都市・建築・読書メモ 2003
           書 リ ス ト  2003         


 素人の山仕事入門
 ニュータウンは今
 「農」の時代
 まちづくり極意 くわな流
 <地域人>とまちづくり
 日本の近代化遺産
 参加と共生の住まいづくり
 失われた景観
 炭焼き讃歌
 まちづくりの経済学

2002年以前に読んだ本の読書メモは
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 素人の山仕事入門  (2003/10/29)
【書   名】素人の山仕事入門
【副   題】矢作川水源の森と暮らしを守る
【著   者】農林水産省東海農政局豊田統計情報出張所
【出 版 社】愛知農林統計協会
【出 版 日】2003年 3月
【頁   数】144P
【価   格】700円

 先に紹介した「炭焼き賛歌」の続編。平成13年度に東海農政局が実施した「矢作川水系山村活性化基本計画」の結果を取りまとめたもので、山林所有者へのアンケートと森林ボランティアグループ等に対するヒアリングがベースになっている。足助で働くようになって、町民の多くが山林を持ち、チェーンソーを持ち、たまの休みには自分の山に入って下刈りや間伐をしているという話を聞いて驚いた。そうした技術がちゃんと受け継がれているとともに、一方で町外へ出てしまって(「不在村林家」という)、全く放置している、自分の山の境界もわからない、といった人も多いことがこの本の調査でわかる。その一番の原因は、木材価格が低すぎて、山を手入れしても全く損失ばかりが出る状態になっていることにある。しかし一方で次のような記述もある。

 これによれば、現在の国内林業の破滅をもたらしたのは、貿易自由化が原因ということになる。自由化が国内林業を滅ぼし、森林環境の悪化を招いたのみならず、東南アジアの森林破壊までも進めている。この図式がそのとおりとすれば、食料の自由化問題や国内産業の空洞化にも通じる、経済のグローバル化に伴う国内環境と経済の影響というのを、我々は十分に認識する必要があるといえるだろう。
 この本では、タイトルのとおり、素人によるボランティア林業の楽しさとその情報が満載されている。

 と書かれているような状況の中で、森林保全は、林業という言葉で語るのではなく、林業(わざ)として受け継いでいくべきもの、すなわち地域維持のための技術に他ならなくなっているといっても過言ではないだろう。

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 ニュータウンは今  (2003/10/ 4)
【書   名】ニュータウンは今
【副   題】40年目の夢と現実
【著   者】福原 正弘
【出 版 社】東京新聞出版局
【出 版 日】1998年 8月21日
【頁   数】295P
【価   格】1,500円+税
【書籍コード】ISBN4-8083-0648-4 C0036 \1500E

 昔読んだような気もしつつ、タイトルに惹かれて書店で購入してしまったが、改めて確認してみると、1999年に図書館で借りて読んだ本だった。前回も書いたことだが、高蔵寺ニュータウンに住む一人として、ニュータウン問題については無関心でいられない。しかし2度目となると、新たな発見は少ない。前回との違いは、私が昨年9月にイギリスへ行き、本書でも紹介されているレッチワースや、ニュータウンを見聞してきたことだ。
 そうした目で見ると、「第4章 イギリスのニュータウンは今」で書かれている内容は、手放しで褒めすぎている感がする。昨年ヒアリングしてきた、ブルックス大学のケティ先生のニュータウンの現況と評価とはかなり違う。「イギリスの都市計画家であるハワード」(P221)という記述も誤りだろう。でも一般向け書籍では仕方がないか?日本のニュータウンは日本の土壌の中で、イギリスとは違う発展を遂げ、全く違うものになった、というのは筆者も感じていることではあろう。
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 「農」の時代  (2003/ 9/14)
【書   名】「農」の時代
【副   題】スローなまちづくり
【著   者】進士 五十八
【出 版 社】学芸出版社
【ページ数】287P
【出 版 日】2003年 2月25日
【価   格】2200円+税
【書籍コード】ISBN4-7615-2308-5 C0052 \2200E

 ランドスケープ・デザイナーである進士五十八氏の書かれた記事を雑誌等で見掛けるたびに、一度きちんとまとまったものを読みたいと思っていたが、この「『農』の時代」は、都市計画分野の人々に向けた、農学・造園学からのメッセージとして、わかりやすくかつ説得力がある。
 足助町で山里の暮らしを取り上げ、定住を促しているこの頃だが、農と共に生き、森と共に生きる山里の暮らしの現代的意義を十二分に明らかにしてくれて、気持ちよさ、心地よささえ喚起される。確かに21世紀は「農」の時代。いや、「農」と共に生きていかざるを得ない時代になるだろうことを確信させてくれる。農山村の未来を担う人々にとっては、バイブルともすべき著書だろう。

