ダイオードの理論1 メンデレーエフの周期律表 

初出 2001.05.05
追記 2001.08.04

誰じゃ?何じゃまたお主か。お主のような年寄りを粗末にするやつに話すことなぞないぞ。
何じゃと?おわびに土産を持ってきた?土産なぞで気を変えるわしではないわ。

で、何を持ってきたのじゃ。タルトじゃと。菓子ではないか。お主、わしが辛党なのを知って持ってきたのか?
これ、しまわんでもよい。持ってきたものは置いていかんか。別に甘いものが嫌いなわけではないぞ。
注 タルト:松山銘菓。餡をカステラで巻いたもの。切ると断面が「の」の字に見える。
婆さんや、タルトが手に入ったでな、茶を入れてくれんか。

で、何を聞きにきたのじゃ?
何?ダイオードの理論について知りたい?
確かお主、ダイオードで温度を測るとかいうページを作ったとか言うておらんかったか?ダイオードのことも知らずにそんなページを作っておったのか?とんでもない奴じゃな。
説明はしてやるが、しかしおぬしの頭で理解できるかのう。まっ、覚悟はしておけ。

婆さんや、茶はまだか?何をしておる?湯飲みを3つも出しおって。何?ひとつは私の分?食い意地がはっておるのぉ。で、もうひとつは?お客様にぃ?こやつなど客ではないわ。茶など出す必要はないぞ。何?もう入れてしもうた?しょうがないのう。ほれ、茶じゃ。お主などに飲ませるにはもったいないいい茶じゃぞ。心して飲め。

さて、始めるとするかの。何?足が痺れるので正座は許してくれ?まったく近頃の若い者はだらしがないのぉ。正座一つろくにできんのか。まぁよい。好きにしておれ。こら!誰が寝転がれと言うたか!!

どこから始めるかの。そうじゃの、まずは化学の話からするとしようかの。メンデレーエフの周期律表の話じゃ。
ほう!知っておるのか。これは感心じゃ。お主を見直したぞ。ふむふむ?青いえんどう豆と黄色いえんどう豆をかけ合わせる???

馬鹿者!!それはメンデルの法則ではないか。誰が遺伝の話をしておる。化学だと言ったじゃろうが。メンデレーエフの周期律表じゃ。高校の化学で習ろうたじゃろうが。
聞いたこともない?ふぅ・・・。教育というのは無力なものじゃなぁ。

こんなやつじゃよ。化学の教科書には必ず書いてあるはずじゃぞ。

  I A II A III A IV A V A VI A VII A VIII A I B II B III B IV B V B VI B VII B 0
1 H   He
2 Li Be   B C N O F Ne
3 Na Mg   Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba L Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra A  
L La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu
A Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr
この表はロシアの科学者メンデレーエフが、1869年に作成したものが最初じゃ。

メンデレーエフは、当時知られておった元素をその重量の順に並べておって、周期的に化学的性質のよく似た元素が出てくることに気が付いたのじゃ。そこで、性質のよく似た元素が縦方向に並ぶような表を作成したのじゃ。メンデレーエフの偉い所はの、当時は全部の元素が発見されていたわけではないので表に空白ができたのじゃが、その空白を「ここには未発見の元素が入る」として空けておいたのじゃ。そのうえ、そこに入る元素の性質をほぼ正確に予言したのじゃな。大したものじゃ。
メンデレーエフが予言した元素は、今ではガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)と呼ばれておる。

実はな、この表の中にもメンデレーエフの名前が出てくるのじゃ。101番目の元素が発見されたとき、メンデレーエフの功績をたたえて、メンデレーエフの名前が付けられたのじゃ。「メンデレビウム(Md)」とな。上の表の最後から3つ目にあるやつじゃ。

そうそう、上の表は完全ではないぞ、わしの持っておる資料には103番目までしか書いてなかったのじゃが、多分もう少し上まで発見(というか、粒子加速器で作られておるんじゃが)されておるはずじゃ。

上の表で左端に打ってある1から7の数字は「周期」と呼ばれておる。表の上に書いてあるI A、II A、III Aなどというのは、「族」と呼ばれておる。
例えば、さっきのガリウム(Ga)はIII B族の4周期目の元素ということになるのじゃ。

