ASUS P3B-Fの不思議

初出 2000.01.25
追加 2000.02.07

実はひょんなことからASUSのP3B-Fを手に入れてしまいました。このマザーは「ダイ温度に対応したモニタチップとマザー」の項でも説明しているように、標準でダイ温度測定に対応しているマザーの一つです。標準でダイ温度測定に対応している他社のマザーが、モニタチップにW83782Dを使用している中で、ASUSはただ一社、自社ブランドのモニタチップAS99127Fを使用しています。

実は、このマザーにはおかしな噂が立っていました。このマザーでS370-D、S370-L以外のPPGA-SLOT1変換カードを使用すると、CPU温度がおかしくなるというのです。
偶然にもこのマザーが私の手に入ったということは、「おまえが試してみろ」という神の思し召しに違いありません(ちなみに私は不可知論者だったりします。)。とにかく、BX6 Rev2を取り外して、P3B-Fと入れ替えました。そういえば、この一年くらいの間に何回マザーの入れ替えをしたんだろうか。

P3B-Fは3つの温度センサが使用可能になっています。CPU温度(ダイ温度)とマザー温度と後付のサーミスタ温度です。
後付のサーミスタは、CPUスロットの左下横にあるJTPWRというコネクタに接続するようになっています。説明書には、「電源装置温度センサーコネクター」となっていて、「電源装置に温度監視機能が搭載されている場合には、温度センサーケーブルをこのコネクタに接続してください。」となっていますが、普通の10kΩのサーミスタを接続すれば、温度センサとして使用できます。
私は、BX6 Rev2に付属していたサーミスタを接続しました。

まずは、いつも使用しているMBM4が使用可能かどうか試してみました。MBM4はAS99127Fに対応しているはずです。

MBM4画像

MBM4の設定のGeneral SystemでAuto Detect Chipsにチェックを入れると、Voltages & Fanの所にAsus AS99127Fチップが認識されます。さらに、Sensor1〜3にAsus1〜3が選択できるようになりました。
確認したところ、Asus1がマザー温度、Asus2がCPU温度、Asus3が後付サーミスタの温度であるとわかりました。正常に動作しているようです。

P3B-FにはASUS Probeというモニタソフトが付属してきます。こんな感じです。

pc plobe 画像

さらに、こんなふうに温度変化をグラフで表示することもできます。このグラフ表示は便利です。
問題は、温度表示がCPUとマザー温度の2つしかないことで、後付サーミスタの温度が表示できません。BIOSでは見られたんですが。MBMでも見られるんですが。

pc plobe 温度変化グラフ

とりあえず、このグラフ表示は便利なので、後の測定はASUS Probeを使用することにします。標準でついてくるモニタソフトですので、これでおかしな温度がでたら、間違いなくASUSの責任です。

以下の表でのグラフ部分は、ASUS Probeの画像を切り取ったものです。

さあて、実験開始です。動作条件は次のとおり。

下の表の1から14
 CPU  PPGA Celeron300A 99年26週MALAY産
 PPGA-SLOT1変換カード MSI MS6905D
 FSB 112MHz 動作周波数 504MHz
下の表の15、16
 CPU  PPGA Celeron300A 99年26週MALAY産
 PPGA-SLOT1変換カード ASUS S370-D
 FSB 112MHz 動作周波数 504MHz
下の表の17、18
 CPU  SEPP Celeron300A 98年44週COSTA RICA製
 FSB 100MHz 動作周波数 450MHz
温度の測定インターバルは、1秒間隔にしました。

1

2

3

P3B-Fの温度変化 1 P3B-Fの温度変化 2 P3B-Fの温度変化 3
立ち上げ直後の温度状態です。最初の方に極端な高温が見られますが、まあ正常です。 heatを走らせてみました。最初の方にやっぱり急な温度変化があるものの、全体としてはあまり温度が上がらない。おかしいなあ。 heat終了。安静時です。正常、正常。

