bahia " ( Prestige ) 収録。Freddie Hubbard (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (d).
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5. It Could Happen To You ( Johnny Burke / Jimmy Van Heusen ) 6:37  [ Relaxin' ]
●ミディアム・テンポの“歌物”。やや速め。ベースが2拍子のニュアンスで終始する(1拍目と3拍目。時折アクセントで1小節4拍すべてに音が入る)。その分フィリー・ジョーが小刻みにパーカッシブなドラミング。
●依然不器用にメロディックなフレーズを探り探りといった感じの煮え切らないプレイはこれまでの3曲と同様。しかし1曲休んで落ち着いたのかどうか、大きなミス、破綻はなく、大まかながらメロディアスな流れはちゃんとできている。聴き直していた当初は粗ばかりが耳に付き歯がゆさのみを覚えたが、聴き込んで耳に慣れると恐ろしいもので、こんな演奏でも変に愛着が湧くようになり、苦手とするメロディックなラインを作り出そうと懸命になっているのが健気にさえ思えてきて、無下に斥けるのが忍びなくなってしまい困惑している。しかしこれがいい演奏だなどと人に薦める気はもちろん毛頭ない。
(吉野)
□memo□
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6. Woody'n You ( Dizzy Gillespie ) 8:37  [ Relaxin' ]
●初演は、1944年2月16日、ディジー・ガレスピー、オスカー・ペティフォード、マックス・ローチらビバッパーが参加したコールマン・ホーキンスのアポロへのレコーディングで、曲はガレスピーによってセッションの合い間の休憩時間に書かれました。ウディ・ハーマンに捧げられましたが、ウディ・ハーマン自身は録音していません。(ちなみにこのホーキンスのセッションは事後的に最初のビバップのレコーディングであるとみなされました。)ガレスピー自身は後、 Algo Bueno と改題して1947年12月22日、チャノ・ポゾをフィーチャーしたオーケストラで再びレコーディングしています。 Two Bass Hit と同じDフラットのキーみたいですが、テナーでやるのはやっぱ難しいんですかね。どうなんですかね。
(西内)
●原曲のゆったりしたメロディーに比べると非常にきびきびとして斬新なハード・バップらしいテーマになっている。マイルスの1stコーラス以外、ガーランドのバッキングがAセクション、Bセクション交互に付けられたり停止したりといった、ちょっとした工夫がなされている。マイルスのバックでは控え目で、コルトレーンのソロに入ると活発になるリズム・セクション、というこのクインテットに典型的なパターンが聴かれる。後テーマの別メロディーは1947年の Algo Bueno ヴァージョンを踏襲。
●バップ・チューンということもあって、コルトレーンはようやく調子が出てきた感じ。間が多く、短い切れ切れのフレーズが多いが、それほど不自然なものではなく、むしろガーランドのバッキングの有無というアレンジも含めたリズム・セクションの動きと巧く噛み合っており、かなりスリリング。またフレーズもその緊迫感に見合って所々極めてモダンでクール。コルトレーンに関して言えば、この日のセッションのベスト・プレイになっていると思う。とはいえグループ・プレイゆえの抑制が堅さを感じさせ、56型コルトレーンの本領発揮とまでは至っていない。
(吉野)
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7. Ahmad's Blues ( Ahmad Jamal ) 7:23  [ Workin' ]
●マイルス、コルトレーン抜きのピアノ・トリオの演奏。
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8. Surrey With The Fringe On Top
( Oscar Hammerstein II / Richard Rodgers ) 9:04  [ Steamin' ]
●各人のソロに意外とブルースっぽいフィーリングがうかがえる。特にガーランドに濃厚。
●1stコーラス、抑え気味の力で吹いてるダブル・タイムは Diane に比べるといくらかスムーズ。最後のAセクション最初の4小節ではフィリー・ジョーも同調していい感じ。続く2ndコーラスへ期待感を抱かせつつ徐々に盛り上がっていく。が、2ndコーラスへ入ってピークを迎える中盤、ガーランド必死のバック・アップも空しく、乱れてしまい、もつれ気味。56年のコルトレーンらしいうわずったようなバッピッシュなフレーズが飛び出してそれなりに面白いし、ラストも結構いい締め括りになっているので、ちょっと惜しい。
(佐々木)
□memo□