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 まちづくり極意 くわな流  (2003/ 8/27)
【書   名】まちづくり極意 くわな流
【編 著 者】「くわな」まちづくりブック編集委員会 蛤倶楽部
【発 行 者】桑名市
【発 行 所】株式会社 中日出版社
【ページ数】96P
【出 版 日】2003年 3月
【価   格】1200円+税
【書籍コード】ISBN4-88519-205-6 C0052 \1200E

 桑名市役所の職員に、関係する専門家や研究者が集まって、桑名をテーマにしたまちづくりブック「まちづくり極意 くわな流」が出版された。東海道七里の渡しの宿場町にして、蛤などの海産物の産地であり、都市基盤整備公団による大山田ニュータウンを抱え、住宅都市でもある「桑名」。六華苑などの重要文化財もあるものの、市街地の多くは明治維新による打ち壊しと太平洋戦争の空襲で灰燼に帰した。しかし、石取祭などの現在の伝わる歴史文化もあり、なにより今でも中心市街地が元気だ。その元気な様子は、「中心市街地すまい研究会/桑名市の中心市街地」でも紹介したが、この本にもそんな元気の秘密があふれている。

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 <地域人>とまちづくり  (2003/ 6/30)
【書   名】<地域人>とまちづくり
【著   者】中沢 孝夫
【出 版 社】講談社現代新書
【ページ数】193P
【出 版 日】2003年 4月20日
【価   格】700円+税
【書籍コード】ISBN4-06-149662-X C00236 \700E

 「地域人」というネーミングと捉え方は魅力的だし、基本的なスタンスは筆者を支持する。しかし、本書は基本的に全国各地で行われているまちづくり−商店街活動を取材しそれに感想を付け加えたもので、筆者独自の理論や考えが展開されているわけではない。それは理論的記述の部分になるととたんに引用が増えることでも伺える。現場主義・現実主義とでも言おうか。取材報告と思いつきの感想という内容で、あまり面白いとは言えない。もっとも私のホームページも同じようなもの、いやそれ以下かもしれないが・・・。

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 日本の近代化遺産  (2003/ 4/30)
【書   名】日本の近代化遺産
【副   題】新しい文化財と地域の活性化
【著   者】伊東 孝
【出 版 社】岩波新書
【ページ数】250P
【出 版 日】2000年10月20日
【価   格】700円+税
【書籍コード】ISBN4-00-430695-7 C0251 \700E

 筆者の伊東孝先生は、日本大学交通土木工学科の教授である。「はじめに」にも「土木史は学問ではなく趣味でしかないとの認識しか持っていなかった土木研究者も認識をあらため」という下りがあるが、建築分野では建築史という研究分野があるが、土木分野での認識はその程度であり、その中で伊東氏が近代化遺産という分野で果たしてきた功績は大きなものがあるといえるだろう。しかしいったん動き出すと、土木技術者の結集力や政治力は建築の比ではなく、また土木構造物はそのほとんどが公共管理で維持保存の体制も取りやすいことから、今後の土木系の近代化遺産保存の実績は、格段のスピードで進むだろうと予測される。
 本書では、単に近代化遺産保存の重要性を訴えるだけでなく、副題にもあるように、まちづくり遺産として地域活性化や教育など様々な分野での活用を挙げており、その点でも非常に現実的であり、かつ先を見通している。

 もちろん本書では、日本各地に残る近代化遺産の紹介が大きな紙面を占めている。装飾橋梁、橋詰広場、配水塔、貯水池、下水道、運河、砂防ダム、発電所、港湾施設、アーチ橋、屋根付き橋、沈下橋、水路、樋門、ドックヤード等々。その中でも特に興味を引いたものが、北海道・旧士幌線のコンクリート・アーチ橋。既に廃線となった鉄道の橋が保存運動の結果、保存されている。「コンクリート・アーチ橋が自然景観とも調和する」。建設当時の文章が自信に満ちてすばらしい。

