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2010年10・11・12月の「一服いかが?」



2010年10月1日 <ひさびさペルー料理尽し>

2010年10月7日 <蝶の標本>

2010年10月22日 <楽しいお引越し>

2010年10月29日 <タンタ・ワワ(赤ちゃんパン)を作ってみました>

2010年11月12日 <KINDLE効果… 逆効果??>

2010年11月19日 <「ミト村のワコナーダ」と「ハサミの踊り」、新しく選ばれたユネスコ無形文化遺産>

2010年12月21日 <20年…>


2010年10月1日(金) 午後5時半の室温21.8℃ 湿度76% 晴れ
<ひさびさペルー料理尽し>


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望遠レンズの向こうの、春の海。

リマはすっかり春…いえ、ほとんど初夏ですねえ。
早々に私の窓からも、遠くの海が見える日がふえてきました。例年よりも大気が乾いているのかな。


九月はAT先生、pacollamaさん、calleretiroさんがリマにいらして、計四回の夕食会でおしゃべりとペルー料理を(あ、それにお酒も)堪能しました!
今回は残念ながら遠出にごいっしょする機会はなかったのですが、じきにまたみえるとわかっているので、それは次の楽しみに…


九月に入ってからやや低迷気味だった私の気分も、皆さまのすてきな笑顔で、すかっと晴れ渡りました!
月も改まったことですし、来週からはまた気分一新、しっかり絵の勉強を進めようと思います。


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とりあえずパイナップルジュースのカクテル。


カクテルを飲むとむくむく音を立てて太るので、手を出さないようにしているのですが、pacollamaさんのがあんまりおいしそうで釣られてしまいましたわ……

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白身魚の串焼き。

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アボカドが上に座っているサラダ。


これを食べながら calleretiroさんから伺ったお話ですが、毎日アボカドを食べている年配のお友達の、なんと白髪が減ってしまったのだとか!
試してみる価値ありかも!(アボカド好きな宿六がうしろで拍手喝采)


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うずら玉子の耳がついたカウサ
(黄ジャガイモとカニのケーキ風サラダ)


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豚のから揚げ。サツマイモと酸っぱい玉ねぎサラダ添え。


ひさしぶりにあれこれ食べてみて、ペルー料理は味に深みがあってたしかにおいしい、と改めて思いました。
ただお店の場合、料理の色が赤とオレンジ色に偏るのだけは、ちょっと気になります。


日本人としては少し緑を添えたいところですが、なんでも赤道あたりの明るい土地で生まれ育った人の網膜には、赤みの強いものが何より美しく、またおいしそうにうつるのだそうですね。

そういえばうちの宿六も、真赤なレア・ステーキだけが載ったお皿が出てきても、平然と食事を続けていますが(私はパセリの一枝でもないとちょっとだめかも)、それは別に、ペルー人の色彩感覚が日本人より劣っているわけではなく、単に色彩感覚じたいがぜんぜん違う、ということのようです。

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魚介類の炊き込みごはん。
ムール貝のミニ・セビッチェ添え。

ここ(Bolivariano)のは、ごはんは具を控えめにあっさり炊いておいて、上から魚介ソースをたっぷりかける、というもの。こういうのも少し目先が変わっていいですね。

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左・紫トウモロコシのマサモラ(果物が山ほど入っていておいしいです)

右・「リマ娘のため息」
(激甘のキャラメルクリームに、激甘のポートワイン入りメレンゲをのせたもの)


以上、四回分の夕食ではなく、ある晩四人で平らげたごちそうです。


また別の晩には、AT先生にスペイン産ワインとマンチェゴ・チーズ、セラーノ・ハム(なんたるすばらしすぎる組み合わせ!)をごちそうになったりで、ダイエット中の宿六も1キロばかり太りました。
思う存分食べて飲んだあとのことですから、本人もぜんぜん本望と思いますけど。


「計るだけダイエット」がつくづくいいのは、そのとき義経少しも騒がず、またのんびり減らせばいいや、と思えるところですね。

…逆に考えると、あれだけ飲んで食べて1キロかあ、とも言えますしねえ。
週末にワインの1,2杯くらいなら、どうやら足してもあまり影響なさそうです。赤ワイン(のポリフェノール)が脳の海馬を活性化、なんて都合のいいニュースも聞いたばかりですし…


少しずつ調整しながら、ダイエット続けて参ります。

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今日作ってみた、人生初・自家製チャバッタ。


サイト更新しながら焼きました。チャバッタはかんたんでおいしくて気に入った!
あとは切り込みをすぱっと入れられたら、完璧だったのですが。


先週は悲惨な「ワックスペーパー焦げ付き事件」を数回くりかえし、やっと悟ったのが、私のオーブンは下火が猛烈に強い(さすがドイツ魂?)ということ。
そこで今日は天板の位置を上げ、大量に打ち粉をし、またさいごはグリルに切り替え、上面だけ焼き色をつけるようにしたら、なんとかうまくいきました。


週末は料理道具専門店へ行き、天板用のシリコン・シートがないか探してみます。



2010年10月7日(木) 午前10時半の室温21.6℃(パソコンであったまってます) 湿度54% 西は曇り、東は晴れ
<蝶の標本>


 10月2日にスーパーマーケットに行ったら、早くもクリスマス飾りが大々的に、それもオレンジと黒のハロウィン小物といっしょに並べてありました(ためいき)。
 子供のころは「クリスマスに飽きた」なんて日がいつか来ようとは、想像すらできませんでしたが、ほんと三年に一度くらいでちょうどいいんじゃないかと今は思います。


