日本公演プログラム

   

 ごあいさつ 

 

 今世紀最大のタレントといわれる『ザ・ビートルズ』の日本公演が、本日ここに実現することになりました。

 全日本のビートルズ・ファンの長い間の要望にこたえて、中部日本放送が、協同企画エージェンシーの協力により、画期的な日本初演の契約を結ぶことができましたことをファンの皆様と共に喜びたいと存じます。

 今回の公演については、日本で一都市、東京のみという制約のため、全国各地の公演ができないことを残念に思っておりますが、テレビ中継を必ず行うということを契約に際しての条件といたしました。

 東京の公演については、読売新聞社が共同主催者として、全面的に周密な計画のもとに担当され、その配慮によって日本武道館の理解ある会場提供も実現しました。

 『ザ・ビートルズ』が、日本において最高の熱演を行い、期待以上の感激と、十分な満足を与えてくれることによって、『ザ・ビートルズ』の日本公演が立派に行われた記録をのこしたいと思います。

中部日本放送  

 

 

 クラシックの殿堂カーネギー・ホールで演奏し、テレビ視聴率72%、三年間でレコードを2億枚も売り上げる。などなど、かずかずの記録をもつ『ザ・ビートルズ』が、いよいよわたくしたちの目の前に現われ、夢殿の姿にも似た日本武道館で夢の演奏を聞かせてくれることになりました。

 ザ・ビートルズはいずれもリバプールで生まれ、4人が一つの輪になった1962年に栄光へのスタートを切りました。台風のように速く内にもつ大きな力と、すばらしい創造性と、特異さで全世界にブームを起こしました。

 65年にはイギリス女王陛下自ずから勲章をもらうという幸運も得て文字通り世界一、世界中の若い人々のアイドルとなったのであります。

 

 「聞き手の心をゆさぶり、興奮にかり立てる独特のものが、エレキや歌声の中にひそんでいる」と感じてから、そのマネージャーになったエプスタイン氏の言のように、ジョンもポールも、ジョージもリンゴも、現在からさらに未来へと果てしなく、若い人の心を底の底からゆすぶっていくことでありましょう。

 なお一行の公演中、各地で騒ぎを起こしていると聞いておりますが、日本のファンの皆さまは節度ある態度でお聴きになると主催者は信じております。彼らをあたたかく迎え気持ちよく帰すことになれば、ザ・ビートルズはかならず、ふたたび皆さまにその姿を現わすことでしょう。

 最後にこの公演にあたり、いろいろとお骨折りをいただき、またおしみなくご協力をして下さった関係者の方には深く感謝し、厚くお礼を申し上げます。

読売新聞社  

 

  私どもに代って、日本のビートルズ・ファンによろしくお伝え下さい。

  私どもは六月末、皆さまにお会いできる東京の空にひたすらな思いを寄せています。そこへ、たった今、二回の追加公演までやれるというすばらしい朗報です。

 待通しい東京公演、ではそれでは皆さま、どうぞごきげんよう。

ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ (中部日本放送に寄せられたザ・ビートルズのメッセージ) 

 

 ビートルズについては、私から説明する必要がないくらい、皆様がごぞんじです。

 ビートルズの名声は、もはや英国だけでなく、全世界にとどろいています。

 ビートルズのレコード、フィルム、ビートルズの作曲の数々は、日本の皆様にも広く親しまれております。そして、待望の今回の訪問は、日本のビートルズ・ファンを歓喜にわきたたせるでしょう。それゆえ、私はビートルズの来日を心から歓迎するのです。

 

 イギリスのポップ・ミュージックは、世界中に空前のブームを作りだしました。

 この成功によって、ビートルズは、その名声を高めました。我々は Gay Nineties (陽気な1890年代)や、

Roaling Twenties(狂乱の1920年代)をへてきました。

 そして、1960年代は、Beatles Decade ビートルズ時代として人々に記憶されることになりましょう。

 最後に、私は、ビートルズが、東京訪問に成功し、又東京訪問を愉快に過ごす事を祈ります。

                      英国大使館 代理大使 ダドレイ・チェク  

 

 

 

 

 

 若さの特権  安部 亮一

 

 去年の夏、 アメリカ旅行中にちょうど、ビートルズのアメリカ公演があり、これはチャンスと早速切符の手配をたのんだら、「1週間前にビートルズの切符を手に入れようなんて心がけが悪い。もう1ヵ月も前からとっくに売り切れです」とつれなくことわられてしまった。

 それが日本に帰ってきたら、東京でいながらにしてビートルズが聞けるのだから、やはり東京は世界でも有数の大都市との認識を改めさせられた。

 

