国土調査の公差と法17条地図の精度


●はじめに

 国土調査による法17条地図について、地図が悪い、現地と形状が合わない、面積が公差以
上に相違するといった話を耳にされていると思います。
 当然、1筆地の当事者同士が境界線を勝手に変更しているために相違する場合がありま
す。これは問題外としても、国土調査以前からの境界であり、現在も境界の移動が無い明確な
土地で、形状は全て合致するのに面積だけが相違し、その精度区分の公差からはみ出る事
がしばしばあります。これは古い時代の国土調査による法17条地図によく見受けられ、調査
士の間では「法17条地図があるから障害になるのだ、いっその事公図と同じ様な扱いにしてし
まえ」といった乱暴な意見も聞かれます。
 だが、それは本当に地図が悪いのでしょうか、あまりにもその地図の精度区分にとらわれす
ぎていないでしょうか。その古い時代の地図の精度が甲3と表示してあっても、その地図が現
在乙1の価値なのだという風に認識し、地図の精度区分の見直しが出来れば、その地図は精
度に応じた図面として現在においても評価する事が出来るのではないでしょうか。



●地籍図(国土調査図面)の精度

 国土調査ではその成果を納めるために精度区分を設け、その基準により甲1、甲2、甲3、
乙1、乙2、乙3として地図の精度が決定されている。
 国土調査関連法については過去何回かの改正があったが、国土調査の精度区分自体の公
差(辺長および面積の公差)については何等変更がなされていない。(表1)


表1  1筆地測量および地積測定の誤差の限度



 国土調査法による精度区分の公差が変更されないのは、その時代での最善の努力を行なっ
た結果その成果が許される公差に入っていれば良いという事であり、検査を行なう側も同一レ
ベルの器械を使用し、同様にして観測した結果が公差の中に入っていれば良いという事であ
る。
 この精度区分毎の作業方法について地籍調査作業規程準則で細かく決められており、この
規程は改定の度に厳しく、その時代の平均的なレベル以上の測量器械の使用、また最新の
器械の使用が考慮されているが、昭和30年代や40年代には現在の光波測距儀の発達や
GPSの使用といった事は考えられていなかったはずである。



●地籍図から法17条地図へ

 一方、国土調査が完了し、国土調査法19条により認証された後法務局にこの成果が持ち
込まれ備え付けされると、この精度は地図の持つ精度として法17条地図の精度区分とされ
る。
 当然のように、この地図の精度は国土調査で定められた精度区分をそのまま使用しており、
国土調査により検査をされ持ち込まれているという理由から実務上は改めて法務局独自の判
断による地図精度が適正かどうかの検査はなされていないようである。
 また残念ながら国土調査の成果品である図根三角点成果簿、図根多角点成果簿、網図等
の備え付についてはどう言った理由か知らないがほとんど行われていない。
 当然、この事は図解法の国土調査の成果品の法17条地図であれば図面の縮尺による図
面の読み取りでしかその境界線を復元する手だてがなくなっている事でもある。
 本来の『位置の公差』はその境界を測った図根多角点からの誤差である。その手段が法務
局の法17条地図の資料からは欠落している。



●時代と測量器械

 地図作成の時代の異なる作業規程別表をあえて比較すれば、昭和30年代の甲2の地図
は、その作業規程からすると現在の乙1の程度の作業基準であるかもしれない。

 しかし、国土調査においては、これらの図面を同一の土俵で比較する事は考えていない、な
ぜなら国土調査は新規に図面を作成するための作業であり過去の国土調査と比較するため
の作業ではない。

 だが法17条地図は、その『時代』も『作成の基準』も異なる図面でありながら現在の精度区
分と同一の精度区分だからと同じ土俵に載せて比較している。

 法17条地図備え付け当時は最高の測量器械を使用したものであったとしても、現在の測量
器械と比較すると雲泥の差となる場合も少なくないのである。

 1筆地当たりの面積と費用負担の観点から市街地は甲2か甲3、農耕地は甲3か乙1、山林
については乙1か乙2といった図面の精度が決められ、それに伴って地図精度の公差の制限
内に納まるように測量の作業規程が定められ、その作業がすすめられたのである。
 確かに先人の測量技術には目を見張るものがあるが、測量器械の限度はどうにも越える事
が出来ない。



●法17条地図の精度と公差

 もう少し具体的に話をしてみると、昭和3、40年代に平板、間縄で計測し作製された土地に
ついて、その境界に変動がないとして現在のトータルスティションで再度計測すればどうなる
か。
 片や5cm単位の計測で、更にそれを平板にはせいぜい5センチ単位でしか表現が出来ず、
平板で作製された図面を読み取り三斜法かプラニメーターで面積測定する。
 片や1ミリ単位の計測を行いそのままパソコンに入力、プロッターで作図し座標法で求積。そ
の間にほとんど誤差は考えられないといっても良い。
 1筆地の形状を500分の1の図面でそれぞれに作成し、その図面同士を重ね合わせればほ
とんど相違はない。だが図面以外の情報として面積測定の基になる辺長について最高5セン
チの測定の誤差が、そしてプロットする時に5センチ、読み取る時に5センチ生じる。単純に、
だから15センチの誤差が生じるとは言いがたいが、これは間違いではなく単にそこまでの表
現が出来なかったに過ぎない、甲2や甲3の精度であれば辺長の公差の制限内には充分納ま
る値である。
 だが、面積については現在の登記を行うための公差の解釈では甲3精度の図面であれば、
緩やかな公差範囲であるにもかかわらず公差を越えてしまう事も珍らしくない。