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 10月4日から、テラスで三たび座り込みを始めた鳩のお母さんも、ついでに写ってます。
 さいしょの鉢(つまりに704号室)に、またもや!巣をかけました。
 これからの季節、そこは日がよくあたるから、やめたほうがいいと思うんだけどなあ。



 ルリン渓谷で黒い蝶を見て以来、蝶という生きものが気になってしかたありません。
 手もとの本には、全世界の蝶の種類のうち、二割がペルーの密林地方にいる、とありますが、ほんとでしょうか。
 先日ひさびさにミラフローレスのお土産屋さんを覗いたときも、これまで足を止めたこともなかった蝶の標本に、ぐっと惹きつけられてしまいました。


 虫にお詳しいAT先生のお話では、こういうお土産品店の標本は、蝶の選び方も処理の仕方もかなりテキトーなようです。そのへんはやっぱりペルー。(さいきん優等生ぶってる当地では、「やっぱりペルーね」と楽しく笑えるものごとが激減しているので、たまに出くわすとちょっと嬉しかったりして)

 たぶん輸出できないレベルのものが、こうして安く売られているのでしょうね。
 よくみると、少し燐粉が落ちていたり、…あららら、触角に至っては作りもののようです。
 どうせならついでに胴もプラスティック製にかえてくれると、虫がこわくて翅だけがほしい私には、たいへんありがたいのですが!(笑)



 蝶の標本は、けものの剥製と同じことですから、どんなにきれいでも買うのはやめようと、さいしょは私も思ったんです。
 むかし宿題でトンボの標本を作らされたことがあり(父がほとんどやってくれたので助かりましたが…)、そのとき感じた罪深さのようなものも、よく覚えています。
 でも帰宅後、あの翅の美しさが気になって気になって、翌日またのこのこ同じ店へ出かけてしまいました。


 けっきょく持ち帰った標本は、テラスへの出口に飾りました。階下から仰いでも、モルフォ蝶の青い翅が光って見えて、たいへんきれいです。
 そしてそばを通るたびに、翅の彩りのみごとさと、命の哀れさに、少し複雑な気持ちになります。
 蝶の標本の魅力のひとつが、その残酷さにあるのは、確かなようです…



 せめて蝶が生き生きと舞う世界の雰囲気を、ちょっとでも出せたらと思い、ブロメリアをもう一鉢もってきました。
 あとは壁のあいたところに、ペルーの渋い蘭でも数鉢ぶらさげたら、密林めいた良い感じになりそうですね。
 でも蘭だけは、手を出さないほうが無難かなあ。ペルーの蘭を集めて、オルキダリア(蘭の温室)なんて作ったら、さぞ粋だろうと思うのですが、あの花に取り憑かれたら旅行もままならなくなりそうです。


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額の色が合ってないので、濃茶のニスを探さなくては。


 黒のペン一本で絵を描いていた過去三年間は、何を見ても「どう黒白に置きかえるか?」ということばかり考えていましたが、いまいちばん興味があるのは色彩です。
 うちに来た十八匹の蝶々も、すでにさまざまな色の取り合わせを教えてくれました。


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体調いまいちで、みなさまにご無沙汰で失礼しております。
明日からの三連休で、なんとか元気を取り戻します。蝶とは関係ないんですけど。




2010年10月22日(金) 午後5時の室温20.5℃ 湿度63% 晴れのち曇り
<楽しいお引越し>



 さる10月18日に自分のサイトをあけてみたら、寝耳に水の、無料HPサービス廃止のお知らせ!

 インフォシークの無料スペースには、大昔の2000年からお世話になっていました。
 たぶん登録メールアドレスも古くなっていて、それで連絡が届かなかったようです

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 突然の立ち退き命令にはびっくりしましたが、そろそろサイトの整理をしなくてはと考えていたので、ちょうど良かったです。
 たとえ架空の空間でも、引越しは楽しいですね。ゴミ整理が一気にできるのが、引越しのいちばん良いところかな。


 談話室の大枠、そのまま持ってきてしまいましたから、アドレスが変わっただけで変わり映えしませんが、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
 まずは「一服いかが?」と「絵はがき」だけでひっそり再開です。



 じっさいの住まいのほうは、まだ当分引越せそうにないので、気分転換のため、家庭内緑化をその後もおし進めております。
 まもなくやって来る夏にふさわしく、すこし鬱蒼とした感じにしたいと考え、急浮上したのがシェフレラ。
 (日本での通称カポック、こちらではちょっとなまってチフレラとか呼ばれています)


 あまりにありふれた観葉植物なので、これまで敬遠していましたが、部屋に置いてみると意外に見栄えがして、葉の形もかわいいですね。あんまり気に入ったので、すぐ二本追加で買って来ました。

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早く天井に届くほど、大きくなっておくれ。
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 パンもリマのはいまいちですが、これは自力で克服中。
 人生初のクロワッサン。こういうものも家で作れるのですね〜 感動。
 初心者ゆえ形はともかく、味はリマのホテルのクロワッサンなんぞより、ずっとおいしくできました。


 (うしろはアンデス風携帯かまどの、おままごと用ミニチュア。マンタロ渓谷はアコ村で作られています)


 当地は花ものや植木が安く、植物好きには天国ですが、同じリマ市内でも植木の値段はいろいろです。
 たとえば、高さ(根っこは含まず)1.5メートル前後のシェフレラ一本(鉢なし)は、


 パチャカマック(リマ郊外の別荘地)の園芸店          …8ソル前後(約230円)
 リマ市内バランコ地区の植木市場                …35ソル前後(約1000円)
 リマ市内「VIVERO LOS INCAS」(高級住宅街の高級園芸店)…60〜100ソル前後(約1740円〜2900円)
                 (今は円高に過ぎるので、ちょっと実感とはずれますが…)