 ビートルズがすべて、というビートルズ・ファンも、ああいう歌はどうもわからん、というビートルズ批判派も、どっちの側の人だって、ビートルズという怪物の存在を無視できない。世界中の若い世代にとって、ビートルズは、今や''社会現象''なのだし、戦後の世界の軽音楽の流れを語るとき、ビートルズの名前は、余りにも大きい位置を占めているのだ。

 

 あの4人組みは、どうもうるさくてかなわん、と批判する人もいる。しかし、その人たちですら、ビートルズの、あの若いエネルギーの奔流については、文句をつけることができないだろう。火山の噴火のように、爆発し溶岩のように自由に流れ出る彼らの歌声を、おさえつけることはできないのだ。

 そして、若さは常に未知の世界への冒険心を誘発するように、ジョンとポールは、つぎつぎと新しいスタイルの歌を作り、4人はそれを歌い続けて行く。彼らは決して停止しない。冒険心が、時には高価な犠牲を支払わなければならないことを知ってはいても、彼らはその冒険に全身を投げかける。それは、すばらしいことだ。

 

 こうして、彼らの歌は、「プリーズ。プリーズ・ミー」「抱きしめたい」から「イエスタデイ」「ミシェル」とかわる。そして、また、彼らの歌はかわるだろう。歌がかわるように、バックのリズムも、ハーモニーもかわってゆく。彼らはいつも自由なのだ。ひとつのスタイルに固執する歌手が多い中で、常に冒険してゆく彼ら。だからこそ、その冒険心に拍手を送ろうという人が多いのだ。それが若さの本当の特権というものなのだから。

 

  

 

ロンドンで会ったビートルズ  星加 ルミ子

 

 丁度1年前の6月、私は念願のビートルズと、ロンドンにあるEMI レコードのスタジオで約3時間もの間インタビューやら楽しい談笑をしました。

 もうあれから1年経ってしまいましたが、あの時の私の興奮と、すばらしかった4人、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴとの会話は今でも鮮やかによみがえってきます。

 外は小雨がちらついていた寒かった6月15日、。どんなにか待っていたビートルズとの会見が、不意に現実となったのです。

 

 私は持参した着物を着て、スタジオに向かいましたが、何を聞こう、最初は何を云ったらいいのだろう、ジョンは気むづかし屋かしら、4人ともきっとレコーディングで忙しくってゆっくり話をしてくれる暇なんてないのじゃないのかしら……のべつこんなことを考えている間に、私はいつしか彼等の前に立っていたのです。

 「ハロー」「ハーイ」「ウェルカム」次々と4人からさきに言葉がとび出ます。

 低音で、落ちついた感じのジョン、一番おしゃれなジョージ、気さくなリンゴ、そしてあのあどけない顔いっぱいに笑顔で迎えてくれたポール。

 ジョンがしきりに日本のことを知りたがって私に質問してきたのには、私のほうが恥ずかしいことにしどろもどろ。

 

 4人の印象は一口で云って今や億万長者、ビートルズ世界のアイドル、ビートルズといったかた苦しさはどこにもなく、話し好きで、無邪気で、あけっぴろげで、陽気な若者たちということでした。

 リンゴは大きな鼻と背が他の3人に比べてわずかに低いのをちょっと気にしているようでしたが、''学問的体育訓練法''という本をその時持っていて、もし男の子が生れたら(リンゴの赤ちゃんザックはこの年10月に生れたことはご存知のとうり)丈夫で元気でたくましくなるよう運動をジャンジャンさせるんだ'といっていました。彼はまたダジャレの名人、次から次へとユーモラスな言葉がとび出します。

 

 ポールは、一番気さくな青年でした。何くれとなく気を使ってくれ、言葉がとぎれると話題をみつけてくれたり、始終小まめに動き回っています。ただ、ジェーンとの結婚問題については、あいまいに笑ってごまかされてしまいました。顔のあちこちにニキビの跡があり、鼻の頭に小っちゃな赤いニキビがプツンと出来ていたのが印象に残っています。

 ジョージ。彼が一番難物でした。いつも1人ぽつんと離れたところで、何をすることもなく、坐ってだまりこくっています。でも話しかけると、とてもていねいに、一言一言念をおすような話しかたをするのが特徴。セピアのコールテンのジャケットとスラックスがいかにもおしゃれなジョージらしく、袖口、衿のところなどに細かい工夫がされていました。

 ジョンは、非常に学究肌で、気に入るまで物事を何度でもやり直したり、徹底的に研究する性格だと自分でも云っていましたが、私から熱心に日本の話をききだしたのもこのジョンでした。

 それまでレコードと映画「ヤァヤァヤァ」でしか知らなかったビートルズの4人が、こんなにもすばらしい性格を持ち、ウィットにあふれ、愉快な連中だったことに私は大きな満足を覚えたものです。こうした4人だからこそ、沢山の世界中のファンから愛されているのでしょう。

 

