トンボの眼編集室

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 アンコール遺跡群の最新事情  ( 1 )
          「トンボの眼」会員・ジャーナリスト 白鳥 正夫

ユネスコが提唱する世界遺産は、地球と人類の過去から引き継がれた宝物であり、今日を生きる私たちが共有し、未来の世代に引き継いでいくものです。1992年に登録されたカンボジア王国のアンコール遺跡は、世界遺産にふさわしい神秘の文化財でした。2006年2月末から3月初めにかけて訪ねたアンコール遺跡については、その最近事情を報告します。

カンボジアへは直行便が無いため、ベトナム・ホーチミンのタンソンニャット空港からベトナム航空で、遺跡のあるシェムリアップに到着しました。道路わきでは屋台や数々の露天が並んでいます。随所に立派な建物が建設中で、そのほとんどがホテルと言うことです。観光ブームにわく遺跡の町は、貧しさと豊かさが混在していました。

 町から遺跡まで7キロ。遺跡に入るには、顔写真付きのパスポート(3日間通用・40ドル)が必要です。入場ゲートを通過し、最初の見学地はアンコールトムの入り口にある南大門でした。この門の入り口両側の橋の欄干にはナーガ(ヘビ神)の胴体を引き合う神々と悪神の阿修羅の石造がそれぞれ54体も連なっていました。もちろんいたるところで欠落していますが、その造形の規模に衝撃を受けました。

塔門の上部には、4面の観音菩薩が彫られています。その顔の長さが3メートルもあるというから驚きです。門はかつて象に乗った貴人が通れるように造られ、中型バスが通れるほどで幅です。アンコールトムは「大きな町」と言う意味で、1辺が3キロの外壁に囲まれ、5つの門があります。この都城は12世紀末から13世紀、ジャヤヴァルマン7世の時に環濠と堀が作られ、現在のような規模になったようです。

 その中心がバイヨン寺院で、古代インドの宇宙観による神々の聖域として築造されていました。64メートルの主塔を軸に16もの尖塔がそびえ、それぞれの塔の上には南大門と同じように4面仏の異様な菩薩が笑みをたたえています。何度も写真で見ていましたが、実物を前にすると圧倒的な迫力です。

参道の南北には聖池が配されていた痕跡があります。二重の回廊に囲まれた伽藍は対称形です。外観はシンプルに見えますが、内部の構造は複雑で、回廊の壁面には細やかなレリーフが施されています。

第一回廊には、象に乗った軍隊の戦いや行進の姿などが延々と描かれていますが、日常的な庶民の暮らしや貴族の生活も生き生きと取り上げられており、興味が尽きません。当時、チャンパ軍との戦闘場面にも、後方で女性や子どもが料理を作ったり、運んでいる姿も見受けました。

バイヨンの中央祠堂に登ると、どこを見ても菩薩の顔、顔、顔が林立しているのに驚愕します。位置によって3つの菩薩の顔が並んで見える所もあり、開口部をフレーム代わりに見ることができたりと、写真に収まる名場面のオンパレードです。この4面塔は全部で49を数え、5つの門を入れると「尊顔」の数は54の4乗の計算になります。

 バイヨン寺院から北方500メートほど行くと、王宮跡があります。その前の広場には有名な象のテラスがあり、ほぼ等身大の象のレリーフが並びます。王がこのテラスで軍に檄を飛ばし閲兵した姿がしのばれます。王宮への入り口には日本の狛犬に似た2頭の獅子の彫刻があり、石造の遺跡には数々の精巧なレリーフが施され、クメール文化の崇高さに感動します。

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