『十二夜』
Twelfth Night

主な登場人物

オーシーノイリリア公爵、オリヴィアに想いを寄せているOrsinoセバスチャンヴァイオラの兄Sebastian
アントニオ船長、セバスチャンの友人Antonioサー・トービー・ベルチオリヴィアの伯父Sir Toby Belch
サー・アンドルー・エイギューチークトービーの遊び仲間、オリヴィアに惚れているSir Andrew Aguecheekマルヴォリオオリヴィアの執事Malvolio
フェステ道化Festeオリヴィア富裕な女伯爵、セザーリオに恋をするOlivia
ヴァイオラセバスチャンの妹、男装してセザーリオと名乗るViolaマライアオリヴィアの侍女Maria


あらすじ

ここイリリアでは公爵の恋が人々の噂になっていた。その公爵の名はオーシーノ。お目当ての女性はオリヴィア姫。だが、どうしたわけか姫は公爵の求愛を拒みつづけていた−−亡くなった兄の喪に服しているという理由で。公爵はそれでもあきらめず、歌や音楽で片恋の切なさを慰めていた。

その頃、イリリアの岸辺にひとりの女性が、船の難破で打ち上げられていた。その女性、ヴァイオラには瓜二つの双子の兄がおり、いっしょに船旅の途中だった。兄の行方を案じつつ、ヴァイオラは身を守るため男装してオーシーノに仕えることにする。

オーシーノの宮廷は新しく来たセザーリオ(実は、ヴァイオラ)という小姓の噂で持ち切りだ。公爵がこの男の子をすっかり気に入り、いつもそばに置いておく可愛がりようなのだ。こんなに可愛いセザーリオを使いにやれば、かたくななオリヴィア姫のこころもなごむだろうと、公爵は恋のメッセンジャーにセザーリオを使うことを思いつく。公爵に一目惚れしていたヴァイオラにとって、この仕事はたとえようもなく辛いものである。そればかりかもっととんでもないことになってしまったのである。

オーシーノのねらいは的中した。というより的中しすぎた。興味本位でセザーリオを迎え入れたオリヴィア姫は、その日からセザーリオの恋のとりこになってしまい、セザーリオに猛然アタックを開始した。さあこれで、オーシーノはオリヴィアに、オリヴィアはセザーリオに、セザーリオ(つまり、ヴァイオラ)はオーシーノに恋するという完璧な恋の三角関係ができあがったことになる。

さて、オリヴィア姫の屋敷では、道化フェステ、姫の叔父にあたるトービー、その遊び仲間のアンドルーの三人が毎日飲んだくれて、馬鹿騒ぎを繰り返している。今夜もすっかりできあがり、いい気分で放歌高唱の真っ最中だ。それを聞きとがめたのが堅物の執事のマルヴォリオだった。日頃から彼らの羽目はずしに業をにやしていたマルヴォリオは、この時とばかり、言いたい放題のお説教。当然、このままでは納まらない。その仕返しにとトービーと良い仲の侍女のマライアが考えた計略があった。

それは、マルヴォリオがオリヴィア姫にひそかな想いを寄せているのに目をつけ、姫の筆跡をまねた手紙に、マルヴォリオを慕っていると思わせるような内容を書き、マルヴォリオが来そうな場所に落としておくのだ。

マルヴォリオはにせの手紙をオリヴィア姫のものと思い込み、「もし私の愛を受け入れるなら、黄色の靴下と十字の靴下留めを身につけ、私の前で微笑んで」という指示通りのことをオリヴィア本人の前でやったものだから、トービーたちは大喜びだ。しかし、このため、マルヴォリオは気違い扱いされ、真暗な部屋に監禁される羽目になる。

さて、難破したと思っていたヴァイオラの兄、セバスチャンは別な船の船長アントーニオに助けられ、ここイリリアに船長ともどもやって来ていた。アントーニオはセバスチャンのことが気にかかりずっとそばにいて世話したいと思っていたが、オーシーノと一戦交えたことがあったため一目に付かぬよう行動していた。