4

5

6

P3B-Fの温度変化 4 P3B-Fの温度変化 5 画像なし。
すみません。うまく画像がとれませんでした。
super piを走らせてみました。
なんじゃ、これは。どうしてこんなに温度が激しく上下するの。
super pi終了。安静状態。
正常に戻った。
HDBENCH開始。途中、VIDEOのテキストの時に高温警告(アラームは、85度に設定していた。)。何度やっても同じ。どうやらテキストが怪しい。

7

8

9

P3B-Fの温度変化 7 P3B-Fの温度変化 8 P3B-Fの温度変化 9
そこで、巨大なhtmlファイルを作成し、高速で上下にスクロールしてみました。
こういうときにはインテリマウスが便利。温度はやっぱりおかしい。
つづいて、巨大なhtmlファイルを一太郎に読み込んで、高速で上下にスクロールしてみました。
温度警告の連続。ああ、面白い。
もう一度heatを走らせてみました。
さっきと違って極端な高温に。heatもおかしくなった。

10

11

12

P3B-Fの温度変化 10 P3B-Fの温度変化 11 P3B-Fの温度変化 12
heat終了後の安静状態。
安静状態では一見正常。
ここで再起動。
heat実行。一応正常。
super pi実行。やっぱりおかしい。

13

14

15

P3B-Fの温度変化 13 P3B-Fの温度変化 14 P3B-Fの温度変化 15
heatをもう一度実行。一見正常。 HDBENCHのVIDEOを実行後、もう一度heat実行。
異常高温に。もう訳がわからん。
ゲタをASUS S370-Dに交換。再起動。
super pi実行。温度の上下が多すぎる気がするものの、上の12番を見た後では全く正常に思える状態。

16

17

18

P3B-Fの温度変化 16 P3B-Fの温度変化 17 P3B-Fの温度変化 18
HDBENCHのVIDEOを実行しても温度警告音は鳴らない。
これはその後のheatの画像。全く正常。
SEPP Celeron 300Aでheat実行。
完全に正常。
SEPP Celeron 300Aでsuper pi実行。
完全に正常。

どうやら冒頭に書いた噂は本当だったようです。PPGA-SLOT1変換ゲタがS370-Dの時は温度は正常なのに、MS6905Dでは異常になってしまいます。その異常さは生半可なものではありません。

はてさて、一体どうなっているんでしょう。ゲタを換えただけでどうしてこんな変化があるのでしょう。そもそも、MS6905DとS370-Dにどんな違いがあるというのでしょう。B14、B15ピンへの接続を比べてみましたが、どちらもPPGAのAL29ピンがB15へ、AL31ピンがB14へ接続されているだけです。どちらも間に妙な回路は入っていません。MS6905Dは配線がスルーホールを通って一度表面へいって、また裏面にかえってくるという面倒なことをしていますが、基本的には、単純に接続されているだけです。

今のところ、なにが原因なのかさっぱりわかりません。SEPP Celeron 300Aでの結果を見れば、おかしいのはMS6905Dの方だということになります。しかし、このMS6905DもBX6 Rev2では正常に動作していたのです。
SEPP Celeron & S370-DとMS6905Dの間には何か違いがあるはずです。MS6905Dでは配線されていない端子の信号をP3B-Fでは使用しているとも考えられます。

とりあえず、Celeronのデータシートと、S370-DとMS6905Dの端子周りの配線をじっくりと比べてみることにしましょう。いずれそのうちに。
現在の所、私に言えることは、P3B-FではS370-DかS370-L以外のゲタを使わない方がいいですということだけです。えっ?「FC-PGA Pentium!!!とSL-02A++の組み合わせは」ですか?そんなものは自分で確認してください。私はPentium!!!を買うお金がないのです。

