204水切瓦(みずきりがわら)
機能に以上にデザイン的に人気のある造形・・・中脇修身「付加価値への工夫」より
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施工技法建築物製法壁施工水切瓦鏝の造形土蔵塗破風HPトップ
壁面から230o突き出した水切 そのくの知恵技法されている・
 壁面から突き出た水切、瓦を使用していることから水切瓦という。瓦の名称は大谷とか中谷という。
これは昔屋根の谷となる部分に、この瓦が敷かれた頃の名残である。
 現在では、長尺の銅板やステンレスで谷の雨仕舞を行う。瓦4辺に突起が無く水切に適し使用して、
土佐漆喰で縁を塗り固めることで、水切の用途に加え、造形としての美観の技が考案された。高知県
の民家や土蔵に多く、他県には少ない工法として、高い評価を得ている。
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・土佐の風景 水切瓦の民家・吉良川の町

壁面の水を切る?・・・目的はそれだけではない

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各部の名称
@見切
Aフクリン
Bどう
Cくち
Dめ
E裏め
F裏フクリン
G水切台
Hモルタル
Iはんだ
J砂漆喰
K土佐漆喰
Lあま
Mラス板
N瓦
水切瓦の各部の名称は職人同士の現場における合言葉である

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各曲面には多くの手間を 必要とする 手間の数が多いほど 表面の密度が 高くなり耐久性を高める

水切瓦は職人個々が独自の作風をもっている形にも人間の顔のように個性がある ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     
 

建物内部の機能 よりも外壁を多くして隣の水切瓦より1枚でも多くの水切瓦を求める施主がいる

右側・水切り台の上に瓦取付 出や勾配が定まる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
水切瓦役割

 水切とは、単に水の流れを断ち切ることである。その水切に瓦を利用したので水切瓦という。こんにち的には板金などの水切が多く使用されている。
 このページで解説している水切は、古い民家や土蔵に施工されている土佐漆喰と瓦の水切である。
 建築家たちは、それぞれに解説をおこなっているが、壁の水量調整の役割にしては仕様が複雑で、工程の中に多くの工夫がある。

 工夫とは細かい施工技法のことで、各部に、これでもかと言うほどに防水の技が継承されている。
 それは建築物(壁)の防水という意味だけでなく、どう・め・くち等、水切瓦自体の各部の防水である。
 瓦を取付けるための手間は多く、防水のための防水が行なわれている。施主はデザインが気に入って、高額な予算をつぎ込む。水切瓦には、水切(防水)以外にも、美観を重視した衣装としての目的が含まれている。昔は豪華さの中に豊かさ・家柄・勢いを示すものでもあったと言われている。

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 高知県東部では、大工よりも左官の賃金が高額であった。年間を通じて左官職人は、雨や風によって仕事の出来ない日が多いからである。
 安定した仕事確保は、親方や職人にとって重要であった。壁に水切瓦が流行ることによって、一戸の建築物での仕事量が増した。これは左官職人にとってありがたい事であった。土佐漆喰という素材を得て、大工職人棟梁と現場で対等に渡り合って、賃金を多く獲得したり、時にはストライキ(昭和46年頃)も行なっている。

瓦は下部の段は緩く 上部の段は 急勾配に取り付ける 地上の人間に 対面するための工夫で 『かぶり』という

左・ふくりん・どう 右・砂漆を塗る左官職人 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

角い水切瓦 隅部の持ち送りである 土佐漆喰の町 香南市野市町の 土蔵に施工している 再興クラスの工法 である

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平面曲線水切瓦 県下では最高クラス造形
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 多くの水切瓦は土佐漆喰部の仕上げ表面が丸い。上の写真は平面である。技法的には難しいといわれる。
各面の面積が僅かな部分に鏝を重ねて仕上ることは、技と同時に根気と手間が求められる。平面というか
各面というのか、それぞれ独立した面を仕上げる。こうした施工は県下では少ない工法である。
水切瓦の技法工程

 水切瓦は、壁面の水量調整と、装飾的な役割を持っている。施主によっては、『隣の家にまけたくない』こんな思いも加わり、水切瓦の段数(瓦の数)を決めたといわれる。
 その施工法は単価や各職人の作風によって異なる。一見同じ形に見える水切瓦には、人間の目や鼻・口のように、多くの特徴(表情)をもっている。
 下断面図から名称を、調査から工程(作業手順)の一例を記す。
              

   (中脇修身・土佐漆喰現場調査より)