 もちろん高い店の品物は、そのぶん手入れや樹形はいいようですが、そこまで気にしない私は、できるだけパチャカマックまで買い出しにいくようにしています。
 日本ではいくぶん高級イメージのある素焼きの鉢も、直径25センチくらいのものが、パチャカマック価格・にゃんと!驚きの5ソル前後(約150円くらい)です。
 だから毎年春になるたびに、私はリマで暮らす幸せをひとつ思い出し、嬉しくかみしめるのです…



 リマの花や緑、それから野菜・果物の安さ、新鮮さ、豊富さ。
 これは日本のみなさんに大いに誇れますね。
 そのかわり、たいへんな転送料を支払って日本製品を手に入れたりしてますから(やはり靴や下着類は日本製に限ります…)、ま、人生ぜんぶを通してみれば、どこに住もうとプラマイゼロになるのかな。


<リマ暮らしのメモ その1>
当地に多い、ユーカリ蜂蜜(ユーカリの花の蜜がまざった蜂蜜)には要注意です。なぜかペルーのみなさんは、香りのきついユーカリ蜂蜜を喜ぶのですが。
もちろんパンにつけて食べるのはおいしいですし、好みにもよりますが、紅茶に入れるのも風邪には効きそう。
でも、うっかり煮ものなどに使うと(一度やってしまいましたが)、料理が台無しになります。ユーカリの香りはきついので、入れたらさいご、取り返しがつきません。
なのでふだんから、floracion silvestre等と表記された蜂蜜を買うほうが無難です。



<お知らせ>

網野徹哉先生の新しいページ “bohio de rimac
http://lecture.ecc.u-tokyo.ac.jp/~crimac/AYACUCHO2010/index.html

 先月のご出張で訪問なさったペルーのアヤクーチョやメキシコなどの、たくさんの美しい写真をこちらで拝見することができます。
 みなさまお見逃しなく!
 (ここでは文字化けするので略しましたが、bohioはiにアクセント。宿六と私はbohioということばを初めて知りました!)


↓先生の従来のサイト、“choza de rimac”はこちらです
http://www.ne.jp/asahi/alianza-lima/matute/


2010年10月29日(金) 午後10時の室温21.3℃ 湿度61% たぶん曇り
<タンタ・ワワ(赤ちゃんパン)を作ってみました>



 11月1日は「諸聖人の日」。365日ではおさまりきれない聖人たちを、ぜんぶひっくるめて祝ってしまおうという、少々あらっぽいカトリックの祭日です。

 この日の前後、ペルーなどラテンアメリカ諸国では、赤ちゃんやいろいろな形のパンを作って、家族のお墓に供えたり、知人どうしで贈りあったり、子供に買い与えたりします。
 ペルーでは、赤ちゃんの形のパンは女の子に、リャマや馬、鳩の形のパンは男の子にあげることが多いようです。



 わが家には、以前クスコの高名な聖像作家サンティアゴ・ロハスさん Maestro Santiago Rojas(1917年生まれ)から譲っていただいた、「赤ちゃんパンの頭部」(焼きもの製の赤ちゃんの顔で、これをパン種で作った胴にはめこみ、いっしょに焼くわけです)があるので、今年はそれに合わせてパンを焼いてみようと思い立ちました。

 若いころのサンティアゴさんは、芸術だけでは暮らしが成り立たず、そこで祭日の前になると奥さんのアントニアさんと二人でせっせとパン種をこね、赤ちゃんパンを作って売っていたのだそうです。
 (ただしサンティアゴさんの故郷のパウカルタンボ村では、馬や赤ちゃんの形のパンは、「諸聖人の日」ではなく聖体祭のころ食べる習慣だったそうですが)


 そのときパン人形用に大量に作り、でもとうとう使いきらずにクスコの工房に残されていた頭部が、縁あって今ではリマの私の手もとにある、という次第です。


 さて、赤ちゃんパン tanta huahua を作ろうと思っても、詳しいレシピはあまり世間に出回っていないようです。
 幸い手持ちの本に載っていた、アヤクーチョ式のちょっとあやしげな分量表を使って、捏ねはじめてみましたが、どうも水分が少なすぎるようです。しかたなく、行き当たりばったりに卵を足したりしながら、それでもなんとか扱いやすい生地ができました。


 工程はいたって単純で、材料を全部まぜてしばらく捏ねたのち、すぐ成形し、室温でふくらむまで待ってオーブンに入れる、というだけです。
 アンデスの人はぽろぽろくずれるような、腰のない甘いパンが大好きですが、こういう作り方だとグルテンがあまり生成されず、ちょうどアンデス好みのパンが出来るのかもしれませんね。


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 シナモンとクローブが山ほど入った、色の濃い生地です。
 手触りも良くて、形作るのは粘土細工の楽しさです。
 (あ〜なんかさいきん、わたし箱庭療法じぶんでやってますねえ)


 …ほんとうは、焼きもの製の赤ちゃんの頭を、大きな楕円形のパンに埋め込むように作ります。
 でもいかにパン専用の頭とはいえ、ペルーの人間国宝級の作家の作品を、駄作パンといっしょに焼く勇気はありません。そこで伝統のパンとは少し違う形にし、頭は焼いたあとでさしこむことにしました。

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 なんとか完成。インカ式に、帯でぐるぐる巻きにされた赤ちゃん、のつもり。
 (絵を描くときの空間恐怖症を、ここでもつい発揮)