ところで、どなたかこの原因をすでに解明した方はいませんか。私が面倒な配線チェックなどをする前に、回答を教えてくれませんか。

誰かぁ〜・・・。

と叫んだ所で、誰が答えてくれるわけでもなし(数人の方からヒントをいただきました。感謝。m(__)m)、もう少し原因調査を進めることにしました。
MS6905Dを使用した場合の測定温度の異常は、W83782Dでノイズの影響を受けている状態にそっくりです。まず疑うべきは、ノイズ対策がどんなふうになっているかです。
とりあえず第1段階の確認事項は、以下の通りです。

 1 S370-Dで使用されていて、MS6905Dで使用されていない端子はあるか。
 2 その端子はどういう役割を持った端子なのか。
 3 マザー上にThermal Diodeと並列のコンデンサは存在するか。

まず1です。
S370-DとMS6905Dの端子部分を見比べてみた結果、S370-Dで使用されていて、MS6905Dで使用されていない端子が3つ見つかりました。B41B61B81です。

そして2です。
これらの端子について、Celeronのデータシートを見てみると、「EMI」となっています。(このほかに、B1とB100もEMIなのですが、この2つの端子は使用されていません。)
さらにEMIの説明を見てみると、このピンは「S.E.P.P only」となっていて、「EMIピンは、マザーボードまたはシャシー(ケース)のグラウンド(GND)に0Ωの抵抗を通して接続せよ。この0Ωの抵抗は、CPUコネクタのできる限り近くにせよ。シャシーのグラウンドへの配線は、できる限り短く、低いインピーダンスにせよ。」などと書かれています。どうやら、「EMI」というのは「electromagnetic interference」つまり、電磁波障害のことのようです。

やはり原因はノイズのようです。W83782D/W83783SやMAX1617では、ノイズ対策としてThermal Diodeと並列にコンデンサが取り付けられています。私の予想では、「P3B-Fではこのコンデンサが省略されていて、その代わりにPPGA変換ゲタのEMI端子でノイズ対策をしている」ということになります。

そこで確認事項の3です。
マザー上にThermal Diodeと並列のコンデンサは・・・ある。
ものの見事に予想が外れてしまいました。まあ、人生というものはそうしたものです。確認したついでに温度測定部分の回路を調べてみました。参考までに。こんな具合です。AS99127Fでは67ピンから70ピンを温度測定に使用しているようです。基本的には、W83782Dの回路と違うところはありません。

AS99127F 回路図

ますます訳が分からなくなってきましたが、あきらめずに第2段階の確認をします。

 4 PPGA変換ゲタ上でB15/AL29番ピンがGNDに接続されているか。
 5 GNDに接続されていない場合、変換ゲタのB15/AL29番ピンをGNDに接続してみる。
 6 MS6905DにThermal Diodeと並列のコンデンサを取り付けるとどうなるか。

4を確認してみましたが、S370-D、MS6905DのどちらもB15/AL29ピンはゲタ上でGNDには接続されていません。SEPPやSECC、SECC2でもGNDには接続されていないことを考えると、ゲタでGNDに接続されていないのは当然のことです。
でもこの端子は、結局マザー上でGNDに接続されていますから、ゲタ上で接続してもいいはずです。この端子をゲタ上でGNDに接続することで、ノイズの影響が低減することも考えられます。

そこで、5です。AL29ピン(THRMDN)をその斜隣にあるAM30ピン(VSS)とショートさせてみました。AM30ピンはゲタでGNDに接続されていることを確認してあります。
CPUをゲタに取り付けて、ゲタをマザーに差し込んで、起動。とりあえずコア電圧2.1V、動作周波数558MHz。室温は15度。そして温度モニタ起動、筐体内温度は17度、CPU温度は...あれぇ9度ぉ?いくらRAINが働いているからって室温より低いなんてありかい?RAINを切ると...20度か。heatを走らせると、26度。どうやら、5度くらい低めに出ているようです。
この状態で、SUPER PIやHDBENCHのVIDEOを実行しても異常な高温にはならりません。ちょうどSEPP300Aを使用したときのようで一見正常です。

