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「第三の男」、1949年作のこのイギリス映画を見たことはなくても、「第三の男」という言葉は何度となく聞いたことがあろう。「第三の男」という言葉が一人歩きして映画を知らずして使っている人も多そうだ。この映画の舞台になったのが終戦後のウィーンだ。それはこの街で展開されるサスペンス映画だが、そのストーリー自体は他の映画に比べて特別に傑出しているわけではないと思う。それにもかかわらず、この作品が半世紀たった今でも見られているのは、そのモノクロ映像の陰影の美しさにあるのだろう。中でも、主人公マーティンが並木道(下の写真)で懇意の女優アンナと別れるラストシーンや第三の男であるハリーが登場するシーンは映画史上に残る名場面と言われている。ハリーの虚偽と本当の2度の埋葬が行われたのが、このウィーン中央墓地(Zentralfriedhof)だ。 ウィーンに列車で入ったのは5月とはいえまだ寒さを感じる土曜日だった。西駅(Westbahnhof)のツーリスト・インフォメーションでCrystonというホテルを取って貰ったとき、窓口の女性は僕の国籍を見抜いて取り出した日本語の観光地図にホテルCrystonの場所をマークしてくれた。また、インフォメーションではウィーン内の公共交通(地下鉄、路面電車、バス)に通用する72時間チケットを買った。ウィーンにもパリにも住んだことがあるという、芸術家の女性が「ウィーンは田舎だ」を書いているのを見たことがある。その理由として、「外国人労働者を受け入れていない」とか、「アパートのベランダに洗濯物を干していると、『美観を損ねる』と住人から苦情が来る」といったことがあった。僕はこの街が田舎であるかどうか、ということは気にかけていないが、一国の首都としては欧州の地方都市が持っている良さがあると感じた。その良さというのは、地下鉄の駅でも、繁華街で間違って裏路地に入ったとしても、治安に不安を感じないこと。また、僕が路傍で地図を持って首を傾げていたら、身なりの良い紳士が「私は英語を話せるが、お助けしましょうか?」などと話かけてきてくれるなど、親切な人たちがいることだ。もっとも、どこであろうと非英語圏で英語で話しかけて来るような人には(何か悪い意図がないか)注意が必要だ。 |