メンデレーエフは周期律表を作ったが、なぜ周期的に元素が並ぶのかということは当時は謎のままじゃった。その理論が確立されたのは電子の発見と原子物理学の発達を待つしかなかったのじゃ。
電子が発見されたのは1897年。原子核は1911年、中性子は1932年に発見された。20世紀初頭はまさしく原子物理学の時代だったのじゃ。そして、それまでまったく関係のない学問として発達してきた化学と物理学が融合したのもこの時代じゃ。

その後、湯川博士による中間子の予言と1937年のミュー中間子の発見、1947年のパイ中間子の発見、1956年のニュートリノの発見と次々に素粒子が発見され、20世紀後半は素粒子物理学と量子力学の時代へと入っていったのじゃ。

水素原子模型 とりあえず今日の話は素粒子物理学までは必要ないぞ、安心せい。古典的な原子物理学の話じゃからの。

さて、今では元素というものは電子と原子核とでできておるということは誰でも知っておる(はずじゃ)。原子核は陽子と中性子でできておるが、それはここでは関係ない。

例えば水素(H)は一番単純な元素で、原子核の周りを1個の電子がまわっておる。
2番目の元素のヘリウム(He)では2個の電子、3番目のリチウム(Li)では3個の電子・・・と続くわけじゃ。

電子軌道 ただの、電子というものは好きな位置で原子核の周りを回っておるわけではないのじゃ。電子の取りうる軌道というのは決まっておる。その上に一つの軌道に入ることができる電子の数というのも決まっておるのじゃ。
電子の取りうる軌道は単純に書くと左の図のようになっておって、内側からK殻、L殻、M殻、N殻と呼ばれておる。

K殻に入ることができる電子の数は2個、L殻は8個、M殻は18個、N殻は32個なのじゃ。

例えば、リチウム(Li)はK殻に2個、L殻に1個の電子をもっておる。炭素(C)はK殻2個、L殻4個、塩素(Cl)はK殻2個、L殻8個、M殻7個というわけじゃ。

実は、それぞれの殻にはs軌道、p軌道、d軌道・・・と呼ばれるものがあって、これが殻の電子の数を決定しておるののじゃが、あまり関係ない話なのでここでは省略するぞ。自分で勉強せい。

での、それぞれの原子で、電子が回っている一番外側の殻を最外殻と呼ぶのじゃ。周期1の元素ではK殻、周期2の元素ではL殻、周期3の元素ではM殻・・・となるな。

この最外殻を何個の電子が回っておるかによって、その元素の化学的性質が決定付けられておるのじゃ。化学反応というものは結局は原子の電気的結合じゃからの。最外殻の電子が、化学反応の主役なのじゃ。
最外殻電子が1個のものを周期律表ではI族、2個のものをII族、3個のものをIII族・・・と呼んでおるわけじゃ。

ところで、この最外殻電子には、化学的に安定になる数というものがあるのじゃ。K殻では2個、L、M、Nでは8個なのじゃ。
たまたま最外殻電子がこの数になっている元素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)は化学的安定度が非常に高く、ほとんど化学反応というものをせんのじゃ。

逆に、安定な個数に1個足りないフッ素(F)や塩素(Cl)、最外殻電子が1個しかないナトリウム(Na)やカリウム(K)はとてつもなく活発な化学反応をおこすのじゃ。

塩化ナトリウムの結合 このときの化学反応は、最外殻に電子が1個余っている原子(I族原子)が電子を放出し、一方で最外殻に電子の1個足りない原子(VII族原子)がその1個を受け取ることによって行われるぞ。電子を放出した原子、取り込んだ原子はそれぞれ「イオン」と呼ばれるのじゃ。イオンになった原子は、Na+やCl-という書き方をするぞ。

たとえば、電子を放出したナトリウム(Na)原子は、その電子を塩素へと渡すことによって、塩化ナトリウム(NaCl)というかなり強い結合の化合物を作るのじゃ。この化合物は電気分解以外では容易に分解することはないのじゃ。普通「塩」と呼んでおる物質がそうじゃ。

