ダイオードの理論4 ダイオードの温度特性

初出 2001.08.04

追記 2003.04.03

おお、お主か。待っておったぞ。

この前は大変じゃったぞ。お主はさっさと逃げ帰りおったが、あの後割れた皿を片付けて部屋の掃除をするのに夜中までかかってしもうたわい。もう二度と婆さんには酒を飲ませんようにしたぞ。

今日は酒は持ってきておらんじゃろうな?持ってきてない?よしよし。 で、何を持ってきたのじゃ?何も持ってきておらんじゃと?まったく融通の利かぬやつじゃのぉ。酒でなくとも何か持ってくるものはあろうが。

何じゃ婆さん?こちらから渡すものがある?こんなやつに何を渡すのじゃ?こやつはわしに物を聴きにきておるのじゃぞ。何じゃと、いつもお土産を頂いているし、この間のおわびもあるのでじゃと?馬鹿者、この間こやつはさっさと逃げおったわ。
で、何を渡そうというのじゃ?スダチじゃと?この前届いたやつか?一箱届いたがこんなに使い切れんので持って帰ってもらうじゃと?余り物か、まあよいわ。
注 スダチ:徳島名産、酢橘、酢断とも書く。小型の柑橘類。ゆずに似ているがゆずよりは小型で味もよい。絞り汁を柑橘酢として使う。焼き魚などには最高である。
さて、この間の続きじゃがの。図書館へ行って調べてきたぞ。何?図書館の近くでわしを見かけたじゃと?見かけたならなぜ声を掛けん?何じゃと、彼女とデートの途中だったじゃと?彼女に恥ずかしいから小汚いじいさんに声を掛けるのはやめたじゃとぉ!!
こっ小汚いとは何じゃ、小汚いとは!!わしのファッションがお主らごときにわかってたまるか。失礼な奴じゃ。

ぶつくさ言わずとさっさと本題に入れじゃと?お主本当にずうずうしくなってきてはおらぬか?

まぁ、時間がもったいないじゃによって、話してやるとしようかの。

まずは前回の最後に出てきたダイオードの電圧電流特性式からじゃ。
pn接合の電圧−電流特性式 ・・・ 3.25
この式の中で問題になるのは Is じゃ。調べてみて分かったことじゃが Is は温度に依存しておったのじゃ。気が付けばあたりまえのことではあるがの。

前回順バイアスと逆バイアスのところで Is のことを話したじゃろう?
こういう風に言うたはずじゃ。
p型側をマイナス、n型側をプラスにした場合には結局のところ、p→n電流は減少し、n→p電流が流れることになるぞ。じゃが、この電流はの、n型領域で熱的に価電子帯に励起される正孔とp型領域で熱的に伝導帯に励起される電子に頼っておる。これらの正孔と電子は温度によって励起される数が決まり、PN接合に加えられる電圧には依存しておらん。熱的に励起される正孔と電子の数は小数じゃからこの時に流れる電流も微少なものなのじゃ。これを逆方向飽和電流 Is と呼ぶのじゃ。
つまり、Is は熱的に励起される電子と正孔の密度に比例するのじゃ。
さて、ずいぶん昔になってしもうだが、前前回、半導体のバンド構造の話をしたときにこう言うたじゃろう?
このバンドギャップを飛び越える電子の数は、熱力学の法則に従っておって、
-Eg/kT ・・・ 2.2
というボルツマン因子程度の割合で伝導帯に電子が励起されるのじゃ。

これは電子の話じゃが、正孔も励起される割合は同じじゃ。
じゃによって、逆バイアスをかけたときにダイオードに流れる電流(つまりはIs じゃぞ)は2.2式に比例するのじゃ。比例定数をAとしてIs を次のように表すことができるのじゃ。
逆方向飽和電流 ・・・ 4.01
4.01式を上の3.25式に代入するぞ。
電圧−電流特性変形1・・・ 4.02
qv/kTが十分に大きければ4.02式の最後の−1は無視をすることができるぞ。
電圧−電流特性変形2・・・ 4.03
最後に4.03式を i を一定にして v について解けばよいわけじゃ。
両辺の自然対数をとって式を変形してみるぞ。
ダイオードの温度特性1・・・ 4.04
ここで、Vg=Eg/q じゃ。Eg がバンドギャップエネルギーと呼ばれておるのに対して、Vg はバンドギャップ電圧と呼ばれておる。

ここで、B=k/q・ln(A/i)とおくぞ。i が一定であれば、k、q、Aは定数じゃから、Bは一定になるぞ。
ダイオードの温度特性2・・・ 4.05
おぬしの欲しかったのはこの式じゃろう?−Bを比例定数としてダイオードの両端電圧は温度に比例するのじゃ。比例定数がマイナスじゃから、温度が上がると電圧が下がることになるぞ。比例定数Bは動作電流 i に依存しておって i が小さくなるとBは大きくなるわけじゃ。
絶対零度(T=0)の時に v はVg に等しくなるのじゃ。

どうじゃ、今度こそ大団円であろうが。みごとにダイオードの温度特性式を導いてやったぞ。これで文句はないじゃろう。それにしても、図書館で技術図書を調べるというのは時間がかかったぞ。これだけのことを調べるのに半日もかかってしもうたわい。

何じゃ?まだあるのか?シリコンダイオードではVg とBはどれくらいになるのかじゃと?
知らん。ここから先は自分で調べい。彼女とデートなどに時間をつぶしてないで、たまには図書館にでも行ってみい。わしはもうこれ以上はごめんじゃ。

スダチを持ってさっさと帰れ。こらっ!ここまで人に物を教わっておきながら礼の一つも言わずに帰る気か?何とか言わんか?これっこれっ・・・
実はこのページを作るにあたって、大きな疑問にぶつかってしまいました。残念ながら、その疑問は解決できず、やむを得ず上の説明ではごまかしてしまっています。

Is についてです。上の説明ではIs を4.01式だと説明していますが、3.24式によれば、Is はni2に比例します。
さらに、ni2は2.22式にあるようにCT3exp(−Eg/kT)に比例するのです。
ここでT3が出てくるために、上の説明がどうしてもおかしく思えてしまうのです。もしかするとここまでの私の説明がどこか大きく間違っているように思えてなりません。(小さな間違いはたくさんあると思いますが、ご容赦ください。)

どなたか、この私の疑問の回答をご存知の方ご教示をいただけると幸いです。

2003.4.3 追記
このページをご覧になったある大学の先生からメールをいただきました。
真性キャリア濃度の温度依存性は無視してよいのか?については,無視して良いが正解です.
計算すれば分かりますが室温からあまり違わない温度範囲(300Kに対して80℃ぐらい)ではTの3乗の項はTの指数関数の項に比べて無視できます.エクセルを使えばすぐにわかると思います.
ということだそうです。試しに260Kから340Kの間でTの3乗項とexp項を計算してみると、Tの3乗項が1.76×107から3.93×107と同じオーダの変化であるのに対し、exp項は3.75×10-16から1.60×10-12と10の4乗のオーダの変化をします。

後知恵ですが、両項を微分してみればこれくらいのことはすぐにわかったはずです。イヤお恥ずかしい。

メールを下さったK先生にはあらためてお礼申し上げます。

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