胆嚢は、丁度茄子のような形をして、肝臓の右下の胆嚢窩というくぼみに付着しています。
長さは7-10cm、幅は3-4cm、容積は60ml程度です。胆嚢は胆管の途中で枝分かれした管の先にぶら下がっています。
胆管とは肝臓から十二指腸へとつながる細い管です。淡いオレンジ色をした胆汁は、肝臓で作られ、1日に500-800mlの分泌があります。胆嚢では、肝臓でつくられた胆汁(肝臓胆汁)を蓄え、水分を吸収して、八倍程度に濃縮します(濃縮胆汁)。胆汁の組成は以下ようです。この中で、脂溶性で水に溶けにくいビリルビンとコレステロールがグルクロン酸抱合やミセルの形成によって胆汁中に溶けています。これらが何らかの病的原因で,析出すると胆石の成分となるわけです。
           徳村弘実            E-mail

人胆汁組成(胆嚢胆汁)

胆汁酸塩    mM/l

300

Ca        meq/l

23

ビリルビン   mg/dl

300

Na         meq/l

210

コレステロール mg/dl

500

K          meq/l

13

レシチン    mg/dl

3000

Cl          meq/l

25

蛋白      mg/dl

30

Bicarbonat  meq/l

10


食べ物が胃から十二指腸に入ってくると、胆嚢が収縮して、速やかに胆汁が十二指腸内に排出されます。食事のたびごとに食べ物のうち、とくに脂肪や肉類を食べたときは、ホルモンや神経の作用で胆嚢は強く収縮し、胆汁の分泌を高めます。胆汁に含まれる胆汁酸には、
脂肪の消化・吸収を助ける働きがあります。


肝臓の細胞で作られる胆汁の成分が固まって胆嚢や胆管で作られます。
胆石の場所で胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分けられます。
胆嚢結石84%、総胆管結石14%、肝内結石2%の頻度です。
            胆石外来

  徳村弘実

胆石の好発は40〜60歳代で女性にやや多くみられます。胆石の発生率は、地域差や人種によって差があることが知られています。
胆石保有は、欧米人では全人口の10〜20%といわれるが、日本でも欧米並みの頻度になりつつあります。

胆石の主成分は、ほとんどの場合、胆汁中の脂溶性のコレステロールと胆汁色素ビリルビンである。
胆石は、主成分の量によってコレステロール胆石と色素胆石(ビリルビン胆石)に2つに大別されます(図3)。
コレステロール胆石はさらに、純コレステロール石、混成石そして混合石に細分されます(図4,5,6)。
その頻度は全胆石中のそれぞれ9%、10%、46%です。コレステロール胆石の成因として、食生活の変化、中でも動物性脂肪の摂取量増加が大きな原因と考えられています。肥満、暴飲暴食や過労、心労などにより、
胆管の緊張異常のおこったときも誘因とされます。

一方、色素胆石にはビリルビンカルシウム石(以下、ビ石)と黒色石があるが、両者の病態は大きく異なります。
ビ石は、胆嚢でも生成されるが相対的に多くなく、胆管内で作られることが多いのが特徴です(図7)
成因には胆汁の細菌感染が大きな役割を果たしている。
黒色石は、近年増加の傾向にあり、胆嚢で形成され胆管で作られることはほとんどありません(図8)
溶血の亢進が原因の一つに挙げられています。その他、まれな胆石として炭酸カルシウム石などがあります。

近年のテクノロジーの進歩で胆石の診断は容易になり、
胆石の有無だけでなく、その状態がよくわかるようになりました。
診断には画像が決め手となり、腹部エコー検査
点滴静注胆道造影(DIC)がよく使われ、さらに病態に応じCT、
DIC-3DCT、MRCP(MRI)
内視鏡的胆道造影(ERCP)、が追加されます。

痛みのあるものを有症状胆石、痛みのない無症状胆石に分けて考えます。一般的に胆石の痛みは激痛と考えられがちですが、軽い鈍痛や腹部の不快感程度のこともあります。

お腹の痛みの部位としては、上腹部痛が最も多いのですが、なかでも心窩部痛(みぞおち)右季肋部痛(右の肋骨直下の腹部)が多くみられます。心窩部痛は胃の痛みと間違われることが多いです。
腹痛に伴って、あるいは腹痛がなく背部痛(背中)もみられることがあります。
痛みの性質は、激痛のときと鈍い痛みしかないときがあります。
しばしば短い時間でケロットと痛みが取れてしまうことがあります。
それに伴って、悪心(はきけ)、嘔吐、発熱、黄疸などがあります。
発熱や黄疸を伴うときは急性胆嚢炎(胆嚢が化膿する)や胆管炎を合併していることがあり、早急に治療する必要があります。
急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術の資料)

