AMD CPUのthermal diode

初出 2001.06.24
追記 2001.08.29

この私のページは、最初のページにも書きましたようにthermal diodeによってCPUの内部温度を測定することを目的としています。
残念ながら、これまでthermal diodeが内蔵されているCPUはIntelの製品だけでした。CyrixIIIのdata sheetにはthermal diodeの記述があるのですが、CyrixIIIはCeleron互換?にも書きましたように、CyrixIIIにはthermal diodeは搭載されていません。(新しいC3 CPUには搭載されているようです。)

そして、AMDのCPUにもthermal diodeは搭載されていなかったんです。AthlonはPentium系のCPUに比べて発熱が大きいにもかかわらず、温度を測定する方法は、CPUコア外部に取り付けたサーミスタなどのセンサに頼るしかなかったのです。

しかし、噂はありました。AMDが開発している新しいコアのAthlonはthermal diodeを搭載していると。そう、Palominoです。
そして、6月の初旬ついにAMD AthlonTM MP Processor Model 6 が発売されたのです。同時にAMDのサイトにそのdata sheetが掲載されました。

早速そのdata sheetを確認したところ、thermal diodeが搭載されているという記述がありましたので、その部分の引用をさせていただくことにしました。

data sheetはもちろんすべて英語で書かれていますので、一応日本語訳をつけておきました。ただし、何度も言いますが、私の英語力は中学生程度しかないので、正確な訳になっていない可能性は十分にあります。申し訳ありません。

もし、不適切な訳文を発見された方はお知らせいただけると本当に嬉しく思います。

2001.8.29追記
新しいMorganコアのDuronが販売開始されたと言うことで、AMDのサイトからそのdata sheetをダウンロードしてきました。AMD DuronTM Processor Model 7 です。
その結果、新コアのDuronにもthermal diodeが搭載されていることが判明しました。
data sheetの記述は下のAthlon MPと全く同一でした。
Athlon MP

以下がAthlonTM MP Processor Model 6のdata sheetの記述です。

7.13 Thermal Diode Characteristics
Table 14 shows the AMD Athlon MP processor model 6 characteristics of the on board thermal diode

Table 14. Thermal Diode Characteristics
Symbol Parameter Description Min Nom Max Units Notes
Ifw Forward bias current 5   300 μA 1
n Diode ideality factor 1.002 1.008 1.016   2,3,4,5
Notes:
1. The sourcing current should always be used in forward bias only.
2. Characterized at 95℃ with a forward bias current pair of 10 μA and 100 μA.
3. Not 100% tested. Specified by design and limited characterization.
4. The diode ideality factor, n, is a correction factor to the ideal diode equation.
For the following equations, use the following variables and constants:
n   diode ideality factor
k   Boltzmann constant
q   electron charge constant
T   diode temperature (Kelvin)
VBE Voltage from base to emitter
Ic   Collector current
Is   Saturation current
N   Ratio of collector currents
The equation for VBE is:
式1
By sourcing two currents and using the above equation, a difference in base emitter voltage
can be found which leads to the following equation for temperature:
式2
5. If a different sourcing current pair is used other than 10 μA and 100 μA, the following equation
  should be used to correct the temperature. Subtract this offset from the temperature measured
  by the temperature sensor.
For the following equations, use the following variables and constants:
   Ihigh  High sourcing current
   Ilow   Low sourcing current
  Toffset (in ℃) can be found using the following equation:
式3
7.13 Thermal Diodeの特性
表14はAMD Athlon MP processor model 6 のオンボードthermal diodeの特性である。

表14. Thermal Diodeの特性
記号 変数の種類 最小 標準 最大 単位
Ifw 順方向電流 5   300 μA 1
n ダイオード理想化項 1.002 1.008 1.016   2,3,4,5
注:
1. 電流は常に順方向のみで使用しなければならない。
2. 順方向電流が10μAと100μAの組み合わせで、95℃の時の特性。
3. 100%はテストされていない。 特性設計上の、限られた記述である。
4. ダイオード理想化項nは、理想ダイオードの特性式からの調整項である。
以下の式においては、次の変数及び定数を使用する。
n   ダイオード理想化項
k   ボルツマン定数
q   電子の電荷素量
T   ダイオードの温度(絶対温度)
VBE ベース・エミッタ間の電圧
Ic   コレクタ電流
Is   飽和電流
N   コレクタ電流比
VBEに付いての特性式は、
式1
2つの電流値と上の特性式、ベース・エミッタ電圧の違いを使うことにより、
次の温度についての式を導くことができる。
式2
5. もし、10μAと100μAの組み合わせ以外の組み合わせの電流を用いる場合は、温度を修正するために
  次の式が使用されなければならない。温度センサの測定温度からこの式によるオフセット値を減算する
  こと。
以下の式においては、次の変数及び定数を使用する。
   Ihigh  高い電流値
   Ilow   低い電流値
  Toffset (℃で表示したもの)は次の式によって求められる。
式3

解説しておきます。

まず、表の上の部分は、IntelのCPUでもおなじみのthermal diodeの特性表ですね。
動作可能電流は5〜300μAです。またn_ideality値は最小1.002、最大1.016で、標準が1.008となっています。Katmai/Mendochino/Deschutesとかなり近い値ですね。

その下の注がなかなか興味深いです。

注1、2、3、は同じような注がIntelのdata sheetにも存在しています。

注4はダイオードの特性式です。
まずはMAX1617の温度測定原理を見てきて下さい。
注4の最初の式は、MAX1617の温度測定原理の式1の最終項の−1を無視して変形を加えたものです。ちょっと考えれば解ると思います。

次の式は、MAX1617の温度測定原理の式10と全く同じ式です。

最後に、注5です。
注5に書かれている式は、10μAと100μA以外のダイオード動作電流を使用して温度を測定しようとした場合、まず10μAと100μAの動作電流で測定したと仮定して温度を計算し、その後でこのToffset値を引けば、温度が求められるんだよということが書いてあります。

でも、私に言わせればこれは余計なお世話です。
どんな電流の組み合わせで測定したとしても、その電流値と測定された電圧の差を注4の2番目の式に直接放り込んでやれば温度は計算できます。

一体全体何でこんな式が記載されているのか不思議に思ってしまいます。

さて、次にthermal diodeは一体CPUのどのピンに接続されているかです。
これは、Table 17. Pin Name Abbreviations (Continued)に記載されています。THDA(THERMDA、ダイオード・アノード)がS7ピン、THDC(THERMDC、ダイオード・カソード)がU7ピンになっています。

S7ピンとU7ピンの位置は、data sheetの10 Pin Descriptionsに書いてあります。くれぐれもTopside ViewとBottomside Viewを間違えないように。
図に書けばいいのですが、とりあえず言葉で説明すると、
Athlonを裏側から見ると、ピンがない角が2個所あるはずです。そのピンの無い2つの角が上になるように置いて、 上から7列目の左から9個目がS7、10個目がU7です。

なお、THDAとTHDCピンの説明は、10.3 Detailed Pin Descriptionsのところに次のように書いてあります。

THDA and THDC Pins Thermal Diode anode and cathode pins are used to monitor the actual temperature of the processor die, providing more accurate temperature control to the system.


THDAとTHDCピン、Thermal Diodeのアノードとカソードピンは、プロセッサーダイの実際の温度をモニタするのに使われ、システムコントロールのためのより正確な温度を提供する。

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