●不動産登記法準則

 不動産登記法準則によれば備え付けられた地図の精度区分に準じ、その公差を越えた場
合は地積更正が必要とされる。法17条地図があり地図にその精度区分が表示されていれ
ば、否応なくこの準則が適用されるのである。

 だがこの準則は、同じ土地の全く変化のない境界を同じ基準で計測されたもの同士であれ
ば公差はかなり緩く、この公差からはみ出る事はなく、越えればそれは誤りであるから訂正し
なさいという意味であると思う。

 昭和3、40年代に作成された地図の1筆地において、現在の最新の測量機器を使用して計
測した結果(地積測量図)と、その登記簿の地積とを17条地図備え付け当時から変わっていな
い精度区分で公差の範囲に入っているかどうか比較するほうに矛盾があり、比較の対象が違
うのではないのだろうか。



●比 較

 もし、登記官が実地調査で該当の1筆地を我々調査士と同様の測量器械で計測したとしたら
どうなるのだろうか、この計測値との差に地図の精度区分の公差を使用するという事のほうが
本来のように思えるのだが・・・。
 (この定めもまた準則にはあるのだ。)

 一方現在、国土調査を実施した当時の測量器械を使用して再度図面を作成するとしたら、お
そらく地図の精度の公差内に入るであろう。しかし、後日商取り引きが予想される土地に対し
て調査士が昭和3、40年代と同じ要領で平板と間縄で観測し、面積を算定し無事登記が出来
たとしても、今度は実際の面積より多い少ないと依頼人の批判の矢面に立ち、挙げ句に信用
を無くすのである。
 法務局も調査士もそして依頼人も、決してこの事は望まないはずである。



●法17条地図の精度区分の見直し

 このような理由から、古くなった法17条地図については、その地図の備え付け当時の精度を
現在の測量事情と照らし合わせて、ある程度位置付けをやり直す必要があるのではないだろ
うか。
 この事は現在の17条地図がその機能を満足に維持し続けるためには、当然考慮しなけれ
ばならない事である。地図を作成した当時の作業規程が古くなれば現在の作業規程に見合っ
た精度区分とすべきなのだ。
 そうすれば単純に測量器械の違いによる単純な面積差は消去出来るはずで、本当に面積
測定の誤りがあるものだけを地積更正すれば良くなるはずである。これはその地図が悪いか
らどうこうという話ではない。


 国土調査の精度区分の公差については一度も変更された事が無いが、もし変更されるとす
れば現在の精度区分の公差範囲は緩やかであるとして、その範囲を狭める事になるであろ
う。そうすればその公差を援用している法17条地図の場合は、今まで私が指摘した事が余計
ひどくなるはずである。


 国土調査の場合は、その作業規程を厳しくすればそれで充分時代に対応出来るし、より精
度の高い図面が出来る訳だが、それを備え付け維持していく法務局側の窓口の担当者に地
図の内容の維持管理に関する作業規程や運用規程について尋ねると明確な回答がない。こ
れはどうした事だろうか。

 時代の要請で向上した来た測量機器の性能、30年前と現在のその性能の差を定義付け、
その数値を単純に公差に上積する手もある。しかしこの方法は試行錯誤を繰り返さないとその
値を決定する事は難しいし、その使用器械同士による組み合わせの数値も考慮しなければな
らず、当然その使用者の技術差も考えられ非常に困難が伴い一般的ではない。



●経験則

 私の経験からすれば、元々精度区分を落としている地図(市街地でありながら
縮尺500分の1で精度区分乙2のような図面)は別として、古い国土調査17条地図の1筆地
を現在の測量器械で面積を測れば、該当の精度区分の公差について残念乍らわずかに越え
る事が多い。
 だが完全に精度区分を二つ越してしまう1筆地は地図訂正の要件を含む事例のみであっ
た。
 本来ならば、私は地図訂正の要件を含む事例以外は地積更正の必要性は無いと思うのだ
が、不動産登記法準則の定めがある以上これを無視する事は出来ない。

 現在の法17条地図は、既に法務局が備え付けを行っているものであり、当然備え付けた法
務局がその維持管理を行う責任があるはずで、国土調査実施機関が法務局備え付け後の地
図の維持管理を行なう事はない。
 国土調査図面を法17条図面に備え付けする時に、地図の精度区分を法務局が独自に改正
する事は出来ないであろうし、残念ながらその技術力も無いであろうし、またその時点での最
高水準の地図であるから、わざわざ再度検査をする必要もないであろう。

 だが、備え付けてかなりの年数が経過し、その精度区分と作製時代の作業規程が現在の実
態と遥かにかけ離れてしまったものについては、その地図の精度を再度考慮する事は必要で
あり、この事は地図を備え付けた法務局でしか対応が出来ないのである。



●おわりに

 そのためには地図と現地の整合性等、法17条地図の維持管理のために、常に調査を行う
必要があるが現在まで地図の内容にまで踏み込んだ専門的な調査は行われておらず、早急
にその実態を調査すべきである。

 どのようにして地図の精度の実態を調査すれば良いか。
 非常に簡単な事である。切実に体験している地元の調査士達の意見を聞けば良い。

 当然法務局の職員も地図と現地の状況の実態については実地調査等で承知しているはず
であるからその意見を聞けば簡単に、その地域の法17条地図の現地との整合性。更にはそ
れに見合った精度区分を見出せるはずであり、法務局および調査士会が協力し、不動産登記
取扱要領により地域性や作成時期により細かく適正な精度区分を再度位置付し、その運用に
より解決をする事が出来るのではないだろうか。

 これらの事は、単に私だけの意見かもしれない。しかし、県下の70パーセント以上が国土調
査を終了している愛媛県においては、この実情を真剣に受け止め、取り敢えず県下の実態調
査をしていただきたいものである。



国土調査地区の話
     
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