昭和21年度 密航朝鮮人取締について 1



ベッキー「作者が、アジア歴史資料センターをさまよっていたら、またおもしろい史料を見つけたので紹介するぞ。上原、後は任せた」

都「へ?私?」

ベッキー「『斜め上の雲』本編じゃお前だけ出番がないからな。資料集はお前に任せることにしたんだ」

都「そりゃご丁寧にどうも!で、生徒役は誰がするの?」

ベッキー「心配するな。きちんと招集してある、おーい、入ってこーい」

ミカエル メソウサ ヤンキー「はーい」

都「……帰る」

ベッキー「冗談だよ。ちゃんとしたのを呼んであるって。入ってこーい」

鈴音「ほーい」

響「はーい」

神楽「うぃーっす」

都「ま、これなら大丈夫ね」

ベッキー「さ、今回の史料は『昭和21年度密航朝鮮人取締に要する経費追加予算要求書(レファレンスコードA05020306500)』だ。後はよろしく」

都「じゃ、始めよっか。これは昭和21年4月21日付けの行政書類ね。全4枚組だけど、1枚目はこれ」



都「ただし、この右ページは、別史料の末尾部分であって、表題の史料ではないのよ

神楽「別のものなのか?」

都「ええ。作者も指摘を受けるまで気づかなかったけど、別物なのよ。ここは『昭和21年度第2予備金支出要求書朝鮮人送還費(レファレンスコードA05020306400)』の末尾よ」

鈴音「どーしてまぎれこんでいるのかなぁ?」

響「単に、見開きページにあったものだから、アジ歴の作成時に画像を取り込むさいにそのまま取り込まれただけでしょうね」

都「アジ歴の他の資料でもそういう例があるのに、気づかなかった作者が馬鹿なのよね。そういうわけで、読者に対して、当該記述が本史料に含まれるものであるというイメージを与えて迷惑をかけたことをお詫びし、起こしたテキストと解説パートをここの本文から削除するわ

神楽「故意であってもなかっても、迷惑をかけたのは事実だしな」

響「そうね。その点については批判されるのが当然だわ。資料改竄とされても文句を言えない立場よ」

鈴音「当該記述に対して批判検討、考察などを行なってくださった方々には、この場を使ってお礼を申し上げます」

都「作者もいい勉強になったと言ってむしろ歓迎しているわ。そうそう『昭和21年度第2予備金支出要求書朝鮮人送還費』については
こっちでテキストに起こしてあらためて紹介したわ。
 じゃ、本文に行くわね。左ページの予算内訳だけど、旧字は新字に、数字はアラビア数字に改めたわ」


昭和21年度 密航朝鮮人取締に要する追加経費予算要求書
  金額 備考
臨時部     算出内訳
 別紙ノ通リ
         
一般費     1,832,880  
  臨時諸要務費   572,880  
    諸給与 15,780  
    事務費 497,100  
    接待費 60,000  
  臨時諸補助金   1,260,000  
    地方警察費
特別補助
1,260,000  

神楽「数字ばっかりで頭が痛いな」

都「悪いけど我慢して。ちゃんと全部紹介しないといけないのよ。変なトリミングをしたように思われたくないしね。それに、こういった予算内訳から思わぬ発見もあったりするものなの。さ、次は2枚目よ」


都「右ページは、追加予算計上の理由なんだけど、かなり重要なところよ」

事由 最近朝鮮人にして密航し北九州及中国西部に上陸する者漸次増加し本年4月中に於て其の総数約1,000名に達し益々増加の傾向にあるばかりでなく密輸出入者も亦漸増しつゝあるを以て聯合軍の指示に従ひ関係県に於ては之が逮捕護送送還を行ひつゝあり
仍て此の経費を必要とする

響「あれ?最近、朝鮮人の日本への密航が増加している、って最初に書いてあるけど、これって戦後の話よね?」

鈴音「大東亜戦争が終わったのは前年の8月のはずなのに、どーして密航してくるのかなぁ?」

神楽「たしか、日本在住の朝鮮人ってのは、戦前戦中に日本にやってきたんじゃなかったっけ?」

都「ええ、戦前戦中の渡航、密航や徴用などでやってきたのは事実よ。だけど、こういう指令文書がある以上、戦後にも密航はあったということね」

神楽「だけど、どうして植民地支配とやらから解放された朝鮮半島から焼け野原の日本に来るんだ?半島は戦災の影響もなく無傷だったんだろ?理由がわかんねぇな」

鈴音「えー?無傷の半島よりも焦土の日本のほうがまだよかったんだよー」

響「あんた、なにげにひどいこと言うわね」

都「作者は2つの解釈を用意しているわ。それらをあげる前に、昭和21年4月当時の朝鮮半島の状況について触れておくわ」

朝鮮南部:李承晩、金九ら右派と、呂運亨を中心とした左派、あるいは中間派の間で主導権争いが激化していた。朝鮮共産党が勢力を拡大中。
朝鮮北部:ソ連を後ろ盾とした金日成が、北朝鮮臨時人民委員会の委員長に就任、土地改革令を公布、20ヵ条政綱を発表、その一方で民族運動のリーダー槌嫂△鯑雍悗垢襪覆標⇔肋鍵も着実にすすめていた。

響「北も南も何かと忙しかったわけね」

都「そうね。じゃ、まず好意的な解釈」

 日本の支配から解放されたものの、政局は一向に安定しないばかりか、南北分断の危険性も日に日に増してきており、とても安心して暮らせる状況ではなかった。
 また、北の土地改革令によって土地を接収された人々が南へ脱出しており、その一部が日本に向かったという可能性もある。

