レーダーに何かが写る。                             
その白い点が山頂のレーダ目掛けて突入する様子が肉眼でも確認できる。        
無線からオペレーター達の緊迫した様子が手にとるように分かった、しかし打つ手立てが何
一つ残されていなかった。                             

打ち上げ施設でシャトル発射のカウントダウンが進む、無人で発射されるシャトルには二機
の海洋探査衛星が搭載されている、しかしそれを軌道へ乗せる目的は総合軍におとる戦略偵
察能力の強化……スプリング海のどこかを移動する西部艦隊の機動部隊と自国民の救出を名
目に合流しようとしている奇妙な名前の海軍の艦隊、この勢力も空母を保有している。  
この二つの艦隊が合流し、前線の部隊への攻撃を始めたら大陸の地上軍が大打撃を受ける。
連日の大規模戦闘で疲弊したクーデター参加部隊の中には分隊、小隊単位で逃亡する部隊が
出始めている…そこで呼び掛けられ、意識が目の前の現実に引き戻される。       
報告でレーダーを攻撃した部隊の正体が判明する、機種と塗装そして見間違える筈が無い赤
く塗りつぶされた国籍標識、極東訛りの無線、奴らはシャトルをペイロード…衛星ごと破壊
するつもりだ。                                  

「第一次二波攻撃隊は指定目標の内80%を破壊、目標南部の格納庫区域の内で一部施
の設倒壊を確認、友軍機の損害は一機がエンジントラブルで戦域突入前に離脱、第二次攻撃
隊 の人員割り振り及び部隊編成完了。」                       
ブリーティングルームから幾つかの階段と防水、防爆ドアを通りフライトデッキの定位置に
係留された愛機へ向かう、時折フライトデッキを叩き付けるような轟音が響く、攻撃に参加
した機体が船へ戻ってくる。                            
頭の中で任務の内容を反芻する、CAP(戦闘空中警戒)任務、武装は八発の空対空ミサイ
ルと機銃、それと二本の機外増槽…機体に装備されたそれを確認する、胴体下の四本の巨大
なAAM、敵の中に一機だけ確認された大型戦闘機……Mig−31をアウトレンジから撃
退するためだけにこの巨大なミサイルが装備された。                 

滑走路上を何機かの大型戦闘機が離陸していく、その中の一機…他の機体と違い全体的に角
張ったデザインのそれが島の上空を旋回するコースを飛行し機能を失ったレーダーの代わり
に索敵を行う、残りの機体、設計思想の基礎自体が違う戦闘機…こちらは亜音速領域の運動
性能を重視し現用戦闘機の中でトップの運動性能を持つ…の編隊はレーダーが破壊される直
前に捕らえた大陸から島へ向かってくる大型機の集団を撃破するために北を目指す、シャト
ル発射まで残り40分、島上空の制空権を死守しなければならない。          

複数のAWACSと早期警戒機から送られてくるデータで島から離陸した敵機がこちらへ向
かってくるのが手に取るようにわかる、機体に装備されたレーダーを発振させるべきか一瞬
迷う、護衛対象である戦術輸送機の方を見るとコックピットの中で降下部隊の人間が指で耳
を差すのが見えるその時だった、HUD上に相手のレーダー波の逆探知表示と警告音が鳴り
響く、計器盤で方向を確かめる、ヘッドオンからのレーダ照射、反射的にIFFの無応答を
確認しターゲッティング、FCSへ送るデータを掻き集める、マスターアームのスイッチを
ONへAAM−4の発射のためレーダーシーカーに通電、緩やかな上昇を始める、ゆっくり
と二回ミサイルのリリースボタンを押すと同時にジンキング、向こうは回避運動をせずにミ
サイルを撃つ、レーダーの照射パターンから相手の火器管制の種類を割り出し誤った情報を
送り込む、一発のミサイルが進路が有らぬ方向変わるがもう一発がしつこく向かってくる、
ハイGヨーヨで行き足の付き過ぎた機体の速度を落とす、カウンターメージャーとACMを
駆使し回避、しかし敵の編隊の内一機が輸送機のうち一機へミサイルを発射する、多量のフ
レアとチャフを機体を被うように散布するが間に合わない、フレアとチャフの壁を抜けエン
ジンに直撃する、姿勢が崩れると同時に後部のランプが開き乗っていたコマンド部隊の兵士
達が脱出する、彼らの大多数は助かるかも知れない、しかしパイロット達は機体の姿勢を最
後の瞬間まで保つため脱出できない、が感傷に浸る余裕は無い、スホーイの後を追う、残り
は殺せない。                                   

  12機のイントルーダーの前方2マイル前、別の部隊の護衛機が右エシュロンで飛行する、
海軍と海兵隊の次期主力戦闘機として選定、導入が始まったばかりのラファールが8機、攻
撃機を挟んで7機のトムキャットが後方に位置する。その中の1機は胴体下に大型の戦術偵
察用のカメラを3機が爆装した上で照準用LANTIRNを装備している、これらの機体に
は離陸重量と航続距離、空母に備蓄されている数が少ない等の理由でフェニックスミサイル
は搭載していない。                                
右腕の内側へ文字盤が来るように巻き付けられた時計で時間を確かめる、爆撃開始まで12
分、ドロップタンクを放棄し高度を上げる敵のレーダーにわざと見つかる事で爆撃隊にとっ
て厄介な防空戦闘機を引き付ける。                         