@見切
Aフクリン
Bどう
Cくち
Dめ
E裏め
F裏フクリン
G水切台
Hモルタル
Iはんだ
J砂漆喰
K土佐漆喰
Lあま
Mラス板
N瓦

△水切瓦の作業手順


1.壁面モルタル塗り

2.台の下地取り付け 
 ・寸法105×45・45×45

3.台こすり  
 ・ラス打ち後モルタルこすり

4.瓦取り付け  
 ・はんだによって取り付け

5.墨打ち
 ・フクリン等各部寸法

6.しらけん
 ・瓦に@ABCDの幅寸法線を記す

7.瓦こすり
 ・砂漆喰塗り

8.見切り立て
 ・図1の@見切り部の下地塗り

9.壁ちりつけ
 ・壁仕上げの基準下地


10.際だし(砂漆喰)
  ・ふくりん・どう等の幅仕上げ基準

11.壁ちゅうごみ(はんだ)塗り

12.台すさわけ
  ・次の面(隣り)にスサ引き出し

13.台ちりつけ
  ・壁仕上げの基準下地

14.台仕上げ
  ・@中塗 A漆喰塗

15.壁
  ・@中塗(砂漆喰)A土佐漆喰塗Bあまがけ


16.水切瓦中塗 
  ・@ふくりんAめBどうC裏ふくりんD裏め

17.水切瓦(各部)仕上げ(土佐漆喰)

18.ジケ(水滴)拭き取り

19.手ごすり

20.18〜19繰り返す
  ・(ジケがでなくなるまで)

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・写真1 水切瓦・


 工程番号10の際だしは、技法の善し悪しが水切瓦全体の耐久性を決める。従って施工は熟練が担当する。鏝の先端でシラケンに沿って細い線状の起伏をひきだす。この仕事が粗雑な場合、
密着程度(雨仕舞)が低下し、漆喰の剥離をおこすことになる。余談であるが、この『しらけん』や『際だし』の工程を知らない建築関係者がいる。中には設計者に知識がなく・・・現場に無理難題を言って単価削減を行なう者がいる。困ったものである。






・写真2 隅水切瓦・




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・図2 水切瓦各部の寸法一例・


『水切瓦』は、高さ300o程度を標準とし、
壁面からの出は
瓦の寸法や勾配で決まる。
瓦勾配は、曲面に水が溜まらない程度を基準に、
徐々に急勾配になっていく。

その勾配の差は職人によって違いがある。
人間の目の高さは勾配を緩く、上部になるほど急にする。
これは、入母屋の破風等が
地上の人に対面させる『かぶり』の手法である。

すこしでも、美しく見せたい
土佐の職人の精一杯の心遣いである。



・写真3 ハンダによる水切瓦取付・

・写真4 見切りたて・(@壁A見切立BふくりんC瓦Dどう)


写真4工程8から砂漆喰で三角に上下・出を一直線に見切立を行う。







・写真5 各部仕上げ基準・

最近の水切瓦はスマートで美しい。主役の表情ばかりになってきた。
したがって、各部の個性が失われてきたのは残念だ。
町並みの古建築に残る水切瓦にはデザインの幅が広く素朴であり、
表情豊かで、大胆に表現(施工)されている。
水切瓦の隠れ技

・図1 すさわけ・ちりつけ・






 伝統技法・水切瓦の施工には左官職人個々の作風(型)がある。作風に加え
単価による手間や工程の違いがある。特に『め』の表情には、高さ幅の寸法に、
分かりよい違いを持たせている。その形を組み立てる下地施工の技に、職人が
こだわる3つの工程がある。この基本がなくなれば、耐久性能は低下する。

@すさわけ
Aちりつけ
B際だし


以上が代表的なものである。この3カ所の施工程度が外壁を変える。

すさわけ


 土佐漆喰の特徴は稲藁のスサを混入していることである。土佐漆喰製法の
ミキサー等の工程中で、スサの繊維部はそのまま残り絡み合う。




・写真1 水切瓦・夜須町土蔵・

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絡み合うスサによって土佐漆喰は面としての強度が高まってくる。
『すさわけ』は、図1のように、
方向や角度変化のある部分に漆喰の産毛のようなスサを引き出し、
次の施工面との連続性を高める
工作法である。亀裂や雨水の浸透防止に役立っている。


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図1からチリツケは、スサワケの上に施工する。
ちりつけ@(縦面)を塗りつけ、ちりつけA(水平面)を後で塗りつける。
屋根の瓦のように水の流れに対応した施工で、チリツケは
土佐漆喰仕上面近くまで突出させる。
突出させることによって漆喰の塗り厚を少なくし、
収縮を最小限に押さえ、割れや剥離を少なくすることができる。



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・写真2 水切瓦・安芸市土蔵・


写真3施工1


写真4施工2


写真5施工3

(写真4施工2)

  


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写真3『どう』の幅を記す作業シラケン・・・
写真4フクリンからドウに数p塗り下げた砂漆喰は、
スサを引き出し強度を高める。写真5ドウ仕上げ。