 このあと発酵を待つわけですが、お砂糖たっぷりの生地なのにふつうのイーストを使ったせいか、待てど暮らせどほとんどふくらまず……
 数時間後にあきらめ、ええいままよとオーブンに放り込むと、まもなくアンデスのパン屋さんの香りがしはじめました。

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 幸い焼いているあいだに少しふくらんでくれました。よく冷ましてから、そっと頭部をさしこみます。

 ほんらい死者のためのごちそうですから、日が暮れてから写してみました。
 下に敷いたのは、クスコ県Quero村の肩かけ布。


 …あら、けっこうそれっぽく見えますね。
 もし順当に二、三倍までふくれていたら、身体の大きすぎる赤ん坊になったでしょうから、今回のところはこれで良かったのかも。


 また、ふくらみがわるかったかわりに、ケーキのようなどっしりした仕上がりとなり、それはそれでペルー人的にはかえっておいしいらしく……
 大部分はアパートの管理人さんに引き取って頂き(なにしろ1.5キロの巨大パンですから!)、残りは小分け冷凍したのを、宿六が喜んで食べつづけております。さいわい今のところ、体重に影響は出ておりません。


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 不出来なパンより、よく見ていただきたいのが、この頭部!
 パンといっしょに焼いてしまう頭部ですよ、それなのにこの凝りよう! さすがサンティアゴ・ロハスさんです。
 目的がなんであろうと、どうしても手抜きができないそのお気もち、たいへんよくわかります。


 ちょっとした手違いで、私は同じ「赤ちゃんパンの頭」を三つも持っているのですが(いずれひとつは長女のロサさんにお返しするつもり)、どれもまったく同じ丁寧さで加工、彩色されています。

 口の中には歯と舌、それから奥に小さな鏡まではめてあるのが、見えるでしょうか?
 これはきらきら光って、赤ちゃんが息づいているかのように見せる工夫で、クスコ伝統の幼子イエス像と、まったく同じ作りなのです。


 …サンティアゴさんが暮らしのためにパンを焼いていたのは、いったいどれくらい昔のことでしょう。
 今のペルーではもちろん、ちゃちな顔をつけたパンしか見かけませんが、大昔でもこんな美しいものは珍しかったに違いありません。
 サンティアゴさんも、「あれは飛ぶように売れました」と、かなり誇らしそうにおっしゃっていました。


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 同じくサンティアゴ・ロハスさんの手になる、小さなパン職人像。
 籠の中には、赤ちゃんパンや馬型のパンのほか、エンパナーダ(なぜかクスコでは平べったいクッキー菓子をこう呼びます)やウルカ(鏡餅のように二重になったパン)など、クスコのパンがいろいろ盛られています。


 ひとつひとつ、さも嬉しそうに説明して下さったサンティアゴさんを思い出すと、楽しみながら作ることの大切さ(おそらくそれこそが、作品に本当の命を吹き込むのでしょう…)を改めて思います。


 クスコにさいごに行ったのは、2008年。
 あのとき私はたいへん失望し、…というのは、クスコは確かにすてきな観光地へと変身を遂げましたが、ひなびたものが好きな私には、まるでしっくりこない街になっていたからです。


 でも、サンティアゴさんの作品を取り出して眺めていると、また行きたくなります。
 いくら街が変わっても、クスコでは今も懐かしい人たちが、変わらず暮らしているのですから。


 ちょうど来年4月、友人のお嬢さんがクスコで結婚式を挙げる予定で、出席するかどうするか、いま大いに迷っています。
 結婚式じたいは、別にいまさらおもしろいわけもないのですが、「あなたが招待客リストの筆頭だからね!」なんて言ってくれる人、ほかには世界のどこにもいません。その唯一の人が、なぜかあのクスコにいるという、ふしぎな楽しさ…
 もちろん招待側には、客寄せパンダにチニータ(アジア人)をひとり、という気持ちもなくはないでしょうけど、それでも嬉しいですよねやっぱり。


 年明けのワンカベリカ再訪を延期すれば、休暇を確保できるのですが、どちらも捨てがたくて本当に悩みます…(でもなかなか幸せな悩みです)


本日の更新は、パン尽しです。こちらもあわせてごらんください。

毎週投函リマからの絵はがき 第17週<死者のための甘いパン>
私のリャマ&アルパカ収集品・展示室 アルパカ&リャマ型パン特集

<リマ暮らしのメモ その2>
さいきん行ったレストラン。
意外においしかった店…FIESTA GOURMET LIMA
 リマの「話題のきれいな店」は大抵はずれですし(*)、名前からしてこれはあやしい!と思ったのですが、お友達の歓迎用に一味ちがう店を探したく、勇気をふるって試食に行きました。
 そしたら意外に良かったです。店員さんは女性が親切。料理は cebiche asado とcabritos が上等。
 cebiche asadoは、calleretiroさんとAT先生がたしか「ねぎま鍋風」と評してらして、ねぎま鍋を食べたことがない私もなんだかわかるような気がしました。


おいしくもまずくもなかった店…AMOR A MAR
 デザートはおいしかったです。また、近年のバブル気分で妙にそわそわしたリマっ子たちを眺めるのも、おもしろかったです。
 80年代後半の東京の盛り場にいた人たちみたいな、天下をとったような顔つきのお客さんで賑わってました。ただリマの中・高級レストランの常で(笑)、子供客はうるさかったです(**)


はずれ…LAS CHIMENEAS
 よく行くパチャカマックにあるので、期待してたのですが。

ざんねん…CHAMI
 小鳥がたくさん来る庭が気持ちよく、好きなお店だったのですが、価格を下げたのと同時に味も15%ほど… 場所が好きなんですよね、なんとかがんばって料理の勢いを取り戻してほしいなあ。