胆嚢結石総胆管結石肝内結石で違います。    胆石外来

最近、無症状で胆石が発見される方が増えていますが、
基本的には治療しません。
将来の症状が発現する人は半分ぐらいと見られています。
また、胆石に胆嚢癌が合併することが時にありますが、
無症状では胆嚢癌の合併はほとんど心配ない、といわれています。
しかし、胆石の状態や胆道の解剖の状態によっては手術が
必要となることもあります。
とにかく、専門の医師に定期的に経過を見てもらうことが大事です。

痛みのある有症状の患者さんには内科的な治療と外科的な治療があります。
内科的な治療では胆石溶解療法と結石破砕療法があります。
どちらも10%以下の効果しかありません。
患者さんによっては有効なことがあります。


外科的治療の第一は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。
当科では、現在までに3,050人の患者さんにこの手術を行い、良好な結果を得ています。
胆嚢をとれば胆石の再発はまずなく、治療が終了します。
胆嚢を取ることによる後遺症は若い男性を除けばほとんどありません。
この手術は、以前は大きな傷で開腹手術されていたものが1cmから5mmの4箇所の
傷だけで手術でき、痛みが少なく、早期の退院、早期の社会復帰が可能です。
美容上、時間とともに傷はほとんどわからなくなってしまいます。
元気な患者さんの場合は日帰り、あるいは一泊手術ですむ場合もあります。
しかし、時間の余裕がある方は、2-5日ぐらいの術後の入院が適当です。

この手術の欠点・問題点は、

胆嚢結石症に急性胆嚢炎を合併することがあります。
炎症が進むと胆嚢が腐ってしまう、あるいは激しく癒着してしまうことがあり、
開腹する手術が必要になることがあります。

私たちは早期に手術を行い患者さんが早く退院できるように努力しております。
なお、胆嚢癌が疑われる場合も開腹が必要です。

胆石のほとんどは怖い病気ではなく、胆嚢だけの胆石であることが多く、
治療方法も腹腔鏡下胆嚢摘出術の開発で格段によくなり、治療期間が短くなりました。
しかし、一方で急性胆嚢炎、胆嚢癌の合併、総胆管結石あるいは肝内結石など病態の複雑な患者さんも少なくなく、
専門医の診断治療が望まれます。

 胆摘後症候群について new

胆石治療として胆摘を受けるときに主治医から術前の手術説明をされます。胆嚢を取りますといわれると、多くの患者さんが胆嚢は取っていいのですか?胆嚢は残せないのですか?と質問されます。その場合、医師は胆嚢で石ができるので、胆嚢を残すと石が再発します。胆嚢をとっても、後遺症はまずほとんどありませんと返答することが通例でしょう。

しかし、米国では1950年代から胆摘後にいろんな症状いわゆる胆摘後症候群が10-30%に出ることが報告されていました。

胆摘後症候群の原因としては、手術続発症つまり手術という怪我によって発生する合併症として胆管損傷、血管損傷の他、胆道の変位や周囲の癒着による障害や断端神経腫などがあります。また、腹腔鏡下胆嚢摘出術では、手術がうまくいかないとき開腹移行という新たな問題もあります。

もう一つの原因は、胆嚢がなくなる、つまり胆嚢欠損によって体に起きる影響です。これには腹痛や下痢などの症状を発生する場合と自覚症状がない体の変化があります。

前者は胆嚢摘出の2−8%起こると考えられます。後者は症状を発生する患者さんが10−20%あります。もちろん胆嚢を切除すれば、体の中の変化は症状の有無にかかわらず必ず起きます。この変化が体に悪影響を起こすかどうかは議論が分かれますが、悪影響を指摘する医者や研究者は後を絶ちません。

胆嚢欠損症状としては、古くより下痢、腹痛、逆流性胃炎・食道炎、のほか大腸癌の合併、場合によっては胆管癌のリスクの上昇を指摘するものもいます。

生理的には、肝胆汁は1日に5001000ml生成されます。そのほとんどは胆嚢に入り粘膜によって510倍に濃縮されます。食事によって胆嚢収縮と乳頭部の弛緩が起こり濃厚な胆汁が十二指腸へ排泄され食物と混じり合います。胆嚢欠損しますと、持続的に胆汁は十二指腸に流出するため、これ自体の刺激や二次胆汁酸の増加、腸肝循環の増加によって、下痢や、腹痛が惹起される、あるいは胆汁の胃への逆流が起こりやすくなることがあります。

胆嚢摘出術後に出現・増悪した症状についてアンケート調査した報告ですが、607例の検討で下痢が19%、腹痛が5%に見られています。

胆摘後に大腸癌が発生しやすくなるのではといいう指摘は古くよりありますが、エヴィデンスレベルが十分でありませんでした。しかし依然として指摘は絶えることがなく、2009年の前向きコホート研究では、ポリープががん化することが有意に多いことが報告されています。

現在胆摘後に体調不良やご心配の方は当院外科胆石外来にお越し下さい。