 EMI のスタジオではこの日、5月にクランク・アップした第2作の映画「ヘルプ」の主題曲の中から2曲レコーディングしていました。レコーディング室からミキサー室に戻ってまた私達は、そこでプレイ・バックをききましたが、4人ともそれぞれに気に入らない点を指摘していました。そして気に入るまで何度もレコーディングし直すのだそうです。

 

 ジョン・レノン、ポール・マッカートニーの2人が殆んどのレパートリーの作詞、作曲をしているのはご存知の通りですが、この2人のイマジネーションは全く天才的。ふっとひらめけば、どこであろうと曲にしちゃうということで、それがまさに現代の若いゼネレーションにぴったりのものなのですからいかにこの2人の感覚がすぐれているかお判りでしょう。

 

 私にとっては本当にラッキーとしか云いようのないこの会見から1年して、この偉大なビートルズを私達の国日本に迎えることが出来たということは何んという歓びでしょう。

 いつまでもすばらしい歌を沢山作って、私達ビートルズ・ファンに聞かせて下さい。

 そしてまた何度でもあなた方を待っている日本にこれからもジャンジャン来てください。

  

 

  

 

 ビートルズ・ファンとおとなの関係  森田 潤

 

 ビートルズ・ファンの熱狂ぶりについて「気ちがいだ!」と一言のもとにきめつける人たちが多い。テレビでの対談番組をはじめ、ラジオ、新聞、雑誌などでもビートルズ・ファンはひんしゅくを買っているようだ。

 ビートルズ論議はイギリスはもちろん、世界各国で激しく行われているが、とくにイギリスは本場らしく論戦の内容も激しく密度も高いもので、有名な学者、音楽家、政治家などあらゆる知識階層が真剣に賛否を戦わせている。

 

 ところで日本にもビートルズが来日すると決まってから、ビートルズ論争はようやく激しくなってきた。東京在住の外国特派員が''ビートルズ論争、日本にも上陸''と海外へ向け打電している程だが、日本での論争は「気ちがい!」とファンへの一方的なきめつけ方だけが大きくクローズアップされるばかりで、どうも論争らしい論争になっていないのはどうしたことだろうか。「気ちがい!」とファンの熱狂する状態を批評する声があがってもいい。だが、それに対する反論がどうも希薄なのである。なぜファンはあのようにビートルズに夢中になるのだろうか---といった分析がほとんど行われていないのである。

 

 ビートルズ・ファンは日本に約300万人いると推定されている。300万人というのはかなりの数だ。これだけの数を熱狂させているタレントがほかにいるだろうか。ビートルズ公演の入場切符の希望申し込みハガキが読売新聞だけでも22万数千通も寄せられる驚異的な新記録を作ったことをみてもそれが分かるだろうすでに日本で公開されたビートルズの映画では髪をかきむしって絶叫し、彼らの舞台に涙する少女ファンがうつし出されていたが、その模様をみていたファンの何人かがスクリーンにかけ寄り、それを手でさわるといったことまでやる光景がひと頃の話題になったものだ。スクリーンにさわったところで、それはビニール製のむなしい一枚の布にすぎないが、彼女たちはそれで満足するのである。

 

 この情景はおとなたちの目からはたしかに''狂態''としかうつらないだろう。その狂態を社会的に疎外された若年層の憤満、若いエネルギーの爆発---などと社会的見地論議される向きもある。それは彼女たちの熱狂ぶりの分析のひとつとして正しいだろうが、もう少しおとなたちはファンの側に立って、内面的な理解を深める必要があると思う。ビートルズ・ファンの中心層といえば12歳から16歳まで、いわゆる''むずかしい時期''にあるティーン・エイジャーだが、彼女たち(少年ファンはごく少ないのでこういう)が置かれている''場''は画一的な文部省教育。教育ママ、試験地獄、積極的に理解してくれないオトナの目など---それこそオトナ以上にきびしい現実に置かれている。教室の中では少しでも試験問題ができないとまわりから冷笑され、他人より少しでも成績が上がるとひそかな優越感にひたる。同じ机を並べた友だちとはいっても根底はきびしい闘争の場に立たされているのだ。だから、わけへだてなく皆んなで熱中できるもの、心を開いて安心して飛び付けるものを求める。そしてそれが発見された時、何もかも忘れて侵入したいという心理がむき出しになるのがビートルズなのではないか。つまりビートルズは彼女たちによって発見された、ただひとつの太陽であり、大空でもあるのでる。

 

 いよいよ本もののビートルズがやってくるが、あこがれ続けた''太陽''を前にしてファンの皆さんはさぞまぶしいことだろう。その太陽に向かって心の限り叫び熱狂することだ。そしてビートルズを通じてみんなが仲好く明るく、ほがらかになることを願っている。

 

   

 

 

 

 

 

 

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