  レーダスコープに白いドットが幾つか表れる、素早く数を確認、全部で11機、そのうち4
機は移りが悪い、艦載機ならステルスは居ないはず、だが現実には時折画面上から姿が消え
る少なくともF−14やF/A−18ではない、確実に捕らえられる相手、こいつらを殺る
と後ろへ伝える、ロックオン、ミサイルリリース。                  
  「正面からミサイル4発、発射母機Mig−31、エイモスが来る」          
レーダー画面のはじに31の表示、                         
「ジャミングを始める、新型は耳を塞げ!」                     
「方位3−0−0から新手の編隊、多分例の新型だと思う、ポンコツどもこそ流れ弾にも喰
われるなよ!」                                  
「なあ向こうの連中も口が悪いな」                         
RIOのマークが答える、                             
「海兵の無線の方がもっときついですよ、子供には聞かせられない、おっとこっちも相手を
掴んだ」                                     
2発、タイミングをずらしてミサイルリレーズボタンを押す、約1トンの重りが機体から離
れると同時にロケットモーターに点火、他のAAMと比べ物にならない太くてハッキリとし
た煙りの道、その軌道をそらに描きながらまだ目に見えないMigを目指す、レーダーとR
IOのカウント、目視で回避行動のタイミングを計る、4本の白い筋が瞳に写る、A/Bに
点火と同時に本能で叫ぶ、ロールと同時にスティックを引きラダーペダルを僅かに踏む蒼い
空と赤道に近い青い海が逆さまになる、機種左手に薄いミサイルの軌跡、それの進路が逸れ
る、回避成功……しかしレーダーの上から味方の機体が一つ消える。          
『ヘイロー11がやられた、脱出したか確認出来なかった、05は11の目標も爆撃しろ、
東側のハンガーだ!』                               
誰の声かわからないが無線に向かって叫んでいるのが聞こえる、レーダをもう一度確認、ミ
サイルがMig−31へ吸い込まれるように接近し両者を示すドットが重なり消滅する。 
島の上空を見ると幾つかの白い筋と爆炎が空中に見えた、戦況は五分五分と言った所か、機
首を激しい空戦の続く島の方へ向けサーチ、残り二発のフェニックスを発射、ミサイルの後
を目とレーダで追い続けるが回避される、敵の二機編隊の前を横切るように旋回、相手の旋
回半径の中に潜り込む、日本海迷彩と呼ばれる独特の青い塗装の機体をガンサイトが追う、
いつでも引き金を引けるように僅かに力をいれた人さし指から力を抜き親指で操縦桿横のリ
レーズスイッチを弾く、電気信号でミサイル弾頭の赤外線シーカーへデータを送り後部の固
体ロケットが点火、レールランチャーからサイドワインィンダーが発射される、白煙が敵を
追うがそれを見届ける事が出来なかった、二機の新手、                
地上の格納庫の一つに変化があった、一機の巨大な爆撃機が基地から離陸するために低軌道
衛星打ち上げ用のリニアカタパルトへ向かいはじめる。                
「エメット06より護衛機部隊へ高高度爆撃で行く、1000フィート付近の敵を追っ払っ
て欲しい、XB−10に離陸されると後が厄介だ。」                 
まさか…あれが飛行可能だと誰もが思っていなかった、空軍が開発中だった超音速巡行が可
能なステルス戦略爆撃機、衛星を積んだシャトルよりあれを優先しろ!         
無線を通じて年輩の声が聞こえる、参謀本部の誰かが直接指示を出し始めた、これがこの作
戦最大の悲劇であった。                              
護衛機全ての動きが一瞬にぶりその隙を突いて一機のF−2が攻撃隊のA−6に襲いかり四
機を撃墜、その中の一機が制圧する手はずだった移動式SAMランチャーが立続けに二発の
ミサイルを発射する、そのうち一発が爆撃を開始しようとしていたエメット06の近くで爆
発した。                                     
「エメット06、装備を放棄して離脱しろ、今ならまだ助かる」            
「ネガティブ、ナビゲーターが死亡、燃料タンクも大穴が開いてる」          
「機体を放棄して脱出しろ」                            
「この高さだと飛び出した瞬間に対空砲に撃たれる」                 
「なら可能な限り艦隊に近付いてから…」                      
「エンジンが二基ともくたばった、油圧も落ちて真直ぐしか飛べない」         
「そのまま飛んで…」                               
「時間が無いから手短に話す、息子に父は勇敢に戦って死んだと伝えて欲しい、それからM
Dコンポはこいつの機付き長に…」                         
そこで無線が途切れると同時に島で大きな爆発が起きる、黒く大きな煙りと炎の柱が立つ、
XB−10を離陸前に破壊する事が出来た……二人のパイロットの命と引き換えに……機首
を東へ向け攻撃機の編隊に襲い掛かろうとしていたF−2へプレッシャーを掛ける、中距離
AAMを発射、距離20マイル、15マイル、IR誘導のミサイルのセンサーに反応、5マ
イル、回避運動を始めた敵を追いロールアウエイ、最後のスパローを発射、機体に命中する
のが見え機体が爆発する、その時点で周辺を見渡すと味方の機体しか見えなかった。   
「……くり返す、目標のシャトルの破壊を確認、残存機は直ちに帰還せよ、帰還進路は方位
3−4−0、指定高度6000フィート、空中給油機離艦、給油の必要な機体はタンカーに
無線で直接交信しろ、タンカーのコールサインはムーンライト11…」         
今日も生き残れた、それが感想だった。