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9. It Never Entered My Mind ( Lorenz Hart / Richard Rodgers ) 5:23  [ Workin' ]
●コルトレーンのソロはありませんが、なぜかエンディングだけちょこっと吹いてます。ブルーノートでやったのに比べると、ガーランドのソロも含めてこちらの方が完成度は断然高く、ワン・アンド・オンリーなマイルスの世界が展開されてます。
(西内)
●アルバムの曲順通り、 Four のフィリー・ジョーによるイントロの前に聴くのが正解。
(吉野)
□memo□
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10. When I Fall In Love ( Edward Heyman / Victor Young ) 4:24  [ Steamin' ]
●コルトレーン抜きのカルテットでの演奏。
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11. Salt Peanuts ( Dizzy Gillespie-Kenny Clarke ) 6:07  [ Steamin' ]
●1941年、ディジー・ガレスピーとケニー・クラークが数週間エラ・フィッツジェラルドのバンドでプレイしていた時に、二人によって作曲されました。
●各ソロ毎に間奏が入り、ブレイクでソロが始まる、といった大まかな枠組みはガレスピーとパーカーによる1945年5月11日の演奏と同じです。フィリー・ジョーのドラム・ソロを大きくフィーチャーしているので、前半3人のソロは時間的にはビ・バップのレコーディング並の短さです。
●前半は早いパッセージを取り混ぜながらも、後半では間合いを計りつつ鋭いフレーズで切り込むといったマイルスに対し、コルトレーンは長い間をほとんど用いず、矢継ぎ早に音を繰り出そうとしてます。恐らく56年中最速のテンポだと思うんですけど、この時点での出せる力の目一杯で、積極的な姿勢を崩すことなく、2コーラスをなんとか乗り切った、といった感じです。マイルスのソロの時のように、途中でガーランドがバッキングを停止することもなく、ひたすらに急速調のテンポでの即興に専念できたんじゃないでしょうか。これはこれで健闘していると思います。
(西内)
□memo□
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12. Four ( Eddie "Cleanhead" Vinson ) 7:12  [ Workin' ]
Tune Up 同様エディ・クリーンヘッド・ヴィンソン作。
●ちなみに、1948年、コルトレーンはガーランドが参加していたヴィンソンのバンドに加わり、一時的にアルトからテナーへスイッチした。
●マイルスに関して。1954年3月のプレスティッジでやったやつはその生気のない音に驚くが、こっちのオープンでのプレイは極上物。軽いフットワーク、自在さ、遊泳感······etc.空しい形容しか浮かばない。というか音楽を形容することの空しさを実感する(という風に優れた音楽の前ではことばの無力を吐露してお茶を濁すこと。ただしこのレトリックは何回も使うと怠け者だと思われるし安っぽいやつだと思われてしまうかもしれないので、頻繁に使わないほうがよい。但し、ここぞという所では決して使わないこと)。
●アルバムの曲順通りに It Never Entered My Mind の後に聴くのが正解。
●アップ・テンポだが、コルトレーンは“歌物”同様のアプローチでソフトに吹いている。“間”だか“中断”だか判然としない際どい瞬間や、アイディアに詰った感じで立ち止まり微かに小さな音を洩らしてしまうといった“あら”があるのも他の“歌物”と同様。メロディックなフレーズへの拘泥が不自然な滞りをもたらしているように聴こえる。とは言えセッション前半ほどの無様さはないし、それなりに軽やかでリリカル。この傾向のプレイは Bye Bye Blackbird を経て On A Misty Night で結実する(と今のところ思っている)。
(吉野)
□memo□
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13. The Theme ( Miles Davis ) [ take1 ] 1:58  [ Workin' ]
14. The Theme ( Miles Davis ) [ take2 ] 1:05  [ Workin' ]
●LPレコードでは、それぞれA、B面のラストに置かれ、片面をクラブでのワン・セットに見立てた趣向になっていた。take1ではチェンバースの、take2ではマイルスとフィリー・ジョーのソロが少しだけ。
●→The Theme [ Miles' Theme ] ( 55, 11/16 ) .
(吉野)
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