(*)あいかわらずリマでは、よくわかんないフュージョン料理が大流行中。バブル期には、どこでも必ず無国籍料理がはやると決まっているのかしら〜?
 あの迷料理人ガストン君も、変わらずもてはやされているようですが、私の頭の中では、料理人としてのグッチ裕三さんとだいたい同じ位置づけです。二人ともお人柄は良さそうですし、会ったら話が合うかもね。


(**)リマ暮らしでひとつ辛いのが、大人だけの静かな料理店、というのがめったにないこと。みな平気で深夜子連れで食事に出かけ、しかも騒ぐにまかせているからです。
 いま来年の旅行手配をしているのですが、某国で予約した小さな宿は「乳幼児とペットお断り」と明記してあり(さすがに並べて書くのはどうかと思いましたが)、ある種のすがすがしさを感じました。
 人生と騒音に疲れた大人だけの空間が、この世にちょっとくらいあっても、いいと思うのですよね…



2010年11月12日(金) 午後11時の室温24.3℃(パソコンでどんどんあったまってます、外気温は20℃きってるはずですが) 湿度55% たぶん晴れ
<KINDLE効果… 逆効果??>


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 先日 KINDLE を買いました。
 このうすっぺたい機械が、大書店がないリマでの苦しい?暮らしを、これから大いに助けてくれることでしょう。
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日本語表示も問題なし。


 …それにしても夏目漱石はうまいこと言いますねえ。
 (どこへ越しても結局住みにくいと、わたしもいいかげん悟りましたので、さいきんは絵ばかり描いておりまする)



 米国のamazonに注文して、3,4日のちにはリマのうちに届いたので、ちょっとびっくり。

 ペルーでは一時期、KINDLE(旧バージョンの小さなもの)を、千ドル近い高値で試験販売していたようです。でもすぐ諦めたみたいですね。(読書人口が極端に少ない街ですから、KINDLEは売れないだろうなあ…)
 今回、DHLの送料と税金を加えても、それより安く大きな最新型を入手できました。


 リマでも販売されている iPad にするか、米国に KINDLE を注文するかは、ちょっと迷いました。
 でも店頭で iPad を手にとってみて、あのてりっとした感じはあまりうち好みではないかも、と感じたので(粗忽な私がいかにもつるっと取り落としそうで…)、またわが家に必要な機能は、当面 KINDLE とBlackberryでカバーできそうなので、今回のところは目に優しいほうを選びました


 使い勝手は、むかし私が飛びついて大失敗したLIBRIE(機能はすばらしかったのにろくな本がなくて、結局「青空文庫」専用リーダーと化した…)によく似てますね。
 どこからでも amazon.com につながって、すいすい本や新聞をダウンロードできてしまうのは、LIBRIEにはなかった感動ですけれど。
 また絵もなかなか鮮明に表示されるので、将来的にはこのへんに私の活路があるかも……と、少し明るい気もちになってきました。



 宿六は新しいおもちゃに大喜びで、先日は歯医者さんにまで持参して大自慢。
 患者さんをほったらかして、さっそく本を検索してみた歯医者さん、歯科の専門書も多数販売されているのに驚き、これはもうソッコーでKINDLE購入するわ!とおっしゃってました。


 その後わが家では、「きっとこれで紙の本を買う数が減って、うちのンゲル係数も下がって、本棚増設の必要もなくなるね」なんてありえないことを空しく言い合って喜んでおったのですが、折も折、ミラフローレスの猫公園でブックフェアが開かれまして…

 あれこれ割引きしていたので、迷っていた本を片っぱしから購入してしまいましたわ〜〜ばかばかばか。
 KINDLEと見比べることで、紙の本の良さがかえって際立つものだから。などと、自分で自分に言い訳しながら……


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 ペルーはさいきんきれいな出版物が多くて、それはもちろん楽しいんですけど、どれもやたらと重くて高いのは困りものです。
 美術本でもないのに、全ページ無意味にアート紙、みたいな本がへんに多いんですよね。…これもバブル現象?


 そういえば今年は、早くもクリスマスの飾り付けを始めたおうち(個人宅)をちらほら見かけます。例年は12月に入るまでは、まずなかったのですが。
 リマのみなさん、経済面での見通しに関しては、昨年にも増して楽天的になっているようです。

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 フェリアで見つけたこのCD、嬉しいな。

 おフランスで編集されたもののようですが、クスコ、アンダワイリーリャス、スクレの古い教会オルガンの演奏がおさめられています。いま描いているクリスマスの絵によく合うので、毎日聴いています。

 冒頭に、クスコのマリア・アンゴラの鐘の音が入っているのが、なんとも気がきいてます。

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翌日また、のこのこフェリアにゆき、あれこれ追加購入…

 今年は、もうあと一カ月半しか、残ってないのですよね。
 (…ということは、ハスミン猫は今ごろが誕生日のはず!)


