A Theological Experiment

終末論の謎は深い

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全体への統合


 ヴォルフは次にパネンベルグの終末論を取り上げる。パネンベルグの終末論は、彼の組織神学第3巻の最終章で扱われている。要約するとこんな感じだ。私たちの現在のアイデンティティや人生の意味は、未来のより広い文脈で明らかになる。例えば、「人間万事塞翁が馬」、不幸だと思った出来事も、明日の幸せの種になるかもしれない。同様に、今日の幸せは、明日から始まる不幸の序曲かもしれない。そういう意味で、私たちの人生の意味を総括できるのは、私たちが死んで1つのまとまった過去になったときかもしれない。しかし、死後に概観できる私たちの人生でさえ、なおその全体性において私たちのアイデンティティ・人生の意味を明らかにしてはくれない。私たちの人生が、その全体性において意味を顕示するのは、世界全体が終末に達した時だけである。終末においてだけ、私たちの人生の意味、いやこの宇宙全体の意味が明らかになるはずだ、パネンベルグはいう。

 パネンベルグによれば、この世の終末とは永遠が時間の中に突入する出来事である。これにより時間は永遠化される。死者の人生は、全体として同時的に神の永遠の中に回復される。どういうことかというと、地上の時間は、過去、現在、未来という時間軸に沿って直線的に経過している。しかし神の永遠に於いては、私たちの人生の過去と現在が同時的に存在するようになる。そうして私たちは、人生をその全体性において回復することができるのだ。これがパネンベルグの復活論である(と私は理解している。パネンベルグの組織神学第3巻を手元において要約しているのだが、ヴォルフも言うようにわかりにくいことが多い)。宗教哲学者のヒックは、ティリッヒやパネンベルグの復活論を回復理論(Recapitulation Theory)と呼んだそうだが、ようするに地上で歩んだ人生をもう1度回復し、地上のように通時的にではなく誕生から死までを同時的に経験するということになろうか(間違っていたら、どなたかご指摘下さい)。

 しかも全ての世代の存在者たちの人生が、同時的に永遠において存在するようになるという。こうして神の国が最終的に実現すると、パネンベルグは云う。ヴォルフの批判は、次の点にある。すなわち、@パネンベルグは、罪と時間性を密接に結びつけていること。Aそこから時間性が永遠に飲み込まれることになる。神の国の実現が、究極の喜びと満足の状態であるとするならば、時間性なしで喜びや満足を考えることができるだろうか。変化は時間性を前提とするがからである。終末論における時間性の問題を解決するために、ヴォルフは次にモルトマンの終末論を取り上げる。

 モルトマンは、プロテスタントの神学者においては珍しく「煉獄」の可能性を認めている。つまり私たちの生は死によって終わらず、死後も一定期間煉獄において継続するだろうと考えるのである。モルトマンが、なぜ煉獄を終末論に持ち出す背後には、神義論的な理由がある。例えば、難病を抱えて誕生し数ヶ月しか生命を維持できなかった乳児、中絶された胎児など、地上で最低の生の条件で死なざるを得なった人たちが、煉獄で果たせなかった人間的発展のチャンスが与えられる。あるいは、極悪人が煉獄でもう1度人生をやり直して、罪を清める。あるいは、犯罪の加害者と被害者・被害者の家族が煉獄で和解するというような救済論的意義もある。

 しかし、煉獄にも時間的限界がある。最後の審判が終了したら、神御自身が、被造物の住む場所となり、栄光の神の偏在の中に被造物は浸され、地上的な意味での時間と空間は終わりを迎える。なぜ、時間と空間は終わらねばならないのか。モルトマンによれば、時間と空間は罪の可能性だからだ。救済が最終的になるために、罪の可能性の芽は摘まなければならない。

 モルトマンは、神の国の時間性を2つの概念で表す。1つはアイオーン的永遠。もう1つはアイオーン的時間。アイオーン的永遠においては、過去と未来が同時的に存在する。アイオーン的時間においては、時間は永遠回帰である。ヴォルフは当然モルトマンの矛盾を指摘する。どうやって、同時性と永遠回帰が両立するのか。

 ヴォルフの解決策は、「神の国における時間と空間の廃止」という考え方を捨てることである。モルトマンは、黙示録10:6が時間の終わりを意味し、黙示録の20:11が空間の終わりを示しているとするが、ヴォルフのいうようにその解釈は無理である。ヴォルフは、時間と空間の廃止は被造世界の廃止であり、永遠の生の可能性を被造物から奪うことになるとして、モルトマンに反論する。ヴォルフによれば、被造物が神の国の完成において継続的に生きることができるような終末論的移行を考えなければならない。では、ヴォルフ自身の終末論とはいかなるものか。

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