AL29ピンをGNDに接続することで、異常な高温になる現象はなくなりました。でも少し低めの温度表示になってしまったのではいけません。この方法は失敗のようです。でも不思議だなぁ。マザー側でGNDに接続されている端子をゲタ側でもGNDに接続しただけなのに。

あきらめきれないのですが、しかたありません。6へ移ります。
AL29ピンとAM30ピンの間のショート線を取り除いて、そのあたりにあった3300PFのコンデンサをAL29ピンとAL31ピンに取り付けました。
CPUをゲタに取り付けて、ゲタをマザーに差し込んで、起動。とりあえずコア電圧2.1V、動作周波数558MHz。室温は15度。そして温度モニタ起動、筐体内温度は17度、CPU温度は...10度。また室温より低いやんか。heatを走らせると、28度。さっきとほとんど変わりません。やっぱり5度くらい低めに出ているようです。
この状態で、SUPER PIやHDBENCHのVIDEOを実行しても異常な高温にはなりません。が、低めの温度表示になるのではいけません。
マザー側にコンデンサがあるのに、それに加えてコンデンサを取り付けたのがいけなかったのでしょうか。とりあえず、取り付けたコンデンサを2200PFに交換。やっぱり同じ。1000PFに交換。同じ。手持ちのコンデンサでこれより容量の小さい物がないので、終了。

ここまでやったところで、封印解除!のValkyrieさんから連絡をいただきました。P3B-FでSL-02A++とMS6905DMaster、Celeronと河童での動作確認と、B41、B61、B81の配線の有無を確認していただきました。

 

Celeron

河童

B41、B61、B81の配線

SL-02A++

正常

異常

あり

MS6905DMaster

正常

正常

なし

だそうです。どうやら私が疑っていたB41、B61、B81(EMI端子)が関係していないようなのです。その上、SL02A++ではCeleronが正常、河童は異常になるそうです。

もう私ゃいい。どうでもいい。このマザー嫌い。

半ばやけくそですが、最後に一つだけ確認して終わりにすることにします。その結果がおかしくてもこれ以上の手出しはしません。あきらめます。

 7 マザー上のコンデンサ (上の回路図のC55)を3300PFのものに交換してみよう。

マザー上のコンデンサ(C55)はどれくらいの容量か不明です。通常チップコンデンサには容量の表示がないのです。抵抗と違ってテスターで測るわけにもいきません。もしこのコンデンサが、ノイズ防止に十分な容量でなかったとしたら...。あり得ることです。そこで、容量のわかっているコンデンサと交換してみることにします。

それでは最後の7です。マザー上でThermal Diodeと並列に接続されているコンデンサC55を取り除いて、3300PFのコンデンサと取り替えました。
起動。とりあえずコア電圧2.1V、動作周波数558MHz。室温は14度。そして温度モニタ起動、筐体内温度は16度、CPU温度はRAIN使用で14度。よしよし。
それではSUPER PI実行。温度は...異常な変動をする。HD BENCHのVIDEOは...おかしい。
どうやらコンデンサを取り替える前と何も変わっていないようです。この方法は全く効果がありませんでした。

以上が私のP3B-Fを相手にした悪戦苦闘の記録です。
一見効果があったように見えたのは、ゲタのAL29のGNDへの接続と、 AL29-AL31の間へのコンデンサの取り付けでした。
しかし、この方法も、温度が5度程度低く表示されてしまうというとんでもない欠点を持っています。もちろん、「温度なんか相対表示でいいや。絶対表示なんか必要ない。どうせもともとThermal Diodeには誤差があるんだから。」という方には、異常な高温と、ベンチソフト実行時の温度の乱高下がなくなるだけでも意味があるかもしれません。
MBMでは「温度補償値(Compensations)」の設定ができますから、そこに5度くらいの補正値を設定しておけばいいかもしれません。

でも、繊細で几帳面な人間(私がそうだというのではなく、ここをお読みのほとんどの方がそうだと思うのです。)には耐え難いことでしょうねぇ。

このままで終わっても何か中途半端なので、次は手に入る限りのゲタを使った実験をしました。

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