 いつも年末は、わけもなくあせるばかりで(リマ暮らしでは、本当は年末だからといってあせる理由はなにもないのですが)、結局まとまったことが何一つできないので、今年は年内限定の新目標を作ってみました。


1)年末までにアラビア語のアルファベットを暗記する。
 約30のアルファベットですが、それぞれ文頭・文中・文末で違う形になるらしく(ひえ〜)、つまり100種ほど暗記しないとならないようです。
 でも美しい文字なので、教科書を写しているとまるで絵を描いているようで、なかなか楽しいです。


2)台所のプチ改装。まずは水まわりだけ年内に取り換える。
 いまのアパートに越してすでに丸十年半、さすがに水まわりがぼろっちくなってきました。
 工事じたいは大したことなさそうですが、工事の人を家にいれるための家の掃除、というのがおおごとなので、なかなか始められません……


3)テラスの花をふやす。
 とりあえず壁にあと1ダースくらい、ピンクやオレンジのゼラニウムの鉢を掛けたいです。


4)宿六と私の両名、クリスマスまでに2キロずつ体重を落とす。
 
クリスマスに気分よくワインを飲み、ケーキを食べたいですから。

5)年末まで安定したペースで絵を描きつづける。
 四十の坂もしだいに急傾斜となって参りましたが、そんなことには負けないぞ!…ということで。


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 いまリマ沖では、立ち去りかねる冬と初夏とがせめぎあっております。


2010年11月19日(金) 正午の室温 24.3℃ 湿度 53% 曇り
<「ミト村のワコナーダ」と「ハサミの踊り」、新しく選ばれたユネスコ無形文化遺産>



 今週、UNESCO(当地の読みでは「うねすこ」←この発音、なんかへんに好き)の無形文化遺産に、わがペルーの二つの舞踏が新たに選ばれたそうですね。
 ノーベル賞ゲットに続く朗報で、おめでたいかぎりです。特にワコナーダには、前から注目していましたので(自慢話)、私も嬉しいです。


 「ミト村のワコナーダ」(フニン県マンタロ渓谷)と、「ハサミの踊り」(アヤクーチョ、ワンカベリカ、アプリマック県)。
 そのどちらも、カトリックの教えとは相容れない古くからの信仰の要素を残す、たいへん奥深いものを秘めた伝統舞踏です。


 …とはいえ、「ハサミの踊り」のほうは、当地でもすでにかなり観光化しています。
 特にリマあたりには、一度も土の上で踊ったことはないんじゃ?と思われる「ツーリスティック・ダンサック(ハサミの踊り手)」が大勢いますけど、これからもっとそういう需要が増えるのかな?
 それはそれでけっこうなことだと思いますが。


 その点ワコナーダのほうは、さほど有名でなかったぶん、地元の人の手でしっかり伝統が守られているようです。(近隣の町、コンセプシオンやアコでは、なんちゃってワコナーダもやってはいますが)
 先日、「リマ郊外パチャカマックに、パチャマンカ(大地鍋)料理とワコナーダの野外レストランを作る(店名はMITO DE JAPON)」、という構想をお話ししましたが、私にしてはずいぶん先見の明のある思いつきだったようです(笑) やりませんけどね……


「ミト村のワコナーダ」 Huaconada de Mito


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新年の3日間、ミト村の広場に繰り出して踊る、大勢のワコンたち。
堂々たるものです。



 アンデスの創造神「コン」(地方によって、コンイヤラ、クニヤラ、コンティキ・ビラコチャ、ワコン、ワフン等々さまざまな名を持っており、そこからもかつての影響力の強さ、広さがしのばれる神さまです)に仕える、厳格な神官たちの行列が起源なのでは…とも言われる、由緒ある舞踏です。

 今ではむしろ、踊り手たちの滑稽な身ぶりで人気を博していますが、衣裳やお面には、神官らしい恐ろしげな様子や重々しさが残されています。

「ハサミの踊り」 Danza de tijeras
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 これはワンカベリカのもの。地方ごとに衣裳や音楽に多少違いがあるようです。
 ハサミ型の楽器をつねに打ち鳴らしながら、曲芸めいた技を競うのは、どの地方でも同じようですが。


 起源については、もちろんワマニ(山の神)信仰が底にあることはまちがいないものの、諸説あるようです。
 なお、比較的近年になってロシアのコサックダンスの影響も受けたのでは、との指摘が一部にあるようです。たしかに似通ったところはありますね。


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 ぼろは着てても、下の「今風のワコン」より格上とされる、「昔風のワコン」Huacon antiguo
 お面だけでなくこのぼろ服も、おじいさんやお父さんから譲られた、かけがえのないものだったりするわけです。


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 ハサミと言いましたが、じっさいには二本ばらばらの、重いナイフのような形状なので、落とさず鳴らすのはそれだけでも難しそうです。
 この写真だと、二本が留められていないのがよくわかると思います。鉦の音?と思うような、たいへん明るく澄んだ響きを立てます。


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「今風のワコン」 Huacon moderno

 お祭の日には、「昔風のワコン」を守るように、その両側に並んで踊ります。
 重い衣装と、お面の鷲鼻は、山の神の使いであるコンドルを模しているそうです。


 (この毛布、マンタロ川の川向こうにある毛布工場で作られています。
 つい買っちゃったのですが、あまりに重くて、ちょっと扱いに困っております。ほんとはその重さがいいのでしょうけど)


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 地面に腹這いになったり、脚を伸ばして座った状態から、ぽんぽんと何度も跳び上がってみせるのが、ダンサック(ハサミの踊り手)のお約束の技のひとつ。
 そのあいだも、ハサミは鮮やかに鳴らし続けないとならないのです。


 中年の良い子は決してまねをしないでくださいの世界です。これは背中と腰に、確実にくるだろうなあ。

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「昔風のワコン」のお面。老人をあらわしています。

 ぼろを着た老人、といえば、コン神お得意の身の窶(やつ)しかたですよね。
 だから「昔風のワコン」がコン神の化身で、「今風のワコン」が神官たちなのではないか、とも思うのですが、今となっては真実は永遠の謎でしょうね…



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 こうして健全かつ困難な体力勝負がつづくあいだは、なかなか目に楽しい舞踏です。

 でもしだいに神がかってきて(本来がそういう舞踏なので…)、踊り手たちが針金を頬に刺したり(いたっ…)、針山の上で踊ったり、とかを始めると、私は早々に退散いたします。

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 「今風のワコン」のお面。壮年をあらわしているようです。
 重々しさと滑稽さの両方が、絶妙のバランスで彫り出されています。


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 帽子に記されたVengador(復讐者)という名が、こわくていいです。
 カメラ目線の笑顔とのミスマッチも、かわいいです。


 …つまらぬクイズを思い出してしまいました。
 雄のがちょう(ganso)が雌のがちょう(gansa)に声をかけました。さてなんと言ったのでしょう?
 こたえ。「復讐」vengansa → Ven gansa ! (おいで、メスのがちょう!)




