PLLの原理  

初出 2000.12.18

何じゃと?PLLの原理を聞きたいじゃと?
ふぉっふぉっふぉっ・・・。そうか、そうか。それはよく来た。そこでは少し遠い。もう少しこちらへ来るのじゃ。そうじゃ、そこへ座れ。こら!人にものを聞くのにあぐらをかくやつがあるか。正座をせい、正座を。
PLLというとわしが若い頃習い覚えた知識の中に入っておるでの。始めるとするか。

PLLというのはPhase Lock Loopの略での、高周波発振器の一方式じゃ。
高周波発振器は一般には自励発振器と水晶発振器とがあるのは知っておるかの。知らん?まあ、知らんでもよい。追々説明してやるで。

発振器の原理図

そもそも発振器というのは、増幅回路の出力の一部を入力側に正帰還してやれば簡単に作れるものなのじゃ。実を言うとな、増幅器は発振をせぬように作る方が難しいのじゃ。カラオケでハウリングを起こしたことがあるかの。マイクをスピーカに近づけすぎると「ピィーー」とか「キーン」とかいう音が出るじゃろう?あれも発振の一つじゃ。
カラオケのハウリングは可聴周波数で発振しておる。下手に超音波を発振してしまうとマグマ大使が出てきてしまうぞ。なに?知らん?そうか、そうじゃの。高周波発信器というのは数百kHz以上の周波数で発振しておる。しかし、原理は一緒じゃ。

発振器を作るときには、発振する周波数を決めてやる必要がある。さっきも言うたように、増幅器の出力の一部を正帰還してやれば発振するわけじゃが、その時の発振周波数は、増幅器の共振周波数によって決まるのじゃ。

共振という言葉は知っておるかの。小学校で習うたじゃろうが。音叉の実験じゃよ。思い出さんか?困ったのう。そうじゃのう、糸の先におもりを付けて振り子を作るとしようかの。その振り子を適当に振ってみても振れは大きくならんじゃろ。じゃが、ある周期で振ると振り子は大きく振れるじゃろうが。ブランコでも一緒じゃな。これが共振じゃ。

それでじゃ、高周波発振器の共振周波数をどうやって決めておるかというとの。コイルとコンデンサで作った共振回路で決める方式と、水晶で決める方式があるのじゃ。これが自励発振と水晶発振じゃ。

自励発振器 水晶発振器

水晶というのはあの水晶じゃよ。ほれ石英の結晶体で六角柱の結晶のやつじゃ。
水晶には圧電作用というものがある。水晶に圧力をかけると電気を発生するし、水晶に電圧をかけると水晶の結晶が歪むのじゃ。それで水晶にも共振があるのじゃ。コンニャクがプルプルと震えておるところを想像してみるのじゃ。分かるかの。この水晶の共振を利用したのが水晶発振器じゃ。

自励発振にも水晶発振にも欠点があっての。自励発振安定度が悪いのじゃ。自励発振はコイルとコンデンサの共振回路で発振しておる。その共振周波数は、コイルとコンデンサの値で決まる。

 1/(2πroot(LC))  rootというのはルート、平方根じゃぞ。

という式で決まるのじゃ。問題は、コイルにもコンデンサにも温度特性があることでの、温度が変わると共振周波数が変わるのじゃ。特にコンデンサの温度特性が大きいがの。

水晶発振の方はと言うとの、安定度は自励発振に比べて格段によい。じゃがの、水晶発振は水晶の特性(厚み、結晶の方向など)によって発振周波数が決まってしまい、簡単に周波数を変えることが出来んのじゃ。

自励発振の方は、可変コンデンサ(バリコン)などというものがあっての、周波数を変えることは簡単なのじゃ。じゃから、周波数を変える必要があるものは、昔から自励発振が使われておった。たとえば、テレビやラジオではどうしても周波数可変の発振器が必要じゃったから自励発振器が使われておったのじゃ。今でもラジオでは使われておるようじゃの。

じゃがの、さっきも言うたように自励発振は安定度が悪いでの、周波数の安定度が高うて可変のものが必要な場合には大変な苦労が必要だったのじゃ。自励発振の安定度を上げるために昔からいろんな工夫がされておった。 一方で水晶発振の発振周波数を変える試みもされておったのじゃ。
じゃがの、なかなかにその欠点は解決できなかったのじゃ。