 こうした信念で建設されたものだからこそ、人々に感動を与え、近代化遺産として今に残っているのだろう。

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 参加と共生の住まいづくり  (2003/ 4/ 3)
【書   名】参加と共生の住まいづくり
【編   著】住田昌二・藤本昌也+日本建築士会連合会参加と共生の住まいづくり部会
【出 版 社】学芸出版社
【ページ数】255P
【出 版 日】2002年 2月15日
【価   格】2700円+税
【書籍コード】ISBN4-7615-2279-8 C0052 \2700E

 日本建築士会連合会に「参加と共生の住まいづくり部会」ができたのが1993年。部会主催の第1回地域住宅フォーラムは1995年10月に名古屋で開かれた。テーマは「農住型コープの住まいづくり・まちづくり」。これには私も参加しており、この様子は「ストックヤード」の「講演会」の中で報告している。実に私がホームページを開設して最初の講演会記録だ。部会の活動は、その後、広島、神戸、山口、富山でフォーラムが開催され、また、「藤本昌也の・・・」といった講師名がついたまちづくり塾も4回開催されている。これらの活動をまとめたものがこの本だ。
 全体は7部構成で、最初の第1部は「参加と共生の住まいづくり」というタイトルそのまま、住田氏・藤本氏の巻頭論文が掲げられているが、その後は、第2部が「コーポラティブ住宅」、第3部が「日本型コレクティブ住宅」、第4部が「農住共生の住まいづくり」、第5部が「集住デザイン」、第6部が「地域材を使った木造の家づくり」、そして最後の第7部は「住まい・まちづくりセンターの活動」として、山口県の先進事例報告と建築士の地域貢献について、藤田忍氏のコラムが寄せられている。
 テーマとしてはそれぞれ特別目新しいわけではないが、実践者の体験に基づく寄稿が多く載せられ、その点で興味深い。

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 失われた景観  (2003/ 3/14)
【書   名】失われた景観
【副   題】戦後日本が築いたもの
【著   者】松原 隆一郎
【出 版 社】PHP新書
【ページ数】233P
【出 版 日】2002年11月29日
【価   格】700円+税
【書籍コード】ISBN4-569-62270-4 C0230 \700E

 著者の松原氏は、工学部都市工学科を卒業後、経済学研究の道に進んだ経歴を持っている。都市やまちに対する関心や知識がベースにありながら、率直かつ個人的な心情(日常景観を何とかしてほしい)を元に、特に典型的な、(1)全国一律の郊外景観、(2)神戸市住吉川景観訴訟、(3)真鶴町「美の条例」、(4)電線地中化問題、の4つを取り上げ、調査・研究を行ったその成果が書き表されている。専門の社会経済学的視点も若干はあるのだろうが、素人にもわかりやすい地点から、懇切丁寧に調査をされ、それが平明に書かれており、実にわかりやすい。ただし、日常景観の問題自体は、その願いや最近の動きはわかるものの、瞬時に解決の方向に向かうような状況にはなく、こちらは実にむつかしい。個人的な思いは理解するものの、社会的に共有されるにはまだまだほど遠い状況にあると思いつつ読み進めていったが、結局、筆者も同じ理解に到っているようだ。ただし、もちろん、それは達成してほしいし、達成されるべきである、と訴える内容となっている。

 この真鶴町「美の条例」の現状報告は非常に興味深い。

 以上、抜き書きした部分以外にも、欧米でなぜ電線地中化が行われ、日本では架線されたかを歴史的必然として報告する部分(P186〜188)や、竹富島での流入住民に対するうるさいまでの伝統文化や景観に対する教育に関する記述(P215)が、特に興味を引いた。

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 炭焼き讃歌  (2003/ 3/14)
【書   名】炭焼き讃歌
【副   題】矢作川水源の森と暮らしを守る
【編   集】東海農政局豊田統計情報出張所
【発   行】愛知農林統計協会
【ページ数】72P
【出 版 日】2003年 2月
【価   格】400円

 東海農政局豊田統計情報出張所が編集した、ごく薄いブックレット。愛知県西三河部を流れる矢作川の水源域、豊田市、足助町、旭町、稲武町、小原村、下山村の各町村に点在する炭焼き窯とその活動を詳細に報告する。これらの地域になんと94もの炭焼き窯があり、しかも近年増えつつあるという。

 と、後継者問題を気にしているが、これは非常に重要な指摘だと思う。炭焼き全盛の時代があったなどと思ってもみない人がほとんどではないだろうか。そしてそれを知っている世代がまだ生きているということを・・・。