・写真6 際だし1・

際 だ し


取り付けた『瓦』の上端・正面・下端には


@ふくりん
Aどう
Bめ
C裏め
D裏ふくりん


・・・が塗り付けられる。

写真6は砂漆喰によるドウの際だしである。鏝の際から
細い起伏が連続して浮き上がってくる、工程の中でも高度な技である。





・写真7 際だし2・

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鏝の角度・スピード・手首のかえし等
バランスのとれた
職人の仕事は、起伏が1本の線のように美しい。
滑らかな際だしは、
100年後の密着力をもたらす。






・写真8 どうの磨き・







・写真9 住宅の完成した水切瓦・



高知県東部では今日でも住宅に水切瓦が施工される。
変化の激しい時代の中で、
左官職人は
伝統の工程を正しく継承している。

・ ・ ・ ・ ・ ・ 。


 水切瓦はその名称のように、雨水を断ち切る役目を持って施工されているのだが、外壁の表面にこれほどの水切りがなくても、雨仕舞いや壁仕上げを守る方法は別にもある。
 住宅の柱に柾目(まさめ)で無節の桧等、必要以上に豪華な素材を使用することと似ている。水切瓦の数や形の中には、地域での地位や豊かさや力の表現があるのかもしれない。


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・写真1 水切瓦1・

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・写真2 水切瓦2・




 周辺の壁を含め水切瓦1枚につき、その単価は1万円〜1万5千円といわれる。壁面積や仕上げ程度の違いがあるため大きな幅はあるのだが・・・。
 水切瓦の各部を注意してみると、フクリンやドウの盛に違いがある。盛の厚いものは材料を多く必要とするため単価も高く手間も必要と考えて良い。 写真3は『め』の高さが大きい。こんにちの水切瓦では、最高クラスの施工仕様である。




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・写真3 『め』の高い水切瓦・




 水切瓦各部の僅かな寸法(面積)に、個々の職人の技法の持ち味・・・個性を塗り込んでいる。幅や高さ、曲面の度合・・・鏝の使用によって個々の職人の狙いとする表情が生まれていく。

(高知県東部の水切瓦)









・写真4 入母屋・日本瓦・水切瓦・





写真下の 『め』は・・・
各表情の中でも先端部の形として目につく存在である。
人間の顔の、輪郭のような個性だ。

鏝技の数(手間)・・・造形への絵心・・・。
職人の技は、1日なんぼ
当時・職人たちは日の出から陽の入りまで
体をうごかして賃金を得た。

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【写真5】
角丸の め

【写真6】
縦長・スマ−トなめ

【写真7】
四角な め

【写真8】
横長の め

【写真9】
角丸・下幅広な め

【写真10】
縦長四角の め

△・・・・・・写真・水切瓦の『め』の表情・・・・・・△







・写真11 破損した『どう』・



 写真11で、瓦と瓦の目地(すき間)は重要な意味をもっている。目地にはハンダを塗り込む。そのハンダは後の工程、ドウや裏め、裏フクリンと連結される。
 ハンダが瓦の上端と下端を一体化することで、強度(数十年の耐久力)は安定してくる。目地が10o以下では、瓦を包む塗り素材の強度は不十分となり、割れや剥離が生じる。

どうの工程

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@瓦の目地詰め(ハンダ)
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A瓦にドウの幅を記す(シラケン:約75o)

B荒こすり(シラケンから10o引く:砂漆喰)
C際だし (砂漆喰)
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D盛る (砂漆喰)
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E上塗り (漆喰:7〜8o)
F磨き (アマがけ)
・・・
G磨き (鏝みがき)
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上記の工程は安芸市の現場における調査から、1職人の例である。
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・写真12 土佐漆喰の左官技法・





水切瓦は技法に加え造形的センスが求められる。
職人達は基本の形に
どのように個性を持たすのか、限られた部所に競って工夫をした。
その工夫は、『め』の写真に示したように、
注意しないと見逃しそうな細かい部分にまで及んでいる。
しかも各工夫は、
完璧な雨仕舞いを軸に組立られている。








・写真13 水切瓦・




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水切瓦

 施工は腕を捻って顔を上向けに細かい鏝の技を仕掛ける。造形の施工図はなく、それぞれの曲面は左官職人に任される。鏝を通して形ができあがる。
 現在の単価で水切瓦が完成できるのは、設計も施工も、鏝を持つ職人が担当しているからである。施工に対して無知な提案者がいれば、施工工程を新たに組み立てる必用がある。

水切瓦の施工@

水切瓦の施工A


 鏝のリズム・『鏝のノリ』や、細部の技が失われる事になれば雨仕舞が不十分になろう。土蔵の修復に思うことは、左官職人の工事が下請け・孫受けにならないことである。土佐漆喰を使用しても、施工内容が土佐漆喰の仕様基準から離れると土佐漆喰の価値を失うことになる。

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