鈴音「そんなに簡単に外国に逃げるものなの?」

響「今だってそうでしょ。移民が増加してるじゃない」

韓国で海外への移民が急増

 オーストラリアやニュージーランドなどへ向け、韓国から海外への移民が急増していることが明らかになった。

 野党ハンナラ党の李漢久(イ・ハング)議員が15日に発表した国政監査資料によると、昨年米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど海外への移民者数は2万4391人で、2002年よりも20.7%も増加した。同じ期間の韓国の人口増加率(1.5%)の13倍に達するレベルだ。

 移民者数は2003年には1万9514人で多少減少したが、2004年には2万3866人、2005年には2万4391人と増加傾向を見せている。地域別ではカナダが2002年の6931人から昨年は3898人と44%減少した一方で、オーストラリアは673人から1761人で2.5倍、米国は1万1175人から1万7308人で47.2%、ニュージーランドは847人から1424人で68.1%増加した。

 海外への移民が増加し、韓国内での資産を処分して海外に持ち出す規模も増加している。

チョン・ヘジン記者

朝鮮日報

2006年10月16日付 朝鮮日報


都「確実に言えるのは、外国への『脱出』についてさほど抵抗がないってことなの。次は意地悪な解釈」

 敗戦によって焦土になっていたとはいえ、日本のほうが朝鮮半島よりもずっとましだった。

神楽「って、こんなのでいいのか?!」

都「最初に思ったのがこれだったのよ。仕方ないじゃない」

鈴音「おー、私が正解だー」

    

都「いいえ。この史料だけでは本当のところはわからないわ。断定はできないし、だいたい、作者の用意した解釈が両方とも的外れということもありえるのよ。ここでわかるのは『戦後にも密航はあった』ってことだけ!」

神楽「そりゃまぁそうだけど。他の史料とともに読み込めば生きてくる性質のもんってことだよな」

都「そういうこと」

響「そういえばさ、彼らは簡単に半島を出るけど、行き着いた先で同化しようとはしないわよね。どこに行っても「韓国人」として行動するのよ。
 ほら、こんな事件があったでしょ!」

ロバート・キム事件

−あまりに大きな代償を支払いましたが、後悔されたことはありますか。

「私がしたことを後悔はしません。その時、連邦捜査局(FBI)捜査官に『なぜ韓国のためにそんなことをしたのか』と聞かれたので『韓国と米国がサッカーの試合をすれば私は当然韓国を応援します』と答えました。この事件を経て、更に“濃く”韓国人になりました。書類上は米国人だけれど心は韓国人です」

鈴音「国籍ってヤツに重みを感じないんだね。都合のいいように国籍と民族を使い分けるんだ」

都「ええ、こんなことを言うやつに市民権は必要ないわね。さっさと韓国籍を回復すればいいだけのことよ。
 さて今回の史料のポイントはここでお終い。後はさらっと流すわよ。まず2枚目の左ページの表」

密航朝鮮人取締に要する経費内訳
区分 金額 備考
臨時部  
一般費 1,832,880  
臨時諸要務費 572,880  
諸給与 15,780 本省4,980円
  二級官2回1,960円三級官4回3,020円
内国旅費
 特殊
15,780 1庁1,800円 6庁(鳥取島根山口福岡佐賀長崎)分連絡及密航者護送旅費
事務費 497,100  
庁 費
特 殊
7,500 1庁1,250円 6庁分
通信連絡費
雑 費
特 殊
489,600 1庁81,600円 6庁分
内訳別紙の通り
接待費 60,000 聯合軍関係接待費 1庁
10,000円 6庁分

都「次は3枚目の画像と表」


臨時補助金 1,260,000  
地方警察費
特別補助
1,260,000  
護送捜査
旅 費
324,000 1庁5,400円 6庁分
内訳旅費支給人員月延180人1人1回
50円1庁月額9,000円6月分
捜査警備
補助員手当
216,000 1庁36,000円 6庁分
内訳補助員月30人手当月額200円1庁
月額6,000円6月分
監視員手当 1720,000 監視員計600名1人月200円6月分
内訳別紙の通り

特殊雑費1庁当リ内訳
区分 軍價 数量 月額 所要額(6月分)
船艇及自動車借上費 月 300円 6台 1,800円 10,800円
密航者収容所借上費 月 500  1  500  3,000 
密航者賄費 1日 3 延 3,000人 9,000  54,000 
監視哨舎借上費 月 200 平均 10 2,000  12,000 
其の他雑費     300  18,000 
    13,600  81,600 
備考 監視哨舎ノ各県別配置数ハ別紙ノ通トス

都「最後は4枚目」


監視員 監視哨 配置内訳
県名 監視哨舎数 監視員数 備 考
鳥 取 7 70 (1)監視哨舎は沿岸警察署1署に1を設くるものとす
(2)監視哨員は1哨舎に10名を配置し2交代(1昼夜交代)にて沿岸監視に当るものとす
島 根 9 90
山 口 6 60
福 岡 17 170
佐 賀 3 30
長 崎 18 180
     
60 600

都「最後にもう一回言うけど、この史料から確実にわかることは、『戦後になっても朝鮮人の密航は存在していた』と認識されていたということだけよ」

神楽「恣意的な主張の助けに使うために変な深読みや飛躍した解釈をするな、ってことだろ。私たちでもその程度のことはわかるぜ」

響「そうね。密航ということしか記されていないわけだから、その密航の原因については断言できないわ」

鈴音「なんだか中途半端に終わっちゃったねー。そうだ!朝鮮カルタで遊ぼうよ。『すすり泣いてもまた密入国』、はい!取ったー」

都「こんな終わり方でいいのかしら(嘆息)」

 

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