そこで考え出されたのがPLLじゃ。PLLは水晶発振器と自励発振器を組み合わせて作られておる。水晶発振器の安定度と自励発振器の周波数可変を兼ね備えたものなのじゃ。

原理的には数十年前から考え出されておったのじゃが、実際に使えるものが開発されたのは、ICが実用化されてからなのじゃ。わしの記憶では、真空管でPLLを作ろうとした試みもあったようじゃがの、とてものこと実用できるものではなかったようじゃ。
デジタルICが安く手にはいるようになってやっとPLLも実用化の段階に入ったのじゃ。じゃがの、それでも当時の回路は数十個のICを使用した大規模のものだったのじゃ。今ではPLL用のICなどというものがあって一個のICでPLL発振器ができるが、まるで夢のような話じゃ。

どうも年寄りは話が長くなっていかんの。やっとPLLの話に入るぞ。

まずは、PLLのブロック図じゃ。

PLLのブロック図

簡単じゃろう。とんでもないものを想像しておったかの。
原発というのは原子力発電所ではないぞ。原発振器の略じゃ。1/R、1/Nと書いてあるのは周波数分周器じゃ。
P/DはPhase Detectorの略じゃ。Photo Diodeではないぞ。わしが習ったときには位相検波器という名前だったのじゃが今は何と言うのじゃろう。動作から考えると位相比較器の方がよいと思うのじゃが。
VCOVoltage Controlled Oscillatorの略での電圧制御発振器という意味じゃ。

原発の部分が水晶発振器で、VCOが自励発振器じゃ。自励発振器の周波数を水晶発振器の周波数と比較して、水晶発振器の周波数を基準に自励発振器の周波数を制御しようと言うものじゃ。
RとNの値は好きに決められるでの、発振周波数は自在に可変できるのじゃ。それも水晶発振器の安定度を持ったものができるのじゃ。

なに?わからん?困ったやつじゃの。具体的に説明するかの。

PLLの動作説明図

まず、原発の周波数をそうじゃの10MHzとしておこうか、それで100にするぞ。a点の周波数は10MHz÷100で100kHzじゃ。
b点とc点の周波数は今のところわからん。じゃがの、b=c÷Nじゃ。ここまではわかるじゃろ。

ここで、1000にしてみようかの。b=c÷1000で、c=b×1000となるじゃろ。
P/Dではaの周波数とbの周波数を比較しておる。正確には位相の比較じゃが、結果は同じことじゃ。で、aとbの周波数が等しくなるようにVCOに信号を送っておるのじゃ。

VCOと言うのは名前から分かるように電圧が変わると周波数が変わる発振器じゃ。つまり、P/DはVCOに制御信号として電圧の変化を送っておる。
とにかく、P/DとVCOでa点とb点の周波数が同じになるようにしておるのじゃ。つまり、b=aじゃ。

そこでさっきの、c=b×1000を思い出すと、c=a×1000、aは100kHzじゃったから、cは100kHz×1000で100MHzとなるわけじゃ。わかったかの。
わからん?代数は中学校で習ろうたじゃろうが。なに?眠っておった?そこまでは責任持てんぞ。

ここでNを1001にしてみようかの。そうすると、cは100.1MHzじゃ。1002では100.2MHz、1003では・・・と、Nを1ずつ変えると100kHzステップで周波数が変化するのじゃ。100kHzというのはa点の周波数じゃな。

つまり、a点の周波数は、可変ステップを決めておるのじゃな。

まとめておくぞ
原発の周波数はpにするぞ。Primaryのpじゃ。

a=p÷R
b=c÷N
a=b

∴ c=N×p/R

RとNを変えてどうなるか自分で考えてみるのじゃ。

どうじゃ、自由自在に周波数が可変できる発振器ができあがろうがの。その上に、できあがった周波数は、水晶発振器と比較したものじゃから、安定度も水晶発振器と同じじゃ。

Phase Lock Loopの意味も分かったじゃろう。Loop回路で位相(Phase)を比較して自励発振の周波数をLockするという意味なのじゃ。

それにしても便利になったものじゃのう。わしの若い頃には考えられんかったことじゃ。時代の流れというものかのう。

次は何の話をしてやろうかのう。これ、どうした?帰り支度など始めおって。まだ話があるぞ。なに?年寄りの話は長くていやだ?面白い話だっだじゃろうが。
面白くないし全然分からん?それはお主の頭が悪いせいじゃ。あっ痛っ。何をする、つむりをぶちおって。痛いではないか。
これ帰るでない。まだ話があると言うておるに。あたたた・・・。持病の神経痛が・・・。これ、病気の年寄りを放って帰る気か。年寄りは大切にせぬか。
これ、待てと言うに。これっ、これっ・・・

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