いろいろな男性に好かれるオリヴィア姫だが、トービーの遊び仲間のアンドルーも姫にこころを奪われているひとりだった。最近、公爵のところの小姓に姫が熱をあげていることに気づいたアンドルーは、トービーからそそのかされてセザーリオに決闘を申し込む。セザーリオは仕方なく決闘を受けるが、その最中に、アントーニオが割って入る。セザーリオをセバスチャンと間違えたのだ。そこに警備兵がやってきて、アントーニオを捕えていく。去り際に彼が残したことばから、ヴァイオラは兄セバスチャンが生きていることを知る。

一方、イリリアの珍しい風物を見て歩いていたセバスチャンはひょんなことからオリヴィア姫と出会い、結婚の約束をしてしまう。それまで拒まれつづけていた姫は夢かと思うが、セバスチャンも美しい姫に会ったその場で求婚されて夢かと疑う。オリヴィアは相手の気の変わらぬうちにと、早速式を挙げる。

その直後、オーシーノはオリヴィアと偶然出会い、求愛するが姫からはいつも通りの冷たい返事が返って来る。そればかりか姫は小姓のセザーリオを夫と呼ぶのだ。裏切られたオーシーノは激怒するが、身に覚えのないヴァイオラは否定する。すると、今度はオリヴィアが裏切られたと叫び立てる。大混乱のさなかにセバスチャンが現れ、一同はびっくり仰天する。ヴァイオラとセバスチャンは互いの素性を確かめ合い、別れ別れになっていた兄妹と知る。女のヴァイオラを男と思って求愛しつづけたオリヴィア姫は恥じ入るが、オーシーノはセザーリオが女だと知って求婚する。こうして、二組のカップルがめでたく誕生した喜びに沸いているところに、マルヴォリオが現れ、「復讐してやる」と捨て台詞を残して立ち去る。

幸せな一団が去った後、ひとり残った道化のフェステがわびしそうに歌を歌って幕を閉じる。


学生作成のあらすじ


みどころ

『十二夜』はシェイクスピア喜劇の(いや、世界中の喜劇の)最高傑作である。恋の三角関係を中心に、みどころはたくさんある。

第一は、何といっても男装のヴァイオラが、オーシーノへの想いを架空の姉の物語に託して語る2幕4場だろう。『ヴェローナの二紳士』にも同様な劇的趣向があるが、こちらの方が断然勝っている。目の前にいるオーシーノに愛を告白したくてもできないで、他人ごとのようにして自分の恋心を語るヴァイオラに観客は引き込まれてしまう。少し前になるが、『女たちの十二夜』という舞台を見た。この場面も日本で上演された『十二夜』の中で良くできていると思ったが、配役を変えての再演は悲惨だった。ローヤル・シェイクスピアの『十二夜』の日本公演は大成功で、観劇の機会を持てた私は幸運だった。2幕4場がジョン・バートンの演出でケレン味なくすみずみまで神経の行き届いた最高級の舞台だった。バートンのワークショップPlaying Shakespeareでこの2幕4場全体がその時の配役と同じリチャード・パスコとジュディ・デンチの二人で演じられているので、ぜひ見て欲しい。シェイクスピアの英語の美しさを堪能できる。

第二のみどころは、マルヴォリオだましだろう。手前味噌になるが大学院時代にこの劇を上演した時のマルヴォリオほどいやらしく、かつ、おもしろおかしい、憎めないマルヴォリオにそれ以後お目にかかったことがない。大抵、ただまじめなだけのマルヴォリオで退屈する。確かに脚本で読む限りそう見えるが、舞台での働きはまた別ものであり、そういう生きた舞台上の役を作り出せる役者や演出家が少ないのはさみしい。

道化フェステも見逃せない存在だ。鬼才トレヴァー・ナンのメガホンになる『十二夜』が映画化されているが、ベン・キングズリーが深い憂愁をたたえたシェイクスピア道化の味を出している。Playing Shakespeareで見る限りそれほどの役者には思えなかったのだが、稽古場とは違うということか。脱帽の限りである。ちなみにベンは映画『ガンジー』で主役を演じている。

この劇は悲哀と滑稽、理知と不条理、詩情と皮肉のバランスがよく取れており、様々な楽しみ方が可能な作品である。