 こうした、この地域における炭や炭焼きに関する知識や歴史が多くのイラストとともにわかりやすく解説されるとともに、第3章では「窯の中から−炭焼き体験記録−」と題して、数日間に渡る炭焼き体験の様子が、写真・イラスト入りでわかりやすく報告されている。先生は梶誠さん。高嶺下住宅開発でも地元埜快委員会会長として活躍していただいている懇意の方だ。
 最後に全94窯を訪問し、その紹介もされており、薄く平明だが、実に丁寧・真意のこもった本です。
「愛知三河の豊田・加茂 地域限定−炭焼白書 この地域の炭焼きを、すみからすみまで取材しました。」と帯に書かれています。

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 まちづくりの経済学  (2003/ 1/12)
【書   名】まちづくりの経済学
【副   題】知っておきたい手法と考え方
【著   者】井上 裕
【出 版 社】学芸出版社
【ページ数】239P
【出 版 日】2001年 1月30日
【価   格】2700円+税
【書籍コード】ISBN4-7615-2250-X C0052 \2700E

 都市計画分野に対する経済学者の発言や、公共事業補助にあたって「費用便益性」の検討を要求されるなど、都市計画・まちづくり分野でも、経済学的な知識を求められることが多くなってきた。そうは言っても後者などは、一定の係数等を編入する簡便法で足りることも多いようだが、根本のところを理解しないことにはやはりまずいだろう、ということで、まずはこの本から読み始めることとした。
 「第1章 経済学の考え方」で、「1-1 機会費用という概念」、そして「1-2 お金の時間的価値」(割引計算と資本の機会費用など)、「1-3 市場の失敗・政府の失敗」と、経済学における基本的な概念の説明から入る。そして、第2章で「DCF法」、第3章で「費用便益分析(CBA)」と、まちづくりに関わる基本的な2つの手法についての説明がある。
 DCF法における、NPV(正味現在価値)IRR(内部収益率)、割引率の考え方や投資評価における感度分析、確立分析、さらには投資のレバレッジ効果などの基本的事項。
 また費用便益分析における、ポテンシャル・パレート分析、正味現在社会的価値(NPSV)社会的内部収益率(SIRR)、便益費用比率(B/C)など。 覚えなければいけないことが多い。
 そして第4章以降では、こうした知識を元に、「都市開発のメカニズム−土地の価値・公共投資・アメニティ」、「まちづくりを阻害するものは何か−土地投機と税制」、「都市はなぜ大きくなるのか−都市化と逆都市化」、「経済学は美しい街をつくれるか−高齢社会に向けて」の各テーマに対して、適宜、経済学的分析を交えつつ、筆者の考えが述べられている。
 特に第7章の「7-2 まちづくりにおける経済学の限界」では、なぜ経済学者と都市計画家は対立することが多いのかがわかりやすく語られており興味深い。筆者自身、建築学を専攻し工学博士でありながら、イギリス留学や国連開発センター勤務を経て、経済学部の教授に就任し、両方の地平と限界をよくわきまえている。こうした背景から次のような主張も生まれ、説得力がある。

 ここで筆者は、他の経済学者が主張するように、規制緩和ではなく、しっかりした計画規制を行っていくべきだと主張している。
 また第6章の「都市化と逆都市化」の議論の中では、欧米で逆都市化が進んでいることを指摘し、その結果、「逆都市化がもたらす得と損」について、フィールディングの分析が紹介されている。

 結局、なぜこれほどまで「得する人」が多いはずの逆都市化が日本で進まないのか。それはひとえに貧弱な土地規制に帰着するというのが、筆者の主張だろう。
 「付論2 リボン・ディベロップメントがもたらす地方都市の衰退」で描き出されるとおり、日本のようにバイパス沿いの開発を全く放任することで、如何に、都市中心部と遠隔部で深刻な問題をもたらすか、そしてその割に沿道や郊外部の便益性も必ずしも上昇はせず、目端の利く一部の業者だけに利益が集中し、社会的便益性はひたすら低下する様子が経済的分析の結果から示される。地方都市はこうしてますます衰退していくかと思うと気が滅入ってくる。
 最後のあとがきで、筆者が経験したイギリスでの都市計画部門でのエピソードがいくつか語られている。これもまた興味深い。

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