 きのう祝賀気分いっぱいのミト村から、電話をもらいました。

 「もう先週木曜から、『文化遺産に選ばれるのは確実!』ってことで、みんなでワコナーダ踊って祝い続けているんですよ!」とのこと。
 一週間以上つづく、村をあげての臨時のお祭! 楽しそうですねえ!


 電話してきた女性たちが、「今またワコナーダ踊りに出て行ったわ、うちの男たち」と笑っていました。
 ビールとカニャソ(サトウキビの蒸留酒、うんと強いやつ)も、さぞ大量に売れていることでしょう。


 そろそろ雨も始まり、植え付けに忙しい農繁期のはずですが、あの勤勉な人たちのことですから、精力的に踊り明かしながらも、あいまあいまにうまく畑仕事をこなしているのでしょうね。

 あす土曜はもっと大々的に、公式に広場でお祝いをするそうです。ティクリオ峠越え(標高4800m)がなければ、今夕出発でちょっと行ってくるんですけどねえ……
 また2011年のお正月は、例年以上に賑やかに祝うので、ぜひみなさん(私たちもpacollamaさんもcalleretiroさんも全日本のみなさんも)ミト村においでください、とのことです。



 上機嫌の友人が、「クリスマス用にまた生クイ(なまテンジクネズミ…)、送ってあげるわね!」というので、せっかくのお気もち、辞退するのにちょっと苦心しました。もうリマは初夏ですから、さすがにほんとのクール宅急便ができるまでは、ちょっとね……
 うちからはクリスマスと「うねすこ」認定祝いをかねて、またパネトンを送ろうと思います。
 WONGの袋入りを六つくらい箱詰めにして送ると、大家族でも食べでがあっていいみたいです。

*****

 二つの舞踏について、もっと興味のある方は、ユネスコのサイト(下記)もごらんくださいまし。

☆ワコナーダについて
http://www.unesco.org/culture/ich/index.php?lg=en&pg=00011&RL=00390
(あら、スライドショーの中の、木のお面を彫っている職人さんは、電話をくれた友人宅の長男さんのようです)

☆ハサミの踊りについて
http://www.unesco.org/culture/ich/index.php?lg=en&pg=00011&RL=00391
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なつかしの(5月に行ったばかりだけど)ミト村 遠景。
マンタロ渓谷は本当に良いところです。なにより人の優しさが最高です。



 「ハサミの踊り」は、アルゲダスの小説にもしばしば登場します。

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 中でもとりわけ美しく、たちまち「ハサミの踊り」の深い世界に引き込まれるのが、短編「ラス・ニーティの最期」ではないかと思います。
 左の本で日本語訳を読むことができます、お勧めです!


『ダイヤモンドと火打ち石』

ホセ・マリア・アルゲダス 著/杉山 晃 訳/彩流社



 なお、日本人で唯一(たぶん)ワコナーダを踊り、cortalaboの憂き目まで経験なさったcalleretiroさんの記録は、こちらです。
 これも中年の良い子は決してまねをしないでください、の世界かも… calleretiroさんご無事でなにより。



2010年12月21日(火) 午後3時半の室温 25.7℃ 湿度53% 快晴
<20年…>

 先月で、宿六と知り合ってから丸20年がすぎた、ということに先日ハタと気づきました。

 つまり宿六をご紹介下さったSA先生と、市ヶ谷にあったマナンティアル書店で偶然はじめてお目にかかったときからも、丸20年ということです。
 先生のヨーロッパ紳士風のダンディなご様子は、20年前とまったく変わらないので、なんだか夢のような気がしますけれど。



 はたちのころ、私はある人から、「お父さんが健在のあいだは、結婚相手が現れないという相ですな」と軽く言い渡され、にゃんともいえない思いをしましたが、奇妙なことにその通りだったのでした。
 宿六と知り合って一カ月後に、父は亡くなりましたので。


 ちょうど今日が父の命日です。
 あすは冬至という、寒くて寒くていつまでも明けない長い夜、なのに朝になるとへんに明るかったあの日からも、もう20年がすぎたのですね。


 昨晩はひさしぶりに鮮明なフラッシュバックに悩まされましたが、同時に「これはただのフラッシュバックだから大丈夫」と言い聞かせる自分もいて、やっぱりそれは長い年月のおかげです。
 でもとうとう20年間、父のことを思い出さない日は一日もありませんでした。


 20年前のきょう早暁に父は自ら命を絶ち、翌日、姉の誕生日の22日がお通夜。
 その後、松がとれてから正式な葬儀をすることが決まり、クリスマスイブの24日には、きらきらと飾られた百貨店に黒い服を買いに行きました。(そのとき、黒一色の身なりは二度としない、これからはきれいな色の服しか着ない、と心に決めました)
 私にとってのクリスマスは、今でも悲しい季節です。でもだからこそ、できるだけ家を飾って、おいしいものを食べて、楽しくすごしたいと思います。

