(解放のゆくえ トップ)
第16回 2007年2月4日
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、毎月10万人のイラク人が国外に避難しており、これまで既に200万人が近隣諸国に出国し、国内で避難ないし移住している人々も180万人にのぼるという。
※Iraq: A humanitarian operation that will go on for years
GENEVA, February 2 (UNHCR)
 イラクからの国外避難民が特に多いのは隣国ヨルダンとシリアで、UNHCRは今年1月時点で70万人がヨルダン、60万人がシリアに住んでいると推測しているが、多くの専門家は実際の数字はもっと多いと信じている。

 ところが最近、西側諸国がたとえ難民であってもイラク国籍者の入国を禁じているうえに、隣国ヨルダンでもイラク人の入国を厳しく制限している。もちろん国を出ようにもその手段も費用もない人々が多いわけだが、相当の決断のすえに国境まで行っても追い返されたり、継続治療のために再出国しようとして断られるといったケースもある。
■隣国ヨルダンへの避難も困難に
 ダール・ジャマイルの中東速報(1月29日付)はヨルダンの首都アンマンから、イラク難民の現状を次のようにレポートしている。
※Jordan Becomes a Doubtful Refuge /Dahr Jamail's MidEast Dispatches
 アンバル州のサクラウィヤに住むアハマド・ハラフ氏は、「私はヨルダンで眼の大手術をしたが、主治医から再手術の必要があると言われた。アンマン来訪を求めるヨルダンの病院からの手紙と診断書を持ってイラク〜ヨルダン国境に来た」と話した。だが彼が国境まで来ると、既に数万人のイラク人がヨルダン入国を許されずにいて、彼もまた同じ境遇に置かれることになった。

 ここ数ヶ月、ヨルダン国境は徐々に通過が厳しくなってきていたのだが、何人かのイラク人はサダム・フセインが処刑されて以降、ヨルダン当局がイラク人に門を閉ざすようになったと指摘した。多くの者はイラク政府の要請による措置と考えている。

 日頃、ヨルダンから商品を仕入れてきたある食料雑貨商人は、「ヌーリ・マリキ首相が昨年末にヨルダンに来たとき、ヨルダン当局はイラク人の入国を厳しくし、国境を通過しようとした者の半数が入国を拒否された」と語った。そして、「イラクのジャワド・ボラニ内務相が昨年末近くにヨルダンに来たときも、イラク人の95%が入国を拒否された」と補足した。

 2006年の初めには、17歳から35歳のイラク人男性とフセイン政府の保護でイラクに住んできたパレスチナ人がヨルダン入国を拒否された。イラクに住んでいたパレスチナ人のほとんどが、シーア派の暗殺チームに迫害され住居を追われている。

 イラク人のヨルダン流入が増大したことで、ヨルダンの社会基盤が逼迫(ひっぱく)してきた面はあり、特に学校と病院は何万人もの新住民の受け入れが負担になっていた。

 アンマン出身のヨルダン人アハマド・トラウニ氏(30歳)は、「この小さな国はこれ以上イラク人を受け入れる余裕がない。私たちは同胞であるイラク人に同情しているが、この貧しい国にとって重荷になってきた」と話した。

 裕福なイラク人が移住してきてヨルダン市場にインフレをもたらしたと不満をこぼすヨルダン市民もいる。虚業ではない実際の不動産ビジネスが盛況になった一方で、多くのヨルダン人はアンマンの中心部に土地を買ったり借りたりするのが難しくなった。

 ガーデン、シュマイサニと西アンマンのような地域は、2006年当時の価格からほぼ200%の地価上昇となった。食料品ほか必需品の価格もかなり上昇した。

 それでも多くのイラク人は難民を受け入れるのはヨルダン人の義務ではないかと感じている。

 アンマンに住む60歳のイラク人教師は次のように話した−−「この国は私たちの金で建設された。サダムはヨルダンに無料で石油を供給し、ヨルダン人にイラク国境を開放したのに、今では彼らはイラク人がヨルダンに住むのを許さない。私たちは彼らに資金援助を求めているのではない。イラク人はみな自分の金を持ってきた。多くの者がまともに暮らせるように、イラクで自分の土地を売ってから来たのだ」。

 国境近くには宿泊地がないため、国境を越えられないイラク人は引き返すしかない。だが日没後は米軍のパトロールを恐れて旅をすることができず、ハイウェイのレストランに駐車して夜を明かすが、夜間はとても寒い。

 そのうえイラク国内で何万人もが他の場所に部屋を求めて移動するのも困難になるばかり。UNHCRは今年1月9日、イラクの国内難民の規模は人道機関の受け入れ範囲を超えていると警告を発した。そして事態はさらに悪化するだろう、と。

(つづく)

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