最外殻の電子が2個足りない酸素(O)や硫黄(S)は2個の電子を受け入れてイオンを作るし、2個余っているマグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)は2個の電子を放出してイオンを作る。Ca2+やO2-などじゃ。これらの原子もCaO(酸化カルシウム)などのイオンによる化合物を作る。

もちろん、足りない電子の数と余る電子の数が同じ原子同士だけが結合するのではなく、電子1個が余る原子(I族)2個と電子2個が足りない原子(VI族)1個の結合のH2O(水)や電子2個が余る原子(II族)1個と電子1個が足りない原子(VII族)2個の結合のCaCl2(塩化カルシウム)という化合物もできるわけじゃ。

ここからがダイオードに関係する話じゃぞ。

電子共有結合 化学反応にはイオンによる反応のほかに、電子の共有というものがあるのじゃ。
炭素(C)や珪素(シリコンSi)など最外殻の電子が4個のIV族原子は電子が4個余っているとも、4個足りないとも、どちらともいえる状態にある。このような状態の原子はお互いの4個の原子を共有して最外殻電子が8個となるような結合を作ることがあるのじゃ。

もちろん、I族原子4個を捕まえてCH4(メタン)のような化合物を作ったり、VI族原子2個に2個づつの電子を分けてCO2(二酸化炭素)のような化合物を作ったりもする。ある意味IV族原子というのは融通無碍の化学反応をするのじゃ。

左の図が電子の共有結合の概念図じゃ、それぞれの原子が最外殻電子を8個にしようとして隣り合わせの原子と2個づつ電子の共有をしておるのじゃ、面倒なので、9個の原子を書いただけじゃが、この図の上下左右に延々とつながっておるのじゃぞ。

実を言うとな、この図は平面に書いた概念図なので正確ではない。実際は、正4面体が積み重なったように結晶構造になっておるのじゃ。正4面体の中央に原子核があって、それぞれの面に2個の電子が共有されておる形を考えてみい。何?よくか分からんから図を書け?いやじゃ。あんな面倒な図が書けるか。平面図でさえ面倒だったのじゃぞ。自分で書け。

このような結晶構造は、IV族の原子単独で出来ているものだけではないぞ、III族とV族の原子で出来ているものもあるのじゃ。GaAs(ガリウム・ヒ素)などがその代表じゃな。II族とVI族で出来ているものまであるぞ。そうじゃな、代表はCdS(硫化カドミウム)かの。

で、この結晶構造をもつものが「半導体」として使われておるのじゃ。シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)じゃ。最近ではさっき言ったガリウム・ヒ素もよく使われておるようじゃの。一番多く使われておるのは、シリコンじゃの。シリコンは砂や石の主成分じゃで手に入りやすいでな。

何じゃと?炭素もIV族で手に入りやすいじゃと?ふむ、目の付け所はよいがの。炭素の結晶構造体を使おうとは誰も考えんじゃろうなぁ。おぬし持っておるか。天然物を持っておったらわしにくれぬかのう。婆さんが欲しがって困っておるのじゃ。ダイアモンドという名前なのじゃが。

2001.8.4追記
上の文章を訂正します。炭素の結晶構造体(ダイアモンド)半導体が開発されたという新聞記事を見つけました。(大汗)
ちゃんと考えていた人はいたのですね。不純物を加えてp型とn型の半導体を作ることが難しかったんだそうですが、技術的に解決できたようです。ダイアモンド半導体のメリットとしては、電子の移動速度が速く高速度の物が作れること、消費電力が少ないことなどがあるそうです。
もしかすると、将来ダイアモンドCPUなんて物もできるかも。
おぉ!もうこんな時間か。今日はここまでにしておくかの。おぬしも遅うなってはいかんから早く帰れ。
婆さんや。風呂はわいておるかの。年寄りには風呂が一番じゃでな。
何?まだ全然ダイオードの話を聞いていない?その話はまた今度じゃ。わしは疲れた。次に来るときの土産には酒を持ってくるのじゃぞ。日本酒がよいぞ。さぁ帰れ帰れ。

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