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 先週とうとう、台所のプチ改装(流しの全とりかえ)を済ませました。
 これは工事の人が見に来る前に、わざとらし〜く片隅を飾ったところ。
 ぶらさげてあるのは、アンデスの木匙と、リマの北ワチョ(Huacho)で女性たちが作っている、葦細工の野菜くだものです。


 新年は壁を淡い灰青色に塗りかえ、もっとクールな台所人生をめざします。

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 テラスのゼラニウム鉢を一気に18個増量!
 でもアンダルシアの中庭式に壁を埋めつくすには、まだまだ足りないようです。


 間借り人の鳩夫婦のその後。
 日が射すようになっても、懲りずに鉢に巣をかけていましたが、二回つづけて失敗し(ひなが孵らず巣を放棄)、その後はどこか日陰で営巣しているらしく、食事だけしに毎日やってきます。
 冬はまたうちに巣をかけるのかな、そのときは鉢選びにはけっこう迷うかも。



 さて20年前の宿六、青年Fはといえば、経済危機のリマから緊急避難的に東京にやってきた、誠実そうではあるけど、山出し感あふるる若者でした。いっぽうの私は、いちおうバブル時代の思いあがった東京人。
 いまのリマと東京なら、もはや目をまわすほどの格差はありませんが、当時はまるで別世界。
 その別世界から来た朴訥な青年と結婚するとは、夢にも思わなかったのに、今ではそれが唯一の家族なのですから、人生、先のことなんて本当に何もわかりません。


 目白駅での初対面の印象も、何を隠そう「ざんねん、タイプじゃないな」でした。当時すでにペルーへの移住手段を探していたので、ペルーの好青年の登場を内心ちょっと期待はしていたわけです。
 それでもなぜか放っておけず、弟分としてあちこち連れまわしながら、それこそメニューの読み方から始まる、私にできる限りの教育をしました。


 それは少なからぬ手間と労力で、まさに青春を返せえ〜状態ですが、意外に生き甲斐になっていたのかもしれません。(私は子育てこそしていませんが、宿六さまのおかげで、人をひとり、なんとか使いものになるところまで育てあげた、という自負は持っております…)
 それから5年後、今度は私がペルーへ「亡命」しましたが、気軽になんでも頼める青年Fがいなければ、思いきって逃げてくることもなかったかもしれません。


 もちろん20年のあいだには、いろんなことがありましたが、互いにまじめに向き合ってきたことだけは、たしかだろうと思います。
 反省点は、私が一歳年上であることと、経済的により余裕のある立場だということを意識しすぎ、弟分にあまり負担をかけないよう、長年あれこれ手伝いやがまんをしすぎたこと。
 でもラテン系の男性というのは、本当はもっと頼られたほうが実力が出せるのかも…と、さいきんになってやっと気づきました。


 だからこれからは、本来の身勝手で散財癖のある私に戻って、もう通販でもなんでも好きほうだい注文して(…そういう次元の話ではない?)、宿六には大いにがんばってもらおうと思います。

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 沙漠都市リマのテラス環境は苛酷なのに、今まで絶対的に水と肥料が足りなかったらしい…と、テラス園芸11年目にして悟りました。
 夏に向かって満開になるよう、せっせと水と肥料をやっております。


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 あいていた壁には、フクシアを飾りました。
 とりあえず赤、紫、ピンクの三鉢。あと二種類くらい手に入れたいな。

 2010年は残り10日間。2011年は、どんな年にしようかな。

 私は今げんざい、人生の手近な目標を見失っております。
 長期目標のほうは、幸か不幸か非常にはっきりしているのですが。(絵を描きつづける。田舎に思い通りの家を建て、草・木・花と猫に埋もれて暮らす。犬も数匹いてもいい。等々)


 数年以内の目標として、東京での個展も検討してみましたが、うーん、どうも違うみたい。
 東京にはもはや足場がないので物理的に無理、というのもありますが、絵にはできれば一人あるきしてほしい、というのが本音の本音…
 一応、地元リマでの個展も考えましたが、当地で絵なんぞ見る余裕のある階層の人々には、まったく共感を持てないので、これも目標にはなりえないようです。



 辿りついた結論。
 「手近な目標」を無理に探さず、来年は優雅に暮らそうと思います。
 長年せせこましい心配ばかりしてきて、そういうのはもう心底うんざり。そんな気持ちで暮らし続けたら、豊かな絵なんか描けっこありません。
 だから来年は、家の中をきれいに住みやすくしながら、きれいなものを見る旅もいろいろ計画し、絵をたくさん描こうと思います。(それからカラスの足あとが出ないよう、美容にも少し配慮…)


 宿六の来年の目標が何なのか、それはまだ聞いていません。
 でもだんだん商人らしく腰が座ってきたので、きっと来年も変わらずせっせとがんばることでしょう。
 私の気まぐれ出費がじわじわ増加中なので、「わらじ」を増やさないとならないかもしれませんね…


 仕事は、今いるところでがんばるもよし、ぼちぼち新しい地平をめざすもよし。クリスマスはひさしぶりにcavaをあけて、そんな話もしようと思います。

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 リマの街中で、笑いがとまらん、という様子でころげまわる犬。
 犬まで好景気なの…?



 妙〜〜にハイテンションなリマっ子たちは、もう週末のクリスマスまで待ちきれないのでしょうか。
 すでに毎晩のように、花火や爆竹の賑やかな音が聞こえてきます。
 ちょっと前まで、灰色の不況気分にど〜んと浸っていたくせにねえ…(笑)
 実にわかりやすい人たちです、日本人にぜんぜん負けてません。




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